超進化ペット!ピヨ 改訂版

朝陽ヨル(月嶺)

文字の大きさ
75 / 85
十ニ話 フェイス トゥ フェイス

しおりを挟む
「ここ行ってみない?」 

 夏菜がチラシを持ってきて見せてきた。チラシには町内会の祭りについて印刷されている。 

 多分あの広場だ。リリカちゃんが言ってたおまつり……! 

「行きたい!」
「よ~し決定! あ、せっかくだから……お母さーん、浴衣ってまだある?」
「あんたの小さい時のなら残ってるはずよ」
「それそれ。ねえココロちゃん、お下がりになっちゃうけどうちが着てた浴衣着てみない?」
「うん、きてみたい」
「じゃあうちが着せてあげる。夕方になったら着替えよっか」 

 朝起きてすぐにそんな会話をし、待ちに待った夕方になるとクックから浴衣の帯を渡される。 

「夏菜カラ受ケ取リ、ソレカラ主用にアレンジシマシタ」
「アレンジ?」 

 よくわからずに帯を広げてみると、帯の至るところにトリの模様が縫われていた。 

「トリさんいっぱい! ピヨさんかな? これクックさんがぬったの?」
「ハイ。ミシンと手縫イシマシタ」 

 待っている間に夏休みの宿題をしていたが、クックは縫い物をしていた。その完成品がこの帯のアレンジだとは思いもしなかった。 

「すごいね、ありがとうクックさん」
「主が喜ブ、ワタシ嬉シイデス」 

 ココロが笑えばクックはそれだけで嬉しくて満足する。
 受け取った帯を今度はココロから夏菜に渡して浴衣を着付けてもらう。夏菜の子供の頃の浴衣はココロの体のサイズにぴったりだった。着付けの最後には髪をお団子ヘアーにし、リボンを結べば完了だ。
 両親の影響か夏菜は手先が器用で、ヘアアレンジやリボンの結び方も綺麗にこなしている。 

「ひゃ~! もううち天才じゃない!? めっちゃくちゃ可愛い! ココロちゃん見てみなよ!」 

 全身の映る鏡の前へ移動して見てみると、自分の変わりようにココロは驚く。 

「わあ~かわいい……! ナッちゃん、おひめさまをへんしんさせるまほうつかいみたい!」
「うーん魔女か。魔女もいいね! それじゃあお姫様、舞踏会へ……じゃなくて、お祭りに行きましょっかね」
「準備は出来たか? おお、ココロ可愛くしてもらったな」 

 やって来た祖父に褒められて恥ずかしそう俯く。
 そんな様子のココロを見て夏菜も祖父も顔を合わせて笑っていた。
 伯父と伯母は仕事でいない為、祭に同行するのは夏菜と祖父の二人だ。クックと太郎丸に見送られて家を出ていく。
 祭が行われている広場はココロが思った通り学校帰りにある広場で、普段は小学生が十人遊んでいれば多い方だ。しかし今日はその十倍の人数を軽く超える程の人だかりである。中央には櫓、そこから提灯が四方にいくつも連なっている。櫓から通路を挟んで囲うように屋台が広場いっぱいに所狭しと並んでいる。 

「わーお、人集まってるね~。ココロちゃん、はぐれないように手でも繋いどく?」
「えっ、……う、うん」
「夏菜はすっかりお姉さんだな」
「えっへん」 

 ココロと夏菜は手を繋ぎながら会場を回る。たこ焼き、チョコバナナ、かき氷を食べて、流行りのアニメのお面を買って被ったり、射的にも挑戦してみた。最後の一発で小さな菓子の箱に当てられたのは大きな喜びとなる。 

「やったね!」
「うん!」 

 夏菜とハイタッチして景品をもらったココロは充実していて、目元も口元も緩み次第に顔が綻んでいた。 

「あっ! ココロちゃーん」
「リリカちゃん」 

 駆け寄ってきた凛々華と、後からその両親と会い軽く挨拶をする。 

「ココロちゃんゆかたきてる! すっごくかわいい!」
「ありがとう」
「いいなあ、わたしもゆかたきたい」 

 凛々華は母親におねだりすると、また来年ねと宥められている。
 しばらく咲掛一家と話していると、スピーカーから盆踊りが始まるというアナウンスが流れてきた。
  
「盆踊り始まるみたい。行くよココロちゃん!」
「ええっ!?」
「すみません、後ろ入れてくださーい」 

 夏菜に手を引かれて櫓の周りにやって来て、既に並んでいる人の列に入り込んだ。前の人は浴衣を着た小学生の女の子で、振り向いて返事をしてくれた。顔を合わせて知っている顔に目を丸くする。学級委員の百合子だ。 

「ユリコちゃんだ!」
「ココロちゃんも来てたの」
「うん。ナッちゃんとおじいちゃんといっしょに来たよ。ユリコちゃんは?」
「おばあちゃんと。毎年ここでぼんおどりしてるって言うからいっしょに来たのよ」
「あー! ユリコちゃんもゆかただ! いいないいなあ……、来年はぜったい買ってもらうー!」 

 凛々華も列に加わり、羨ましそうにココロと百合子を見ている。
 祭りに浴衣を着たいと憧れる気持ちはわかる。ココロも自分のではなくてお下がりだが浴衣を着ることが出来て嬉しかったからだ。運が良かったと嬉しさを今でも噛みしめている。
 盆踊りが始まる前に夏菜と百合子の祖母から振り付けを学び、盆踊りの定番曲が流れてくるとぎこちなく踊る。そうして夏の風物詩を思う存分楽しんだ。 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

レクサス転生――ローン付きSUVで始める異世界物流革命

しばたろう
ファンタジー
「馬車では一日かかる。だが、この鉄の馬なら二時間だ」 ローン残高を抱えたまま異世界に転移した新卒社会人・タカセ。 唯一の武器は、レクサスSUVと物流設計の知識。 命を救い、 盗賊を退け、 馬車組合と交渉し、 サスペンションとコンテナ規格で街を変える。 レクサス一台から始まる、リアル成り上がり。 これはチート無双ではない。 仕組みで勝つ物語だ。

処理中です...