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付き合ってから
ビターなチョコレート味
「ローラン君。正直に話しておこうと思います……」
「え? はいっ! なんスか?」
帰国の話をしてから五日後。ローランは仁の自宅に呼ばれソファに座ってカフェオレを飲みながら寛いでいる。
その隣に仁も神妙な面持ちで座っている。
今日呼ばれた理由はわかっていてローランもそのつもりでやって来た。緊張してやって来たのだが、そわそわとして落ち着かなかったり、声が上擦ったり、しまいには家具の角に小指をぶつけたりと、仁の方が笑ってしまうくらい緊張していることが見て取れる。
「この五日間ずっと考えてたんだ」
「何を考えてたんスか?」
「……その……今日……来てもらったから、それでこの後……前に話してたことをする予定だし、それらについて考えてみたり、調べたり……」
「…………。…………あ! 仁さん、あの…………もしかして男同士は初めてスか?」
「うっ、…………うん……。だからいまいちやり方がピンとこなくてね」
普段落ち着きのある仁が困惑している。
そんな仁の顔を見てローランは申し訳無い気持ちになった。これからの生活への不安を緩和させたくて褒美が欲しいと強請ったばかりに、仁に余計な負担を掛けさせてしまったことに対して。
「ごめんなさい……俺、自分のことばっかり考えてて、迷惑かけてしまって……」
「そんなっ、迷惑じゃないよ! 寧ろこれから僕が迷惑かけると思うから! ……あんまりそういうことに知識が無いし……。だからってしたくないわけじゃないよ。キミが大切だし傷つけたくないから、こういうことは慎重になりたい。……でも結局、この五日間考えても調べてもあんまりよくわからなくて……だから申し訳ないけど、色々と教えて欲しいんだ」
――これからすることに、こんな真剣になって考えてくれてるなんて……仁さんって本当に優しくて真面目なんだな……
「仁さん」
しっかりと仁の顔を見て膝と膝をくっつける。太ももの上に置かれている手に自分の手を重ねてローランは微笑んだ。
「嬉しいです。沢山考えてくれて、こうやってちゃんと正直に向き合って話してくれて。だからきっと大丈夫スよ。それに俺、丈夫なんで少しくらい無理したって平気っス!」
「いやっ無理はさせたくないなあ」
「もしもの場合っスよ。あっ、あと、仁さんが五日間エッチなこと考えたり調べたりしてたっていうの聞いて、ちょっと面白くて段々緊張が解けてきました」
「そこだけ聞くと僕が変な人みたいだね……」
「そ、そんな風には思ってないスよ!? ただ、そのぉ…………お、俺のことも……考えてくれてたのかな~って」
和やかな雰囲気が流れていたが、ローランのやや照れた様子での質問に再び緊張が走る。仁はぐっと息を呑み、真摯な態度でローランを見つめた。
「それは……、もちろんだよ。ずっとキミのことを考えてた」
「っ……」
言葉と視線の熱さに加え、太ももに置かれた手とは反対の手がローランの顎を捉え、途端に口付けを交わす。互いの唇が触れるだけで体温が徐々に上昇しているような気になる。唇をほんの数センチ離すと相手の吐息がかかり、その熱さが気分を昂ぶらせていく。
「……えっと……、シャワー浴びる?」
「シャワーは来る前に浴びてきました」
「そっか」
「浴びてきます?」
「朝に浴びたからいいかな。……ええと……、じゃあ……寝室行こっか」
「はい……」
こんな会話をしていると、いよいよ本番なんだと胸がうるさいくらい高鳴る。
仁がソファから立ち上がるとローランも一緒に立ち上がり後ろをついていった。
ブーッ……ブーッ……
携帯電話のバイブレーションが聞こえて画面を見ると、非通知電話と表示されていた。仕事関係の急ぎの連絡ではないなら今必ず出ることはない。邪魔はされたくないからとローランは躊躇いなく電源を落とした。
「え? はいっ! なんスか?」
帰国の話をしてから五日後。ローランは仁の自宅に呼ばれソファに座ってカフェオレを飲みながら寛いでいる。
その隣に仁も神妙な面持ちで座っている。
今日呼ばれた理由はわかっていてローランもそのつもりでやって来た。緊張してやって来たのだが、そわそわとして落ち着かなかったり、声が上擦ったり、しまいには家具の角に小指をぶつけたりと、仁の方が笑ってしまうくらい緊張していることが見て取れる。
「この五日間ずっと考えてたんだ」
「何を考えてたんスか?」
「……その……今日……来てもらったから、それでこの後……前に話してたことをする予定だし、それらについて考えてみたり、調べたり……」
「…………。…………あ! 仁さん、あの…………もしかして男同士は初めてスか?」
「うっ、…………うん……。だからいまいちやり方がピンとこなくてね」
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そんな仁の顔を見てローランは申し訳無い気持ちになった。これからの生活への不安を緩和させたくて褒美が欲しいと強請ったばかりに、仁に余計な負担を掛けさせてしまったことに対して。
「ごめんなさい……俺、自分のことばっかり考えてて、迷惑かけてしまって……」
「そんなっ、迷惑じゃないよ! 寧ろこれから僕が迷惑かけると思うから! ……あんまりそういうことに知識が無いし……。だからってしたくないわけじゃないよ。キミが大切だし傷つけたくないから、こういうことは慎重になりたい。……でも結局、この五日間考えても調べてもあんまりよくわからなくて……だから申し訳ないけど、色々と教えて欲しいんだ」
――これからすることに、こんな真剣になって考えてくれてるなんて……仁さんって本当に優しくて真面目なんだな……
「仁さん」
しっかりと仁の顔を見て膝と膝をくっつける。太ももの上に置かれている手に自分の手を重ねてローランは微笑んだ。
「嬉しいです。沢山考えてくれて、こうやってちゃんと正直に向き合って話してくれて。だからきっと大丈夫スよ。それに俺、丈夫なんで少しくらい無理したって平気っス!」
「いやっ無理はさせたくないなあ」
「もしもの場合っスよ。あっ、あと、仁さんが五日間エッチなこと考えたり調べたりしてたっていうの聞いて、ちょっと面白くて段々緊張が解けてきました」
「そこだけ聞くと僕が変な人みたいだね……」
「そ、そんな風には思ってないスよ!? ただ、そのぉ…………お、俺のことも……考えてくれてたのかな~って」
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「っ……」
言葉と視線の熱さに加え、太ももに置かれた手とは反対の手がローランの顎を捉え、途端に口付けを交わす。互いの唇が触れるだけで体温が徐々に上昇しているような気になる。唇をほんの数センチ離すと相手の吐息がかかり、その熱さが気分を昂ぶらせていく。
「……えっと……、シャワー浴びる?」
「シャワーは来る前に浴びてきました」
「そっか」
「浴びてきます?」
「朝に浴びたからいいかな。……ええと……、じゃあ……寝室行こっか」
「はい……」
こんな会話をしていると、いよいよ本番なんだと胸がうるさいくらい高鳴る。
仁がソファから立ち上がるとローランも一緒に立ち上がり後ろをついていった。
ブーッ……ブーッ……
携帯電話のバイブレーションが聞こえて画面を見ると、非通知電話と表示されていた。仕事関係の急ぎの連絡ではないなら今必ず出ることはない。邪魔はされたくないからとローランは躊躇いなく電源を落とした。
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