99%興味【改訂版】

朝陽ヨル

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二章〈worry〉〜自覚したらアイツに夢中〜

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 有馬はなんでああもおかしいことばかり考えるのか。

「面白いけどよ」

 見習うつもりは更々ないが、なんとなく自分も想像してみる。

 有馬の白衣姿……

「……胡散臭い」

 町医者ではないな。どっかの大学病院とかデカイ病院にいるタイプだ。顔が良いと評判になってて、他の医者から恨まれるヤツに違いない。
 ウェイターもバーテンダーも服装はさほど変わらない。きっとこれは似合う。やはり顔面がいいと何でも着こなしてしまいそうだ。

「俺が着るよりゼッテェ似合うだろうに……」

 自分には自信が無い。見た目だって性格だって良いとは言えず、コレといって抜きん出た特技があるわけでも無い。
 比べたいわけじゃない。それは意味の無いことだから。そうは言っても比べてしまうのが人間の性というもので、こんな自分が嫌になる。

「バカらしっ。俺は俺だろ。…………俺は俺らしく、か……」

 有馬に言われた言葉を思い出す。俺らしくいればいいと。他人ではなく、俺のことを知りたいと。これからもっと互いのことを知っていこうと、そう言ってくれた。あの言葉は他の誰でもない俺を認めてくれているようで嬉しかった。それは少しだけ自信に繋がるような気がする。

「…………っし」

 自分の頬を強めに叩く。そうして自分を奮い立たせて前へと進んでいくのだ。


✿✿✿✿✿


 帰宅すると玄関に普段無い女性の靴が置いてあるのを確認する。

 そういや今日は休みって言ってたな

「ただいま」

 リビングの扉を開けて入り、母親と顔を合わせる。ショートヘアの茶髪。その中には白髪が少し混じっていて、小じわや目の下のクマで実年齢よりやや老けて見える。まだ表情が明るい分カバー出来ている方だろう。

「おかえり。今日は大丈夫だった? 何も無かった?」
「大丈夫だよ。何も変わりない」
「そう……それなら良かったわ」

 母親はいつも心配している。『大丈夫』と言ってやれば安心して笑ってくれる。小さい頃から心配をかけているからあまり心配をさせたくない。

「あ……そうだ、お袋。俺、卒業したら就職する。何が出来るかわからねぇけど、働く方向で考えてるから」
「もう進路を考える時期なのね。高ニだもんね。でももっとゆっくり考えていいのよ、やりたいことがあればそっちを優先して」
「今はそんなの無ぇ。一応伝えといたからな」

 伝えることだけ伝えてリビングを出た。今はまだ自分に何が出来るのか分からない。けれど働く意思はある。それしか言えないけれど、今の段階ではそれだけで十分だろう。
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