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二章〈witnesssee〉~初めての嫉妬~
六
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「はぁ……はぁ……はぁ……」
久々に全力で走った。もう、疲れた。
「わけわかんねぇよ……」
堂々と俺の前で家に誘うってどうかしてんだろアイツ。向こうから言ってきてたけど、それでも意味は同じだ。家に行くことに変わりはない。
「……あの女も特別ってことなのかよ」
あんな風に見せつけなくてもいいのに仲良さそうなアピールしやがって。
有馬の中じゃ恋人は何人いてもいいとかそういう考えなのか? それとも男女で一人ずつとか? バイってそういうのアリなのか? もしくは俺はただの……いわゆるセフレ……? 一度ヤッたからもう満足したとか……?
「……好きなんじゃねぇかよ……っ」
大事な人ってなんだよ……有馬は俺とブロンド女が会ったの見たことねぇし、あんな初めて会うヤツにいきなし大事な人だって紹介すんのおかしいだろ。男同士だし。有馬がバイだって知ってるならそれもわかるが……でも
有馬のああいう非常識なところは本当に理解し難い。二股をかけている。その相手に大事な人だと紹介する。意味が分からない。
「そういやどこだ」
デパートから出てひたすら走っていたから町中ではある。この辺りは初めて来た場所で全然知らない。
「あーーーー……クソッ」
自己嫌悪しながら歩いていたら公園を見つけた。入ってベンチに座る。項垂れて、大きく溜め息を吐いた。
「はぁ……どうすんだよ」
せっかく有馬が買い物に誘ってくれたのに。家にも行くって言ったのに。
人に道でも聞けばすぐに帰れるだろう。しかしこのまま帰ってしまうのは勿体無い気もする。
「見つけたっ……迷える仔羊ちゃん……!」
「……早ぇよ、見つけるの」
がむしゃらになって走っていたが、きっと実はそんなに走っていない。
有馬は俺の前で跪く。
「……ごめん、チョコ」
「何に謝ってんだよ」
「わからない。でも俺が何かしてしまったんだろ? チョコが何に怒ってるのか知りたいから教えてほしい」
座ってる前に有馬がいるから立ち上がれず逃げられない。
真剣な顔をしている。きっと怒ってる。
でもそれはこっちも同じだ。
「……女」
「アーシャのこと?」
「お前の……彼女かよ」
「そんなわけないじゃないか! 俺にはチョコがいるだろ!?」
「女を普通家には呼ばねぇよ。彼女以外は」
「…………」
黙るなよ。やっぱりそうなのかよ……
「チョコ、先に謝っとくよ。ごめん」
な、なんだ? 殴るのか?
「ッ!!」
抱きしめられる。前から力強く。
急な温もりに体が過剰に反応する。抵抗しても全然力は緩まない。
「っんあ……やめっろ! 離せ!!」
「離さない!!」
そう強く言って、更に有馬の腕に力が込められる。
「俺の恋人は拓だけだよ!」
「……ッ……」
「こうやって抱き締めるのも、一緒に出掛けるのも、キスしたいと思うのも拓だけだ」
ああ……ホント、この天然は……
「こんな所で言うことじゃないだろ」
「今言わないと、またどこかに行っちゃいそうだから」
そう言って有馬が唇を重ねてきた。ほんの一瞬だけ。
「ね、俺の家に行こう」
「……」
俺は黙り有馬の服の裾をそっと掴んだ。
キスで丸め込まれたとかそんなんじゃない。有馬の真剣な顔と言葉を信じてみようと思った。だから家についていくことを決めた。
久々に全力で走った。もう、疲れた。
「わけわかんねぇよ……」
堂々と俺の前で家に誘うってどうかしてんだろアイツ。向こうから言ってきてたけど、それでも意味は同じだ。家に行くことに変わりはない。
「……あの女も特別ってことなのかよ」
あんな風に見せつけなくてもいいのに仲良さそうなアピールしやがって。
有馬の中じゃ恋人は何人いてもいいとかそういう考えなのか? それとも男女で一人ずつとか? バイってそういうのアリなのか? もしくは俺はただの……いわゆるセフレ……? 一度ヤッたからもう満足したとか……?
「……好きなんじゃねぇかよ……っ」
大事な人ってなんだよ……有馬は俺とブロンド女が会ったの見たことねぇし、あんな初めて会うヤツにいきなし大事な人だって紹介すんのおかしいだろ。男同士だし。有馬がバイだって知ってるならそれもわかるが……でも
有馬のああいう非常識なところは本当に理解し難い。二股をかけている。その相手に大事な人だと紹介する。意味が分からない。
「そういやどこだ」
デパートから出てひたすら走っていたから町中ではある。この辺りは初めて来た場所で全然知らない。
「あーーーー……クソッ」
自己嫌悪しながら歩いていたら公園を見つけた。入ってベンチに座る。項垂れて、大きく溜め息を吐いた。
「はぁ……どうすんだよ」
せっかく有馬が買い物に誘ってくれたのに。家にも行くって言ったのに。
人に道でも聞けばすぐに帰れるだろう。しかしこのまま帰ってしまうのは勿体無い気もする。
「見つけたっ……迷える仔羊ちゃん……!」
「……早ぇよ、見つけるの」
がむしゃらになって走っていたが、きっと実はそんなに走っていない。
有馬は俺の前で跪く。
「……ごめん、チョコ」
「何に謝ってんだよ」
「わからない。でも俺が何かしてしまったんだろ? チョコが何に怒ってるのか知りたいから教えてほしい」
座ってる前に有馬がいるから立ち上がれず逃げられない。
真剣な顔をしている。きっと怒ってる。
でもそれはこっちも同じだ。
「……女」
「アーシャのこと?」
「お前の……彼女かよ」
「そんなわけないじゃないか! 俺にはチョコがいるだろ!?」
「女を普通家には呼ばねぇよ。彼女以外は」
「…………」
黙るなよ。やっぱりそうなのかよ……
「チョコ、先に謝っとくよ。ごめん」
な、なんだ? 殴るのか?
「ッ!!」
抱きしめられる。前から力強く。
急な温もりに体が過剰に反応する。抵抗しても全然力は緩まない。
「っんあ……やめっろ! 離せ!!」
「離さない!!」
そう強く言って、更に有馬の腕に力が込められる。
「俺の恋人は拓だけだよ!」
「……ッ……」
「こうやって抱き締めるのも、一緒に出掛けるのも、キスしたいと思うのも拓だけだ」
ああ……ホント、この天然は……
「こんな所で言うことじゃないだろ」
「今言わないと、またどこかに行っちゃいそうだから」
そう言って有馬が唇を重ねてきた。ほんの一瞬だけ。
「ね、俺の家に行こう」
「……」
俺は黙り有馬の服の裾をそっと掴んだ。
キスで丸め込まれたとかそんなんじゃない。有馬の真剣な顔と言葉を信じてみようと思った。だから家についていくことを決めた。
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