7 / 7
繋がり
しおりを挟む
ああ……私はこんな幸せでいいのか、なんて心の中で呟いてみる。
気まぐれに参加したイベントでたまたま優勝して、欲しかったモノなのかも判らない可笑しな子供を手に入れて、羅蔵が《出来て》。
それでも迷って、またあの闇市に行って。救いを求めて。いるかも分からない人に会いに行って、会ったら会ったで逃げ出した。
あたしは……臆病だ。好意を、愛情を向けられると逃げたくなる。
……あ、れ……? そういやあいつ、なんでいたんだ……?
あの日、何も無い日だった。闇市は何も無い日はただの物置場みたいな、廃棄場みたいな、そんな所よりも何も無い場所。人も寄り付かない。そんな所にアイツは一人で何をしていたんだ?
まるで……あたしが来ることを知っていたみたいな。
ゾワッと背筋に悪寒が走る。でも何故か安心感みたいなモノもある。どんだけおめでたい頭なんだ。
ゴン、お前って何?
次に会ったらそう言って問いただしたい。知りたい。答えを知りたい。
『麻弥……俺とここにいればいい、ずっと。そしたら……』
『次は……………分かってるだろ?』
分かんねぇよ……! 次会ったら分かるのか……? だったら会ってやるよ。
そう思ってやたら長く感じる夜。羅蔵と繋がっている夜。あたし達は今、満たされている。普段は服で隠れた綺麗な漆黒の翼。今日は月明かりに照らされて、より一層綺麗に見える。
「ねぇ、麻弥。……ずるいよ」
「は?」
何か様子がおかしい。いつもはもっと、うるさい位喋ってるのに今日は静かだ。というより、ついさっきまではうるさかった。今、急に静かになった。
「俺といるのに、他の男のこと考えてるでしょ」
「!!」
確かにゴンのことは考えた。むしろ、なんで今、最中にあいつのことを考えたのか自分でも分からない。
羅蔵は知った風に言って、大人びた顔であたしを見てくる。その表情は月の光が逆光でよく見えないけど、声色で分かる。冷たい顔をしている。
「羅蔵、わ、悪い……」
羅蔵といてあたしは変わった。心配したり、怒ったり、一緒に笑ったり、悲しんだり、相手を気にかけるようになった。それは、羅蔵に対してだけだけど。それでもあたしは変わったんだ。だからあたしは、羅蔵に何かしてやりたい。
「謝らないで。麻弥は素敵だから目移りしちゃうのは当然だよ」
違う。あたしはそんな大した人間じゃない。
「そうですよね~?」
「!?」
羅蔵から羅蔵じゃない声が聞こえる。この声は、あの司会者のような気がする。
「貴女はそんな出来た人間じゃない。むしろ底辺にいるようなクズだ」
「あ!?」
「けれど美しい」
「……意味が分からねぇよ」
「俺にも分からないなー」
「ゴン!?」
今度はゴンの声に変わった。なんだ、何が起きているのか分からない。
「せっかく俺がお嬢ちゃんの時から目ぇ掛けてやったのにな~」
「し、知らねぇよ!頼んでねぇだろが!」
「ツンデレもかわいいが、大概にしねぇと……相手、いなくなっちまうぜ?」
「ハッ。あたしには最初から誰もいねぇよ」
「俺も?」
羅蔵の声に戻る。寂しそうな、傷ついたみたいな、そんな声で。
「俺もいらない?」
「違うっ!」
「----」
「え?」
ぶつぶつと呟く。
今、何て言ったんだ?
「麻弥……俺……」
そう言って羅蔵は、あたしをベッドの上で押さえた。表情は逆光で分からない。
「俺……、おかしくなりそう……おかしくなる……!麻弥……!」
〈……ニ……ゲ、テッ……!〉
その声はとても人間とは思えなかった。逃げて、そう聞こえた。あたしは言葉を返そうとしたが、返せなかった。首を締められていたから。
「ッ……、ぁ……ぞ……ッ」
苦しくても、辛くても名前を呼んだ。だが段々それが出来なくなる。締めつけられる力は強まるばかり。
「……っ……」
これはあたしの執念だ。たとえその姿が、もうあの羅蔵とは違っても。あたしは羅蔵の腕を掴んだ。微かに力が緩んだ気がする。だから話しやすくなった。
「……羅蔵っ!……あたしは……、あんたを……」
【愛してる】
その言葉を羅蔵が聞くことはなかった。
目の前には、穏やかに笑った麻弥の首が転がっていた……。
結局、あたしの【欲しいモノ】って何だったんだ?
『貴女は自分の欲を知りたいと思いませんか?』
分からないじゃねぇか。バカヤロー……。でも、まあ……いいか。あたしは死んだ。羅蔵の手で。あたしの息子、あたしが唯一愛した人、それに殺されるなら本望だ……。
END
気まぐれに参加したイベントでたまたま優勝して、欲しかったモノなのかも判らない可笑しな子供を手に入れて、羅蔵が《出来て》。
それでも迷って、またあの闇市に行って。救いを求めて。いるかも分からない人に会いに行って、会ったら会ったで逃げ出した。
あたしは……臆病だ。好意を、愛情を向けられると逃げたくなる。
……あ、れ……? そういやあいつ、なんでいたんだ……?
あの日、何も無い日だった。闇市は何も無い日はただの物置場みたいな、廃棄場みたいな、そんな所よりも何も無い場所。人も寄り付かない。そんな所にアイツは一人で何をしていたんだ?
まるで……あたしが来ることを知っていたみたいな。
ゾワッと背筋に悪寒が走る。でも何故か安心感みたいなモノもある。どんだけおめでたい頭なんだ。
ゴン、お前って何?
次に会ったらそう言って問いただしたい。知りたい。答えを知りたい。
『麻弥……俺とここにいればいい、ずっと。そしたら……』
『次は……………分かってるだろ?』
分かんねぇよ……! 次会ったら分かるのか……? だったら会ってやるよ。
そう思ってやたら長く感じる夜。羅蔵と繋がっている夜。あたし達は今、満たされている。普段は服で隠れた綺麗な漆黒の翼。今日は月明かりに照らされて、より一層綺麗に見える。
「ねぇ、麻弥。……ずるいよ」
「は?」
何か様子がおかしい。いつもはもっと、うるさい位喋ってるのに今日は静かだ。というより、ついさっきまではうるさかった。今、急に静かになった。
「俺といるのに、他の男のこと考えてるでしょ」
「!!」
確かにゴンのことは考えた。むしろ、なんで今、最中にあいつのことを考えたのか自分でも分からない。
羅蔵は知った風に言って、大人びた顔であたしを見てくる。その表情は月の光が逆光でよく見えないけど、声色で分かる。冷たい顔をしている。
「羅蔵、わ、悪い……」
羅蔵といてあたしは変わった。心配したり、怒ったり、一緒に笑ったり、悲しんだり、相手を気にかけるようになった。それは、羅蔵に対してだけだけど。それでもあたしは変わったんだ。だからあたしは、羅蔵に何かしてやりたい。
「謝らないで。麻弥は素敵だから目移りしちゃうのは当然だよ」
違う。あたしはそんな大した人間じゃない。
「そうですよね~?」
「!?」
羅蔵から羅蔵じゃない声が聞こえる。この声は、あの司会者のような気がする。
「貴女はそんな出来た人間じゃない。むしろ底辺にいるようなクズだ」
「あ!?」
「けれど美しい」
「……意味が分からねぇよ」
「俺にも分からないなー」
「ゴン!?」
今度はゴンの声に変わった。なんだ、何が起きているのか分からない。
「せっかく俺がお嬢ちゃんの時から目ぇ掛けてやったのにな~」
「し、知らねぇよ!頼んでねぇだろが!」
「ツンデレもかわいいが、大概にしねぇと……相手、いなくなっちまうぜ?」
「ハッ。あたしには最初から誰もいねぇよ」
「俺も?」
羅蔵の声に戻る。寂しそうな、傷ついたみたいな、そんな声で。
「俺もいらない?」
「違うっ!」
「----」
「え?」
ぶつぶつと呟く。
今、何て言ったんだ?
「麻弥……俺……」
そう言って羅蔵は、あたしをベッドの上で押さえた。表情は逆光で分からない。
「俺……、おかしくなりそう……おかしくなる……!麻弥……!」
〈……ニ……ゲ、テッ……!〉
その声はとても人間とは思えなかった。逃げて、そう聞こえた。あたしは言葉を返そうとしたが、返せなかった。首を締められていたから。
「ッ……、ぁ……ぞ……ッ」
苦しくても、辛くても名前を呼んだ。だが段々それが出来なくなる。締めつけられる力は強まるばかり。
「……っ……」
これはあたしの執念だ。たとえその姿が、もうあの羅蔵とは違っても。あたしは羅蔵の腕を掴んだ。微かに力が緩んだ気がする。だから話しやすくなった。
「……羅蔵っ!……あたしは……、あんたを……」
【愛してる】
その言葉を羅蔵が聞くことはなかった。
目の前には、穏やかに笑った麻弥の首が転がっていた……。
結局、あたしの【欲しいモノ】って何だったんだ?
『貴女は自分の欲を知りたいと思いませんか?』
分からないじゃねぇか。バカヤロー……。でも、まあ……いいか。あたしは死んだ。羅蔵の手で。あたしの息子、あたしが唯一愛した人、それに殺されるなら本望だ……。
END
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる