天国での1日(短編集)

遊び人

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天国での1日

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 お盆はもう過ぎたと言うのに今日も
この天国鉄道の駅は騒がしさを
どうも隠してくれないようだ

大勢の人々が肩を寄せ合い
階段を降りる

毎度駅員さんは大変だ

天国にロボットはいない
居たら皆の仕事を奪ってしまう
地球のような文明がこの天国にある
そこで皆は働く
働く事で徳を稼ぐことにより
来世に影響するそうだ

駅員の仕事は
亡くなってしまった方を駅で迎え入れ
来世へと旅立つ者を電車で送り入れるものであり
要するに天国の玄関口となってるわけだ





「僕はね昔働いてんだんだよここで」

駅の前を友人と共に歩いたところで
言った

「え、ロトって駅員なの?
それって話していいの?」

僕は神崎に対して
首を振り
静かにしてと口パクを放った

「僕は神崎さんを信用してるから言ってるの」

神崎はすまないと申し訳なさそうな顔で僕を見つめる

歩いた先に写る
街の景色とは異様な近代的な店
店名的には焼肉屋だ

個室分けされた部屋に入る

僕は席に移るなり
真っ先にメニュー表を開くと

脳内に各メニューの3大栄養素やその他の栄養素が次々と出ていく

神崎はメニュー表を真剣に見る僕に

「おい!ロト今日も栄養確認か?
外食なんだからさ好きに食べようよ
奢るからよ」

神崎は最近いいことがあったのか
それともさっきの行為のお詫びか?

「まぁそうだね、ありがとう」

僕は目に入るメニューを押す神
崎もそれに続く押し終え

少し雑談をすると

30cm 分の正方形の壁がくり抜かれ
皿が出てくる

僕達は導かれるように焼肉網で焼く
どれだけ時代が進んでも網で焼く肉が
一番美味いと神崎は言った

食べ物に夢中な
神崎をまじまじと見ていると
ふいに箸を落としてしまった

僕は机の下に潜ると
神崎も箸を拾おうとしてくれる
タイミングが重なり
僕達はお互い体をぶつけてしまった




「それで、奢るからさ
あの駅員だった頃の話してくれる?
駅員って徳ポイント判定どうなんだ?」

「どうしょうかな」

僕は悩んだ

駅員は存在自体は知られているが
仕事の詳細は話してはいけないのだ

目を下にし黙っていると

目の前にある肉の魅力にどうも勝てず
お互い箸を進め飯を食べる

「神崎さんは何に働いているの?」

「え、俺か?今はなスーパーの接客をしているよロトは?」


「僕は言えるような仕事じゃないよ
スーパーか、最近忙しくて行けてないな通販の定期便で来るお弁当ばかりだよ」

「そうなんだスーパーに来れないほど忙しいのに今日は来てくれたんだな」

「久しぶりに神崎さんに会えるなら
今日の予定くらい潰せるよ」

「うれしいこと言うなロト」


すると突然

「ロト話聞いたか
最近上の人がロボットを導入しょうって話
スーパーの仕事が奪われるかもしれないんだよ
ありえねぇよどういうことなんだよ」

僕は話にうなずく

神崎はどこでそんな事を知ったのか

「神崎さん?どこからそんな話聞いたんですか?最近デマが多いもので」

そう聞くと神崎は慌てた顔になり

「いや気にしないでくれ…」

目が泳ぎ動転している何か隠している

問いただそうとしたが
久しぶりの出会いだし
次にいつ会えるタイミングは無いだろうし空気を悪くしたくないため

軽めの雑談を済ませ
僕達は別れることにした


会計を終え、店を出る

神崎は僕に笑顔で

「ロトまたな、また会おう」

僕はそっと笑顔を見せ
手を振り
神埼を見送った


僕はタクシーで家に帰り

窓からは天国鉄道駅が見える
あの時の純粋な自分はもういない
目を瞑り神崎との出会いを追憶する





家に帰り
今日の予定分の仕事をする

目の前の資料をパソコンと照らし合わす

資料には

スーパーや接客業のロボット導入計画案の是非について

を打ち込む

大半は賛成らしい

まぁ僕もだけどね

この接客ロボット導入計画は国家プロジェクトのようなもので反対すると
国家反逆罪になるようだ

ここで僕は焼肉屋で箸を落とした時
神崎とぶつかった瞬間に
彼の袖の内側に引っ付けた
盗聴器の音声をパソコンに移し
音声を流した


「最近上の人がロボットを導入しょうってなってるんだよ
それでスーパーの仕事が奪われるかもしれないんだよ
ありえねぇよどういうことなんだよ」

聴き終えるとそのデータを上司に送った

上司からの返信は

「神崎、スーパーの店員
住所〇〇〇〇
特定完了 報告ありがとう」

国家のために反対するものには罰を
それを小さな声で唱えた






「ブーーン」
右手に警告音がなった
袖をまくると
バッテリー残量僅かという文面がでた

私はバッテリー取り替える


するとふいに
机の上にある神崎さんと僕の写真を見て
なぜだか少し悲しくなった










    
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