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虚像の都
しおりを挟む工業化が進み一家で一台の車が持てるようになったこの国の支配者は
まもなく75を過ぎる老いぼれた独裁者であった
10年前は
太鼓のような大きな腹を揺らし
自身が住み大臣や閣僚が連夜仕事をする
いかにも豪勢な官邸でタバコをふかし
スケジュールを伝える秘書に大声で怒鳴るのが日常茶飯事であったが
今は秘書の話に頷き
元気のない返事をするばかりである
ついには仕事場にも顔を出さなくなり
部屋の窓から
自分が独裁者になり
発展した街を遠く眺め続けるだけである
すると
財務大臣であり右腕のアリアッサーが入ったきた
「閣下、失礼します」
「アリアッサーではないか…
どうしたのじゃ」
「街が発展すると比例に人口も増えていっていますその過程で財政が追いつかなくなり、提案として車税を取るのはいかがでしょうか?」
「いや、それはいかん
そんなことをすれば国交大臣の
シュミラーが何をするか
彼は大手車のベルツ社の御曹司じゃぞ」
「閣下、シュミラー大臣はもう亡くなっています」
「そんなはずはない…
シュミラーはまだ若いのじゃ」
メガネを持つ手が小刻みに震える
疲れ切り憔悴した顔を見たアリアッサーは一礼をし部屋を出た
大きくため息をつき
独裁者は窓に写る街の景色を
パズルのように見る
車の色や建築現場
これからもどんどんと発展をしていくこの街を眺め
寿命が尽きる前に
どれだけ発展した街を見れるか考える
独裁者はつい公務中でもありながらふて寝をしてしまった
「ドンッ」
大きな音が聞こえ
銃を持った敵兵が
独裁者の部屋に入る
独裁者は慌てておき
「何者だ」
敵兵は笑った表情で
「お前がこの国の老いぼれ独裁者か
今日でこの戦争を終わらす
じゃあな」
敵兵が2、3発放った弾丸は
見事にも独裁者の胸に当たった
その時一瞬独裁者は見えたのだ
目の前の発展された街が
メッキを剥がすように
綺麗に消えていき
荒廃した町に変わっていく様を
この独裁者は
最後のその瞬間を
見てしまったのだ
最後に全てを思い出した
「俺の見ていたのって…」
70の誕生日で作られプレゼントされた
ホログラムはズタズタに崩れ落ち
ついには現実なのか
分からない世界で
独裁者はそっと目を閉じだ
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