天国での1日(短編集)

遊び人

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現実確認

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 朝の通勤ラッシュの中窮屈な思いで職場に向かう最中ほんの気がかりを思い出した
 
「あれ、家の冷房切ったけな?」

う~ん思い出せない
今日はなぜだか電車に乗った記憶しか残っていない

金銭に余裕が無いのに冷房を切り忘れる
何と節約心が無いのか…
ストレスが増えるばかりだ

いや、待てよ朝の記憶がなくて気付いたら電車にいるこの状況もしかして
明晰夢なのではないか

夢を我が自由に操れる明晰夢なのか?

シッシッシッ
このストレス社会の狭間に這いつくばる俺にとって夢を自由に操れる明晰夢は相性が抜群バッチリである

待て、まずはこれが夢であることを試さなければならない

それを立証するために
右頬を強く振りかぶりビンタした

大きく音は響き
周りの隙間もほとんど無い乗客たちは僅かの隙間から俺を一斉に眺めた

痛いぞ
ものすごく痛い

冷静に考えてみろこれは明晰夢なんだ
本来脳はビンタという行動を痛いと捉えるなので夢の中であるのに痛いと感じた
そうだ、そう結論付けよう

窓から反射する俺の顔は少し赤くなっておりもうこの時には周囲の目線はビンタをする前の状況に戻っていたが
すかさず
身を狭めていた体を今度は大きく胸を張りわざと両隣の人に当たるように肩をぶつけた
勢い余ってかぶっかった瞬間
両隣の人は体勢を崩し
それが周りにも伝わり
雪崩のように人々が姿勢を崩していく

その光景は気にしない
だって明晰夢なのだから

今度はドンドン
足音を鳴らし
大きな声で流行歌を歌った

なんて気持ちがいいのだ
現実でこんな事が出来ない
今日起きたこの明晰夢には感謝しなくてはならないな

その時アナウンスが最寄りの駅を伝え
俺は慌てて電車を降りた

夢であろうと職場の駅が伝えられると急いで降りてしまう慣れとは怖いものだ

会社に着いた頃
同僚やその他社員は懸命に納期に追われ
真剣な眼差しでパソコンに向き合う中

「みなさん、おはようございます!」

爽やかな新入社員のような活気のある声で手を振るアクションを付けると

冷徹な目で見つめられ
唯一の仲良しである同僚にも
睨まれてしまった

「◯◯君どうしたんだ、早く席に着きたまえ」

部長が名指しでそう伝えた

俺は了解の意味として
部長の頬に向けて
豪快にビンタをした

勢い良く体勢を崩し部長は地面に伏せた

部長すまないな
でもこれは夢なんだ俺だけの夢
分かるよな明晰夢なんだよ

この時にはもう周囲の目線は
疑問の目不審な目に変わっていた

明晰夢なのに
人の表情は操れないのか
自分だけなのは頂けないが
俺は明晰夢という状況を
とことん楽しむことにした

昼休みの時間
いつまだったら部下や同僚とランチをするのだが今日は誘われず
ランチのためにみなが離れたオフィス
よしっ、ここで暴れてやろう

まずテーブルに一列置いてある
ノートパソコンを全部
部長の机に置く
これで経理のやつさぞ困るだろう
いや待てよデジタル化の現代でも
紙は残っている
これは期待の新人◯◯君の席に
乱雑に置いてやろう

二人とも仕方ないが
ここは俺だけの世界なんだ

その後も大の字で寝そべったり
ホワイトボードに書き込まれた今後の計画などを消した

もうやる事もないと思った時時刻は昼休みが終わっており
社員全員が俺を睨んでいた

「◯◯君だね、君はどうしたんだ
今日は一度家に帰り頭を冷やしてきなさい」

社長が俺にそう言った
なぜか心に刺さった
冷静になれば恥ずかしい行為だが夢なんだ俺の夢なんだよ

だけど今は一旦従い家に帰ることにしょう

俺は社長や社員一同に礼をし
会社を出た

今はなんだか電車には乗れ気になれず
歩いて帰ることにした
長いけど足の疲れや体の怠さは感じない

家に着いた時
その時外は暗かった
もう何時間も歩きいたそして
夜になったのだ

俺は鍵を空け家に入ると

夏の日であるのに
妙に涼しかった
快適な涼しさだ

頬に冷たい風が当たる

エアコンだ

いや、待てよ
これは夢なんだ俺の明晰夢なんだ
これも俺が操り
冷房を付けたんだ
そうだ、そうだよな

不安に急いで結論づけようとすると
スマホの通知が来た
SNSのタイムラインで
そこに動画のタイトルが記されている


「電車で大暴れする男
こういう奴ホントに社会のお荷物だよね」




まさかと思うが俺じゃないよね
今の俺には動画を開く勇気もなく
急いでベッドに飛び込み
寝ることにした

明晰夢で寝るとどうなるのだろうか
ここで検証するのもいいだろう



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感想 1

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