お姉様に夢中なはずなのにその他の誘惑が多すぎます

那須野 紺

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拒絶(美咲SIDE)

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「だってそれぐらいしてもらわないと、私…負けちゃうから…」

おそらく「誘惑に」負ける、という事を言いたいのだろう。
本音では、負けても何も悪いわけじゃないと私は思っている。
けれども今は、冴子を追い詰め精神的に私だけのものだと印象づける方が、冴子の性感を高める事に繋がる気がする。
そう考えつつ、私は今度は冴子基準で言動を考えている自分に呆れた。

「ふふ」

私が小さく笑うと、冴子は不思議そうな気配を漂わせる。
振り返るのはどうやら我慢しているらしい。

「教えるわけないでしょ」

そう告げて冴子に一旦絶望感を味わわせてから、私は自分がつけた跡をなぞるように、同じ場所を何度も舌先で舐め回した。
冴子がくすぐったそうに悶えるので、頭を押さえていた手を身体に回してがっちりと動けなくしてから、舌による首筋への愛撫と、二本の指による秘部への愛撫を再開させる。

「あ…」

ほんの一瞬だけ静かになった刹那、ムービーの女の子は絶頂を迎えたようで、一度「きゃあ」という悲鳴のような声をあげた後、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返している。
うっすらと見えたスマホの画面内では、女の子が自分の秘部から抜いた指を、自分で舐めしゃぶっているのが見えた。
わずかに上気した顔から、赤い舌がちらりと覗いてそれが自身の細い指を舐め回す様子は、とても卑猥だった。

「…イっちゃったみたい」

冴子が恥ずかしがるのを承知の上で、わざと映像の内容を繰り返すように言葉で説明する。

「冴子も、イキたい?」
「……」

冴子の首が動いたが、頷いているのかいやだと言いたいのか判断のつかない動きだ。
何かを堪えているのは確かだけど。

冴子の身体に溜まった熱を発散させてやろうという親心のようなものが働き、私はいよいよ秘部に挿入する指の深度を最奥まで、それから少し引き戻して冴子の感じる場所をノックするように指の腹でつつく。

「はぁ…あ…もう……」

冴子を絶頂へ導く事、それ自体はもう何も難しい事ではない。
秘部に差し込んだ指の隙間から、信じられない量の蜜がどっと溢れだす。
細かい焦らしによってダムが決壊したように、それは止まらなかった。

ムービーには、自慰の余韻に浸る、満足げな表情を浮かべた女の子が写っている。
それが映し出されたスマホを、頑張って手に握ったまま堪えている冴子の姿はどこか健気に見えてしまう。
…自分はやはり、冴子に甘い。

「一回イかせてあげる、その子と同じようにね」

そう告げてから改めて冴子の身体をしっかりと抱いて、蜜の溢れ出る置場所の奥にある大事な所への愛撫と、もう一方の手では乳首と剥き出しになった萌芽への愛撫を交互に繰り返す。
時折秘部に挿入した指を大きく引き出してはずぶりと勢い良く押し込む動きを織り交ぜると、冴子の身体がそれに合わせて揺れて、支配欲を掻き立てられた。

「あ…いく……」

絶頂が近いにも関わらず、冴子の声はあまり大きくならない。
その申告も、ごく小さな呟きでしかなかった。
うるさくすると怒られるとでも思っているのだろうか。

私はもう一つ、今度は冴子の肩甲骨の間あたりの場所に自分の跡を残したくなり、その場所にチュウッと吸い付いた。
目の前には先ほど自分が残した赤い跡が2つ、斜めに並んでいるのが見えてこれもまた支配欲を掻き立てられる。

指では、どっぷりと溢れた蜜をたっぷりと萌芽に擦り付けて、くるくると回すような愛撫を施しながら執拗に内壁の一点を刺激し続けた。

一瞬にして冴子の身体が硬直したかと思うと、一気に脱力していく。
冴子の肌から唇を離そうと思った瞬間、冴子から雌の匂いが濃く漂っている気がした。
その空気に当てられるように、私の身体はどうしようもないくらい疼いてしまいそうだった。

冴子は、スマホをどうにか握ったまま、絶頂を迎えたようだった。
一つ大きく息を吸って、私の方に顔を向けながら言う。

「ごめんなさい、話を…」
「…シャワー浴びてきたら?」

本当は、私自身の昂ぶりを悟られたくなくて、ごまかすつもりでそう遮ったのだけれど、冴子には「話など聞きたくない」と拗ねているように見えたかもしれない。
冴子はそのまま黙り込み、ベッドから出て浴室へ向かったようだった。

ちっぽけな意地だと思われるかもしれないけど、たとえどれだけ私の身体が火照っていようとも、今日だけは冴子に身体を触る事は許さないつもりでいる。
当初の予定では、冴子を簡単に絶頂させるつもりもなかったが、それが崩れてしまった今となっては、せめてそれだけは死守しようと思っていた。
…簡単に、いつでも触れるものだなんて、冴子はそもそも思ってないかもしれないけれど。

今の年齢になってしまえば、自分の身体の価値なんて大したものではないし、ありがたがれと押しつけがましくもったいぶるのも、何だか間抜けな話だと個人的には思っている。
だから相手を問わず、意図的にもったいぶる事で自分との接触の価値を上げるような事は、妙齢の女性にとっては諸刃の剣でしかない。

自分の主義には反する行為だが、冴子には効果的な仕置きの一種であろうから、おこがましいが今夜だけはそうさせてもらう事にした。

シャワーから戻ってきた冴子が、おそるおそるベッドに入ってくる。
私は冴子に背中を向けて、シーツにくるまり身体をガードする。

「あの…お姉さまは…」
「私は、いいから」

極力無難な感じで言ったつもりだが、思いのほか拒絶の意志が大きく表現されてしまった気がする。
冴子はそれ以上は何も言わず、私の身体には触れないように隣で眠る事にしたようだった。

*-*-*-*-*-

翌朝は冴子が目覚める前に支度を済ませて朝食は摂らず部屋を出た。
食事は外でいくらでも済ませられる。
それ以上に、冴子の隣では大きく溜め息をこぼす事も、ままならない気がして気が張り疲れた。

…まだ、大人としての振る舞いに意識を取られているが、仕方ない。
ほんの少しでも「近寄るな」という空気を出せば、年齢差から冴子にとってはかなりの威圧感を覚えるだろう。
…実際はそうならないだろうが、今日のうちに冴子があの部屋から居なくなるかもしれない、とほんの少し考えてしまう。

ともすると冴子は、自分がただの遊び相手として扱われていると勘違いしやすい状況にあるし、気楽に付き合えて身体の相性も良い相手ができれば、冴子は自然と私の傍を離れるだろう。
それとは逆に、私が嫉妬やストレスで冴子との接触を拒んだ場合、それは冴子を過剰に萎縮させ、遠ざかるきっかけとなる。

どうあっても離れる未来しか待っていないのではないか、その考えは最初からずっと、私の中にくすぶっている感情だ。

…だからまあ、仮に冴子が消えたとしても、それは当然あってしかるべき展開とも言えるのだ、と解釈して気持ちを切り替える事にした。

駅までの道を歩いているだけで、なんとなく気持ちが紛れてすっきりとしていく。
街並みを眺め、喧噪の中に身を置くと、徐々に頭の中は仕事の事でいっぱいになっていった。
進行中のプロジェクトの事、取引先との金額交渉の事、仕事に行き詰って悩んでいるらしい部下の事、役員から聞かされている中長期計画の事、その他考え始めればきりがない。
冴子の事を考えるなと言われれば、実に簡単にできてしまう。
多忙であるからこそ、そういうメリットを享受できるのだ。

そんな余裕があるからか、つい不用意に考えてしまう。
冴子を自宅にまで招き住まわせた事は間違いだったろうか、と。

私は大人ぶって振舞っているが、実際は全然違う。
冴子の話を聞こうともせず拒絶してしまった。
勝手にスマホを覗き見しておきながら、話をしようとする冴子の言葉を聞こうともせず逃げ出しているのだからたちが悪い。
…でもその時の私は、冴子の身に起きているありのままの事実を、フラットに受け止められる自信はなかったし、それ故に正しいリアクションが取れず失敗してしまいそうで怖かった。
…だから、逃げたのだ。
冴子にその心意が伝わらなかったとしても、逃げるしかなかった。
そして同時に、こんな感覚になるのは久しぶりだなあ、などとも思う。
さすがにこれが何なのかわからないほど幼いわけではない。

冴子のスマホに届いていたあの動画と、腕の中で悶える冴子の姿と、それらによって身体の内側に溜まった熱も、時間が経てば薄れていく事はわかっている。

ネガティブな感情の逃がし方に長けていく事、それこそが大人になるという事なのかもしれない。

*-*-*-*-*-

いつもよりだいぶ早めに社に到着すると、既に袴田の姿がデスクにあった。
プライベートでは面倒な奴だけど、物事に対する熱心さは彼の特筆すべき能力と言えるだろう。

「おはようございます」
「おはようございます、早いですね」

私より早く来ておいて何を言うのかと思いつつ、それは言葉にせず席に着く。
座った瞬間に袴田の視線を感じて、どうも気まずい。

冴子との事で、どろついた感情は通勤途中で全てリセットしたつもりだったが、観察力の鋭い袴田の目はごまかせないかもしれない。

「…あの」

席に座ったままで、袴田が声をかけてくる。
フロアには他に誰もいない。

「何ですか?」
「元気ないですね、いつもより」
「……」

だから何だ、と思いつつやはり言葉にせず我慢する。

「そう見えるだけじゃない?普通だけど」
「……」

そこでは黙るのか、と突っ込みたくなるがやはり我慢する。
本当に面倒だ。

「ちょっと今晩、食事でもどうですか?」
「……」

最近の袴田は、私に対してへりくだる程度をだいぶ減少させている。
部長人事の件を知ったからというわけではないだろう。
個人的な感情と、仕事上での態度をミックスさせずにきっちり区別できるような精神力が身に就いたという事だと私は感じていた。

それに比べれば、私の方はイマイチという事なのかもしれない。
「これだから女は」と言われるのだけは御免被るという気持ちだけで、そこは努力してきたつもりだが、完璧でない事は自分が一番よくわかっている。

「あ、即答NGじゃないんですね」

そんな袴田の言葉が、昨日冴子に浴びせた自分の言葉と被っていて、ますます気持ちが乱れそうだった。
いちいち言うのが面倒で私が黙っていると、袴田はにやりとした笑みを浮かべて「じゃ、そういう事で」とだけ言い残しパソコンに視線を移動させた。
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