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万華鏡(美咲SIDE)
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なぜ自分なのか?
冴子にとっては今もなお、それは疑問なのだろう。
今20代を生きている冴子と、それを10年以上前に通過した私とでは、その時過ごした時代は異なっているし、自分の経験が全てであるかのようにわかった風な態度を取るのは、相手に対して失礼だと思っている。
それでも、極力表面に出さないように注意してはいるけれども、冴子を見ていると、その心の中のゆらぎというものが、かつての自分にも覚えがあるように思えてくるのは確かだ。
出会って以降、はじめのうちは冴子に対して嫉妬心を表す事はしないようにしていた。
かなり年上の私がそんな事をするのはみっともないと思えたし、それが本来あるべき姿ではないような気がしていたから。
でも、最近はそれを隠さないようにしている。
冴子が男女問わず様々な人から狙われる要素については、私も相当理解できているはずだし、だからこそそれは致し方ない事だとも思っている。
まあ単純に言えば、年上の私が嫉妬心剥き出しの態度では、冴子が引くかもしれない、という恥ずかしさがあった。
けれども実際それを態度で見せても、冴子は何も言わないし、特別冷めたような様子もない。
少し困っているような、同時に嬉しそうな、そんな苦笑を浮かべるだけで、それ以外の心持は変化していないように思われた。
…けど。
それによって冴子の中に余裕が生まれたのかもしれない。
冴子の異動先が「秘書課」だと聞いて、私の中には真っ先に嫌な予感が芽生えた。
冴子が行きたがっている部署だから、悦ぶべきなのだけれど、正直不安が先に立った。
次に、指導役が夏川さんだと知って、まだ良かったと安堵した。
けれど、それだけでは完全な安心と言える状態ではなかった事を知り、やっぱりか、という思いに至る。
冴子は、私が何者なのかわからずあの日会いに来て、そして何者か知った後も躊躇する事なく私に身体を差し出した。
それは、冴子にとって相手が私だから、という理由での事ではないだろう。
相手が誰であれ、アリだと思えば素直に欲望に従う、冴子はそういう娘なのだと私は理解した。
だから仕方ない。
そういう娘でなければ私とは始まっていなかったのだから。
冴子は私との関係を、極力他言しないように努力している。
言葉にすれば「口が堅い」わけで、つまり裏を返せば冴子が他の誰かと何事かあった場合でも、それを他言しないタイプとも言える。
彼女にそういう誘いが多くなるのは、そんな、秘密厳守の部分における冴子の性格が、透けて見えるからだろう。
そこも、現に私はそう仮定して冴子に手を出した。
*-*-*-*-*-
珍しく定時を大幅に過ぎて、23時を回ろうかという頃にようやく帰宅すると、既に冴子はベッドに寝そべってうとうとしていた。
眠ってしまわないよう手元のスマホで何か見ていたようだが、それも手からこぼれ落ちている。
「ただいま…冴子?」
一応呼びかけてみるが返答がない。
これは起こさないようにしておこうと思い、私は先に部屋のシーリングライトを消した。
それとほぼ同時にキッチンと脱衣所の明かりだけをつけて、間接照明替わりにして視界を確保する。
「…」
ここで冴子を起こしてしまうと、変に色々と気を使われそうで、それは申し訳ない。
正直、今日は私もかなり疲れているし、このままそっとシャワーだけ浴びて冴子の隣で眠ろうと思った。
その時、本当に偶然の事なのだけど、手からこぼれた冴子のスマホに通知が表示される。
ロックがかかっていないその画面に、思わず視線を合わせてしまった。
さすがに文字は読めないが、添付されている画像はしっかり見て取る事ができた。
加工のされていない、ほぼ全裸の女の子の写真だった。
もろにではないけれど、商業的な画像ならぼかされているであろう場所がそのまま写っているとなると、この写真は拾い物というよりも自撮りの可能性が高いと感じた。
…写っているのは、明らかに冴子より若い、成人したかどうかぐらいの年頃の女の子で、どこかで見覚えがあるような気がする。
けれどもそれが誰なのか、すぐには思い出せなかった。
心の中で「やっぱりね」と呟き、私は静かにスーツを脱いでハンガーにかける。
そのまま音を立てないようにして浴室へ向かった。
*-*-*-*-*-
今、役職にあっても残業を極力しないように心がけているのは、年齢と共に自身の回復力に不安を覚えているからだ。
体力を使い果たしてしまうと、そこから調子を戻すのに一晩では到底持ち直せない。
昔はそうじゃなかったけど、だんだんとそうなってきているのを実感せざるを得なかった。
自分の身体は何よりも雄弁だと思う。
本当は湯船を張ってしっかり入浴する方が、回復は早まるけれど、それよりも先に眠りたい気持ちが強く、それは諦めた。
頭からシャワーをかぶり、今日一日の出来事やストレスと共に全身を洗い流す。
そうしていると、ふいにいつだったか冴子と一緒にシャワーを浴びた時に、悪戯でいきなり冴子の顔にシャワーのお湯を浴びせたり、逆にそれをやり返されたりして遊んだ事を思い出した。
細い身体には不釣り合いなぐらいに大きく発達した冴子の胸にシャワーの飛沫がかかると、肌がそれを弾いていくつもの小さな水玉になり、それがきらきらと輝いて冴子の身体を飾った。
それがすごく妖艶でもあり、綺麗だとも思ったから、私は冴子が嫌がるのにそれを無視して冴子の身体に何度もシャワーを浴びせた。
「うわっ」
何度もされているのに冴子はいちいち驚くから、そのリアクションも面白い。
顔にかかった飛沫が顎をつたい大きな胸の斜面に堕ちていく様は、これまた堪らないものがあった。
冴子は顔にかかった飛沫を手で払う事もせずに、私の、悪ふざけでしかないその行為を受け止めてくれていた。
ひょっとすると、冴子は私なんかよりもはるかに許容範囲が広いのかもしれない。
苦しい事でも、理不尽な事でも、その先に何かがあると感じ取れれば冴子は躊躇なくそこに身を投じる事ができるのだ。
…私にはとても、そんな事はできないけれど。
「……はー」
大量のお湯を浴びた自分の身体を見下ろすと、やはりたくさんの飛沫が私の肌を覆っているけれど、冴子の纏うそれとはやはりだいぶ違う気がする。
今日は疲れているから、小さな事でもネガティブに解釈してしまうのかもしれない。
冴子にはまだ知らされていないだろうが、この秋には部長の大幅な異動があると今日知らされた。
袴田がスライドして私が押し出されるのかと思いきや、彼は開発部部長の席に座る事になると言う。
あろう事か、スライドで押し出されるのが進藤さんだと知り、そうなるぐらいならよほど、私が押し出される方がましだと思った。
そして当の進藤さんは、なんと人事部長に就任するのだと言う。
袴田が開発部長で、進藤さんが人事部長って。
そんなのナシでしょ?と思うがどうしようもない。
それこそ、進藤さんは人事部の思惑により引っ張られたのだろう。
でも、これで少しは透明性の高い人事を目指して進藤さんが動いてくれるかもしれない、そんな淡い期待だけが、心の拠り所となった。
考えるのを止めて私は浴室を出る。
やっぱり疲れているのだろう、冴子と何気なくじゃれ合った記憶を呼び起こしただけなのに、なんとなく股間がぬるつくような感じがした。
もう一度洗い流すのは面倒で、私はタオルで身体を拭いて最低限の保湿ケアだけ済ませて脱衣所を出る。
暑いので何も着る気がせず、裸のままベッドに入る事にした。
「……」
冴子はさきほどと変わらず、同じ姿勢で眠っている。
ただ、手からこぼれたスマホは、時間の経過のためか画面が黒く消灯していた。
…もう一度、あの画像を確認できないだろうかと考えてから、そんな事を思考している自分に驚愕する。
やっぱり、私の中には間違いなく独占欲や嫉妬心というものが、はっきりと育っているとわかったからだ。
…そんなものは、ものすごく不毛なのに。
「ん…」
匂いにでも反応したのか、冴子が眠ったまま私の方に身体を向けてくる。
寝言なのかわからないが「お姉さまぁ」と呼んできたりして、無意識だとしてもずるいやり口だと思わずにはいられない。
しかし私の視線は枕元に転がった冴子のスマホに固定されたまま、動かす事ができずにいた。
…もう一度、同じ相手から通知が来れば。
そうすればスマホに手を伸ばさなくても、偶然と言い張りその事を確信できるのに。
「…んん」
冴子が私にしがみつくために身体をよじると、その腕がベッドに投げ出されたスマホに接触し、センサーで画面が再び明るくなる。
さっきの通知はもう表示されていなかったが、一瞬見えた『WS』アプリの背景と思われる画面を見た瞬間、先ほどの画像の女の子が誰なのか気が付いた。
…あの子は、このアプリの広告モデルの娘だ。
多分、いや、間違いなくそうだ。
細身の身体に、特徴的な長い銀髪と青みがかった瞳。
あんな珍しい特徴のある子はそうそういないだろう。
冴子はあんなモデルの女の子と、日ごろからああいう類の自撮り画像を交換しているのだろうか。
あるいは向こうが一方的に画像を送っている?…そんな事、あるのだろうか。
「冴子」
普段の私ならそれは絶対しないはずなのに、私は冴子を起こそうとする。
自分の行動は間違っていると頭でわかっているのに、自分の中に芽生えた嫉妬心が、その正しい判断をねじ曲げていった。
こんな事にいちいち言及したり、追及したって、いい事なんてないとわかっているのに。
知って嫌な思いをするだけなのだから、こんな事は知らない方がいいに決まっているのにだ。
冴子の身体をゆすり、その顔の前にスマホの画面を向ける。
冴子がまぶしさに細く目を開いて、眠そうな声を出す。
「あっ、おかえりなさい…すみません」
冴子の言葉を意に介さず、私は冴子の顔の前に構えたスマホをそのまま手に握らせた。
それから冴子の身体を裏返して、背中から抱きすくめながら冴子の肩越しにスマホの画面を見る。
「…何か…」
冴子が困惑した様子で呟いたが、寝ぼけているらしいのをいいことに、私はただ命じる。
「新しいメッセージが来てたわよ、開けてみて」
冴子は「はい」と素直に応じて、なんのためらいもなくアプリの新着メッセージを開いてしまった。
自分で命じておいて何だが、それは無防備過ぎるだろう、と呆れる。
しかし直後に、今度は二人で衝撃を受けた。
メッセージに添付されていたのは、静止画ではなく動画だとわかったからだ。
画面の中の、モデルの女の子が熱い吐息を漏らしながら自分を慰めている。
その映像だけでも十分ショッキングだったけど、問題はその続きである。
「はぁ…っ、冴子…さん」
これにはさすがに冴子も目が覚めたのか、スマホを構えたまま固まってしまっている。
…そうだ。
思った以上にきつい状況だが、大なり小なりこういう感じの展開になるのは予想できたのだから、藪に押し入るべきではないのに。
私だって、これによって少なからずショックを受けるとわかっているのに、ある程度予想通りの展開にまた「やっぱりね」と落ち着いている自分もいた。
ちょうど今私たちがいるような、真っ暗な背景に、そこだけスポットライトが当たっているかのように、映像の中の女の子の身体は白く浮かび上がっていて幻想的ですらある。
肌は真っ白で、髪も輝くような銀色で、瞳の色も青い。
あらゆる意味で儚げで、それなのにとてつもなく艶めかしい。
「冴子、さん……はぁっ…あぁ…」
また冴子の名前がその映像から聞こえてくる。
いよいよ幻聴ではなく、この娘は冴子をオカズにオナニーをしているのが明白だった。
横ズ割を崩したような恰好で、股間に埋めた指をこそこそと動かしながら、こちらに流し目をくれるあたりは、自分の見られ方を熟知している感が伺えて、このような映像を撮るのに手馴れている印象を受けた。
「……」
冴子は、もはや映像を止める事さえ諦めたようで、全く動こうとしない。
申し開きの余地がないと悟っているかのようで、むしろその見切りの良さに私は腹が立ってきた。
本当に、不埒な娘だ。わかってはいたけれど。
冴子には、こんな映像を度々よこしてくるような相手が一人ならずいるのではなかろうか。
ましてやこの子は絶世の美貌の持ち主であり、WSアプリを使っていれば多くの人が見知っている、有名人でもある。
広告で見せていた笑顔は妖精のそれとも思える可憐さをたたえていたのに、今目の前で自慰にふける彼女はまるで別人だ。
「あぁ、…あんっ…あ…」
まだまだ先の長そうな映像に、冴子はたまりかねたように首を垂れた。
私はその冴子の頭を持ち上げて、しっかり見ろと身振りのみで促す。
冴子はわずかに首を左右に振って抵抗した。
「ほら、いつもしてるみたいに触ったら?」
「……」
自分で思う以上に冷淡な声が出てしまう。
冴子の身体は更に縮み上がった。
「これ見てオナニーしてるんでしょ、どうせ」
「…」
冴子は何も言わず、ただ力なく首を左右に振っている。
もしかすると目をつぶっているかもしれない。
それでも、そんな小さな抵抗を無視するように、冴子のスマホからは徐々に高い喘ぎ声が響いてきた。
「はぁ、はぁ…冴子さん、見てますか?…ひ…っ」
その子の言葉に続けて私は「って言ってるけど」と冴子に言い放つ。
「も、もらった…だけです」
「どうだか」
「本当、私がもらってるだけで…」
「でもオカズにはしてるんじゃないの、何回も」
自分でも実に情けない。
余裕めかして「性に奔放であれ」と、冴子に説いた事さえあった気がするのに。
我ながら不覚だ。
その上、私の方は映像をばっちり見ている所為か、身体は疼いて仕方ない。
苛立ちのような疼きと、冴子を本当にこの部屋に閉じ込めて、一歩も外に出さなくしてやろうかという、強烈な独占欲が、同時に私を苛んだ。
…わかった風でいたのは、むしろこれまでの私ではないか。
本音を晒せばこの程度なのに、冴子に幻滅されたくなくて装っていた。
それに気づいた時にはもう遅く、後戻りはできそうにないなと感じたが最後、私は冴子がいつぞやか望んでいた「お仕置き」を、今こそ本気で実行する気になっている。
過去にプレイとしてそれらしい事はした。
でも、心は伴っていなかった。
今はあの時とは違う。
本当に冴子をこらしめたくて、罵りたくて、そして誰よりも私にだけ一番いやらしい姿を晒す冴子でいさせるために、もっときつく冴子を追い込むしかないと思考する事を正しいと結論してしまっている。
この「お仕置き」の正当性が自分の中に生まれてしまった以上、抑える事はできそうになかった。
「どうしたの、冴子…始めないの?」
「い…」
冴子が動こうとしないので、私は「じゃ」と冴子の手に改めてしっかりとスマホを握らせた状態で、私の指で冴子の秘部を掻き回す。
冴子の着ている、部屋着兼寝巻のワンピースを思い切りめくり上げて、後ろから前に手を回し、直接秘部をまさぐった。
下着を履いていない冴子の下半身は、私の指が振れるよりも前から、ねっとりとしたものを内側に溢れさせているようだった。
その証拠に、ほんの少し指先を潜り込ませただけで、割れ目からどっぷりと蜜が垂れてくる。
「感じてるじゃない、素直じゃないわね?」
「…んっ、あ……お姉さま」
「冴子が自分でしないなら、代わりに私がしてあげる」
「だめ…」
「嘘ばっかり」
私はわざと冷たく笑って見せてから、冴子の秘部の入り口辺りをゆるゆると弄り回す。
冴子は焦れたように内腿を擦り合わせて、軽く悶えた。
映像の中の女の子も顔を火照らせながら、どんどん自慰に没頭していく。
はじめは控え目に見える程度だった彼女の秘部は、今はもうカメラに擦りつけるぐらいの勢いで大きく開かれた脚の間に大写しになっており、はしたなく喘ぎながら時折身体をぴくつかせて良がっている。
「…この子、冴子の事オカズにしてるんでしょ?」
「……ぁ」
「欲しくなってきた?」
「ち…ちが…」
「違うの?…嘘は良くないわね」
冴子が違うと言うので、私は冴子の秘部に浅く沈めていた指をそっと抜いて冴子の顔の前に持って行く。
ヌルヌルとした蜜がまとわりついた二本の指を冴子の口にねじ込み、指を出し入れして冴子の口内を嬲った。
「んぐ…ふっ…ん」
うめいているのか、悶えているのかよくわからない声で冴子は鳴いた。
私の指には冴子の舌が絡みついてきて、欲しがっている事を隠し切れないのが伝わってくる。
そんな舌使いにもイライラして、私は冴子の口からも指を引き抜く。
「お、姉さま…」
「綺麗にしてもらおうと思ったのに、冴子の唾でまたベトベトになっちゃったじゃないの」
「ごめんなさい…」
「…悪いと思ってるの?本当に」
「はい……」
心ここにあらずの返答を咎めるようにすかさず私はたたみかける。
「毎晩のように気持ち良くしてあげてるのに、まだ物足りないなんて、ほんっとに欲張りなのね」
「…それは」
「何?」
「いえ…」
冴子は、自分が口答えしようとしている事に気付いて黙り込む。
そう、この仕打ちは冴子が最も恐れているものだ。
人並み以上の性欲を揶揄され罵られ、馬鹿にされる事、その事に冴子はトラウマを抱えているはずだけど、これ以上ないぐらいに私に日々快楽を与えられている中では、それは言葉通りの意味を成さない。
口答えなど認めない、という意味合いを込めて私は一旦抜いたはずの指先を、二本まとめて再度冴子の口内に挿入し、冴子の歯や頬の内側などを指先で蹂躙していく。
口の端から唾液をこぼしながら、冴子はそれに耐えた。
「他に何人いるの?」
さりげなく、冴子の手に握られたスマホの画面に目をやりながら問う。
冴子に任せていると画面がどんどん傾いて見えにくくなるので、その度に私は冴子の手に自分の手を重ねて、スマホを握り直させた。
ムービーは本当にうまく撮れていて、システムの制限サイズいっぱいを超えないような圧縮もかけているのだろう。
まだモデルの彼女の自慰は続いている。
脚の開き方や胸の反らせ方、カメラによこしてくる視線や表情がどんどん変わっていって、長尺なのに見飽きない。
時間の経過と共に、彼女からは怪しい色香がどんどん濃く漂うようになり、ひょっとすると彼女を開眼させたのが、今私の腕の中にいるこの娘なのかもしれないという直感めいたものがよぎる。
「な、何人、って…んっ」
私は冴子のうなじに顔を埋めて、思い切り髪の匂いを嗅いだ。
よく知っている、甘酸っぱい匂い。
だけどその中に、発情した雌がそこはかとなく発散させる何かが含まれている気がする。
それは今私の愛撫によって、焦らしによって発せられたものなのか、それとも今日、私の知らないどこかで、私の知らない誰かによって引き出されたものなのか、判断がつかない。
先ほど触った感じでは、妙に溜め込んだような量の蜜を溢れさせていたし、それがこのムービーだけの所為とは考えにくかった。
…そこまで考えて、冴子の身近にあるかもしれない、このモデルの子以外の人の気配を感じ取り、私の苛立ちはますます大きくなっていく。
片手の指は冴子の口元に這わせ、もう一方は再度秘部へと移動させてくすぐるように入口を弄る。
そうしながら冴子の髪をかき分ける事もせず、舌先を伸ばして髪の毛越しに耳を軽く舐めていく。
敏感に、冴子が首をすくめて反応する。
「いない、って…即答しないのね」
「……やめ…」
「やめないわよ、その方がいいでしょ?冴子だって…」
少しトーンを変えた声をその耳に流し込めば、冴子の身体からはたちまち力が抜けていく。
それからぐっと体温が上がり、冴子の中に潜む欲望の本質が表に現れるのだ。
…何人いるのか、それだけじゃない。
どこまでやらせたのか、やったのか、そこも聞かずにはいられない気持ちでいっぱいだ。
聞いた所で、幸せな心地にはなれないとわかっているのに。
それに冴子は、核心に迫るような内容はおそらく黙っているだろう。
あるいは私の嫉妬心さえも自分の快楽を高めるスパイスとして利用するつもりなのかもしれない。
真面目なようでやたらと奔放なその本能は、他の娘にはない、冴子ならではの魅力だ。
いやらしいのに、口が堅そうな娘。
そんなの、御あつらえ向き以外の何者でもない。めざとい人間なら放っておくはずがないのだ。
「…どうしたの?」
耳をチロチロと舐めながら、艶に満ちた声で優しく問いかける。
冴子の身体から更に力が抜けて、もう一段階体温が上がったようだった。
もじもじとした疼きは、もはや痙攣に近いものに変わっている。
「あ、あ…お姉さまぁ…」
「だから、何?」
「き、気持ちいい…です…もっと」
頭の中が一気に冷えていく。
冴子が昂っている事を自ら告白するぐらいに押さえきれなくなったのがわかって、手ごたえを感じながらも、同時に私の精神に余裕が生まれて思考が回り出す。
いつしか嫉妬心は薄れていき、このムービーの子に見せつけてやろうという闘争心が芽生え始めた。
冴子に誘惑が多いのは仕方ない。そして冴子が流されるのも、年齢とその欲望の旺盛さからすればやはり仕方ない事である。
ならばこの時間だけは、冴子を徹底的に利用させてもらおうではないか。
大人の女を本気で怒らせて、いいように弄ばれる事さえも、冴子は楽しめるたちだと私は知っている。
だから、そんな倒錯した快楽に身を委ねる冴子の姿を、間近で拝ませてもらおう。
このムービーの中の子にも、他の子にも、そんな芸当はできないだろう。
なぜならきっと彼女たちは、冴子と年齢が近いはずだからだ。
私はわざと触れるか振れないかの距離で、性感のスイッチがある場所を少しずつ刺激していく。
髪の毛ごと耳に這わせた唇も、口元に這わせた指も、秘部をなぞっている指も、どれもほんの少しだけ表面をなぞる程度に触れていきながら、焦らせるだけ冴子を焦らす。
「…んく……」
冴子が息苦しそうに悶えるが、気にしない。
口元に這わせた指は、冴子の唇を左右になぞり、時折上唇だけをそっと人差し指と中指で挟んでみたりする。
秘部も同じだ。指先で縁だけを少しずつなぞり、溢れる蜜も掬い取る事なく、指先だけをただ上下に動かしていく。
勿論、膨らんだ萌芽もスルーだ。
「そ、そんなに、されたら…あぁっ……」
「気持ちよくなってきちゃったわね」
「あぁ…その声…っ」
冴子の喘ぎ声が大きくなり始めたので、ムービーの女の子の喘ぎ声がそれにかき消されてしまう。
「冴子、ねえ、この子に見せてあげたいわね、ただ焦らされてるだけでこんなに身体を熱くして、大声で良がってる所」
「う…っ…」
「ちゃんと見なさい、これを」
冴子はいやいやをするように首を振って抵抗するが、私の手はさっと冴子の口から引っ込めてそのまま頭を固定するように抱え込む。
「…この子、冴子の事が本気で好きなのよ、きっと」
「そんな、違いま…」
「だからしっかり見て、オカズにしてあげなくちゃ可愛そうじゃない」
冴子は観念したようにおとなしくなり、私の指示通りにムービーを見据えた。
その直後に、私が緩く撫でている冴子の花弁の内側から、したたるように蜜が漏れ出してくる。
…実にわかりやすい。
「そう、いい子ね」
「はい…」
冴子は泣きそうな声で答えながら、身体を小刻みに震わせている。
焦れているがとにかく必死で我慢している、そんな姿にはそそられるものがあった。
「欲張り」と言われたのが効いたのかもしれない。
見る間にスマホを握る手まで震えてきて、画面がぶれて見えるようになってくる。
我慢している冴子の姿をずっと見ていたいぐらいだと思いつつ、その考えの残酷さにまた自分で驚いた。
冴子は正直に全てを話すとは思えないし、私ももはやそれは望んでいない。
帰る場所がある事のありがたさと、それを失う事の虚しさを、どうすればこの娘にわからせて、それを持続させられるのか、それを考えた。
もう一度、髪の毛ごと冴子のうなじに唇を這わせながら、私は問いかける。
「私が、みんなが憧れる企画部長でなくなったとしても、こうして応えてくれるのかしら」
冴子の身体がびくりと跳ねる。
あまりに意外な問いかけに、混乱しているようだった。
「なくなるんですか」と、冴子は機械的な口調で問い返してくる。
「例えば…の話よ」
「…」
冴子の中ににわかに疑念が浮かんでいるのがわかる。
自分が隠し事をしているように、私にも冴子には黙っている事がある、という意識に目覚めてもらいたかった。
実際私の異動の話はないが、いつまでも今のままのポストでいられるわけではない。
「…考えもしなかった?」
「……」
冴子は小さく頷く。
身体の痙攣が少しずつおさまっていく様子がありそれを許さないという思いを込めて、私は冴子の秘部に二本の指を中ほどまで沈めて、ばらばらに動かした。
「はぁっ…」
身体に与えられた快感で冴子の思考が止まりかける。
二人で互いの秘部を舐め合っている時にも、似たような現象は起きた。
下半身からせり上がってくる快感で、思考が止まり思うように口淫ができなくなる、あの瞬間がそうだ。
ムービーの中では、女の子が絶頂へと向かうべく快感の波に身を委ねている。
「あ、あぁん…いっちゃう…いっちゃうよぉ…冴子さん」
「また名前、呼ばれてるわよ?」
「やめてください、言わないで…」
冴子を黙らせるために、とびきり甘い声で「だ…め…」と囁いた。
それは魔法の言葉のように冴子に効き目を発揮する。
冴子は理解している。ここで自分が楽にさせてもらう道など、選ばせてもらえない事を。
それは正に自分が罪を犯していると告白しているようなものだ。
後ろめたさを打ち消すために、冴子はあえて苦しむ選択に走るのだろう。
だから、つまり。
全部で何人と、何回だか知らないが、そういう事は「あった」という事なのだろう。
それを理解した瞬間の私の中の感情は、文字通り燃えるように一瞬で沸騰するようだった。
「何度やらせれば気が済むのかしらね」
私はそう言ってから、許可も得ずに冴子のうなじに強く吸い付いた。
跡がしっかり残るように、顔を振って髪の毛をかき分けながら、冴子の綺麗な肌に軽く歯を当てて強く音を立てて吸う。
「あ…っ…」
吸血鬼にでも血液を吸い取られているかのような、力の抜けた冴子の声が聞こえる。
その声は間違いなく、この行為に酔いしれている事を物語っていた。
「何喜んでるのよ?」
少し位置をずらしてもう一つ、跡を残すように冴子の首筋を吸い立てる。
「あ、はぁ……ん…」
今度は明らかに甘ったるい、官能を物語る声で冴子は悶えた。
「…何?」
「だって…だって」
私は息を詰めて冴子の言葉を待った。
冴子にとっては今もなお、それは疑問なのだろう。
今20代を生きている冴子と、それを10年以上前に通過した私とでは、その時過ごした時代は異なっているし、自分の経験が全てであるかのようにわかった風な態度を取るのは、相手に対して失礼だと思っている。
それでも、極力表面に出さないように注意してはいるけれども、冴子を見ていると、その心の中のゆらぎというものが、かつての自分にも覚えがあるように思えてくるのは確かだ。
出会って以降、はじめのうちは冴子に対して嫉妬心を表す事はしないようにしていた。
かなり年上の私がそんな事をするのはみっともないと思えたし、それが本来あるべき姿ではないような気がしていたから。
でも、最近はそれを隠さないようにしている。
冴子が男女問わず様々な人から狙われる要素については、私も相当理解できているはずだし、だからこそそれは致し方ない事だとも思っている。
まあ単純に言えば、年上の私が嫉妬心剥き出しの態度では、冴子が引くかもしれない、という恥ずかしさがあった。
けれども実際それを態度で見せても、冴子は何も言わないし、特別冷めたような様子もない。
少し困っているような、同時に嬉しそうな、そんな苦笑を浮かべるだけで、それ以外の心持は変化していないように思われた。
…けど。
それによって冴子の中に余裕が生まれたのかもしれない。
冴子の異動先が「秘書課」だと聞いて、私の中には真っ先に嫌な予感が芽生えた。
冴子が行きたがっている部署だから、悦ぶべきなのだけれど、正直不安が先に立った。
次に、指導役が夏川さんだと知って、まだ良かったと安堵した。
けれど、それだけでは完全な安心と言える状態ではなかった事を知り、やっぱりか、という思いに至る。
冴子は、私が何者なのかわからずあの日会いに来て、そして何者か知った後も躊躇する事なく私に身体を差し出した。
それは、冴子にとって相手が私だから、という理由での事ではないだろう。
相手が誰であれ、アリだと思えば素直に欲望に従う、冴子はそういう娘なのだと私は理解した。
だから仕方ない。
そういう娘でなければ私とは始まっていなかったのだから。
冴子は私との関係を、極力他言しないように努力している。
言葉にすれば「口が堅い」わけで、つまり裏を返せば冴子が他の誰かと何事かあった場合でも、それを他言しないタイプとも言える。
彼女にそういう誘いが多くなるのは、そんな、秘密厳守の部分における冴子の性格が、透けて見えるからだろう。
そこも、現に私はそう仮定して冴子に手を出した。
*-*-*-*-*-
珍しく定時を大幅に過ぎて、23時を回ろうかという頃にようやく帰宅すると、既に冴子はベッドに寝そべってうとうとしていた。
眠ってしまわないよう手元のスマホで何か見ていたようだが、それも手からこぼれ落ちている。
「ただいま…冴子?」
一応呼びかけてみるが返答がない。
これは起こさないようにしておこうと思い、私は先に部屋のシーリングライトを消した。
それとほぼ同時にキッチンと脱衣所の明かりだけをつけて、間接照明替わりにして視界を確保する。
「…」
ここで冴子を起こしてしまうと、変に色々と気を使われそうで、それは申し訳ない。
正直、今日は私もかなり疲れているし、このままそっとシャワーだけ浴びて冴子の隣で眠ろうと思った。
その時、本当に偶然の事なのだけど、手からこぼれた冴子のスマホに通知が表示される。
ロックがかかっていないその画面に、思わず視線を合わせてしまった。
さすがに文字は読めないが、添付されている画像はしっかり見て取る事ができた。
加工のされていない、ほぼ全裸の女の子の写真だった。
もろにではないけれど、商業的な画像ならぼかされているであろう場所がそのまま写っているとなると、この写真は拾い物というよりも自撮りの可能性が高いと感じた。
…写っているのは、明らかに冴子より若い、成人したかどうかぐらいの年頃の女の子で、どこかで見覚えがあるような気がする。
けれどもそれが誰なのか、すぐには思い出せなかった。
心の中で「やっぱりね」と呟き、私は静かにスーツを脱いでハンガーにかける。
そのまま音を立てないようにして浴室へ向かった。
*-*-*-*-*-
今、役職にあっても残業を極力しないように心がけているのは、年齢と共に自身の回復力に不安を覚えているからだ。
体力を使い果たしてしまうと、そこから調子を戻すのに一晩では到底持ち直せない。
昔はそうじゃなかったけど、だんだんとそうなってきているのを実感せざるを得なかった。
自分の身体は何よりも雄弁だと思う。
本当は湯船を張ってしっかり入浴する方が、回復は早まるけれど、それよりも先に眠りたい気持ちが強く、それは諦めた。
頭からシャワーをかぶり、今日一日の出来事やストレスと共に全身を洗い流す。
そうしていると、ふいにいつだったか冴子と一緒にシャワーを浴びた時に、悪戯でいきなり冴子の顔にシャワーのお湯を浴びせたり、逆にそれをやり返されたりして遊んだ事を思い出した。
細い身体には不釣り合いなぐらいに大きく発達した冴子の胸にシャワーの飛沫がかかると、肌がそれを弾いていくつもの小さな水玉になり、それがきらきらと輝いて冴子の身体を飾った。
それがすごく妖艶でもあり、綺麗だとも思ったから、私は冴子が嫌がるのにそれを無視して冴子の身体に何度もシャワーを浴びせた。
「うわっ」
何度もされているのに冴子はいちいち驚くから、そのリアクションも面白い。
顔にかかった飛沫が顎をつたい大きな胸の斜面に堕ちていく様は、これまた堪らないものがあった。
冴子は顔にかかった飛沫を手で払う事もせずに、私の、悪ふざけでしかないその行為を受け止めてくれていた。
ひょっとすると、冴子は私なんかよりもはるかに許容範囲が広いのかもしれない。
苦しい事でも、理不尽な事でも、その先に何かがあると感じ取れれば冴子は躊躇なくそこに身を投じる事ができるのだ。
…私にはとても、そんな事はできないけれど。
「……はー」
大量のお湯を浴びた自分の身体を見下ろすと、やはりたくさんの飛沫が私の肌を覆っているけれど、冴子の纏うそれとはやはりだいぶ違う気がする。
今日は疲れているから、小さな事でもネガティブに解釈してしまうのかもしれない。
冴子にはまだ知らされていないだろうが、この秋には部長の大幅な異動があると今日知らされた。
袴田がスライドして私が押し出されるのかと思いきや、彼は開発部部長の席に座る事になると言う。
あろう事か、スライドで押し出されるのが進藤さんだと知り、そうなるぐらいならよほど、私が押し出される方がましだと思った。
そして当の進藤さんは、なんと人事部長に就任するのだと言う。
袴田が開発部長で、進藤さんが人事部長って。
そんなのナシでしょ?と思うがどうしようもない。
それこそ、進藤さんは人事部の思惑により引っ張られたのだろう。
でも、これで少しは透明性の高い人事を目指して進藤さんが動いてくれるかもしれない、そんな淡い期待だけが、心の拠り所となった。
考えるのを止めて私は浴室を出る。
やっぱり疲れているのだろう、冴子と何気なくじゃれ合った記憶を呼び起こしただけなのに、なんとなく股間がぬるつくような感じがした。
もう一度洗い流すのは面倒で、私はタオルで身体を拭いて最低限の保湿ケアだけ済ませて脱衣所を出る。
暑いので何も着る気がせず、裸のままベッドに入る事にした。
「……」
冴子はさきほどと変わらず、同じ姿勢で眠っている。
ただ、手からこぼれたスマホは、時間の経過のためか画面が黒く消灯していた。
…もう一度、あの画像を確認できないだろうかと考えてから、そんな事を思考している自分に驚愕する。
やっぱり、私の中には間違いなく独占欲や嫉妬心というものが、はっきりと育っているとわかったからだ。
…そんなものは、ものすごく不毛なのに。
「ん…」
匂いにでも反応したのか、冴子が眠ったまま私の方に身体を向けてくる。
寝言なのかわからないが「お姉さまぁ」と呼んできたりして、無意識だとしてもずるいやり口だと思わずにはいられない。
しかし私の視線は枕元に転がった冴子のスマホに固定されたまま、動かす事ができずにいた。
…もう一度、同じ相手から通知が来れば。
そうすればスマホに手を伸ばさなくても、偶然と言い張りその事を確信できるのに。
「…んん」
冴子が私にしがみつくために身体をよじると、その腕がベッドに投げ出されたスマホに接触し、センサーで画面が再び明るくなる。
さっきの通知はもう表示されていなかったが、一瞬見えた『WS』アプリの背景と思われる画面を見た瞬間、先ほどの画像の女の子が誰なのか気が付いた。
…あの子は、このアプリの広告モデルの娘だ。
多分、いや、間違いなくそうだ。
細身の身体に、特徴的な長い銀髪と青みがかった瞳。
あんな珍しい特徴のある子はそうそういないだろう。
冴子はあんなモデルの女の子と、日ごろからああいう類の自撮り画像を交換しているのだろうか。
あるいは向こうが一方的に画像を送っている?…そんな事、あるのだろうか。
「冴子」
普段の私ならそれは絶対しないはずなのに、私は冴子を起こそうとする。
自分の行動は間違っていると頭でわかっているのに、自分の中に芽生えた嫉妬心が、その正しい判断をねじ曲げていった。
こんな事にいちいち言及したり、追及したって、いい事なんてないとわかっているのに。
知って嫌な思いをするだけなのだから、こんな事は知らない方がいいに決まっているのにだ。
冴子の身体をゆすり、その顔の前にスマホの画面を向ける。
冴子がまぶしさに細く目を開いて、眠そうな声を出す。
「あっ、おかえりなさい…すみません」
冴子の言葉を意に介さず、私は冴子の顔の前に構えたスマホをそのまま手に握らせた。
それから冴子の身体を裏返して、背中から抱きすくめながら冴子の肩越しにスマホの画面を見る。
「…何か…」
冴子が困惑した様子で呟いたが、寝ぼけているらしいのをいいことに、私はただ命じる。
「新しいメッセージが来てたわよ、開けてみて」
冴子は「はい」と素直に応じて、なんのためらいもなくアプリの新着メッセージを開いてしまった。
自分で命じておいて何だが、それは無防備過ぎるだろう、と呆れる。
しかし直後に、今度は二人で衝撃を受けた。
メッセージに添付されていたのは、静止画ではなく動画だとわかったからだ。
画面の中の、モデルの女の子が熱い吐息を漏らしながら自分を慰めている。
その映像だけでも十分ショッキングだったけど、問題はその続きである。
「はぁ…っ、冴子…さん」
これにはさすがに冴子も目が覚めたのか、スマホを構えたまま固まってしまっている。
…そうだ。
思った以上にきつい状況だが、大なり小なりこういう感じの展開になるのは予想できたのだから、藪に押し入るべきではないのに。
私だって、これによって少なからずショックを受けるとわかっているのに、ある程度予想通りの展開にまた「やっぱりね」と落ち着いている自分もいた。
ちょうど今私たちがいるような、真っ暗な背景に、そこだけスポットライトが当たっているかのように、映像の中の女の子の身体は白く浮かび上がっていて幻想的ですらある。
肌は真っ白で、髪も輝くような銀色で、瞳の色も青い。
あらゆる意味で儚げで、それなのにとてつもなく艶めかしい。
「冴子、さん……はぁっ…あぁ…」
また冴子の名前がその映像から聞こえてくる。
いよいよ幻聴ではなく、この娘は冴子をオカズにオナニーをしているのが明白だった。
横ズ割を崩したような恰好で、股間に埋めた指をこそこそと動かしながら、こちらに流し目をくれるあたりは、自分の見られ方を熟知している感が伺えて、このような映像を撮るのに手馴れている印象を受けた。
「……」
冴子は、もはや映像を止める事さえ諦めたようで、全く動こうとしない。
申し開きの余地がないと悟っているかのようで、むしろその見切りの良さに私は腹が立ってきた。
本当に、不埒な娘だ。わかってはいたけれど。
冴子には、こんな映像を度々よこしてくるような相手が一人ならずいるのではなかろうか。
ましてやこの子は絶世の美貌の持ち主であり、WSアプリを使っていれば多くの人が見知っている、有名人でもある。
広告で見せていた笑顔は妖精のそれとも思える可憐さをたたえていたのに、今目の前で自慰にふける彼女はまるで別人だ。
「あぁ、…あんっ…あ…」
まだまだ先の長そうな映像に、冴子はたまりかねたように首を垂れた。
私はその冴子の頭を持ち上げて、しっかり見ろと身振りのみで促す。
冴子はわずかに首を左右に振って抵抗した。
「ほら、いつもしてるみたいに触ったら?」
「……」
自分で思う以上に冷淡な声が出てしまう。
冴子の身体は更に縮み上がった。
「これ見てオナニーしてるんでしょ、どうせ」
「…」
冴子は何も言わず、ただ力なく首を左右に振っている。
もしかすると目をつぶっているかもしれない。
それでも、そんな小さな抵抗を無視するように、冴子のスマホからは徐々に高い喘ぎ声が響いてきた。
「はぁ、はぁ…冴子さん、見てますか?…ひ…っ」
その子の言葉に続けて私は「って言ってるけど」と冴子に言い放つ。
「も、もらった…だけです」
「どうだか」
「本当、私がもらってるだけで…」
「でもオカズにはしてるんじゃないの、何回も」
自分でも実に情けない。
余裕めかして「性に奔放であれ」と、冴子に説いた事さえあった気がするのに。
我ながら不覚だ。
その上、私の方は映像をばっちり見ている所為か、身体は疼いて仕方ない。
苛立ちのような疼きと、冴子を本当にこの部屋に閉じ込めて、一歩も外に出さなくしてやろうかという、強烈な独占欲が、同時に私を苛んだ。
…わかった風でいたのは、むしろこれまでの私ではないか。
本音を晒せばこの程度なのに、冴子に幻滅されたくなくて装っていた。
それに気づいた時にはもう遅く、後戻りはできそうにないなと感じたが最後、私は冴子がいつぞやか望んでいた「お仕置き」を、今こそ本気で実行する気になっている。
過去にプレイとしてそれらしい事はした。
でも、心は伴っていなかった。
今はあの時とは違う。
本当に冴子をこらしめたくて、罵りたくて、そして誰よりも私にだけ一番いやらしい姿を晒す冴子でいさせるために、もっときつく冴子を追い込むしかないと思考する事を正しいと結論してしまっている。
この「お仕置き」の正当性が自分の中に生まれてしまった以上、抑える事はできそうになかった。
「どうしたの、冴子…始めないの?」
「い…」
冴子が動こうとしないので、私は「じゃ」と冴子の手に改めてしっかりとスマホを握らせた状態で、私の指で冴子の秘部を掻き回す。
冴子の着ている、部屋着兼寝巻のワンピースを思い切りめくり上げて、後ろから前に手を回し、直接秘部をまさぐった。
下着を履いていない冴子の下半身は、私の指が振れるよりも前から、ねっとりとしたものを内側に溢れさせているようだった。
その証拠に、ほんの少し指先を潜り込ませただけで、割れ目からどっぷりと蜜が垂れてくる。
「感じてるじゃない、素直じゃないわね?」
「…んっ、あ……お姉さま」
「冴子が自分でしないなら、代わりに私がしてあげる」
「だめ…」
「嘘ばっかり」
私はわざと冷たく笑って見せてから、冴子の秘部の入り口辺りをゆるゆると弄り回す。
冴子は焦れたように内腿を擦り合わせて、軽く悶えた。
映像の中の女の子も顔を火照らせながら、どんどん自慰に没頭していく。
はじめは控え目に見える程度だった彼女の秘部は、今はもうカメラに擦りつけるぐらいの勢いで大きく開かれた脚の間に大写しになっており、はしたなく喘ぎながら時折身体をぴくつかせて良がっている。
「…この子、冴子の事オカズにしてるんでしょ?」
「……ぁ」
「欲しくなってきた?」
「ち…ちが…」
「違うの?…嘘は良くないわね」
冴子が違うと言うので、私は冴子の秘部に浅く沈めていた指をそっと抜いて冴子の顔の前に持って行く。
ヌルヌルとした蜜がまとわりついた二本の指を冴子の口にねじ込み、指を出し入れして冴子の口内を嬲った。
「んぐ…ふっ…ん」
うめいているのか、悶えているのかよくわからない声で冴子は鳴いた。
私の指には冴子の舌が絡みついてきて、欲しがっている事を隠し切れないのが伝わってくる。
そんな舌使いにもイライラして、私は冴子の口からも指を引き抜く。
「お、姉さま…」
「綺麗にしてもらおうと思ったのに、冴子の唾でまたベトベトになっちゃったじゃないの」
「ごめんなさい…」
「…悪いと思ってるの?本当に」
「はい……」
心ここにあらずの返答を咎めるようにすかさず私はたたみかける。
「毎晩のように気持ち良くしてあげてるのに、まだ物足りないなんて、ほんっとに欲張りなのね」
「…それは」
「何?」
「いえ…」
冴子は、自分が口答えしようとしている事に気付いて黙り込む。
そう、この仕打ちは冴子が最も恐れているものだ。
人並み以上の性欲を揶揄され罵られ、馬鹿にされる事、その事に冴子はトラウマを抱えているはずだけど、これ以上ないぐらいに私に日々快楽を与えられている中では、それは言葉通りの意味を成さない。
口答えなど認めない、という意味合いを込めて私は一旦抜いたはずの指先を、二本まとめて再度冴子の口内に挿入し、冴子の歯や頬の内側などを指先で蹂躙していく。
口の端から唾液をこぼしながら、冴子はそれに耐えた。
「他に何人いるの?」
さりげなく、冴子の手に握られたスマホの画面に目をやりながら問う。
冴子に任せていると画面がどんどん傾いて見えにくくなるので、その度に私は冴子の手に自分の手を重ねて、スマホを握り直させた。
ムービーは本当にうまく撮れていて、システムの制限サイズいっぱいを超えないような圧縮もかけているのだろう。
まだモデルの彼女の自慰は続いている。
脚の開き方や胸の反らせ方、カメラによこしてくる視線や表情がどんどん変わっていって、長尺なのに見飽きない。
時間の経過と共に、彼女からは怪しい色香がどんどん濃く漂うようになり、ひょっとすると彼女を開眼させたのが、今私の腕の中にいるこの娘なのかもしれないという直感めいたものがよぎる。
「な、何人、って…んっ」
私は冴子のうなじに顔を埋めて、思い切り髪の匂いを嗅いだ。
よく知っている、甘酸っぱい匂い。
だけどその中に、発情した雌がそこはかとなく発散させる何かが含まれている気がする。
それは今私の愛撫によって、焦らしによって発せられたものなのか、それとも今日、私の知らないどこかで、私の知らない誰かによって引き出されたものなのか、判断がつかない。
先ほど触った感じでは、妙に溜め込んだような量の蜜を溢れさせていたし、それがこのムービーだけの所為とは考えにくかった。
…そこまで考えて、冴子の身近にあるかもしれない、このモデルの子以外の人の気配を感じ取り、私の苛立ちはますます大きくなっていく。
片手の指は冴子の口元に這わせ、もう一方は再度秘部へと移動させてくすぐるように入口を弄る。
そうしながら冴子の髪をかき分ける事もせず、舌先を伸ばして髪の毛越しに耳を軽く舐めていく。
敏感に、冴子が首をすくめて反応する。
「いない、って…即答しないのね」
「……やめ…」
「やめないわよ、その方がいいでしょ?冴子だって…」
少しトーンを変えた声をその耳に流し込めば、冴子の身体からはたちまち力が抜けていく。
それからぐっと体温が上がり、冴子の中に潜む欲望の本質が表に現れるのだ。
…何人いるのか、それだけじゃない。
どこまでやらせたのか、やったのか、そこも聞かずにはいられない気持ちでいっぱいだ。
聞いた所で、幸せな心地にはなれないとわかっているのに。
それに冴子は、核心に迫るような内容はおそらく黙っているだろう。
あるいは私の嫉妬心さえも自分の快楽を高めるスパイスとして利用するつもりなのかもしれない。
真面目なようでやたらと奔放なその本能は、他の娘にはない、冴子ならではの魅力だ。
いやらしいのに、口が堅そうな娘。
そんなの、御あつらえ向き以外の何者でもない。めざとい人間なら放っておくはずがないのだ。
「…どうしたの?」
耳をチロチロと舐めながら、艶に満ちた声で優しく問いかける。
冴子の身体から更に力が抜けて、もう一段階体温が上がったようだった。
もじもじとした疼きは、もはや痙攣に近いものに変わっている。
「あ、あ…お姉さまぁ…」
「だから、何?」
「き、気持ちいい…です…もっと」
頭の中が一気に冷えていく。
冴子が昂っている事を自ら告白するぐらいに押さえきれなくなったのがわかって、手ごたえを感じながらも、同時に私の精神に余裕が生まれて思考が回り出す。
いつしか嫉妬心は薄れていき、このムービーの子に見せつけてやろうという闘争心が芽生え始めた。
冴子に誘惑が多いのは仕方ない。そして冴子が流されるのも、年齢とその欲望の旺盛さからすればやはり仕方ない事である。
ならばこの時間だけは、冴子を徹底的に利用させてもらおうではないか。
大人の女を本気で怒らせて、いいように弄ばれる事さえも、冴子は楽しめるたちだと私は知っている。
だから、そんな倒錯した快楽に身を委ねる冴子の姿を、間近で拝ませてもらおう。
このムービーの中の子にも、他の子にも、そんな芸当はできないだろう。
なぜならきっと彼女たちは、冴子と年齢が近いはずだからだ。
私はわざと触れるか振れないかの距離で、性感のスイッチがある場所を少しずつ刺激していく。
髪の毛ごと耳に這わせた唇も、口元に這わせた指も、秘部をなぞっている指も、どれもほんの少しだけ表面をなぞる程度に触れていきながら、焦らせるだけ冴子を焦らす。
「…んく……」
冴子が息苦しそうに悶えるが、気にしない。
口元に這わせた指は、冴子の唇を左右になぞり、時折上唇だけをそっと人差し指と中指で挟んでみたりする。
秘部も同じだ。指先で縁だけを少しずつなぞり、溢れる蜜も掬い取る事なく、指先だけをただ上下に動かしていく。
勿論、膨らんだ萌芽もスルーだ。
「そ、そんなに、されたら…あぁっ……」
「気持ちよくなってきちゃったわね」
「あぁ…その声…っ」
冴子の喘ぎ声が大きくなり始めたので、ムービーの女の子の喘ぎ声がそれにかき消されてしまう。
「冴子、ねえ、この子に見せてあげたいわね、ただ焦らされてるだけでこんなに身体を熱くして、大声で良がってる所」
「う…っ…」
「ちゃんと見なさい、これを」
冴子はいやいやをするように首を振って抵抗するが、私の手はさっと冴子の口から引っ込めてそのまま頭を固定するように抱え込む。
「…この子、冴子の事が本気で好きなのよ、きっと」
「そんな、違いま…」
「だからしっかり見て、オカズにしてあげなくちゃ可愛そうじゃない」
冴子は観念したようにおとなしくなり、私の指示通りにムービーを見据えた。
その直後に、私が緩く撫でている冴子の花弁の内側から、したたるように蜜が漏れ出してくる。
…実にわかりやすい。
「そう、いい子ね」
「はい…」
冴子は泣きそうな声で答えながら、身体を小刻みに震わせている。
焦れているがとにかく必死で我慢している、そんな姿にはそそられるものがあった。
「欲張り」と言われたのが効いたのかもしれない。
見る間にスマホを握る手まで震えてきて、画面がぶれて見えるようになってくる。
我慢している冴子の姿をずっと見ていたいぐらいだと思いつつ、その考えの残酷さにまた自分で驚いた。
冴子は正直に全てを話すとは思えないし、私ももはやそれは望んでいない。
帰る場所がある事のありがたさと、それを失う事の虚しさを、どうすればこの娘にわからせて、それを持続させられるのか、それを考えた。
もう一度、髪の毛ごと冴子のうなじに唇を這わせながら、私は問いかける。
「私が、みんなが憧れる企画部長でなくなったとしても、こうして応えてくれるのかしら」
冴子の身体がびくりと跳ねる。
あまりに意外な問いかけに、混乱しているようだった。
「なくなるんですか」と、冴子は機械的な口調で問い返してくる。
「例えば…の話よ」
「…」
冴子の中ににわかに疑念が浮かんでいるのがわかる。
自分が隠し事をしているように、私にも冴子には黙っている事がある、という意識に目覚めてもらいたかった。
実際私の異動の話はないが、いつまでも今のままのポストでいられるわけではない。
「…考えもしなかった?」
「……」
冴子は小さく頷く。
身体の痙攣が少しずつおさまっていく様子がありそれを許さないという思いを込めて、私は冴子の秘部に二本の指を中ほどまで沈めて、ばらばらに動かした。
「はぁっ…」
身体に与えられた快感で冴子の思考が止まりかける。
二人で互いの秘部を舐め合っている時にも、似たような現象は起きた。
下半身からせり上がってくる快感で、思考が止まり思うように口淫ができなくなる、あの瞬間がそうだ。
ムービーの中では、女の子が絶頂へと向かうべく快感の波に身を委ねている。
「あ、あぁん…いっちゃう…いっちゃうよぉ…冴子さん」
「また名前、呼ばれてるわよ?」
「やめてください、言わないで…」
冴子を黙らせるために、とびきり甘い声で「だ…め…」と囁いた。
それは魔法の言葉のように冴子に効き目を発揮する。
冴子は理解している。ここで自分が楽にさせてもらう道など、選ばせてもらえない事を。
それは正に自分が罪を犯していると告白しているようなものだ。
後ろめたさを打ち消すために、冴子はあえて苦しむ選択に走るのだろう。
だから、つまり。
全部で何人と、何回だか知らないが、そういう事は「あった」という事なのだろう。
それを理解した瞬間の私の中の感情は、文字通り燃えるように一瞬で沸騰するようだった。
「何度やらせれば気が済むのかしらね」
私はそう言ってから、許可も得ずに冴子のうなじに強く吸い付いた。
跡がしっかり残るように、顔を振って髪の毛をかき分けながら、冴子の綺麗な肌に軽く歯を当てて強く音を立てて吸う。
「あ…っ…」
吸血鬼にでも血液を吸い取られているかのような、力の抜けた冴子の声が聞こえる。
その声は間違いなく、この行為に酔いしれている事を物語っていた。
「何喜んでるのよ?」
少し位置をずらしてもう一つ、跡を残すように冴子の首筋を吸い立てる。
「あ、はぁ……ん…」
今度は明らかに甘ったるい、官能を物語る声で冴子は悶えた。
「…何?」
「だって…だって」
私は息を詰めて冴子の言葉を待った。
0
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