上 下
27 / 71

禁断の妄想と愛し合う二人

しおりを挟む
三人での行為の激しさを裏付けるように乱れたベッドシーツは振り返らず、私はシャワーを浴びる。

そうしながら考えていた。
…確かに昨夜の行為において私は「主役」だったなと。

身体は元気だ。不思議なぐらいに。
ろくに寝ていないのに超回復したのか、それともまだアドレナリンが残っているだけなのかはわからない。
秘部の入口の所だけが擦れによる痛みを訴えてくる。
それでもその場所は信じられないぐらいにぬめっているので、洗わないという訳にはいかなかった。

きれいなお湯をそっとかけてみるが、思いのほかしみたので、昨夜の行為がどれほどの激しさだったのか改めて自覚できた。

「……」

洗うために触れているのに、それだけでもまるで前戯と勘違いしているかのように、その場所はうずき始める。
本当はあまり知られたくない事なのだが、激しいセックスの後にする自慰はすごくリラックスできて気持ちいいから、私はこっそりとそれをするのが大好きだ。

少しぐらい構わないだろう、と思えるほど私の身体は開いていて、躊躇などみじんもない。
シャワーヘッドをフックにかけたっぷりとお湯を身体に浴びながら、私は洗い場にしゃがむような恰好で自分の萌芽をこね回す。
水流で蜜は流れていき、それに伴って罪悪感がどんどん薄れていった。

…この場所を、同じ夜に美咲さんにも晴香ちゃんにも舐め回されたんだ、と思っただけで身体は小刻みに震えてしまう。
更にこの奥に数えきれないほど、二人の操る偽竿を打ち込まれた事だって、思い出すまでもなく身体の感覚記憶としても刻まれたままだ。

…そんな凄い事を経験してしまった。
人に話しても信じてもらえるかどうか怪しいぐらいの凄い経験だと思う。
私は幸せ者だ。

でも、まだ自慰という別種の快楽に浸ろうとして我慢ができない。
例え今、美咲さんに自慰を見つかってもそれはそれで良いと思えるぐらい、罪悪感も丸ごと含めて私の全ては淫欲に染まっているのだ。
二人がかりでそうされてしまったのだ。帰ろうと思って簡単に戻れるはずはない。

「…あ……っんぅ…ふ」

果たしてこの声は、ザーッというシャワーの音にかき消されているだろうか。
…わからなかった。

「はぁ、はぁ…っん…あぁんっ」

思った通り、見られている緊張感から開放された状態で達するのはこの上なく気持ち良かった。
だが果てるまでにかかった時間が短すぎて物足りなく思い、私は萌芽をこねていた指を少し伸ばして蜜穴の奥へと挿入する。

入口で動かすのは痛いから、中に沈めた指先の部分だけで膣肉を探る。
軽くくすぐるような刺激でも、今の私には十分だった。

「あ、あぁっ…いくっ…っ」

私は洗い場の床に尻もちをつくように、腰を落とした。
それによって身体にかかる水流の角度が変わり、お腹のあたりに大量のお湯が降り注ぐ。

「やだ…またこんな事しちゃってる」

以前から、自分は淫らな女だと知っていたはずなのに、たった一晩でそれが倍以上に進んでしまった気がしてならない。
恥ずかしいと思う一方で、激しく愛される悦びに私は誇らしささえ覚えてしまっている。

そんなのはただ身体を求められているだけとか、性欲のはけ口にされているだけとかいう解釈もあるのかもしれないが、私の頭にも心にもそんな空虚さはなかった。
この出来事をただ悦びとして受け取る事ができる事こそが、自分の素養なのだろうとも思う。
いやらしい女でなければ、それが進んだ事を誇らしくは思わないはずだから。

「んん…」

のろのろと態勢を立て直してから、やっと私はまともに身体を洗い始めた。
シャワーの水流が少し強めに肌を叩く事にさえ快感を拾ってしまうから、水栓は絞り気味にした。

バスルームを出て身体を拭いた所で、私はやっと少しさっぱりした気持になれた。
今なお秘部はじんじんと疼いているような感覚があるけれど、それ以外は普通である。

裸の身体の肩にバスタオルをかけた恰好でリビングルームに戻ってみると、相変わらず美咲さんはソファで寝息を立てていた。
上はパジャマの長めの上着を羽織って、下は一応ショーツを履いている。
…あまり遅くならないうちに起こすべきだろうが、どうしよう。

迷いながら気配を伺っていると、私の視線によってなのか美咲さんが微かに目を開いた。

「あ、冴子起きたのね」
「おはようございます」
「うん、おはよう」

今一つ焦点の合わない目で美咲さんは私を見た。
眼鏡をかけてないからそうなっているのだろうか。

「…何でこんな所で寝てるんですか」
「あー…何だったっけな」
「……」

美咲さんに手招きされてソファに近づくと、後ろ向きに身体を引かれて私は美咲さんの膝の間に座るような恰好になった。
そのまま美咲さんの腕が前に回ってきて、私はその腕に包まれる。

「何、朝から裸でうろちょろしてるのよ」
「…うろちょろは、してないですけど」

せっかくすっきりしたはずの気分が、一気に甘ったるい空気に染まってしまった気がして、一瞬で昨夜感じたあの感覚が戻ってくるようだった。
こじ開けられた扉は簡単に閉まらないというのに、外からそれを阻まれてはもうお手上げである。

「…あの」
「ん?」

たった一音だけなのだが、不意打ちで耳元にあの声色が流れ込んできた。
質問への答えが保留にされているのだが、こちらがそれを忘れてしまいそうになる。

体温の上昇を悟られたくないが、無理だろう。
もしそれを悟られてしまったら、また何かされるのではないかと私はびくつきながら期待もしてしまう。

「だから、その」
「あー、何だっけ」

声がいつもの美咲さんに戻ってしまったのがなぜか寂しかった。
一体私の身体はどうなってしまったんだろう。

「あの娘を玄関まで送って、喉が渇いたから水を飲んで…戻る途中で力尽きたのよ、多分」
「多分、って」
「あんまり覚えてないのよね」

美咲さんは私の肩にかけたバスタオルを使って、私の首筋の辺りに残った水滴を拭き取ってくれる。

どうしてだろう。
二人きりで過ごす時間がものすごく穏やかで、安心できるような感じがする。
他に誰も居ない事がこんなにも、嬉しく感じるだなんて。

タオルで身体の後ろ側をちょこちょこと拭かれる感触に気持ちが溶けてしまい、私は少しだけ美咲さんに体重を預けるようにしてもたれかかった。

「冴子は、疲れた…?」
「…実はけっこう大丈夫なんです」
「やっぱりね」

まあ、私はただ寝そべって与えられる快楽を受け止めていれば良いだけの事だったから、体力的にどうという事はない。

「…でも、する前と後で何かが変わった感じがします」
「うん」
「…どうしたら良いんでしょうか」
「…何が?」
「だって」

私は身体を美咲さんの正面に向けて座り直した。
美咲さんの膝の間で正座するような感じになる。

「だって、前よりもずっと、いつでもどこでもどれだけでも、したくて堪らない身体になっちゃったんですよ?」
「それのどこが問題なの?」
「……」

私は主張を諦めてソファから降りようとするが、美咲さんに腕を掴まれてじっと顔を見つめられた。
今度はしっかり焦点が合っている。

「でも、物足りなかったわけでも不満だったわけでもないでしょ?」
「…はい」
「あ、そうだ一つ大事な事があるのよね」
「……?」
「まあ、それは今日の夜教えてあげる」

引っ張る理由はわからないが、気にしない事にする。
気を取り直して私は二人分の朝食を用意し、その間に美咲さんは身支度を整えた。

*-*-*-*-*-

「おっはよう、冴子ちゃん♪」
「おはよう…ございます」

今朝は梢さんと出勤時間が重なった。

「あれ、なんか元気なくない?」
「そんな事ないですよ」

しかし何故だか梢さんがまぶしく見えてしまう。
私の身体はどこも汚れていないはずなのに、闇にも似た何かに自分が支配されたような錯覚を覚えてしまうほど、何かが変わってしまったという気がするのだ。
…ただ三人でしただけの事じゃないか、何も異常ではないだろうと自分に言い聞かせる。

そしてロッカールームで梢さんと並んで着替えをしている時、特に理由もなく横を見ると、ちょうど梢さんは下着だけの姿になった所で、私は思わずそれに見入ってしまった。

今日は黒の上下なのか。
梢さんは私の視線に気付いているのかいないのか、前を向いたまま着替えを続けている。

「……」

意識した訳ではない。
しかし気が付くと、私は梢さんの中に「見られている」という意識を芽生えさせたくなってきて、わざと梢さんの方に顔を向け舐めるようにその姿を観察した。

それがどうして梢さんを昂らせる事だとわかったのか、全く理由も根拠も見当たらない。
ただ本能的に一瞬、そうしたらどうなるんだろうという興味がわいただけの事だった。

梢さんはこちらを見ようとはしないが、明らかに私の視線を意識しているとわかる。
その証拠に、腕や脚、ちらりと見える胸の谷間も、ほんのりとピンク色に染まっていた。

梢さんのスイッチは入ったと思われる。
だから私はそのまま梢さんから視線をそらさなかった。

「…」

梢さんはブラとショーツだけの姿で、ロッカーの中の何かを探るふりをしつつ動きを止めた。
…梢さんの放つ空気から思いを読み取ろうとすると、なんとなくだけど「もっと見られたい」のかなと思った。

私は無言のまま「脱げばいいじゃないですか」という視線を送る。
私の方を見ようとはしないけれども、どうやらそれは伝わったようで、梢さんは徐にブラジャーを外し始めた。
これは、制服に着替えるためには全く必要のない動作である。

「……」

あえて私の視線を意識するように、もったいぶった動きでゆっくりと…黒いシンプルなデザインのブラを外して、無造作にそれを足元に落とす。

私は一度だけ、深く鼻から息を吐いて、少しだけ興奮の度合を伝えてみた。
梢さんの身体がわずかに動いて、露わになった胸が揺れるのが見える。
私はわざと前に向き直り横目で梢さんを見続けながら自分の着替えを済ませる。
その間、梢さんは軽く呼吸を荒げながら耐えているようだった。

実際、私が制服を着るまでの間に梢さんの方は何の変化もなく、ただロッカーの前に立って裸の胸を晒したまま、立ち尽くしている。

「…」

私はいよいよ身体ごと梢さんの方を向いて、後ろで手を組み梢さんの身体を上から下まで眺めた。
きちんと見てもらえている事に梢さんは喜んでいるようだった。

視線だけで更に先を促す。
予想通り、梢さんは過激な行動に出た。
自分が履いているショーツに手をかけ、ゆっくりと下に下げ始めたのだ。

…誰か、来るかもしれないのに。何やってんだろ。
呆れたような溜め息を吐いて見せると、梢さんはぴくりと敏感に身体を振るわせた。

着替えをするためのこの部屋にいるのは、いるべきではない恰好の二人。
すっかり着替えを済ませていて用のない私と、着替えもせずに下着を脱いで裸になっている梢さんしかいないのだ。

言葉も交わさず、視線も合わせない。
ただ私が梢さんを見ているだけの事、そして梢さんが勝手に下着を脱いでいるだけの事だ。
なのにこれは明らかにプレイとして成立してしまっている。

梢さんは身体をねじって、まずは私の方にお尻が見えるような向きでショーツを少しずつ下にずらしていった。
お尻が半分くらい見えた所で、丘の頂上を超えた布はするっと斜面を下り脚の付け根まで下がってしまう。
文字通りプルンとお尻の肉が飛び出してくるようで、何とも言えないみずみずしさと健康的な美しさを感じた。

私は、今度は思わず一度瞬きをしてから、声は出さずに口から息を吐く。
微かに「はぁっ」という音が梢さんにも聞こえた事だろう。
それから梢さんは私の方に向き直って、片足ずつショーツを抜き、それもポイ捨てするかのように床に放り投げてしまう。

それから、なんとなく両脚を開くようにしながら私の前に立ち、いよいよじっと私の瞳を見つめてきた。
完全に目が潤んでいて、かなり興奮しているのだと伝わってくる。

私は、まだ平気だろうと思って梢さんにその先も促した。
勿論視線を送るだけだ。
梢さんは近場のスツールい片足を乗せて、股間を空気に晒すように見せつけてくる。

…やっぱり、見られるのが好きなんだな、梢さん。
こうしているだけなのにかなり顔まで真っ赤になっている。
よく観察すると、開かれた脚の間に鎮座する綺麗な花びらは、潤い始めているように見えた。

私は、梢さんの下着を拾い集めてロッカーに放り込むと、入れ替わりに梢さんの制服ブラウスを取って差し出した。

「……」

今更ブラを着ける気には、なれないだろうと思ったのだ。
第一、困るようなら後でまた付ければいいだけの事である。
今は、私の目で犯されるという行為を楽しんでいるはずなのだから、このままブラウスを受け取り着てもらえるはずだ、という確証が私にはあった。

「………」

思った通り梢さんはそれを受け取り、裸の上半身にかぶせたかと思うと袖を通してボタンを留め始める。
続けてスカートも手渡すと、やはりショーツは履こうとせずにそのまま裸の下半身にスカートを履いて見せた。

梢さんの目が「これで良いんでしょ?」と問いかけてくるが、私はいいとも悪いとも返さなかった。

最後まで制服を着終わった時にはもう、梢さんはまともそうな表情に戻っていたけれど、身体の方はそれなりに高揚しているのが、私にはわかった。

「後でちゃんと着てくださいね」

私はそれだけを口に出して、さっとロッカールームから立ち去った。

…と、今思えばどうしてこんな芸当ができるようになってしまったんだろうか。
朝のスケジュール確認などルーティンを一通り終えた所で、私は妙な気持ちになる。

以前なら、遊び半分で梢さんがブラを外して私に見せつけてきたとしても「何やってるんですか」などと抵抗したはずなのに。
私の視線一つで、ちょっとした露出プレイが繰り広げられてしまった。

時間にすればごく数分間の出来事だった。
けれども私が梢さんを視線だけで犯すぐらいにリードして露出を誘発させてしまった事になる。

緊張と恍惚感に染まった梢さんの瞳の色を思い出すと、こちらも下半身がじくじくと疼きそうになる。
梢さんのあの…強いM気質について思いを巡らせていると、私は唐突にある事を思いついてしまった。

これは私にとって禁断の妄想と言って良い。
それは、あのどSの晴香ちゃんと、強いM気質のある梢さんの、性的な相性は悪くないかもしれないという事だ。

一度考え始めると頭に血が上って鼻から出血しそうだが、でももう止められそうにない。
梢さんの澄んだ泉に晴香ちゃんの操る偽竿がガンガン突っ込まれる所。
冷笑しながら繰り出される、晴香ちゃんの超絶ピストンを余すところなく受け止めて一瞬で絶頂へと駆け上る梢さん。

…梢さんの肉体的なタフさも、晴香ちゃんを満足させる所まで対応できるのではなかろうか。

私は、あらぬ妄想に手を出してしまった気がした。
考え始めればきりがない。
少ない逢瀬だったが、晴香ちゃんの持つ技や表情、態度を思い出してそれを梢さんの趣向に当てはめていく。

突き放され乱暴にされても、梢さんは関係なく果てるに違いない。
どうでもいいようなつまらない刺激でさえも全てを快感へと変換できる梢さんは、例え晴香ちゃんの親指を鼻の穴に突っ込まれたとしても、喘いで達するのではないだろうか。
もはやそれがしっくり来すぎてそれ以外想像できなくなってしまっている。
つまり、私はどうしても、この二人の交わりを見てみたいという興味に抗えないでいる。

「……」

そう言えば梢さんはちゃんと下着を着け直したのだろうか。
気になってパソコンを操作している梢さんの方を見てみるけれど、はっきりとはわからなかった。

だがそんな私の気持ちをテレパシーのように読み取ったのか、それとも偶然なのか、梢さんはボールペンを床に落としたらしく、フロアを這うようにしてそれを拾った。

一瞬だけ見えた制服スカートの密着したお尻には、下着のラインは浮かばなかったから、少なくとも下は履かずのままで過ごしているのだとわかってしまう。

「……」

ロッカールームでは強気だった私も、さすがに執務スペースでは梢さんの大胆な行動に集中しきれず、周囲の目がないか気になってしまった。
思わずそっと周囲に視線を巡らせるが、私たちの様子は目立っていないようだ。

梢さんは「何を気にしているの?」とでもいうような目つきで私を一瞥してから元通りデスクチェアに腰掛ける。
さすが、露出マゾ気質の人だ。

でももしここにいるのが私でなく晴香ちゃんだったなら、今の私のように辺りの様子を気にしたりなんてしないだろう。
あるいはパンプスを脱いだ脚で、フロアに這いつくばる梢さんのお尻をつつくぐらいの事はするのかもしれない。

…ダメだ。勝手にイメージが膨らんでしまう。

もし目の前でそんな光景が繰り広げられるのだとしたら、私はどう思うのだろう。
素直に興奮できるのか、それとも引いてしまうのか。
それとも晴香ちゃんと一緒になって、梢さんに悪戯したりするのだろうか?…

「…冴子ちゃんの真似、したんだよ」

考え込んでいた所為で、梢さんが傍にいる事に気付かなかった。

「…え?」
「…ふふん」

含み笑いをされて私ははっとする。
もしかして、あの日の事を言っているのだろうか。
…私が美咲さんを驚かせようと思って、パールビーズ付きのセクシーショーツを履いて出勤した日の事を。

あの時の私の様子を、梢さんが察知できていたとしてもおかしくはない。
私はノーパンではなかったがそれに類する事はしていた訳で、梢さんの推測は外れてはいないと言って良い。

「…何言ってるんですか」

そんな事など貴女の勘違いでしょ、という風を装って私は冷静な表情を作り業務に取りかかった。
どうせ、梢さんにはバレバレなんだろうけど。

*-*-*-*-*-

その夜美咲さんが教えてくれたのは、以下のような事だった。

スパイスとして行う複数人でのプレイの後には必ず、本来の恋人同士でしっかりと愛し合う事が重要なのだ、との事。
つまり複数プレイは二人の行為を盛り上げるための、わりとスケールの大きな前戯とも解釈できる。

「覚えてないだろうけど、あの時冴子は意識を失くしちゃってなかなか戻って来ないもんだから、本気で心配になったのよ」
「そうでしたか」
「息してるかどうか確かめないと、ほんとに死んじゃったかと思うぐらいなんだからね?」
「……」

私自身はセックス中に相手が気絶した所に遭遇した経験はないから、それを言われても実感はない。

そんな会話をしているのは、早々に食事も入浴も済ませて二人でベッドに入りながらの事である。

私は思い切り甘えた仕草で美咲さんの胸に顔を生める。
不思議と、以前よりもこういうベタベタするような事も、なぜか自然にできるようになっていた。
…これは明らかに、三人で交わった事によって起こった変化である。

「だから私にやられてる時の事、あんまり記憶にないんでしょ」
「……」

図星なので何とも言えない。
それでも美咲さんは私の肩に腕を回して優しく抱きしめてくれた。

「…だから改めてここから本番、ね」
「…」

私が思っているよりずっと、美咲さんの思い描いている時間的なレンジは広く大きい。
…あれが前戯?そんなバカな。
あれはれっきとした交わり以外の何物でもない、はずだ。

「やってみれば、多分わかるはずだから」

怯えるように見上げた私をなだめるように、美咲さんは優しく語り掛けてくれる。

「あの娘の前で冴子に入れてる時…私が何考えてたかわかる?」
「…わかりません」

美咲さんの手がゆっくりと私の背中を撫でていく。
弱いと知っていて、わざとうなじや脇腹あたりにも触れながら。
そのちょっとした気持ち良さに背中が反ってしまって、思わず美咲さんの胸に埋めていた顔が少し浮いてしまった。

「……はぁん」
「いい声」

美咲さんがぐっと身体全体を押し付けてくる。
何度も見て、触って知っているはずの美咲さんの身体のラインがしっかりわかるぐらいに、私たちは密着した。

互いに身に着けている薄い寝巻が邪魔に思えるぐらいに、熱をもっと感じたくなる。
だから、私も腕に力を込めて美咲さんの身体を引き寄せた。

「……早く二人きりになって、何度でも冴子をイカせたい、って事ばかり考えてた」
「え……」

ほんの少し身じろぎしただけでも、身体同士が擦れて肌から刺激が伝わってくる。

…美咲さんは「あれ」を突っ込んでいる最中に、そんな事を考えていたの?
だって、セックスしてたのに。
その時晴香ちゃんは多少参加していたかもしれないけど、大々的に美咲さんのやる事を邪魔したりはしないはずだ。

「…わかりにくいでしょ」
「……」
「だから、したくて仕方ないのよ、今」

身体にかかる美咲さんの重みが、なんとなくそれを物語っているような感じがした。
美咲さんの倒錯した心持を想像するのが難しくて、ほんの少しだけその考えにふけっていると、横から滑り込んでくるかのように美咲さんの唇が重なってきて私の呼吸が止まる。

「っ……ん」

思わず、鼻から甘い息が漏れていってしまう。
自分の呼吸音だと言うのに、ものすごく甘ったるくて艶めかしい。まるで美咲さんを誘っているかのようだとさえ思った。

「……」

言葉を伝えたいのに、唇はなかなか解放されない。
私は身体をもじもじとよじってしまう。
しかしその動きも美咲さんの腕や脚で捕まえられて、封じ込められるように私は動けなくなった。

美咲さんの手が私の頭の後ろに回って、顔も動かせなくなる。

「んっん……ぅ」

苦しいはずなのに、やっぱり自分の呼吸音に艶めかしい色が混じり過ぎて、ことごとく美咲さんを煽るような結果となる。
だからそれに呼応するように、美咲さんは執拗に私の舌を舐めてきて、唾液が溢れるのも気にせずに私の口内をいいように蹂躙し続けた。

…もう、これだけで。
これだけで、脚の間を擦り合わせなくても、秘部から蜜が溢れ出ているのがわかる。

「は、ふぅ…ん…」

唾液がこぼれる音とそれを舌で絡め取る音、そして互いの甘い吐息の音。
それらが混じって響いているのだが、逆に言うとそれ以外の音はない。

誰の目も気にせずに、好きなだけこの行為に没頭できる…その悦びが、今ならとても強く感じられる。

今この瞬間は、美咲さんだけを見てる。
美咲さんだってそうだ。私だけを求めてくれている。

「…もう、我慢できない」

唇を離したかと思うと、美咲さんはそれだけ言って私の衣服を一気に脱がせた。
私も、微力ながら美咲さんの寝巻に手をかけて脱ぐのを手伝う。

「冴子を、直接感じたいわ」

脚を持ちあげられ美咲さんはそれを自分の肩にかけるようにしながら秘部をぶつけてきた。
勢いをつけてぶつけても、実際に届く刺激は柔らかい。
腰をぐりぐりと動かしながら、しっくりくる場所を探る時間のもどかしささえ、愛おしいと思えた。

「お姉さま、大好きです」
「私もよ」

そんな言葉を交わした瞬間に、ここだというポイントで秘部同士が重なり噛みあう感覚に襲われる。

「そ、そこ…ですっ……あぁ、んっ」
「いいの?冴子」
「い、いい…です…はぁっ…」

一度その位置を記憶するかのように腰を強く押しつけ合ってから、美咲さんがゆっくりと腰を引戻す。
そしてまた同じ線をたどるように腰をスライドさせ秘部同士をくっつけると、ドロドロに溢れた蜜が糸を引いて繋がっていたのを理解する。

見えていないからというのもあるが、離れた時ではなくくっつけた時にその蜜の量と濃さを実感するのだ。

「やんっ、気持ちいい…です…」
「そりゃそうでしょ、気持ち良くしてるんだから」
「だ、あぁ……あふ…」

私の身体は、キスと貝合わせだけでこれまでにないくらい感じてしまっている。
「あれ」のように強く激しい刺激は与えられていないのに、身体は勝手にどんどん昂りの頂上を目指していた。

「冴子…すごくいやらしい、いやらしい所が、すごく好き」
「そんな、あ……ん…」

美咲さんの言葉、行動、眼差し、それら全てが私の身体にたまらない快感と充足感をもたらしてくれる。

「お姉さま、もっと…もっと好きって言って」
「好きよ、冴子…すごく好き」
「あ、あ…私…これだけで…っく」

「私は冴子の事が好き」
「や…ぁ…っ私も、愛してます」

くちゃ、くちゃ…と緩やかに秘部を重ね合わせながら、私は何度美咲さんから「好き」という言葉をもらっただろうか。
それはもう、数えきれないぐらいにたくさんだった。

私はそれに対して概ね喘ぎ声で応え、痙攣で悦びを表現していた。

「あ、うぅ…んっ」
「もっとでしょ?冴子」
「…はい、欲しいです、もっと、もっとしてください」
「わかってる」

美咲さんが用意したのは、大きさも硬さも割と控え目な方の偽竿だった。
コンディションによってはこちらを使う事もあるが、今日出てきたのは意外に思う。

「これならずっと入れていられるし、痛くなりにくいでしょ」
「……」
「ずっとずっと、冴子の中に入っていたいの」
「そんな…」

嬉し過ぎて涙が出そうになる。
「冴子」と甘く囁きながら、美咲さんはゆっくりとのしかかって来た。

軽く「あれ」で入口を擦ってから、少しずつ中へと侵入していく。
あまりにゆっくりで、私は自分から腰を振ってしまいそうになるが、それはぐっとこらえた。

つるりと蜜穴に収まった偽竿は、自由自在に私の内壁を甘くつついて刺激してくる。

「あ、ん…っ」

自然と、私の喘ぎ声も穏やかで柔らかい音に変わる。
そんな私の声を嬉しそうに聞きながら、美咲さんは上半身も密着させてきた。

「あ…っ…」
「冴子、好き」
「……」
「だから、私でいっぱい感じてる所、見せて」
「はい……」

美咲さんは腰を使って器用に偽竿を操っていく。
柔らかい「あれ」であるにも関わらず、しっかりと私の感じる一点をとらえて外す事はなかった。
コツン、コツンとノックするようにその場所を刺激されると、私の身体は強制的に開いて更に奥へと美咲さんを導き入れてしまう。

「もっと、来て、ください」
「うん」

そこからは、細かい腰の動きによって生み出される内壁への刺激と、美咲さんの言葉とキスで私はとろけてしまいそうになった。

唇は、私の名前を--「冴子」と呼んでいるか、「好き」と言っているか、そうでなければ私の唇に重ねられている。

…この時間がずっと続けばいいのに。
達してしまうなんて勿体ない。
それを美咲さんも理解してくれているのか、動きは穏やかで私をむやみに絶頂させようとはしていなかった。

…でも。
その時は近くなっている。

「お姉さま、私…イキたくないのに、イっちゃいそうです…っ」
「いいよ?ずっとしてあげるから…」

そして再び唇を重ねる。
腰の動きは変わらず穏やかで、繊細な細かい動きを繰り返していた。

自分が幽体離脱でもして、この光景を天井から見ていたなら、どんなに羨む事だろう。
ここにあるのは、文字通り愛し合う二人の行為そのものだ。

「冴子、好きよ…いくらでも言ってあげる」
「……あ、あ…あぁっ…」

何か言いたいのだけど、言葉が出て来ない。
激し過ぎるからとか、意識がなくなりそうだからとか、そういうのとは違うのだけれど。

ただ、美咲さんの言葉を、行為を、もっともっと、一つ残らずこの身体で受け止めたい…それだけだ。

だからそこに私の言葉は必要ないような気がしている。
喘いでいるだけで、全てわかってくれる、そんな気がしていた。
だから、果てる瞬間にその申告さえもしなかった。

「あ、あぁっ…ん……」

はかったようにキスの雨が降ってくる。
それは達してしまった身体を癒し包むような、恵みの雨のようだと思った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました

BL / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:2,623

哀歌-aika-【R-18】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:20

雑多掌編集v2 ~沼米 さくらの徒然なる倉庫~

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:482pt お気に入り:6

舞花の初おもらし

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:8

おいしい秘蜜 ~尾崎ふみ緒の頽廃文学作品集~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:6

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:901pt お気に入り:4,184

処理中です...