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同じ時に同じ事を
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…そう言えば、美咲さんのポルシェに同乗するのはいつ以来だろう。
二人で温泉に旅行した時が最後だったろうか。
正直な所、運転している美咲さんの隣にいるのはある意味ものすごく貴重であり悦ぶべきシチュエーションなのは十分に理解しているのだけれど、車も車なら美咲さんの姿も妙にセレブっぽく見えてしまって、もはや格差しか感じないから緊張ばかりして、純粋にその喜ばしい状況を楽しめないというのが本音だ。
そんな状況がまた始まった。
しかも夜のドライブとなるとまた何とも言えない空気感が漂う。
更に言えば行き先は、種類はともかくホテルだとわかっていて車に同乗しているというのが、考えてみるとあまり経験のない事だな、なんて事も思った。
「そうじろじろ見られると、緊張するんだけど」
「あ、すみません」
言われるまで美咲さんをガン見してしまっている事にさえ気付かなかった。
指摘された反動で今度は窓の外ばかり見てしまい首が疲れる。
「付いてから詳しく話すけど、冴子に相談があるの」
「え……」
「けっこう重大な話、かも」
何だろう。重大と言われただけでもう限界ギリギリまで緊張する。
しかも何故自宅でなくわざわざ出かけた先で話すのかも謎だ。
「あ、私もその…重大ではないですが報告があって」
「うん?」
こちらはもったいぶらずにその場で話す事にした。
「お姉さまも含めて、部長の方全員を担当させてもらえる事になりそうです」
「そっか」
美咲さんの表情が微妙だ。どう見ても手放しに喜んでいる風ではない。
いぶかしく思い美咲さんの顔を見ると、「私の話もそれとちょっと関係あるんだ」という前置きがなされる。
しかしそれ以上詳しい話をするつもりはまだないらしく、社内はまた沈黙で満たされていった。
連れて来られたのは都心のいわゆる老舗ラグジュアリーホテルだった。
私が帰宅するまでの間に美咲さんは部屋を取っていたらしく、あっさりとチェックインして客室へと移動する。
訳もわからずただ手を引かれるままについていくと、窓からは綺麗な夜景を一望できる広めのダブルルームに連れて来られた。
「まあ座って、話自体はすぐ終わるから、それが終わったら何か食べよう」
「はい」
二人してソファに横並びに座るけれど、内容も気になるし密着する感じは避けて不自然でない程度の距離を取る。
「会社、辞めようかなと思って」
「……?」
美咲さんは私の反応を観察しながら間を取ってくれている。
「それって、もうお決めになったという事ですか」
「うーん、ほぼ…かな、で相談というのがここからで」
気分が滅入って話を聞くどころではないけれども一応という感じで耳を傾ける。
「冴子も一緒にそこで働いてみない?っていうのが相談の中身」
「そこ…とは」
「ここ」
美咲さんがスマホの画面に表示させたのは、とあるリゾートホテルチェーンの会社ホームページだった。
新しいブランドだが最近女性たちの憧れにもなっているリゾートホテルチェーンである。
ついでに言うとここのアメニティも人気があって、オリジナル商品の開発とネット販売も行っている事は私も知っていた。
「ここ…ですか?」
「そう、ここ」
「ここに、お姉さまが、行くんですか」
「誘われたんだ、役員待遇で」
「……」
「行ってもいいけど、その代わり専属秘書も一緒に雇って欲しいって勝手に言っちゃった、勿論OKだったけど」
「はぁ……」
多分無意識になんだろうけど、美咲さんが私の腰に手を回してきた。
そうされてようやく、スマホを覗き込んだタイミングで身体が接近したのだと後付けで理解する。
「ごめんね、勝手な事して」
「…いえ」
私は画面を見つめたまま顔を上げられない。
美咲さんは少しずつ時間をかけて、こうなる経緯を説明してくれた。
なんでも、何年か前に知り合った女性--その人は後にアプリ開発の会社を立ち上げて『WS』アプリをリリースする事になるのだけれど、その人から紹介されこのリゾートホテルチェーンの女性社長と知り合い、そこの役員として来てくれないかと誘われたのだと言う。
元々その女性社長は、正に今私と美咲さんがいるこの老舗ホテルの経営者の令嬢であり、持ち合わせたリソースを使いながらも自身で新たなブランドホテルを立ち上げてそれを成功に導いているという点ではベンチャー起業家の側面も持っている人物なのだろう。
ホテルの展開も好調な中、オリジナルコスメの開発や販売にも力を入れていくにあたりその分やでの経験者を探していた所で、美咲さんに話が来たのだと言う。
私は、リンクされている会社ホームページの役員名簿や従業員数、会社所在地などを眺めてみて、なんとなく会社の規模感をイメージしてみたりなどするけれども、現実感のなさの方がずっと強い。
「聞いて、冴子」
「…はい」
美咲さんは何故か笑うのをこらえているような、あるいは恥ずかしさを隠そうとしているのか、この状況には似つかわしくない表情になる。
「下らない、って笑わないでね」
「……?」
軽く触れ合っていた身体も、腰に回された腕も離れてしまい、美咲さんは何か決意するような調子でこう言った。
「ここに行けば、自分専用の執務室があるから…」
「…はぁ」
そりゃ役員なんだし多分待遇としては社長に次いでナンバー2かその辺りの役職になるのだろうから、一人用の執務室が宛がわれるのは別に不思議な事ではないだろう。
それを言うのに美咲さんが何故躊躇したのか、理由がわからなかった。
…自分が何か見落としているのだろうかと焦るけれども、美咲さんはあまり急かすでもなく、かと言ってヒントを与えてくれるでもなく、微妙にもじもじした感じで少し顔を赤くしているので、私は考え方が違っているのかもしれないと思い思考をリセットする。
「下らないかもしれない」事となると何だろうか。
私は一度だけ深く息を吸い込んだ。
今の勤務先では、いわゆる平取クラスの役員に個別の執務室はない。
それがあるかないかが美咲さんにとって重要な事、となると。
「お姉さま…もしかして」
「だって、わざわざ会社移るんだもの、そこは重要でしょ?」
今の勤務先をわざわざ辞めてまでそこへ行くのだから、勿論自分にとってより良い条件で働く事ができるようになりたいのはわかるけど。
まさか美咲さんがそんな、私と二人きりになれる空間を確約させた上で話を受ける気になったというのが意外すぎて固まってしまう。
「全部セットって事じゃないですか…それ」
「そうじゃなきゃ冴子まで巻き込む話なんかしなかったわよ」
「……」
経営層ともなると時にこういう図々しさも必要なのだろうか、その辺の事は私にはさっぱりわからないけど、でもどう考えても職場の私物化としか思えない妄想は、美咲さんよりどちらかと言うと私の専業のような気がしていたから、何だか変な気分だった。
「…それがちょうど、冴子の行き詰まり感が解消されようって時に話す事になっちゃって、間が悪いよね」
「……」
「もう一つ、私としてのうちの会社での役割は一つ終わった感もあったしね」
「…何ですか?それ」
「真下みすずがいずれ部長に上がるでしょ、だからもう、私は卒業してもいいんだなって気になった」
「なるほど」
「もっと言うと、冴子がそのまま残って秘書を続けた場合、担当替えがない限りはいずれ真下みすずも持つ事になるでしょ?」
「そうでしょうけど…それが嫌なんですか、もしかして」
「嫌に決まってるでしょ」
やっぱり、すごく図々しいと言うか、我儘と言うか。
そもそも真下課長を警戒すべきは美咲さん側であって、何故それが私にスライドしているのかも意味不明なんだけど。
「冴子は、嫌だった?」
「いいえ」
それは正しい考え方ではないと一般的には非難されるかもしれないけれど、私は美咲さんの傍にいたいと思って秘書課への異動を望んでいたし、仮に美咲さんが他の会社に移るなら、それが現実的に可能であるならばの話だけど、気持ち的には追いかけたい。
それをわざわざ私の居場所まで気にして用意してくれた事に驚くと共に、美咲さんの思いの強さを感じる事ができて私は感動してしまった。
袴田氏からは、所構わず美咲さんとイチャつく事は許さないみたいな事を言われたけれども、このまま美咲さんと一緒に会社を移れば袴田氏の言い残した言葉は何の抑止力も持たなくなってしまうなあ、なんて事も思ったりする。
「何考えてんの、冴子」
「その…大丈夫かなあ、というような事を」
ただでさえ、美咲さんの話を聞く前から同棲は見直そうかなどとまで考えていたと言うのに、引きずられるのはそれとは全く逆方向である。
「大丈夫、そっちのマネジメントは私がしてあげるから」
「…そんなの、やった事あるんですか」
「ないけど、できるわよ」
「……」
私は何しにそこの会社へ行くのかという気にもなるけれど、「美咲さんの傍にいる」というのは元々そういう事なんだから、おじけづいてどうするという気にもなった。
「強いて言うならあっちには秘書課という部門は存在しないから、秘書の役割や業務範囲、仕事の進め方も含めて冴子が一から作り上げる必要があるって事かな」
私の戸惑いを察して真面目な話をされたのだと思うけど、私は思わず「あ」と声を上げてしまった。
「その、そちらの社長さんには秘書が居ないって事ですか」
「居ないけど、状況によっては別途付けるかもっていう感じみたいだから、そこは気にしなくていいと思うわよ…あまりにもって事なら冴子が少し見てあげてもいいと思うけど」
「…わかりました」
私は概ね気持ちを固めてはいるけれど、一応もう何日間か考えてからきちんと返事をするという事にして、その話題を終えた。
「…冴子、今はびびってるみたいだけど、やり始まったら絶対はまるわよ」
それはつまり仕事中にエッチな事をする件に関してという事か。
はまると言われて全否定できない自分がちょっと悲しい。
「私、そういう夢を見たりしたんだよ、何度も」
「は?」
美咲さんに腕を引っ張られて向き合うような形で膝の上に乗せられた。
「…偉くなったらそういう事一回ぐらいやってみたい、っていう願望があるのは自覚してたから、ついそんな事ばかり考えちゃった」
「……」
「シチュエーションが揃ったら、多分絶対やっちゃうし盛り上がっちゃうだろうな」
美咲さんが普段に比べて多弁だ。きっと恥ずかしいのだろう。
…でも、それを考える事自体は全然いけない事だとも思わないし、例えそういう事を夢見てであろうとも、上を目指す動機なんて、こうでなくてはいけないなどという事もないはずだ。
袴田氏に対してもそう思ったけれど、強欲である事を隠さない人だからこそ、それをどうやって実現させようか本気で考えて動くのだろうし、自分の欲帽をコントロールしたりエネルギーに転嫁させる事ができるのかもしれない。
もう何も言わなくて良い、という思いを込めて美咲さんに抱きついた。
美咲さんもきっかけが欲しかったのか、それを合図に言葉を切る。
「…すき焼き、食べようか」
「はい」
ホテルの一階に有名な高級すき焼き店が入っていた。
今ならまだ営業しているだろう。
それでも美咲さんの身体から離れるのが名残惜しくて、私は美咲さんの身体にしがみついたままでいる。
美咲さんの方は恥ずかしい妄想を打ち明けた後だからか、積極的に手を出してくる気配はなかったけれど、私はそういう美咲さんの態度にすらもどかしさを覚えてしまい、自分から顔を近づけて美咲さんの唇を貪った。
「…っ…ん…ふ」
きっと緊張していたのだろう。美咲さんの唇は渇いていた。
私は、そこに潤いを与えながら緊張をほぐすようにそっと舌先で美咲さんの上唇を舐めて、そのままゆっくりと唇の隙間に舌を侵入させる。
緩急を付けていきなり美咲さんの舌を吸い上げるように絡めてからすぐに、柔らかく口内を舐め回してくすぐった。
「…あふ、はんっ……」
美咲さんが軽く悶えるように息を漏らす。
同時に私の背中に回された腕に力が入ったかと思うと、その直後には緩やかに背中を撫で回された。
キスの合間に漏れる息遣いと、徐々に潤いを増して大きくなるクチュリという舌の絡む音が静かな部屋に響く。
美咲さんの手が移動して私の胸を掴むように揉んできたので、私は身体をよじって快感を逃がそうとした。
それでもキスは止めずに、夢中になって互いの唇を舐めたり舌を絡めて吸ったりを激しく続ける。
この辺で止めないと食事にありつけないとわかってはいても、行為の気持ち良さには逆らえなくて、時計を気にしながらも私たちはしばらくそのまま抱き合い濃厚なキスにふけった。
*-*-*-*-*-
食事を挟んだ事で、エッチな気分は一旦落ち着いたのだけれど、二人でシャワーを浴びてベッドに入ると、いつもと違って他にする事もなく私たちはだいぶ早い時間から身体を重ね合わせてしまう事になった。
ベッドの広さは美咲さんの部屋のものと変わらないけれど、ホテルの客室というシチュエーションも手伝ってどこか非日常の興奮がプラスされている気がする。
ホテルで美咲さんとしたのは確か、梢さんたちと行った離島の時以来だけれど、そもそも美咲さんが都心住まいだから、シティホテルに二人で泊まるというのは今日が初めての事だろう。
美咲さんの悪戯心が刺激されたのか、お風呂上りの私の身体はバスローブの前をはだけた状態で大きなはめ殺しのガラス窓に押し付けられている。
ガラス窓に裸の胸が押し付けられてそこがひやりとするが、火照った身体には何故か心地良く感じられた。
ガラス窓と美咲さんの身体に挟まれた状態で、私の耳には美咲さんの唇や舌がチロチロと這い回っている。
「あ…ん、恥ずかしい、です」
「どうせどこからも見えないわよ」
「それは、わかってるんですけど…んっ、あ」
望遠鏡でも覗かなければ高層階の客室の窓に誰がいて何をしているのかなどわかるはずもないとは思うけれど、現に眼下には広大な夜景が広がっているので、恥ずかしいものは恥ずかしい。
美咲さんは「念の為」と言って部屋の明かりを消してベッドサイドの小さなライトだけを灯した状態でこれを始めたけれど、薄暗い部屋で美咲さんに身体をまさぐられるのもまた背徳感のようなものを感じてしまって、私はいつも以上に興奮している事を自覚せざるを得なかった。
「…寒くない?」
「まだ…大丈夫です」
こんな、半ば乱暴に私の身体をガラス窓に押し付けておきながらそんな気使わしげな言葉をかけてくるのは矛盾以外の何物でもないのだけれど、私は従順に答えを返してしまう。
「あ…ん」
急にガラス窓から身体を引き剥がされベッドに押し倒される。
美咲さんの両手が私の胸に重なり、「冷たくなってる」と、そこを温めるような手つきで揉み始めた。
そうしながら器用に膝で私の両脚を開き、「やっぱり」と呟いている。
私としては自分の身体の事だから、言われずともそこがどうなっているのかわかってはいたものの、程度については定かではない。
「膝まで垂れてるよ…」
「…っ、んぁ…あんっ」
私は想像してしまう。
小さな間接照明の明かりにでもはっきりと照らされて光っているであろう私の内腿のいやらしい蜜の痕跡を。
美咲さんはそれを眺めながら、私の胸を揉み回しているのだ。
「何だろう…冴子がめちゃくちゃいやらしく見えるんだけど」
「…し、知りません…そんなのっ、あ、あ…あはぁ…」
「ねえ冴子、これからは時々こういう所でしよっか、ね?」
「は、はい…っん…」
どうせ私が興奮している事は美咲さんにバレバレだろうし、それを美咲さんが悦んでくれるのなら良い事だと思うしかない。
「お、お姉さま…どこか、舐めさせてください」
唇でも花弁でもいい。とにかく自分の口を美咲さんのどこかに触れさせていたくなった。
「じゃ私も舐めるから…」
二人ともなんとなく身体に引っかけていたバスローブを完全に脱ぎ捨てて、それから仰向けに寝ている私の顔を美咲さんがまたぐように覆いかぶさってきた。
「ん、んん…っふ…あ」
まるで初めてそうする恋人同士のように、二人して夢中でお互いの秘部を舐め回した。
初めてする恋人と違うのは、お互いに快感への耐性がついて、感じながらもそれを持続できる感度をきちんと身に着けている事。
だからやみくもに舐めているようでも、核心には触れずにわざと前戯の愛撫を、唇と舌だけを使って施し合っている。
美咲さんは片手で私の膝裏をそっと撫で、私は優しく美咲さんのお尻の肉を掴んだり揉んだりしている。
舌は激しく動かしながらも手や指先では繊細に肌に触れられていて、そういった刺激のギャップもまた堪らないものがあった。
私ばかりが興奮しているのかと思っていたけれど、実際には美咲さんも同じぐらいたっぷり濡らしていて、それを目の当りにした時また嬉しくなり蜜を喜んですすってしまった。
美咲さんは「冴子ったら」と窘めるように言ってきたけど、そう言いながらも私を焦らすように花弁やその内側を丁寧に舐めてきて、それにも私は感極まってしまった。
「…お姉さま、もっと、激しく…して欲しいです」
「うん…っん…はふ…」
私の方はとっくに美咲さんの秘部にむしゃぶりついて派手にそこを舐めすすっているのに、美咲さんは少しずつのペースで激しさを増していき、私はそれに耐えながらも美咲さんの秘部を激しく舐める事は辞めなかった。
「いやらしい…吸ってるのに全然追いつかないんだけど」
「だから…もっと、あ…」
やっとの事で美咲さんが長い音を立ててその場所をすすり上げる。
それを待ちわびていた私の身体は思わず軽く痙攣してしまった。
「あんっ、嬉しい…お姉さまに…されて…」
こちらの舌使いもおのずと激しく、深くなっていくと美咲さんも腰をカクカクと揺らし始めた。
揺れるから、私がただ舐めているだけでも美咲さん自身が快感を増幅させてしまう事になる。
私は首を動かし啄むように美咲さんの秘部に何度も口づけた。
美咲さんの方は私の股間に顔を埋めて、えぐるように秘部の奥底まで舌を突っ込んでいる。
「んん、んぁ…っ」
お互いになんとなく同じタイミングで、膨れ上がった萌芽にも舌を触れさせ始めると、行為の性質は一気に変化していった。
相手への愛撫をどうにか継続したい気持ちと、快感に身を委ねてしまいたくなる気持ちがせめぎ合って、途端に喘ぐ声も悩ましい響きを帯びる。
「んはぁ、あんっ…あひっ」
快感が増していく苦しみから逃れるように、目の前にある相手の秘部に唇を重ねて舌で萌芽を探り当て、そこを舌先で何度も弾く。
「…んっ、く…あむぅ……んん…」
絶頂の申告はしない。それは唇を秘部から離す事になるからだ。
だから私たちは相手の秘部を舐めるという行為を優先させ、絶頂についてはその膣口のぴくぴくという動きで相手のそれを察知する、それだけで良かった。
「んっんん…んふぁ…っ!」
タイミングお合わせて二人で一緒に絶頂を迎える。
美咲さんは私の身体の上からゆっくりと降りて、気だるい感じで身体の向きを変え私に寄り添ってきた。
迎えるように私は横を向いて美咲さんを抱きしめる。
「っ…ん……」
どちらからともなく、愛液で濡れた唇同士を重ねてそれを舐め取っていく。
そうしながら次はどこに何で愛撫するのか、互いの意向を視線だけで確認し合うのだ。
「……」
同じ刺激を与え合った身体は、やはり次も同じ刺激を求めていく。
互いの瞳を見つめたままで、同時に指先を相手の花弁の間に差し入れていった。
舌とは違った硬く自由に動く異物かんが欲しい、そういう感覚はおそらく同じだろう。
私は指にヌルヌルの愛液をたっぷり絡めて、つまむように美咲さんのクリトリスを指先で挟み軽く潰したり撫でたりする。
美咲さんの指は私の膣口を引っかけるように刺激し、内壁のある一点を徹底的に押しまくる。
「あっあん…あぁ…それっ…」
二人で一緒に喘いでいると、相乗効果なのかどんどん声を派手に出してもいいような気になって、または相手を煽りたい気もあるのか、争うようにいやらしく、甲高く声を上げていってしまう。
「あん、あぁ…っ、お姉さまぁ、凄い」
「冴子…っ、ん、あんっ、あ…ダメ…」
お互い、媚びるような動きで相手の指に身体を押し付けて擦ってしまう。
嫌がるような声を上げておきながら、秘部からはしっかり蜜を溢れさせて膣肉の中の指を締め付ける。
「あんっ、イく…イっちゃうっ」
今度は二人で一緒に申告しながら身体を震わせて達した。
秘部に突っ込んだ指は外さずまた音を立てて唇を重ね合う。
その夜は何度もこうして、口と指を使い同じように互いを愛撫しあう行為にふけった。
失神こそしなかったが、その分長い時間快感を得る事ができたしねちねち攻め合う独特の焦れる感じもたっぷり味わう事ができたと思う。
普段はそこまでしつこくしないけれど、交互にお互いの乳首をひたすらしゃぶるのも、何とも言えず興奮した。
美咲さんは、私がした行為をそのまま全部私にも返してくれた。
うつ伏せに寝かせて正中線を舌で舐め上げる行為も、その状態からお尻を持ち上げて後ろから花弁とお尻の割れ目をまとめて舐める行為も、全部。
美咲さんがうっとりとしながら喘いでいた行為で私は悲鳴を上げたりもしたけれど、美咲さんにここまでの表現までさせてしまっているのは自分の所為なような気もした。
でもそれを気にしているのは私だけなのかもしれないとも思う。
「お姉さま、もっと…していいですか」
「…いいよ」
舐め合う行為や指での挿入を既に何度も繰り返した後でもやっぱり私はまだ欲しい気がして、美咲さんに続きをねだってしまう。
仰向けの美咲さんと上下を入れ替え互いの秘部を再び目の前にして、私は美咲さんの秘部に二本の指を突っ込んだ。
美咲さんも同じように私の秘部に指を突き入れる。
…けど、私が動かすより先に美咲さんの指が激しく私の中に出し入れされてしまい、私はその刺激に耐えながらぎこちなく自分の指を動かすはめになってしまった。
「無理しなくていいわよ…」
「嫌です、私も…っあ、あはぁ…ん」
「いい声」
「っ…ん」
自分の秘部と美咲さんの指によって奏でられるいやらしい水音の向こうから、美咲さんの嬉しそうな声が聞こえる。
美咲さんの身体をまたぐように四つん這いになっているから、美咲さんからはきっと私の秘部どころかお尻の穴まで見えているに違いない。
そう思っただけで身体が震えて余計に高揚してしまう。
「あ…あっ、あんっ」
片腕で身体を支えるのが難しくなり、私は美咲さんの秘部を弄る事は諦めてベッドに両手をついてどうにか身体を支えた。
そうするとより一層背中が反っていやらしくお尻を突き出すような恰好になる。
その動機の一つとしては、その態勢の方がいい感じに美咲さんの肌に自分の胸先が擦れて、そこからも快感を拾う事ができるからというのもあるけれど、それだって美咲さんはよく知っている事だった。
「そう、冴子すっごくエッチで可愛い」
「あぁ、ん……っ、あふ…」
二本の指が自由自在に私の膣内で暴れ回る。
激しい動きのはずなのに、ちっとも痛くは感じない。
留まる事なく次々と溢れる蜜を掻き出すようにしながら、内側の感じるポイントを的確に突いてくるから、偽竿でなくてもこれだけで十分達する事はできるのだ。
「お姉さま、そこ…もっとぉ」
「うん」
指で圧迫される場所が一点に集中する。
そこを擦りながら、だけど指はきちんと出し入れを繰り返していて卑猥な水音は止まらない。
「あぁっ、あ、あ…っ、また、イっちゃう」
「イって見せて…ほら」
「は、あ…っ、イっちゃいます…お姉さまぁ…あぁぁっ!」
揺れる自分の乳首がカチカチに勃起しているのも、自分でわかる。
美咲さんに恥ずかしい場所を見せつけておきながらそれに興奮もしている。
奉仕したいのに、という気持ちが消え去った訳ではないけど、こうして美咲さんに身体を弄られ一人でイキまくる事もまた、望んでいる事だ。
「あ、イくっ…んん」
思わず身体の支えが崩れて美咲さんの太腿あたりにしがみついてしまう。
何でもいい、美咲さんの体温を感じていたかった。
私はそのまま疲れ切って眠ったつもりでいたけれど、起きてみると私は美咲さんと並んだ位置で、ちゃんと枕に頭を付けて眠っていたようだった。
自力でそうしたのか、美咲さんがそうしてくれたのかは覚えていない。
目は覚めたもののまだ夜明け前であったから、私は再び美咲さんに寄り添うようにして眠りに就いた。
二人で温泉に旅行した時が最後だったろうか。
正直な所、運転している美咲さんの隣にいるのはある意味ものすごく貴重であり悦ぶべきシチュエーションなのは十分に理解しているのだけれど、車も車なら美咲さんの姿も妙にセレブっぽく見えてしまって、もはや格差しか感じないから緊張ばかりして、純粋にその喜ばしい状況を楽しめないというのが本音だ。
そんな状況がまた始まった。
しかも夜のドライブとなるとまた何とも言えない空気感が漂う。
更に言えば行き先は、種類はともかくホテルだとわかっていて車に同乗しているというのが、考えてみるとあまり経験のない事だな、なんて事も思った。
「そうじろじろ見られると、緊張するんだけど」
「あ、すみません」
言われるまで美咲さんをガン見してしまっている事にさえ気付かなかった。
指摘された反動で今度は窓の外ばかり見てしまい首が疲れる。
「付いてから詳しく話すけど、冴子に相談があるの」
「え……」
「けっこう重大な話、かも」
何だろう。重大と言われただけでもう限界ギリギリまで緊張する。
しかも何故自宅でなくわざわざ出かけた先で話すのかも謎だ。
「あ、私もその…重大ではないですが報告があって」
「うん?」
こちらはもったいぶらずにその場で話す事にした。
「お姉さまも含めて、部長の方全員を担当させてもらえる事になりそうです」
「そっか」
美咲さんの表情が微妙だ。どう見ても手放しに喜んでいる風ではない。
いぶかしく思い美咲さんの顔を見ると、「私の話もそれとちょっと関係あるんだ」という前置きがなされる。
しかしそれ以上詳しい話をするつもりはまだないらしく、社内はまた沈黙で満たされていった。
連れて来られたのは都心のいわゆる老舗ラグジュアリーホテルだった。
私が帰宅するまでの間に美咲さんは部屋を取っていたらしく、あっさりとチェックインして客室へと移動する。
訳もわからずただ手を引かれるままについていくと、窓からは綺麗な夜景を一望できる広めのダブルルームに連れて来られた。
「まあ座って、話自体はすぐ終わるから、それが終わったら何か食べよう」
「はい」
二人してソファに横並びに座るけれど、内容も気になるし密着する感じは避けて不自然でない程度の距離を取る。
「会社、辞めようかなと思って」
「……?」
美咲さんは私の反応を観察しながら間を取ってくれている。
「それって、もうお決めになったという事ですか」
「うーん、ほぼ…かな、で相談というのがここからで」
気分が滅入って話を聞くどころではないけれども一応という感じで耳を傾ける。
「冴子も一緒にそこで働いてみない?っていうのが相談の中身」
「そこ…とは」
「ここ」
美咲さんがスマホの画面に表示させたのは、とあるリゾートホテルチェーンの会社ホームページだった。
新しいブランドだが最近女性たちの憧れにもなっているリゾートホテルチェーンである。
ついでに言うとここのアメニティも人気があって、オリジナル商品の開発とネット販売も行っている事は私も知っていた。
「ここ…ですか?」
「そう、ここ」
「ここに、お姉さまが、行くんですか」
「誘われたんだ、役員待遇で」
「……」
「行ってもいいけど、その代わり専属秘書も一緒に雇って欲しいって勝手に言っちゃった、勿論OKだったけど」
「はぁ……」
多分無意識になんだろうけど、美咲さんが私の腰に手を回してきた。
そうされてようやく、スマホを覗き込んだタイミングで身体が接近したのだと後付けで理解する。
「ごめんね、勝手な事して」
「…いえ」
私は画面を見つめたまま顔を上げられない。
美咲さんは少しずつ時間をかけて、こうなる経緯を説明してくれた。
なんでも、何年か前に知り合った女性--その人は後にアプリ開発の会社を立ち上げて『WS』アプリをリリースする事になるのだけれど、その人から紹介されこのリゾートホテルチェーンの女性社長と知り合い、そこの役員として来てくれないかと誘われたのだと言う。
元々その女性社長は、正に今私と美咲さんがいるこの老舗ホテルの経営者の令嬢であり、持ち合わせたリソースを使いながらも自身で新たなブランドホテルを立ち上げてそれを成功に導いているという点ではベンチャー起業家の側面も持っている人物なのだろう。
ホテルの展開も好調な中、オリジナルコスメの開発や販売にも力を入れていくにあたりその分やでの経験者を探していた所で、美咲さんに話が来たのだと言う。
私は、リンクされている会社ホームページの役員名簿や従業員数、会社所在地などを眺めてみて、なんとなく会社の規模感をイメージしてみたりなどするけれども、現実感のなさの方がずっと強い。
「聞いて、冴子」
「…はい」
美咲さんは何故か笑うのをこらえているような、あるいは恥ずかしさを隠そうとしているのか、この状況には似つかわしくない表情になる。
「下らない、って笑わないでね」
「……?」
軽く触れ合っていた身体も、腰に回された腕も離れてしまい、美咲さんは何か決意するような調子でこう言った。
「ここに行けば、自分専用の執務室があるから…」
「…はぁ」
そりゃ役員なんだし多分待遇としては社長に次いでナンバー2かその辺りの役職になるのだろうから、一人用の執務室が宛がわれるのは別に不思議な事ではないだろう。
それを言うのに美咲さんが何故躊躇したのか、理由がわからなかった。
…自分が何か見落としているのだろうかと焦るけれども、美咲さんはあまり急かすでもなく、かと言ってヒントを与えてくれるでもなく、微妙にもじもじした感じで少し顔を赤くしているので、私は考え方が違っているのかもしれないと思い思考をリセットする。
「下らないかもしれない」事となると何だろうか。
私は一度だけ深く息を吸い込んだ。
今の勤務先では、いわゆる平取クラスの役員に個別の執務室はない。
それがあるかないかが美咲さんにとって重要な事、となると。
「お姉さま…もしかして」
「だって、わざわざ会社移るんだもの、そこは重要でしょ?」
今の勤務先をわざわざ辞めてまでそこへ行くのだから、勿論自分にとってより良い条件で働く事ができるようになりたいのはわかるけど。
まさか美咲さんがそんな、私と二人きりになれる空間を確約させた上で話を受ける気になったというのが意外すぎて固まってしまう。
「全部セットって事じゃないですか…それ」
「そうじゃなきゃ冴子まで巻き込む話なんかしなかったわよ」
「……」
経営層ともなると時にこういう図々しさも必要なのだろうか、その辺の事は私にはさっぱりわからないけど、でもどう考えても職場の私物化としか思えない妄想は、美咲さんよりどちらかと言うと私の専業のような気がしていたから、何だか変な気分だった。
「…それがちょうど、冴子の行き詰まり感が解消されようって時に話す事になっちゃって、間が悪いよね」
「……」
「もう一つ、私としてのうちの会社での役割は一つ終わった感もあったしね」
「…何ですか?それ」
「真下みすずがいずれ部長に上がるでしょ、だからもう、私は卒業してもいいんだなって気になった」
「なるほど」
「もっと言うと、冴子がそのまま残って秘書を続けた場合、担当替えがない限りはいずれ真下みすずも持つ事になるでしょ?」
「そうでしょうけど…それが嫌なんですか、もしかして」
「嫌に決まってるでしょ」
やっぱり、すごく図々しいと言うか、我儘と言うか。
そもそも真下課長を警戒すべきは美咲さん側であって、何故それが私にスライドしているのかも意味不明なんだけど。
「冴子は、嫌だった?」
「いいえ」
それは正しい考え方ではないと一般的には非難されるかもしれないけれど、私は美咲さんの傍にいたいと思って秘書課への異動を望んでいたし、仮に美咲さんが他の会社に移るなら、それが現実的に可能であるならばの話だけど、気持ち的には追いかけたい。
それをわざわざ私の居場所まで気にして用意してくれた事に驚くと共に、美咲さんの思いの強さを感じる事ができて私は感動してしまった。
袴田氏からは、所構わず美咲さんとイチャつく事は許さないみたいな事を言われたけれども、このまま美咲さんと一緒に会社を移れば袴田氏の言い残した言葉は何の抑止力も持たなくなってしまうなあ、なんて事も思ったりする。
「何考えてんの、冴子」
「その…大丈夫かなあ、というような事を」
ただでさえ、美咲さんの話を聞く前から同棲は見直そうかなどとまで考えていたと言うのに、引きずられるのはそれとは全く逆方向である。
「大丈夫、そっちのマネジメントは私がしてあげるから」
「…そんなの、やった事あるんですか」
「ないけど、できるわよ」
「……」
私は何しにそこの会社へ行くのかという気にもなるけれど、「美咲さんの傍にいる」というのは元々そういう事なんだから、おじけづいてどうするという気にもなった。
「強いて言うならあっちには秘書課という部門は存在しないから、秘書の役割や業務範囲、仕事の進め方も含めて冴子が一から作り上げる必要があるって事かな」
私の戸惑いを察して真面目な話をされたのだと思うけど、私は思わず「あ」と声を上げてしまった。
「その、そちらの社長さんには秘書が居ないって事ですか」
「居ないけど、状況によっては別途付けるかもっていう感じみたいだから、そこは気にしなくていいと思うわよ…あまりにもって事なら冴子が少し見てあげてもいいと思うけど」
「…わかりました」
私は概ね気持ちを固めてはいるけれど、一応もう何日間か考えてからきちんと返事をするという事にして、その話題を終えた。
「…冴子、今はびびってるみたいだけど、やり始まったら絶対はまるわよ」
それはつまり仕事中にエッチな事をする件に関してという事か。
はまると言われて全否定できない自分がちょっと悲しい。
「私、そういう夢を見たりしたんだよ、何度も」
「は?」
美咲さんに腕を引っ張られて向き合うような形で膝の上に乗せられた。
「…偉くなったらそういう事一回ぐらいやってみたい、っていう願望があるのは自覚してたから、ついそんな事ばかり考えちゃった」
「……」
「シチュエーションが揃ったら、多分絶対やっちゃうし盛り上がっちゃうだろうな」
美咲さんが普段に比べて多弁だ。きっと恥ずかしいのだろう。
…でも、それを考える事自体は全然いけない事だとも思わないし、例えそういう事を夢見てであろうとも、上を目指す動機なんて、こうでなくてはいけないなどという事もないはずだ。
袴田氏に対してもそう思ったけれど、強欲である事を隠さない人だからこそ、それをどうやって実現させようか本気で考えて動くのだろうし、自分の欲帽をコントロールしたりエネルギーに転嫁させる事ができるのかもしれない。
もう何も言わなくて良い、という思いを込めて美咲さんに抱きついた。
美咲さんもきっかけが欲しかったのか、それを合図に言葉を切る。
「…すき焼き、食べようか」
「はい」
ホテルの一階に有名な高級すき焼き店が入っていた。
今ならまだ営業しているだろう。
それでも美咲さんの身体から離れるのが名残惜しくて、私は美咲さんの身体にしがみついたままでいる。
美咲さんの方は恥ずかしい妄想を打ち明けた後だからか、積極的に手を出してくる気配はなかったけれど、私はそういう美咲さんの態度にすらもどかしさを覚えてしまい、自分から顔を近づけて美咲さんの唇を貪った。
「…っ…ん…ふ」
きっと緊張していたのだろう。美咲さんの唇は渇いていた。
私は、そこに潤いを与えながら緊張をほぐすようにそっと舌先で美咲さんの上唇を舐めて、そのままゆっくりと唇の隙間に舌を侵入させる。
緩急を付けていきなり美咲さんの舌を吸い上げるように絡めてからすぐに、柔らかく口内を舐め回してくすぐった。
「…あふ、はんっ……」
美咲さんが軽く悶えるように息を漏らす。
同時に私の背中に回された腕に力が入ったかと思うと、その直後には緩やかに背中を撫で回された。
キスの合間に漏れる息遣いと、徐々に潤いを増して大きくなるクチュリという舌の絡む音が静かな部屋に響く。
美咲さんの手が移動して私の胸を掴むように揉んできたので、私は身体をよじって快感を逃がそうとした。
それでもキスは止めずに、夢中になって互いの唇を舐めたり舌を絡めて吸ったりを激しく続ける。
この辺で止めないと食事にありつけないとわかってはいても、行為の気持ち良さには逆らえなくて、時計を気にしながらも私たちはしばらくそのまま抱き合い濃厚なキスにふけった。
*-*-*-*-*-
食事を挟んだ事で、エッチな気分は一旦落ち着いたのだけれど、二人でシャワーを浴びてベッドに入ると、いつもと違って他にする事もなく私たちはだいぶ早い時間から身体を重ね合わせてしまう事になった。
ベッドの広さは美咲さんの部屋のものと変わらないけれど、ホテルの客室というシチュエーションも手伝ってどこか非日常の興奮がプラスされている気がする。
ホテルで美咲さんとしたのは確か、梢さんたちと行った離島の時以来だけれど、そもそも美咲さんが都心住まいだから、シティホテルに二人で泊まるというのは今日が初めての事だろう。
美咲さんの悪戯心が刺激されたのか、お風呂上りの私の身体はバスローブの前をはだけた状態で大きなはめ殺しのガラス窓に押し付けられている。
ガラス窓に裸の胸が押し付けられてそこがひやりとするが、火照った身体には何故か心地良く感じられた。
ガラス窓と美咲さんの身体に挟まれた状態で、私の耳には美咲さんの唇や舌がチロチロと這い回っている。
「あ…ん、恥ずかしい、です」
「どうせどこからも見えないわよ」
「それは、わかってるんですけど…んっ、あ」
望遠鏡でも覗かなければ高層階の客室の窓に誰がいて何をしているのかなどわかるはずもないとは思うけれど、現に眼下には広大な夜景が広がっているので、恥ずかしいものは恥ずかしい。
美咲さんは「念の為」と言って部屋の明かりを消してベッドサイドの小さなライトだけを灯した状態でこれを始めたけれど、薄暗い部屋で美咲さんに身体をまさぐられるのもまた背徳感のようなものを感じてしまって、私はいつも以上に興奮している事を自覚せざるを得なかった。
「…寒くない?」
「まだ…大丈夫です」
こんな、半ば乱暴に私の身体をガラス窓に押し付けておきながらそんな気使わしげな言葉をかけてくるのは矛盾以外の何物でもないのだけれど、私は従順に答えを返してしまう。
「あ…ん」
急にガラス窓から身体を引き剥がされベッドに押し倒される。
美咲さんの両手が私の胸に重なり、「冷たくなってる」と、そこを温めるような手つきで揉み始めた。
そうしながら器用に膝で私の両脚を開き、「やっぱり」と呟いている。
私としては自分の身体の事だから、言われずともそこがどうなっているのかわかってはいたものの、程度については定かではない。
「膝まで垂れてるよ…」
「…っ、んぁ…あんっ」
私は想像してしまう。
小さな間接照明の明かりにでもはっきりと照らされて光っているであろう私の内腿のいやらしい蜜の痕跡を。
美咲さんはそれを眺めながら、私の胸を揉み回しているのだ。
「何だろう…冴子がめちゃくちゃいやらしく見えるんだけど」
「…し、知りません…そんなのっ、あ、あ…あはぁ…」
「ねえ冴子、これからは時々こういう所でしよっか、ね?」
「は、はい…っん…」
どうせ私が興奮している事は美咲さんにバレバレだろうし、それを美咲さんが悦んでくれるのなら良い事だと思うしかない。
「お、お姉さま…どこか、舐めさせてください」
唇でも花弁でもいい。とにかく自分の口を美咲さんのどこかに触れさせていたくなった。
「じゃ私も舐めるから…」
二人ともなんとなく身体に引っかけていたバスローブを完全に脱ぎ捨てて、それから仰向けに寝ている私の顔を美咲さんがまたぐように覆いかぶさってきた。
「ん、んん…っふ…あ」
まるで初めてそうする恋人同士のように、二人して夢中でお互いの秘部を舐め回した。
初めてする恋人と違うのは、お互いに快感への耐性がついて、感じながらもそれを持続できる感度をきちんと身に着けている事。
だからやみくもに舐めているようでも、核心には触れずにわざと前戯の愛撫を、唇と舌だけを使って施し合っている。
美咲さんは片手で私の膝裏をそっと撫で、私は優しく美咲さんのお尻の肉を掴んだり揉んだりしている。
舌は激しく動かしながらも手や指先では繊細に肌に触れられていて、そういった刺激のギャップもまた堪らないものがあった。
私ばかりが興奮しているのかと思っていたけれど、実際には美咲さんも同じぐらいたっぷり濡らしていて、それを目の当りにした時また嬉しくなり蜜を喜んですすってしまった。
美咲さんは「冴子ったら」と窘めるように言ってきたけど、そう言いながらも私を焦らすように花弁やその内側を丁寧に舐めてきて、それにも私は感極まってしまった。
「…お姉さま、もっと、激しく…して欲しいです」
「うん…っん…はふ…」
私の方はとっくに美咲さんの秘部にむしゃぶりついて派手にそこを舐めすすっているのに、美咲さんは少しずつのペースで激しさを増していき、私はそれに耐えながらも美咲さんの秘部を激しく舐める事は辞めなかった。
「いやらしい…吸ってるのに全然追いつかないんだけど」
「だから…もっと、あ…」
やっとの事で美咲さんが長い音を立ててその場所をすすり上げる。
それを待ちわびていた私の身体は思わず軽く痙攣してしまった。
「あんっ、嬉しい…お姉さまに…されて…」
こちらの舌使いもおのずと激しく、深くなっていくと美咲さんも腰をカクカクと揺らし始めた。
揺れるから、私がただ舐めているだけでも美咲さん自身が快感を増幅させてしまう事になる。
私は首を動かし啄むように美咲さんの秘部に何度も口づけた。
美咲さんの方は私の股間に顔を埋めて、えぐるように秘部の奥底まで舌を突っ込んでいる。
「んん、んぁ…っ」
お互いになんとなく同じタイミングで、膨れ上がった萌芽にも舌を触れさせ始めると、行為の性質は一気に変化していった。
相手への愛撫をどうにか継続したい気持ちと、快感に身を委ねてしまいたくなる気持ちがせめぎ合って、途端に喘ぐ声も悩ましい響きを帯びる。
「んはぁ、あんっ…あひっ」
快感が増していく苦しみから逃れるように、目の前にある相手の秘部に唇を重ねて舌で萌芽を探り当て、そこを舌先で何度も弾く。
「…んっ、く…あむぅ……んん…」
絶頂の申告はしない。それは唇を秘部から離す事になるからだ。
だから私たちは相手の秘部を舐めるという行為を優先させ、絶頂についてはその膣口のぴくぴくという動きで相手のそれを察知する、それだけで良かった。
「んっんん…んふぁ…っ!」
タイミングお合わせて二人で一緒に絶頂を迎える。
美咲さんは私の身体の上からゆっくりと降りて、気だるい感じで身体の向きを変え私に寄り添ってきた。
迎えるように私は横を向いて美咲さんを抱きしめる。
「っ…ん……」
どちらからともなく、愛液で濡れた唇同士を重ねてそれを舐め取っていく。
そうしながら次はどこに何で愛撫するのか、互いの意向を視線だけで確認し合うのだ。
「……」
同じ刺激を与え合った身体は、やはり次も同じ刺激を求めていく。
互いの瞳を見つめたままで、同時に指先を相手の花弁の間に差し入れていった。
舌とは違った硬く自由に動く異物かんが欲しい、そういう感覚はおそらく同じだろう。
私は指にヌルヌルの愛液をたっぷり絡めて、つまむように美咲さんのクリトリスを指先で挟み軽く潰したり撫でたりする。
美咲さんの指は私の膣口を引っかけるように刺激し、内壁のある一点を徹底的に押しまくる。
「あっあん…あぁ…それっ…」
二人で一緒に喘いでいると、相乗効果なのかどんどん声を派手に出してもいいような気になって、または相手を煽りたい気もあるのか、争うようにいやらしく、甲高く声を上げていってしまう。
「あん、あぁ…っ、お姉さまぁ、凄い」
「冴子…っ、ん、あんっ、あ…ダメ…」
お互い、媚びるような動きで相手の指に身体を押し付けて擦ってしまう。
嫌がるような声を上げておきながら、秘部からはしっかり蜜を溢れさせて膣肉の中の指を締め付ける。
「あんっ、イく…イっちゃうっ」
今度は二人で一緒に申告しながら身体を震わせて達した。
秘部に突っ込んだ指は外さずまた音を立てて唇を重ね合う。
その夜は何度もこうして、口と指を使い同じように互いを愛撫しあう行為にふけった。
失神こそしなかったが、その分長い時間快感を得る事ができたしねちねち攻め合う独特の焦れる感じもたっぷり味わう事ができたと思う。
普段はそこまでしつこくしないけれど、交互にお互いの乳首をひたすらしゃぶるのも、何とも言えず興奮した。
美咲さんは、私がした行為をそのまま全部私にも返してくれた。
うつ伏せに寝かせて正中線を舌で舐め上げる行為も、その状態からお尻を持ち上げて後ろから花弁とお尻の割れ目をまとめて舐める行為も、全部。
美咲さんがうっとりとしながら喘いでいた行為で私は悲鳴を上げたりもしたけれど、美咲さんにここまでの表現までさせてしまっているのは自分の所為なような気もした。
でもそれを気にしているのは私だけなのかもしれないとも思う。
「お姉さま、もっと…していいですか」
「…いいよ」
舐め合う行為や指での挿入を既に何度も繰り返した後でもやっぱり私はまだ欲しい気がして、美咲さんに続きをねだってしまう。
仰向けの美咲さんと上下を入れ替え互いの秘部を再び目の前にして、私は美咲さんの秘部に二本の指を突っ込んだ。
美咲さんも同じように私の秘部に指を突き入れる。
…けど、私が動かすより先に美咲さんの指が激しく私の中に出し入れされてしまい、私はその刺激に耐えながらぎこちなく自分の指を動かすはめになってしまった。
「無理しなくていいわよ…」
「嫌です、私も…っあ、あはぁ…ん」
「いい声」
「っ…ん」
自分の秘部と美咲さんの指によって奏でられるいやらしい水音の向こうから、美咲さんの嬉しそうな声が聞こえる。
美咲さんの身体をまたぐように四つん這いになっているから、美咲さんからはきっと私の秘部どころかお尻の穴まで見えているに違いない。
そう思っただけで身体が震えて余計に高揚してしまう。
「あ…あっ、あんっ」
片腕で身体を支えるのが難しくなり、私は美咲さんの秘部を弄る事は諦めてベッドに両手をついてどうにか身体を支えた。
そうするとより一層背中が反っていやらしくお尻を突き出すような恰好になる。
その動機の一つとしては、その態勢の方がいい感じに美咲さんの肌に自分の胸先が擦れて、そこからも快感を拾う事ができるからというのもあるけれど、それだって美咲さんはよく知っている事だった。
「そう、冴子すっごくエッチで可愛い」
「あぁ、ん……っ、あふ…」
二本の指が自由自在に私の膣内で暴れ回る。
激しい動きのはずなのに、ちっとも痛くは感じない。
留まる事なく次々と溢れる蜜を掻き出すようにしながら、内側の感じるポイントを的確に突いてくるから、偽竿でなくてもこれだけで十分達する事はできるのだ。
「お姉さま、そこ…もっとぉ」
「うん」
指で圧迫される場所が一点に集中する。
そこを擦りながら、だけど指はきちんと出し入れを繰り返していて卑猥な水音は止まらない。
「あぁっ、あ、あ…っ、また、イっちゃう」
「イって見せて…ほら」
「は、あ…っ、イっちゃいます…お姉さまぁ…あぁぁっ!」
揺れる自分の乳首がカチカチに勃起しているのも、自分でわかる。
美咲さんに恥ずかしい場所を見せつけておきながらそれに興奮もしている。
奉仕したいのに、という気持ちが消え去った訳ではないけど、こうして美咲さんに身体を弄られ一人でイキまくる事もまた、望んでいる事だ。
「あ、イくっ…んん」
思わず身体の支えが崩れて美咲さんの太腿あたりにしがみついてしまう。
何でもいい、美咲さんの体温を感じていたかった。
私はそのまま疲れ切って眠ったつもりでいたけれど、起きてみると私は美咲さんと並んだ位置で、ちゃんと枕に頭を付けて眠っていたようだった。
自力でそうしたのか、美咲さんがそうしてくれたのかは覚えていない。
目は覚めたもののまだ夜明け前であったから、私は再び美咲さんに寄り添うようにして眠りに就いた。
応援ありがとうございます!
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