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泣く赤子と精霊たちには勝てぬ
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※※※
尋常でない数の<小さな妖精たち>がアルバの泣き声に反応して、一目散に後方に位置する領主の館へ向かって飛び立つのを目にしたアルバの父アレックスは、大混乱に陥っているセヴェルの町で身動きが取れずにいた。
「妖精たちが動き出した!屋敷にはマリアやアルバがいるのに・・・!」
まさか目に入れても痛くない娘アルバの存在が、目の前の小山のように巨大なドラゴンや四大精霊に加え、小さな妖精たちをこの地へ招き寄せたとは思わないアレックスである。
※※※
それは時を同じくしてギャン泣きするアルバに手こずっていたマリアも同様だった。
それもそのはずで、アルバやシャハルという名前は古来から縁起の良い「夜明け」を表す馴染み深いものだったからである。要するに非常に人気な女の子の名前だったのだ。ちなみに男の子ならシャハルと名付けられることが多い。
そのため、特に暁の国や天明の国では珍しくもない名前だった。
マリアの場合、実の父であるマリウスから「育ての親の師匠アルバ」について「夜明けの大魔女と呼ばれたのは、ただ大陸に平和な世界の幕開けを告げた偉大な人物というだけじゃなくアルバの名の語源からも来ていたのだよ」と伝え聞いていたことも大きかった。
もし女の子が生まれたらアルバ、男の子だったらシャハルにしようと妊娠が発覚した時点で夫となったアレックスに相談したのである。
「お父様を育てたお婆様(仮)と同じ名前だったら素敵ね」
ほとんど遠くの親戚感覚で名付けたアルバという名前が大魔女転生の引き金になったかは謎である。
※※※
さて元気にご挨拶したドラゴンの坊(ぼう)と四大精霊たちは、小さな妖精たちの大移動と彼らの叫んだ言葉にびっくりしていた。
いや、正確には坊(ぼう)が軽く混乱していた。
(アルバが泣く?どうして???)
(何が悲しい?苦しんでいるのか?アルバは無事に生まれてきたのではないのか?)
止める間もなく上空から見る限り、この町で一番大きな建物の方へと妖精たちが小さな羽を広げて飛んでいくのを、坊(ぼう)と遅れて精霊たちも慌てて追いかける。
坊(ぼう)の記憶の中のアルバは常に笑っていて、とても泣く姿など坊(ぼう)には想像もつかない。とにかく坊(ぼう)にとっては「面白れぇ女」という印象の強い大好きな<最愛のママ>だった。
だからこそ、実に器用にお座りのポーズをしていた坊(ぼう)は即座に大きな翼を広げて、方向転換して小さな妖精たちを先導として追いかけたのだ。
対して、精霊たちは小さな妖精たちの動きの速さに驚いたものの、まだ落ち着いていた。かつて赤子だったアルバに気まぐれに加護を授けた精霊たちである。約百数十年ぶりの邂逅がまた赤子の姿とは皮肉だが、再びアルバの成長を見守れるのかと思えば、小さな妖精たちや坊(ぼう)のように慌てふためくこともなく・・・。
(ほう、ほう!元気に泣いておるか!ここまで泣き声が聞こえるわ)
(確かにアルバの魔力に間違いない!何か興奮しているようだのぉ?)
(我らに気づいたようだが、さてどうするか・・・。泣く子には勝てぬからな)
(今世も加護を授けることを果たしてアルバは喜ぶのか?いっそ本人に聞いてみるか・・・)
かなり呑気に『ギフト』という名の祝福の加護を授けるかどうかで悩んでいた。
※※※
数秒後、マリアが屋敷に張った結界が破られたのは当然と言えば当然の出来事であった。
無理やり強引に結界が破られた衝撃で思わずその場にうずくまるマリアの周りを小さな妖精たちが取り囲む。
正確にはマリアの腕の中で泣いてるアルバの周りである。
多くの小さな妖精たちが初めてアルバに出会ったのは少女時代のこと。赤子のアルバなど坊(ぼう)と同じく知らないのだ。小さな妖精たちと一緒に歌って踊って時にいたずらもして、いつまでも15歳の姿のまま変わらぬ<最愛>。
(アルバ、泣き止んで~~~~!!!)
(アルバ、苦しい!?悲しい!?)
((( どうして泣いてるの~~~~! )))
屋敷を埋め尽くす尋常でない数の小さな妖精たちが口々に叫ぶ言葉に、アルバがギャン泣きで答えたことは言うまでもない。
ドラゴンの坊(ぼう)と精霊たちが遅れて屋敷に到着した時、アルバに前世の記憶が残っていることに気づいた妖精たちがアルバの周りでどんちゃん騒ぎを始めようとしていたため、今度こそ戸惑う坊(ぼう)をよそに四大精霊たちの怒りの説教が始まったのも必然である。
アルバは心底思う。
(私の普通を返して~~~!!!)
(よくもマリアお母さんを傷つけたな!許すまじ~!!!)
嘆きと怒りと入り混じったギャン泣きが当分続いたのは、だれが考えても仕方のないことといえよう。
なお赤子の一番よく泣く時期は生後約1か月から2か月と言われている。アルバのギャン泣きはまだまだ続く。
前世の記憶があるために比較的おとなしく夜泣きもしなかったアルバが、この日を境にギャン泣きし続けることになるとは、マリアも屋敷に急ぎ戻ったアレックスも与り知らぬ話であった。
尋常でない数の<小さな妖精たち>がアルバの泣き声に反応して、一目散に後方に位置する領主の館へ向かって飛び立つのを目にしたアルバの父アレックスは、大混乱に陥っているセヴェルの町で身動きが取れずにいた。
「妖精たちが動き出した!屋敷にはマリアやアルバがいるのに・・・!」
まさか目に入れても痛くない娘アルバの存在が、目の前の小山のように巨大なドラゴンや四大精霊に加え、小さな妖精たちをこの地へ招き寄せたとは思わないアレックスである。
※※※
それは時を同じくしてギャン泣きするアルバに手こずっていたマリアも同様だった。
それもそのはずで、アルバやシャハルという名前は古来から縁起の良い「夜明け」を表す馴染み深いものだったからである。要するに非常に人気な女の子の名前だったのだ。ちなみに男の子ならシャハルと名付けられることが多い。
そのため、特に暁の国や天明の国では珍しくもない名前だった。
マリアの場合、実の父であるマリウスから「育ての親の師匠アルバ」について「夜明けの大魔女と呼ばれたのは、ただ大陸に平和な世界の幕開けを告げた偉大な人物というだけじゃなくアルバの名の語源からも来ていたのだよ」と伝え聞いていたことも大きかった。
もし女の子が生まれたらアルバ、男の子だったらシャハルにしようと妊娠が発覚した時点で夫となったアレックスに相談したのである。
「お父様を育てたお婆様(仮)と同じ名前だったら素敵ね」
ほとんど遠くの親戚感覚で名付けたアルバという名前が大魔女転生の引き金になったかは謎である。
※※※
さて元気にご挨拶したドラゴンの坊(ぼう)と四大精霊たちは、小さな妖精たちの大移動と彼らの叫んだ言葉にびっくりしていた。
いや、正確には坊(ぼう)が軽く混乱していた。
(アルバが泣く?どうして???)
(何が悲しい?苦しんでいるのか?アルバは無事に生まれてきたのではないのか?)
止める間もなく上空から見る限り、この町で一番大きな建物の方へと妖精たちが小さな羽を広げて飛んでいくのを、坊(ぼう)と遅れて精霊たちも慌てて追いかける。
坊(ぼう)の記憶の中のアルバは常に笑っていて、とても泣く姿など坊(ぼう)には想像もつかない。とにかく坊(ぼう)にとっては「面白れぇ女」という印象の強い大好きな<最愛のママ>だった。
だからこそ、実に器用にお座りのポーズをしていた坊(ぼう)は即座に大きな翼を広げて、方向転換して小さな妖精たちを先導として追いかけたのだ。
対して、精霊たちは小さな妖精たちの動きの速さに驚いたものの、まだ落ち着いていた。かつて赤子だったアルバに気まぐれに加護を授けた精霊たちである。約百数十年ぶりの邂逅がまた赤子の姿とは皮肉だが、再びアルバの成長を見守れるのかと思えば、小さな妖精たちや坊(ぼう)のように慌てふためくこともなく・・・。
(ほう、ほう!元気に泣いておるか!ここまで泣き声が聞こえるわ)
(確かにアルバの魔力に間違いない!何か興奮しているようだのぉ?)
(我らに気づいたようだが、さてどうするか・・・。泣く子には勝てぬからな)
(今世も加護を授けることを果たしてアルバは喜ぶのか?いっそ本人に聞いてみるか・・・)
かなり呑気に『ギフト』という名の祝福の加護を授けるかどうかで悩んでいた。
※※※
数秒後、マリアが屋敷に張った結界が破られたのは当然と言えば当然の出来事であった。
無理やり強引に結界が破られた衝撃で思わずその場にうずくまるマリアの周りを小さな妖精たちが取り囲む。
正確にはマリアの腕の中で泣いてるアルバの周りである。
多くの小さな妖精たちが初めてアルバに出会ったのは少女時代のこと。赤子のアルバなど坊(ぼう)と同じく知らないのだ。小さな妖精たちと一緒に歌って踊って時にいたずらもして、いつまでも15歳の姿のまま変わらぬ<最愛>。
(アルバ、泣き止んで~~~~!!!)
(アルバ、苦しい!?悲しい!?)
((( どうして泣いてるの~~~~! )))
屋敷を埋め尽くす尋常でない数の小さな妖精たちが口々に叫ぶ言葉に、アルバがギャン泣きで答えたことは言うまでもない。
ドラゴンの坊(ぼう)と精霊たちが遅れて屋敷に到着した時、アルバに前世の記憶が残っていることに気づいた妖精たちがアルバの周りでどんちゃん騒ぎを始めようとしていたため、今度こそ戸惑う坊(ぼう)をよそに四大精霊たちの怒りの説教が始まったのも必然である。
アルバは心底思う。
(私の普通を返して~~~!!!)
(よくもマリアお母さんを傷つけたな!許すまじ~!!!)
嘆きと怒りと入り混じったギャン泣きが当分続いたのは、だれが考えても仕方のないことといえよう。
なお赤子の一番よく泣く時期は生後約1か月から2か月と言われている。アルバのギャン泣きはまだまだ続く。
前世の記憶があるために比較的おとなしく夜泣きもしなかったアルバが、この日を境にギャン泣きし続けることになるとは、マリアも屋敷に急ぎ戻ったアレックスも与り知らぬ話であった。
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