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「親の心子知らず」と「子の心親知らず」
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※※※
親の心も知らずに勝手気ままに振る舞うのが親の心子知らずならば、親が子どもをいつまでも幼いと思い子どもの本心を知らないのが子の心親知らずである。
これはアルバを巡る様々な形の親子のお話。
※※※
小さな妖精たちの暴走によって半壊した領主の屋敷を前に、セヴェルの町の住民たちの安全を騎士団長とその部下に託して、単身で屋敷に戻ってきたアレックスは「どうかマリアたちが無事であるように」と必死に神に祈っていた。
マリアが張った結界が破られた屋敷の光景は悲惨の一言に尽きた。
何しろ窓という窓のガラスが割れ、玄関の扉であっただろう木の破片が周辺に飛び散り、穴だらけになった壁の中で縦横無尽に小さな妖精たちが屋敷内を埋め尽くして飛び回り、外にまであふれ出しているのが一目で見てわかる状況だったのだ。
どうみても【暴走】という名の襲撃である。
極めつけは屋根の上にチョコンとお座りしながら穴の開いた屋敷の中を覗きこんでいる小山のようなドラゴンの存在。鼻先を穴の中に近づけては、また穴から顔を出してを繰り返している。
「何をしているんだ……?」
いまいち状況が呑み込めず、かつては玄関扉だっただろう大穴を前に呆然と上を見上げる。
だが、他にもいたはずだ。アレックス自身も知らぬうちに呟いた。
「四大精霊たちは何処へ消えた?」
おそらく近くにいるのであろうが、姿が見えない。気配を探ると屋敷内からそれらしき声のようなものが聞こえるが、何を言っているかまでは聞き取れず、代わりに屋敷内からはノルド辺境伯家に仕える使用人たちの悲鳴や叫び声が響いていた。どうやら生存者がいるらしい。
その事実に少しだけ安堵した。しかし屋敷が半壊したことに何の変わりもない。
「だれか夢だと言ってくれ?」
そう言いたくなっても仕方がないくらい壊滅的被害が発生していた。
そんな時、2階の夫婦の寝室付近からギャン泣きする赤子の声が異様に大きく外へと聞こえてきた。アレックスは思わず周囲に響きわたる大声で屋敷に向かって叫んだ。
「アルバ、無事か!?マリア、頼むから返事をしてくれ!」
屋根の上のドラゴンの坊(ぼう)と外にはみ出していた無数の小さな妖精たちが一斉にアレックスの声に反応したのは次の瞬間だった。
「「「アルバママを知ってるの!?」」」
見事に両者の声がハモって重なった。
「ハァッ!?」
反射的にアレックスの口から奇声が発せられたのも当然のことであった。
赤子をママとはこれ如何に!?アレックスの混乱が始まる。
※※※
そのころ、屋敷の中では四大精霊による説教が長引いていた。
何しろ、故郷と家族を失い独りぼっちになってしまったアルバを育てたのはほかでもない四大精霊たちである。我が子のように可愛いアルバを赤子のときから亡くなる最期まで見届けたのだ。種族を超えた絆が確かにアルバと精霊たちの間には存在していた。
(前世で我ら精霊たちと精霊の亜種であるお前たち妖精が関わったからこそ、アルバは魔物の群れに村を襲われ家族を失ったのだろうが!まさか、あの時のアルバの姿を忘れたとでもいうつもりか!?)
(そうだ!今世のアルバの母御を傷つけるとは何事か~~~!!!)
(泣くのが赤子の仕事とはいえ、我らを見てギャン泣きしているではないか。お祭り騒ぎなどしている場合か!)
(どんちゃん騒ぎの前に、この家を何とかしないか~!)
などなど精霊たちの説教は続く。
小さな妖精たちは小さい体を更に縮めて、ひたすらアルバに謝ったのであった。
当然のごとく返ってきたのは拒絶のギャン泣きだったが。
※※※
マリアといえば結界を破られた衝撃で、その場でしゃがんだ姿勢のまま、精霊や小さな妖精たちの会話という名の念話を用いた説教を驚きをもって聞いていた。
「前世のアルバ?何を言っているの・・・。この子は私とアレックスの子供よ。」
自分と同じ紅い髪に金色の瞳と父親のアレックスと同じ碧眼を兼ね備えた愛しい子。今は伝説となった大魔女アルバとは瞳の色が明らかに違う。オッドアイだから父のマリウスと同じく強い魔力を持っているかもしれないが。
だが現実に今目前にいるのは、【夜明けの大魔女アルバ】の死を境に姿を消した伝説の存在たちだ。
「まさか、アルバが大魔女アルバだというの?」
答えはどこからも聞こえてこない。沈黙は何を指すのか?
肝心のアルバといえば泣き続けたままである。どんどん激しくギャン泣きしていく我が子を腕に抱いたまま、半信半疑で交互に大精霊たちとアルバを見るマリアは、屋敷の外でアレックスが自分たちに呼びかけていることに気づき、窓の方へと這いつくばった状態のまま移動した。
(母御よ、ガラスが落ちている。危ないぞ?)
念話でクッキリと聞こえてきた緑の亀(大地の大精霊)の声に、ぴたっと動きを止める。
(そうだよ!そのままだとアルバママまで怪我しちゃうよ!)
「マ・・・ママ?」
続いて頭の真上、天井部の大穴から顔を突っ込んでいたドラゴンの坊(ぼう)の言葉を聞いたマリアは間近に坊の顔を目のあたりにして気絶しそうになるのを何とか踏みとどまった。
しかも遅れて屋敷の惨状に気づいたマリアは、思わずその場で「ナニ!?何なの~~~!!!」と大絶叫した。
※※※
両親のアレックスとマリアが我が子アルバの転生した話を聞かされたのは、結局、大精霊たちが妖精たちをこき使い屋敷を修復してからであった。
魔法をまだ使えないアルバが、
(知られたくなかったのに・・・。)
泣き声を甲高く上げて恨めし気に、かつての親代わりの精霊たちと養い子のドラゴンの坊(ぼう)を涙目で訴えたのはいうまでもない。
小さな妖精たちは、ただただ反省するばかりであった。
※※※
親の心も知らずに勝手気ままに振る舞うのが親の心子知らずならば、親が子どもをいつまでも幼いと思い子どもの本心を知らないのが子の心親知らずである。
これはアルバを巡る様々な形の親子のお話。
※※※
小さな妖精たちの暴走によって半壊した領主の屋敷を前に、セヴェルの町の住民たちの安全を騎士団長とその部下に託して、単身で屋敷に戻ってきたアレックスは「どうかマリアたちが無事であるように」と必死に神に祈っていた。
マリアが張った結界が破られた屋敷の光景は悲惨の一言に尽きた。
何しろ窓という窓のガラスが割れ、玄関の扉であっただろう木の破片が周辺に飛び散り、穴だらけになった壁の中で縦横無尽に小さな妖精たちが屋敷内を埋め尽くして飛び回り、外にまであふれ出しているのが一目で見てわかる状況だったのだ。
どうみても【暴走】という名の襲撃である。
極めつけは屋根の上にチョコンとお座りしながら穴の開いた屋敷の中を覗きこんでいる小山のようなドラゴンの存在。鼻先を穴の中に近づけては、また穴から顔を出してを繰り返している。
「何をしているんだ……?」
いまいち状況が呑み込めず、かつては玄関扉だっただろう大穴を前に呆然と上を見上げる。
だが、他にもいたはずだ。アレックス自身も知らぬうちに呟いた。
「四大精霊たちは何処へ消えた?」
おそらく近くにいるのであろうが、姿が見えない。気配を探ると屋敷内からそれらしき声のようなものが聞こえるが、何を言っているかまでは聞き取れず、代わりに屋敷内からはノルド辺境伯家に仕える使用人たちの悲鳴や叫び声が響いていた。どうやら生存者がいるらしい。
その事実に少しだけ安堵した。しかし屋敷が半壊したことに何の変わりもない。
「だれか夢だと言ってくれ?」
そう言いたくなっても仕方がないくらい壊滅的被害が発生していた。
そんな時、2階の夫婦の寝室付近からギャン泣きする赤子の声が異様に大きく外へと聞こえてきた。アレックスは思わず周囲に響きわたる大声で屋敷に向かって叫んだ。
「アルバ、無事か!?マリア、頼むから返事をしてくれ!」
屋根の上のドラゴンの坊(ぼう)と外にはみ出していた無数の小さな妖精たちが一斉にアレックスの声に反応したのは次の瞬間だった。
「「「アルバママを知ってるの!?」」」
見事に両者の声がハモって重なった。
「ハァッ!?」
反射的にアレックスの口から奇声が発せられたのも当然のことであった。
赤子をママとはこれ如何に!?アレックスの混乱が始まる。
※※※
そのころ、屋敷の中では四大精霊による説教が長引いていた。
何しろ、故郷と家族を失い独りぼっちになってしまったアルバを育てたのはほかでもない四大精霊たちである。我が子のように可愛いアルバを赤子のときから亡くなる最期まで見届けたのだ。種族を超えた絆が確かにアルバと精霊たちの間には存在していた。
(前世で我ら精霊たちと精霊の亜種であるお前たち妖精が関わったからこそ、アルバは魔物の群れに村を襲われ家族を失ったのだろうが!まさか、あの時のアルバの姿を忘れたとでもいうつもりか!?)
(そうだ!今世のアルバの母御を傷つけるとは何事か~~~!!!)
(泣くのが赤子の仕事とはいえ、我らを見てギャン泣きしているではないか。お祭り騒ぎなどしている場合か!)
(どんちゃん騒ぎの前に、この家を何とかしないか~!)
などなど精霊たちの説教は続く。
小さな妖精たちは小さい体を更に縮めて、ひたすらアルバに謝ったのであった。
当然のごとく返ってきたのは拒絶のギャン泣きだったが。
※※※
マリアといえば結界を破られた衝撃で、その場でしゃがんだ姿勢のまま、精霊や小さな妖精たちの会話という名の念話を用いた説教を驚きをもって聞いていた。
「前世のアルバ?何を言っているの・・・。この子は私とアレックスの子供よ。」
自分と同じ紅い髪に金色の瞳と父親のアレックスと同じ碧眼を兼ね備えた愛しい子。今は伝説となった大魔女アルバとは瞳の色が明らかに違う。オッドアイだから父のマリウスと同じく強い魔力を持っているかもしれないが。
だが現実に今目前にいるのは、【夜明けの大魔女アルバ】の死を境に姿を消した伝説の存在たちだ。
「まさか、アルバが大魔女アルバだというの?」
答えはどこからも聞こえてこない。沈黙は何を指すのか?
肝心のアルバといえば泣き続けたままである。どんどん激しくギャン泣きしていく我が子を腕に抱いたまま、半信半疑で交互に大精霊たちとアルバを見るマリアは、屋敷の外でアレックスが自分たちに呼びかけていることに気づき、窓の方へと這いつくばった状態のまま移動した。
(母御よ、ガラスが落ちている。危ないぞ?)
念話でクッキリと聞こえてきた緑の亀(大地の大精霊)の声に、ぴたっと動きを止める。
(そうだよ!そのままだとアルバママまで怪我しちゃうよ!)
「マ・・・ママ?」
続いて頭の真上、天井部の大穴から顔を突っ込んでいたドラゴンの坊(ぼう)の言葉を聞いたマリアは間近に坊の顔を目のあたりにして気絶しそうになるのを何とか踏みとどまった。
しかも遅れて屋敷の惨状に気づいたマリアは、思わずその場で「ナニ!?何なの~~~!!!」と大絶叫した。
※※※
両親のアレックスとマリアが我が子アルバの転生した話を聞かされたのは、結局、大精霊たちが妖精たちをこき使い屋敷を修復してからであった。
魔法をまだ使えないアルバが、
(知られたくなかったのに・・・。)
泣き声を甲高く上げて恨めし気に、かつての親代わりの精霊たちと養い子のドラゴンの坊(ぼう)を涙目で訴えたのはいうまでもない。
小さな妖精たちは、ただただ反省するばかりであった。
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