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side 健介
ご飯は美味しかった。
しおりを挟むテーブルの下からりょーちんを見上げる。
《別にプレゼント見つからなきゃ普通でいいんだよ。
俺、父さんに「今日はイチケンと買い物行って、ココで飯食う。」って言ってあるし。
タイミング見て出てこい。俺も合図するから。》
《オッケ~。》
コッソリ覗いて、兄ちゃんと所長さん(りょーちんのパパ)をチェックする。
2人は僕らに気付いていない様だ。
店内の席同士を遮る衝立がソコソコ高くて良かった。
衝立を挟んで、隣の座席に座ったらしい。
りょーちんが合図をくれて僕はそっと椅子に戻った。
するとすぐに僕らのご飯が運ばれてきた。
学生応援メニューよ、ありがとう。
大手飲食チェーン店より、価格はちょっとお高めだけど、旨さは断然コッチだ。
ボリュームも素晴らしい。
ヤッホー。
気を取り直して、りょーちんとご飯を食べ出した。
「美味しいねぇ~。」
「イチケン、イチケン、バイトお疲れ。」
ニッと笑ったりょーちんに僕も笑って、ジュースで乾杯した。
「りょーちんお疲れ~。」
ウキウキのランチにはデザートまで付いていた。
ふぅ。ごちそうさま。美味しかった。
そうこうしてると、隣の席の兄ちゃんと所長さんもご飯が済んだらしい、何か話をし始めた。
ランチ後のOLか。
いや、僕らも食べ終わってスグに帰らず、話をするからいいんだけど。
兄ちゃんへのプレゼントがあるから、何かドキドキするんだよね。
早く研究所に帰ってよ。
もう昼休み終わるでしょ?
兄ちゃん昼休みどんな話してんだろ。
コッソリ聞き耳を立てる。
《イチケン、仕事の話聞いちゃダメだって。》
と言いながら、向かいのりょーちんが足で僕をつつく。
もう。りょーちんも気になってるでしょ。
いいよ。僕が聞いて教えてあげる。
サムズアップしてもう一度、聞き耳を立てる。
りょーちんが遠い目をしていた。
「市井くん、昼からの予定だが・・・」
「・・・唐所長、以前誘って頂いた件ですが・・・」
「ん?今?いいけど。どうする?
今の研究も面白いでしょ?無理しなくていいよ。」
「俺も唐所長の移籍に付いていきます。」
「Bostonに拠点が移るけどいいの?」
「英語は日常会話でも使ってるので不便しませんし。
HarvardやMITの研究室との共同開発もあるんですよね。
俺実はProf.Bobaskyの最新研究が気になってるんです。」
「ああ。あれは私も興味あるんだよ。
資料ウチにあるから見る?
・・・って、それより。海外への移籍だよ?
市井くんのご両親、心配しない?」
「大丈夫です。両親には好きにしなさいと言われてますから。」
「そう?私としては君が着いてきてくれると嬉しいけどね。
弟くんは?亮太と一緒の大学でしょ?
ご両親は伊豆だし、市井くんがBostonに行くと、東京で独りになるんじゃない?」
「弟の事も大丈夫です。分かってくれると思います。」
「市井くんはクールだね。」
「そうですか?普通ですよ。
もう唐所長じゃなくなるんですね。」
「いや、今すぐじゃないでしょ。
何しんみりしたフリしてるの。
市井くんが研究所に残るなら、次の所長に市井くんを指名しようと思ってたのに。」
「俺、管理職は向いてませんから。
ところで唐所長。昼休み、過ぎてますよ。」
「おっと。次って本会議だよね?もうちょっと早く教えてよ。」
2人は僕らに気付かず店を出て行った。
でももう僕はソレ所じゃない。
さっきまですごく楽しかったのに。
兄ちゃんがボストンに行っちゃう?
・・・僕を置いて?
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