僕の恋、兄の愛。4

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水曜日ディナー本番。

幕間③市井兄とウェイター2 

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「凄いの~♪
ねぇねぇ、ご飯のお兄さん。」

健介がウェイターの袖を引っ張って話しかけている。

何て事だ、ウェイターと健介が親密になっている。

「はい、健介様。」

「僕もできる様になる~?」

健介に甘えられるのは俺の特権のハズなのに!

おのれウェイター!

「健介様も練習なされば、できる様になりますよ。」

「わ~い♪」

俺の嫁けんすけとイチャイチャしやがって!

健介は俺のだ!

俺の嫁だぞ!!(迷走)

「健、手品はもう十分じゃ・・・。」

「上手になったら、兄ちゃんに見せてあげるね~♪」

「・・・ありがとう。
楽しみに待っているね。」

ふふん。
今の聞こえたかウェイター!
健介がカードマジックを覚えるのは俺の為だ!!

健介の微笑みと発言に、気持ちが幾分か落ち着く。

・・・そうだよ、落ち着け、俺。

ところが、健介が突然俺の胸に抱きついて、潤んだ瞳で見上げてきた。

ど、どうした健介!

うちの子世界一!!(混乱)

俺の嫁の可愛さを見たかウェイター!

お前にはやらんがな!!(大混乱)

「兄ちゃん、僕・・・」

健介、それ以上は駄目だ!

その瞳でお強請りおねだりは駄目だ!

そんな可愛い姿をウェイターやつに見せ付けないで!

ウェイターやつが健介に惚れたら、俺ウェイターやつに何をするか分かんない!

俺に縋り付いたまま、涙目の可愛い健介が俺を見上げる。

その瞳を見つめている内に、冷静になった。

・・・そうだ、俺は健介をココで半時間も待たせたんだ。

やはり寂しかったんだね。

お留守番させてごめんね。

「兄ちゃん、僕、僕・・・」

ニコリと微笑みかける。

抱き締める位はいいだろう。

「随分待たせたね。
ごめんね、私の姫君。
どうしたの?」

そっと腕を回す。

「・・・もう我慢できない!
おトイレ~!」

健介は、俺を押しのけてドアに向かって走り出した。

「・・・え?」

「健介様!
お手洗いまでは順路がやや複雑ですので、ご案内致します!」

そんな健介を見て、ウェイターが素早く反応し、ヤツも駆け出した。

んん?

「ご飯のお兄さん~!お願い~!
僕場所わかんない~!
もれちゃう~!!」

あの?

「頑張ってください!
必ず間に合うようご案内致しますので!
頑張ってください!!」

健介も必死だが、ウェイターも必死だ。

・・・まぁ・・・そりゃそう・・・だな?

生理現象だもんな・・・?

「出ちゃうぅ!!」

健介の必死の形相、なんて久しぶりに見たな。

「頑張ってください、健介様!
申し訳ございません、市井様!
暫く御前失礼致しますぅぅ!!」

同じく必死の形相のウェイターが振り返り叫ぶ。

最後の『御前失礼致します。』に至ってはウェイターの姿は既に無く、ドップラー効果付きだった。

・・・他人の必死な形相なんてそう見ないから新鮮だな。

「・・・気をつけて・・・??」

・・・。

・・・何だコレ?








※大混乱
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