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1章 1節 仲間と成長の時間 《ディスペア編》

第11話 剣術訓練とハイル

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実力テストを終え、少しの休憩を挟み、
少年にとって初めての訓練が始まる。


「さて今回の班は2班と5班、9班と11班、16班と17班で行う、訓練内容は前回と同じ。
班ごとに自分の癖や同じ班メンバーの癖、どうやったら連携できるのかを訓練形式で考える時間だ。
早く始める事、もしくだらないことダラダラと話しているようならば…わかっているよね?」

となぜか16班と僕達、17班の方を見て言った。

それを見てアルと隣に並んでいる16班の先頭の魔族が背筋を正した。




そして訓練が始まり僕は16班のメンバーを眺める。

先頭には布を巻き手には怪我をしたのか包帯を巻いている黒髪の少年、
その後ろにはまるで3つ子かとでも言うように、
同じ髪型、同じ服、似たような体型の3人が並んでいる。


ふと頭に長細い布を巻いている少年と目が合う。

「ふっ…ここであったのは何かの縁今から我らは戦友だ、今回はよろしく頼むぞ。
それと我が戦友、先程の1戦はは良い試合だった…素早く後ろに回り込んだ時キーパーが変な顔をしておったぞ!」

「え?…あっよろしくお願いします、いい試合だったのかな?
ほとんど何も出来ずに終わっちゃいましたから」

「あれで何もできていないだと…?ならば我は棒立ちしていただけになるではないか!?謙遜はしなくて良い、俺は16班隊長【漆黒】のダズルだ」

と意味不明なことを言う16班隊長。

「えっと、漆黒のダズルさんでいいのかな?」


「ハイル、あいつの漆黒とかは気にするな一種の病気だ」

アルが小さな声で教えてくれる

「なんだ友よ我は深淵が蔓延る地獄より蘇り…「いいから、早く始めんぞ、さっきっからキーパーさんが睨んできてるんだよ、主にお前のせいで」

キーパーさんの方を向くと優しそうな笑顔の裏に怒りの感情が見え隠れしながらこちらを凝視していた。



「それじゃあ始めるか」

アルが訓練用の木で作られた剣を肩に当てながらそう言うとダズルは頷く。

「うむ、いつも通りでそれでいいだろう今日こそは勝って見せろよ?我も勝ち続けるのも面白くないからない、
それに新しい班メンバーにも無様な姿は見せたくないであろう?」

挑発するようにダズルは言い放つ。

「ったりめーだ、今回こそはその面泣かせてやるぜ」

アルは挑発に乗り剣を振り回している。

「まあまあ、そろそろ始めないと教官が飛んできるから早く並ぼう?」

とタイガが仲裁に入った。


(なるほど…)

なんとなくだが少年は2人の事を理解し始めている、
直ぐに感情的になってしまうアルと、それを抑えるタイガ。
凹凸がしっかりしてひとつになっているとでもいえばいいのか?

「ハイルも早く!」

「あっうん!」

16班の4人ダズルを先頭に3つ子…
イップ、ソップ、ネルトと横一列に並ぶ。

17班もアル、タイガ、ハイルの順で並んだ。

お互いの距離は200m程だろうか。

「何時でもいいぜ!」

「行くぞ、我が同胞たちよ  3」

「2」

「1」

「0」


ゼロという言葉と同時に少年が聞かなかったから情報も貰えず始まった訓練。
最初にアルが17班に向けて突撃していき、
それに続くようにハイルも距離を詰めてい。

(いきなり敵陣に突っ込むの!?話には聞いたけど…でも味方を知ることに集中しよう)

《身体強化》

アルと並行して走る程度にスピードを上げる。


「おっハイル、さすが素早いな」

「そんな事より作戦は?」

「ない!突撃して相手を倒す!」


「行き当たりばったり?なら左右から挟み撃ちした方がいいと思うけど」


「わかった、タイガ!援護頼んだ!!」


「えっ!?どうすればいいの?」

アルの指示にタイガは困惑する。

「僕とアルが前に出るから後ろから魔術を使って。
当たらなくてもいいから、相手を見なくてもいいから、
相手がいそうな方向に魔術を使ってみて!!」

アルの指示を簡単に伝わるようにタイガに伝える。


「わかった!」







左右に広がりながらアルとハイルは距離を詰めていく。

対して16班はイップ、ソップ、ネルトの3人はそれぞれ剣を構え迎撃体制に入っているが、ダズルは後ろに下がり仁王立ちして不敵な笑みを浮かべている。

(あれ?ルールの説明してもらったっけ?攻撃を当てればいいのかな?それとも体に当たる瞬間寸止め?アルの見ればわかるかな?)


考えながらイップに向かって剣を振るうが簡単に剣でガードされてしまう。

(さすがに考え事しながら振った一撃が決まるほど甘くないよね)


しばらく小手調べの攻防を続けて言うと
ふと背中に気配を感じ横に転がり離脱する、
見るとソップが驚いた表情で固まっていた。

(ふう…危ない、アルとダズルさんの方は…)

「ふっお主の力はそんなものではなかろう!!
我に本気を見せてみるのだ!!」

アルはダズルと睨み合いながら隙を見て一撃を放つが、素早く回避され更に足を引っ掛けられて転び、
ペシペシ木剣で叩かれている。


(攻撃に当たっただけでは脱落じゃないんだね)


すると横から剣が迫りそれを軽いステップで右に回避する、そして気がつく

(囲まれた…)

少年を3人で囲んでいる
そして次々と少年を追い詰めるための一撃が放たれる。

一人目の攻撃をかわしたと思っていたら
二人目、三人目と絶え間無く次々と襲いかかる攻撃。

(なるほど、3人で連携か面白いね)

でも欠点は一人でも欠けたら連携は崩れる。

3人なら少し休憩を入れて攻撃ができるが
2人だとほぼ連続で攻撃を当てないといけないからリズムが崩れる。

(でも…三人での練習しかしてない場合だけどね)


背後からの攻撃を振り向きながら剣で受け止め、
そして身体強化で地面を思いっきり地面を蹴って砂埃を起こす、
砂埃は高く舞い一瞬の目くらましになる。

「目くらましなんて卑怯だぞ!」

イップが何かを叫んでいるが少年は気にせず、3人の包囲網の隙間を通り離れる。



「風の力、疾風の風邪を持って、目の前の敵を切り裂け!!《空撃カマイタチ》」


少年の横を通り抜け空気の刃が三人に向かって飛んでいく、
風は砂煙を晴らし3人の少し衣服を切り裂いただけだった。


(今のはタイガの魔法か…けど威力が弱いのか?それとも魔力が足りなくて不完全な状態だったのか?
風の広範囲に攻撃の魔術見たいだからその分威力は抑え目かな、でも当たりはしたね…
ならっ!)

タイガの魔法は、当たると思っていなかった3人の注意を逸らすには十分だった。

魔法に気を取られていた3人に近づきいち早く接近に気が付き迎撃体制をとったソップの腕を掴みながら足を払い体勢を崩し地面に叩きつける。
続いてネルトの攻撃を避けながら背負投げし、
そしてイップをと言うタイミングで大きな鐘の音が鳴り、立ち止まる。

「訓練はそこまで!」

キーパーさんの鋭い声が響き渡る。

最初のテストからずっと集中していたからか、
時間の流れが早い気がする。




イップとソップの前に手を出し起き上がらせる。

「お前強いんだな、俺らの連携攻撃が初見で破られるなんて…キーパーを負かすだけあるな」

「次々と攻撃するから、その対処にいっぱいいっぱいだったよ、魔術でで援護してくれたタイガのおかげかな」

「おいダズル今回は引き分けだな?」

遠くでは2人が握手しながら喋っている、
どうやら向こうは引き分けだったようだ。
だが3人の対処が間に合わず援護に行けなかったのは失敗だったと頭に入れておく。

「そうだな我の攻撃を受けてもtr「行こうぜハイル、タイガ!」えっ!?無視!?」




アルは僕とタイガの方に腕を回す

「久しぶりの引き分けだぜ!あの3つ子を抑えてくれたおかげだありがとうな」


「そんな事ないよ、アルがダズルさんを抑えれてくれたからだよ!
それにタイガも魔術で援護してくれたからこそ隙が生まれたんだ。
…でもタイガ魔術は当たらないはずじゃなかったの?」



「あ~あれなんだけど、当たってはないんだ、
正確には魔術の中心じゃなくて端の方が当たったというかなんと言うか…とりあえず掠らせる事には成功したかな?ハイルの当たらなくていいから、相手が居そうな方向にやってみるで、偶然産物だよ」


と目を逸らしながら言うタイガの背中をアルが叩く。

「掠っても当たりはしたんだろ?なら、やるじゃんタイガ」

その言葉を聞き照れくさそうに頬をかく。

「あっでも勢いで魔術で援護お願いって言っちゃったけど、あれ剣術の訓練だよね?」

と、ふと思った事を口にすると。

「「あっ…」」

2人とも今気がついたような顔をする。


「でっ、でもキーパーさんが何も言ってこないから、大丈夫だよね?」

3人でキーパーさんの方を見ると、何やら紙にペンを走らせていた、
そしてじっと見ている僕らに気がついたのか。

「次の訓練に遅れないように、早く行動しようね?」

と言って建物の中に入っていく。

「大丈夫だったのかな?」


どうやら何とかなったらしい?
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