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1章 1節 仲間と成長の時間 《ディスペア編》
S第24話 暗闇に潜むモノ
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あれ?
目を覚ますと木に囲まれた見慣れない光景に少し戸惑う。
どうして私こんな所にいるんだっけ?
膝の上で気持ちよさそうに寝息を立てるリュピィの頭を撫でながら、
ぼんやりするがかったような頭で考える。
そうだった…今日も彼が来るかもしれないから、
もし何時もの場所に居なかったら私が居ないと思ってすぐ帰るかもしれないからここに隠れてたんだった。
背もたれにしていた木の後ろから覗くと視界の先にはお気に入りの場所生えている巨木が見える。
ここなら帰ったかどうか分かりやすいと思ったんだけど…
待っているうちに眠ってしまったみたいだ。
先程まで見ていた夢を薄らとだけど思い出す 。
竜と心を通わせ手を取り合い魔王軍にとって大きな1歩となる功績を残した《竜騎士》ラングロート。
そんな御伽噺や絵本でしか見たことも聞いたことがなかった彼が私のご先祖さまと知ったのは、
私が5つになる頃だった。
病気でいつもお布団で休んでいるお母様が読み聞かせてくれた物語に、
目を輝かせながら何度も何度もせがんでいた。
『おかあさま、わたしもらんぐろーとさまみたいになれるかな?』
『ええ、でも今はリュピィと、心を通わせ真っ直ぐに歩みなさい、貴女なら大丈夫だわ』
綺麗な白い手で私の頭を優しく撫でる。
お母様の匂いと体温に包まれる、
私は何度も頭を擦り付ける。
『だが《竜騎士》になるためには竜と心を通わすだけではなく、パートナーとして共に歩むために乗りこなせるほどの身体能力を持たないといけない』
隣でお母様の逆の手を握りながらお父様は言う
『??』
『えーと、つまりルナ自身も強くならないと行けないという事かな』
『ん~?』
お父様は忙しいお仕事の間に時間を作ってくれると言ってくれ、
私は1人の魔族としても竜騎士としても立派になって胸を張れるように"頑張っていた"
「ピィ~?」
寝眠っていると思っていたリュピィが大きな欠伸と共に首と体を伸ばし宙へと羽ばたく。
「おはようリュピィ」
「ピィ~♪」
楽しそうに私の周囲をゆっくりと旋回するように飛んでいる。
所で…今は何時なのかな?
彼が来るのは何時もお昼後の休憩の時間、
でも寝てしまったから今が何時か分からない。
丘の方を見ても彼が来ているような様子はない、
となるとまだお昼前かお昼休憩が終わって訓練が始まっているか、
外で寝ちゃったから背中とお尻と膝が痛いくらい寝ちゃったからお昼の休憩すぎくらいかな?
「リュピィ、一回訓練所に帰ろっか」
「ピ!!」
立ち上がって砂を払い体をグッと伸ばす。
「んっ」
体が解れた感触がして気持ちいい、
そして私達は木漏れ月林の中を進む。
ここからなら真っ直ぐ進んでいけば早い、
と言っても訓練所から北に進めばお気に入りの場所、北北西に進めば今いた場所なので大した違いはない。
「~~♪」
鼻歌を歌いながら訓練所へと向かう、
ここには誰も来ないので大きな声で歌ってもいいのだけど、それはそれで恥ずかしい。
『パキ』
「?」
どこか遠くで何かが砕けるような音が聞こえた。
何か動物でもいるのかな?
訓練所を1歩外に出ると野生の世界が広がっている、
警戒心が強いのか滅多にお目にかかることは出来ないけど、
よく目を凝らし耳を済ませてみれば何かわかるかも。
私たちを静寂が包み込む、視界には何も変化はなく聞こえるのは隣で飛ぶリュピィの小さな羽ばたきだけ。
「…何も聞こえないね…気の所為なのかな?」
「?」
リュピィの方を見ると私を見て首を傾げている。
『パキパキ』
今度は先程よりも近くで聞こえた
近づいてきてる?
もし動物ではなく魔物なら逃げないといけない。
「リュピィ」
心細さから名前を呼ぶと肩に乗ってくれる、
その重みが私を安心させてくれる。
『パキパキパキ』
砕けるような、折れるような音は徐々に大きくなる。
確実に近づいてきている、
音のする方向を見るが何も変わった様子はないかな?
でもすぐすこまで迫ってきている気がする、
直ぐにも逃げ出せるように構える。
1.2.3.4.5…
心の中で数えるがいくら待っても音を立てていた存在は現れない。
「ピィイ!?!?」
ドクンッ
「!?!!──どうしたのリュピィ!?」
突然リュピィが悲鳴にも似た大きな声を私の耳元であげ、
宙に羽ばたいたので心臓が飛び上がるほど大きく動く。
「引っ張らないで、痛い」
リュピイは私の髪を口で加え引っ張るように着いて来てと言うように飛ぶ。
「リュピィ、どうした…ひゃ!?!?」
その時、ソレと目が合ってしまった、そして理解する、
私の髪を引っ張った理由を、
この場所から逃げようとしたのだと。
目線を下に向けると先程までの月明かりで薄赤い茶色や緑の地面ではなくまるで暗闇かのように真っ黒に染まっていた、
そしてその中に存在する2つの大きな赤い丸、
なにかの目のようなものと視線が交差した。
気がついた時にはもう遅い、体が未知の現象に遭遇した恐怖に襲われ言うことを聞かない、
リュピィの努力虚しく足の力が抜け地面に倒れてしまう。
するとボコボコと泡立つように黒い地面が盛り上がって行く。
逃げなきゃ!
本能が逃げろと赤い警告を出し、
かろうじて動く手と上半身を頼りに必死に身体を引き摺り、
この場所から離れようとするがまるで自分の身体じゃなくなったかのように思うように動かない。
モタモタしているうちに膨れ上がったモノは闇を象ったかのような真っ黒な大きな獣と化した、
ギラギラと輝く歯を見せながら舌なめずりをするように1歩1歩こちらにちか近づいてきている。
それはまるで獲物が抵抗するのを期待しているかのようにも思えた。
「っ!!」
何とか逃げようと後ずさりするうちに不意に手が何かに触れ、それを黒い獣に向かって投げつける。
黒い獣に真っ直ぐに飛んで行く木の枝は
まるで私が見ている物は幻しだと言うように獣を通り抜け奥の茂みに落ちる。
嫌だ、嫌だっ、傷つきたくないっ」
恐怖からか口から言葉が漏れる。
「ピィ!!」
私の言葉に反応したかのようにリュピィは高速で黒い獣に向かって接近し炎のブレスを吐く、
小さいながらも放たれたブレスは黒い獣を体を焦がし消滅させる。
が次の瞬間には何ともなかったように元通りになっていた。
しかしリュピィは私に黒い獣を近づかせないように何度も何度もブレスを浴びせ続ける。
黒い獣は自分の周囲を飛び回っているリュピィを鬱陶しいと払うように、
鞭のようにしなりうなる黒い尾でたたき落とす。
「ピギィ!?」
地面に叩きつけられ、起き上がり飛ぼうと藻掻くが、
かなりのダメージを負ったのか上手く飛び上がれなくフラフラとしている。
無抵抗な獲物の姿を見た黒い獣は狙いを定め尾を振り下ろす。
「リュピィ!!」
間一髪でリュピィを抱き抱えそのまま地面を転がり衝撃の範囲から離脱する。
咄嗟の行動だったので自分でも驚いたが、身体が動くのならば今は逃げるのが先決。
私は森の奥へ、あの黒い獣から遠ざかる為に
腕に伝わる温もり感じながら必死に足を動かした。
─────────────────────
またなのっ!?
進む方向に待ち構えて居るように黒い獣は存在した、
それも1度や2度ではない、
考えるのも放棄してしまうほどの回数、
獣は私たちの前に立ちはだかる。
何度もやられていたら獣は私の体力の消耗を狙っている事は嫌でもわかるっ!
既に方向感覚は失われ、どちらに逃げれば訓練所にたどり着けるのか分からない。
後ろを振り向くが追って来る気配はない、
気配はないのにいつの間にか進む方向に現れるので気味が悪い。
「ピィ!!」
突然リュピィが大きな声で鳴き、飛んで行ってしまう。
「待って、待ってよ!!!」
必死に追いかけるが私の声が届いていないのかリュピィは見えなくなってしまう。
それと同時に黒い獣が現れる。
「っ!?」
何とか脇を通り抜けようと走るがもう1匹黒い獣が地面から現れ、私の進路を妨害する。
「そこを、どいてっ!!」
無理やり推し通ろうとするが、
獣は身体を半回転させながら迫る尾が胴体に直撃し、
吹き飛ばされバウンドするように何度も身体が地面に叩きつけられ倒れる。
目眩がし眩む視界でこちらに迫る獣を捉える。
逃げなきゃ。
重い体を無理に動かし身体を引き摺りその場から逃げようとするが目の前に広がった光景に僅かな希望も砕け散る。
目の前の開けた視界には眼下に広がる森と段差があった、
段差と言っても崖、落ちたら死を覚悟する高さだ。
そして気がつく、黒い獣が私達の前に立ち塞がったのは、
獲物の体力の消耗を狙いながら確実に狩れる場所まで誘導する為なのだと。
5匹に増えた黒い獣は私を囲うように位置取りする。
前は敵、後ろは崖、逃げ場はない、
唯一突破できる可能性があるリュピィは私を見捨てどこかに行ってしまった。
1歩1歩確実に間合いを詰めてくる獣に対して、
少しずつ下がる。
「えっ?」
急に身体に襲う浮遊感、そして不安定な足場、
私の重さに耐えきれず崖が崩れた、
目の前の獣に気を取られ崖の端まで来ていた事に気づけなかった。
なんとか崖の縁を掴むが落ちるのは時間の問題だ。
お父様、お母様ごめんなさい…私立派な《竜騎士》になれなかった、
リュピィごめんね私なんかがパートナーで、
でも貴方だけは元気に生きてね。
脳裏には両親とリュピィの姿が過ぎる。
『ルナちゃんと友達になりたいから、ダメかな?』
朦朧とする意識の中、言い慣れていないのか照れくさそうに言った彼の言葉を思い出す。
「…!…!!」
本当は私も友達になりたかったな、
家の事を知らない私を私自信を見てくれそうな彼と…
「ルナ…!!手…!!」
何で最期に思い出しちゃったのかな?
思わず笑みが浮かぶ。
もしあの言葉に頷き手をとっていたら私は変われたのかな?
「ルナっ!!手を伸ばせ!!」「ピィ!!!」
その声で意識がはっきりとする、
目の前のは崖からこちらに手を伸ばす彼とリュピィの姿。
その手を掴もうと手を伸ばすが拳1個分足りず空を切る。
「…ごめんね」
何に対して謝ったのか自分でも分からないけれど、
自然と言葉が口から出ていた。
目を覚ますと木に囲まれた見慣れない光景に少し戸惑う。
どうして私こんな所にいるんだっけ?
膝の上で気持ちよさそうに寝息を立てるリュピィの頭を撫でながら、
ぼんやりするがかったような頭で考える。
そうだった…今日も彼が来るかもしれないから、
もし何時もの場所に居なかったら私が居ないと思ってすぐ帰るかもしれないからここに隠れてたんだった。
背もたれにしていた木の後ろから覗くと視界の先にはお気に入りの場所生えている巨木が見える。
ここなら帰ったかどうか分かりやすいと思ったんだけど…
待っているうちに眠ってしまったみたいだ。
先程まで見ていた夢を薄らとだけど思い出す 。
竜と心を通わせ手を取り合い魔王軍にとって大きな1歩となる功績を残した《竜騎士》ラングロート。
そんな御伽噺や絵本でしか見たことも聞いたことがなかった彼が私のご先祖さまと知ったのは、
私が5つになる頃だった。
病気でいつもお布団で休んでいるお母様が読み聞かせてくれた物語に、
目を輝かせながら何度も何度もせがんでいた。
『おかあさま、わたしもらんぐろーとさまみたいになれるかな?』
『ええ、でも今はリュピィと、心を通わせ真っ直ぐに歩みなさい、貴女なら大丈夫だわ』
綺麗な白い手で私の頭を優しく撫でる。
お母様の匂いと体温に包まれる、
私は何度も頭を擦り付ける。
『だが《竜騎士》になるためには竜と心を通わすだけではなく、パートナーとして共に歩むために乗りこなせるほどの身体能力を持たないといけない』
隣でお母様の逆の手を握りながらお父様は言う
『??』
『えーと、つまりルナ自身も強くならないと行けないという事かな』
『ん~?』
お父様は忙しいお仕事の間に時間を作ってくれると言ってくれ、
私は1人の魔族としても竜騎士としても立派になって胸を張れるように"頑張っていた"
「ピィ~?」
寝眠っていると思っていたリュピィが大きな欠伸と共に首と体を伸ばし宙へと羽ばたく。
「おはようリュピィ」
「ピィ~♪」
楽しそうに私の周囲をゆっくりと旋回するように飛んでいる。
所で…今は何時なのかな?
彼が来るのは何時もお昼後の休憩の時間、
でも寝てしまったから今が何時か分からない。
丘の方を見ても彼が来ているような様子はない、
となるとまだお昼前かお昼休憩が終わって訓練が始まっているか、
外で寝ちゃったから背中とお尻と膝が痛いくらい寝ちゃったからお昼の休憩すぎくらいかな?
「リュピィ、一回訓練所に帰ろっか」
「ピ!!」
立ち上がって砂を払い体をグッと伸ばす。
「んっ」
体が解れた感触がして気持ちいい、
そして私達は木漏れ月林の中を進む。
ここからなら真っ直ぐ進んでいけば早い、
と言っても訓練所から北に進めばお気に入りの場所、北北西に進めば今いた場所なので大した違いはない。
「~~♪」
鼻歌を歌いながら訓練所へと向かう、
ここには誰も来ないので大きな声で歌ってもいいのだけど、それはそれで恥ずかしい。
『パキ』
「?」
どこか遠くで何かが砕けるような音が聞こえた。
何か動物でもいるのかな?
訓練所を1歩外に出ると野生の世界が広がっている、
警戒心が強いのか滅多にお目にかかることは出来ないけど、
よく目を凝らし耳を済ませてみれば何かわかるかも。
私たちを静寂が包み込む、視界には何も変化はなく聞こえるのは隣で飛ぶリュピィの小さな羽ばたきだけ。
「…何も聞こえないね…気の所為なのかな?」
「?」
リュピィの方を見ると私を見て首を傾げている。
『パキパキ』
今度は先程よりも近くで聞こえた
近づいてきてる?
もし動物ではなく魔物なら逃げないといけない。
「リュピィ」
心細さから名前を呼ぶと肩に乗ってくれる、
その重みが私を安心させてくれる。
『パキパキパキ』
砕けるような、折れるような音は徐々に大きくなる。
確実に近づいてきている、
音のする方向を見るが何も変わった様子はないかな?
でもすぐすこまで迫ってきている気がする、
直ぐにも逃げ出せるように構える。
1.2.3.4.5…
心の中で数えるがいくら待っても音を立てていた存在は現れない。
「ピィイ!?!?」
ドクンッ
「!?!!──どうしたのリュピィ!?」
突然リュピィが悲鳴にも似た大きな声を私の耳元であげ、
宙に羽ばたいたので心臓が飛び上がるほど大きく動く。
「引っ張らないで、痛い」
リュピイは私の髪を口で加え引っ張るように着いて来てと言うように飛ぶ。
「リュピィ、どうした…ひゃ!?!?」
その時、ソレと目が合ってしまった、そして理解する、
私の髪を引っ張った理由を、
この場所から逃げようとしたのだと。
目線を下に向けると先程までの月明かりで薄赤い茶色や緑の地面ではなくまるで暗闇かのように真っ黒に染まっていた、
そしてその中に存在する2つの大きな赤い丸、
なにかの目のようなものと視線が交差した。
気がついた時にはもう遅い、体が未知の現象に遭遇した恐怖に襲われ言うことを聞かない、
リュピィの努力虚しく足の力が抜け地面に倒れてしまう。
するとボコボコと泡立つように黒い地面が盛り上がって行く。
逃げなきゃ!
本能が逃げろと赤い警告を出し、
かろうじて動く手と上半身を頼りに必死に身体を引き摺り、
この場所から離れようとするがまるで自分の身体じゃなくなったかのように思うように動かない。
モタモタしているうちに膨れ上がったモノは闇を象ったかのような真っ黒な大きな獣と化した、
ギラギラと輝く歯を見せながら舌なめずりをするように1歩1歩こちらにちか近づいてきている。
それはまるで獲物が抵抗するのを期待しているかのようにも思えた。
「っ!!」
何とか逃げようと後ずさりするうちに不意に手が何かに触れ、それを黒い獣に向かって投げつける。
黒い獣に真っ直ぐに飛んで行く木の枝は
まるで私が見ている物は幻しだと言うように獣を通り抜け奥の茂みに落ちる。
嫌だ、嫌だっ、傷つきたくないっ」
恐怖からか口から言葉が漏れる。
「ピィ!!」
私の言葉に反応したかのようにリュピィは高速で黒い獣に向かって接近し炎のブレスを吐く、
小さいながらも放たれたブレスは黒い獣を体を焦がし消滅させる。
が次の瞬間には何ともなかったように元通りになっていた。
しかしリュピィは私に黒い獣を近づかせないように何度も何度もブレスを浴びせ続ける。
黒い獣は自分の周囲を飛び回っているリュピィを鬱陶しいと払うように、
鞭のようにしなりうなる黒い尾でたたき落とす。
「ピギィ!?」
地面に叩きつけられ、起き上がり飛ぼうと藻掻くが、
かなりのダメージを負ったのか上手く飛び上がれなくフラフラとしている。
無抵抗な獲物の姿を見た黒い獣は狙いを定め尾を振り下ろす。
「リュピィ!!」
間一髪でリュピィを抱き抱えそのまま地面を転がり衝撃の範囲から離脱する。
咄嗟の行動だったので自分でも驚いたが、身体が動くのならば今は逃げるのが先決。
私は森の奥へ、あの黒い獣から遠ざかる為に
腕に伝わる温もり感じながら必死に足を動かした。
─────────────────────
またなのっ!?
進む方向に待ち構えて居るように黒い獣は存在した、
それも1度や2度ではない、
考えるのも放棄してしまうほどの回数、
獣は私たちの前に立ちはだかる。
何度もやられていたら獣は私の体力の消耗を狙っている事は嫌でもわかるっ!
既に方向感覚は失われ、どちらに逃げれば訓練所にたどり着けるのか分からない。
後ろを振り向くが追って来る気配はない、
気配はないのにいつの間にか進む方向に現れるので気味が悪い。
「ピィ!!」
突然リュピィが大きな声で鳴き、飛んで行ってしまう。
「待って、待ってよ!!!」
必死に追いかけるが私の声が届いていないのかリュピィは見えなくなってしまう。
それと同時に黒い獣が現れる。
「っ!?」
何とか脇を通り抜けようと走るがもう1匹黒い獣が地面から現れ、私の進路を妨害する。
「そこを、どいてっ!!」
無理やり推し通ろうとするが、
獣は身体を半回転させながら迫る尾が胴体に直撃し、
吹き飛ばされバウンドするように何度も身体が地面に叩きつけられ倒れる。
目眩がし眩む視界でこちらに迫る獣を捉える。
逃げなきゃ。
重い体を無理に動かし身体を引き摺りその場から逃げようとするが目の前に広がった光景に僅かな希望も砕け散る。
目の前の開けた視界には眼下に広がる森と段差があった、
段差と言っても崖、落ちたら死を覚悟する高さだ。
そして気がつく、黒い獣が私達の前に立ち塞がったのは、
獲物の体力の消耗を狙いながら確実に狩れる場所まで誘導する為なのだと。
5匹に増えた黒い獣は私を囲うように位置取りする。
前は敵、後ろは崖、逃げ場はない、
唯一突破できる可能性があるリュピィは私を見捨てどこかに行ってしまった。
1歩1歩確実に間合いを詰めてくる獣に対して、
少しずつ下がる。
「えっ?」
急に身体に襲う浮遊感、そして不安定な足場、
私の重さに耐えきれず崖が崩れた、
目の前の獣に気を取られ崖の端まで来ていた事に気づけなかった。
なんとか崖の縁を掴むが落ちるのは時間の問題だ。
お父様、お母様ごめんなさい…私立派な《竜騎士》になれなかった、
リュピィごめんね私なんかがパートナーで、
でも貴方だけは元気に生きてね。
脳裏には両親とリュピィの姿が過ぎる。
『ルナちゃんと友達になりたいから、ダメかな?』
朦朧とする意識の中、言い慣れていないのか照れくさそうに言った彼の言葉を思い出す。
「…!…!!」
本当は私も友達になりたかったな、
家の事を知らない私を私自信を見てくれそうな彼と…
「ルナ…!!手…!!」
何で最期に思い出しちゃったのかな?
思わず笑みが浮かぶ。
もしあの言葉に頷き手をとっていたら私は変われたのかな?
「ルナっ!!手を伸ばせ!!」「ピィ!!!」
その声で意識がはっきりとする、
目の前のは崖からこちらに手を伸ばす彼とリュピィの姿。
その手を掴もうと手を伸ばすが拳1個分足りず空を切る。
「…ごめんね」
何に対して謝ったのか自分でも分からないけれど、
自然と言葉が口から出ていた。
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