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1章 1節 仲間と成長の時間 《ディスペア編》

S第30話 小さき少女と青き竜2

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あの日が来るまでは──

──2年前、私のお母様はパートナーの竜の手によって治療できないほどの大怪我を負って消滅……しちゃったの。

原因はお母様の竜、《クオラ》の暴走、
何故暴走したのかは未だにわかってないの。

お母様が襲われてしまったのは単にお母様がその時近くにいた……からだと思う……

お母様が襲われる瞬間を私ははっきりと見た。



──竜達が身体を休める竜舎の庭で暴走し暴れ建物を壊そうとするクオラと、それを必死に止めようと全身を使ってなだめるお母様。

お母様は何度も何度も優しく「大丈夫」って言葉を呟いていて、
クオラはそれが聞こえないみたいに怖がっている様子で何を探すように頭を動かしていたの。

暫くするとクオラはやっとお母様の事が目に入ったみたいで、お母様の方に顔を近づけた。

『お母様っ逃げてっ!!?』

それを見ていた私は咄嗟に叫んだ、何時もならクオラはお母様に顔を撫でてもらいたいときには顔をよく近づけていた。
でも今回は違う、言い表せない恐怖が私の背筋を凍らせるような感覚に襲われたの、だから私は叫んでいた。

でもお母様は「大丈夫」って私に向かって言ったの、そのままお母様はクオラの顔を抱きしめるために両手を広げてクオラの顔が近づいてくるのを待っていた。

次の瞬間私の視界は黒に染まった、
クオラがお母様の左腕に噛み付き、噛みちぎろうと頭を大きく振っていた。
周囲に撒き散らされる黒い液体が庭中を染め上げて行く。

『お母様っ!お母様、お母様ッ!!!!!』

私が叫んだ、何が起きたのか理解出来ずに叫んだ、叫んだとして何かできる訳でもないのに叫んだ。

そしていつの間にか意識を失っていた。



2日後私はベットの上で目を覚ました、すぐにベットの隣に控えていたお手伝いさんにお母様の事を聞いた。

何とか一命は取り留めたけど、左肩はズタズタに噛み砕かれて、お母様は左腕を失った。

私はお母様が生きている事を聞いて安心した。

でも修復できない程の損傷を受けた左肩からは魔力が大量に漏れ出ている事を聞かせられた。

『魔族は身体の維持に自分の魔力を使用している』

お父様から教えられた言葉を思い出す。

『例えるなら水でできたコップだ、その水でできたコップの水量は身体を維持するために必要な最低限の水量で。
そのコップの中には自分の魔力、水が入っている。

魔法を使ったり身体を動かす度に水の量は減る、
減った量を増やすには食事をしたり十分な睡眠が必要だ。

魔力が残り2割ほどから身体に不調、警告として頭痛や目眩などの症状が起きる。
無くなる寸前まで魔力を使ってしまえば、もうたつこともできないだろう。

魔力を使い切ればリミッターがかかり何も出来なくなり、活動するのに最低限の魔力が回復するまで倒れ伏す事になる。

基本的にはそれで終わるが……
でも中にはそのリミッターすらも解除し水でできたコップ身体を維持するための魔力まで使用してしまう場合がある。

例えば魔力量が少量しかないがそれ以上に魔力を消費する魔術を魔力切れによって制限がかかっているにも関わらず。
無理をして使用してしまった場合だ。

他には怪我をした時、
軽い怪我であれば魔族特有の回復能力によって簡単に修復できるが、
直せない怪我の場合は徐々に体内から外へ魔力が漏れ、やがてコップ象っている水まで漏れてしまい身体を維持出来ずに消滅してしまう、
普通に生きていけばまず起こり得ることは無いが、竜騎士は魔王軍の戦力、兵士だ。
いつどこで何があるか分からない、それだけは覚えておいてくれ』

    
私はいてもたってもいられず、お母様の部屋へと駆け出した。
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