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1章 1節 仲間と成長の時間 《ディスペア編》
S第31話 小さき少女と青き竜3
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その日はお医者様に追い返された、でも数日後ようやく面会できることになった知らせを聞いた。
「お母様っ!?」
私が部屋に駆けこむ。
「あらあら、ルナ?ドアを開ける時は少しお上品になさいね」
そう言いながらお母様はベットからお身体を起こす。
「お母様、お身体の具合はだいじょ……いかがでしょうか?」
大丈夫?と言おうとして修正する。
「ええ、私は何時でも元気よ、大丈夫心配しないで」
いつものようにお母様は言ったでもお母様の左肩には真新しい包帯が巻かれている。
失った左腕そして魔力の漏出、大丈夫なはずがない。
私を心配させないように無理をして元気を出している事はすぐに理解した。
「ほらそんな所に立っていないでこちらにいらっしゃい」
お母様に促されるままに私はベットの横に置かれていた椅子に腰をかけ、リュピィはベットのうえのスペースへと降り立った。
「あら、リュピィあなたまた食べすぎたんじゃない?」
リュピィの顎下を優しく撫であやすお母様、その姿を見て何故だか心が苦しくなってしまっていた。
「ルナ、最近お勉強の方は順調なの?」
「……大丈夫だよ」
私は嘘を吐いた。
あの事件があってから私の中で竜に対する恐怖を覚えた。リュピィ位の体格の竜なら少し頭にチラつく位で終わる、でも体格が大きい子とすれ違おうとするとそれだけであの光景を思い出し足がすくみ身体が固まってしまう。
追い打ちをかけるように毎晩毎晩光景が悪夢になって私を襲っている。
まるでお母様の身に起こった事を追体験する内容、お母様が私に変わり、クオラがリュピィに変わる、そして私はリュピィ悪夢の中で食べられる、肉を断ち骨が砕ける感触が頭から離れない。
ただの悪夢だと言うのに夢から覚めても私は夢のことばかり考えてしまっていた、いつか正夢となってしまうのではないかと。お母様に顎を撫でられ気持ちよさそうに目を細めるこの子私を大切な人を傷つけてしまうって。
「ルナ」
急にお母様は私を抱きしめた。
「大丈夫、大丈夫よ。ルナとリュピィは私達以上に良いパートナーになるわ、だから何も心配しなくて大丈夫だから……ね?」
私のことはお見通しだった。お母様の匂い、温かさが私の不安を霞ませてくれた。
「もうあんなことは絶対に起きないから……大丈夫よ。私も直ぐに身体を直してクオラを叱らないと、家族としてダメなことはダメって教えてあげないと」
お母様はあんなことがあってもクオラの事を大切に思っている。私は凄いって思った。
でもお母様体調は次第に悪くなっていた。数日後には喋ることが困難なほど体調は悪化して存在は気薄になって行った、どんなにお医者様が頑張っても魔力が漏れ続ける穴は塞がることは無く、お母様は消えてしまった。
私は泣いた、泣き叫んだ。
────それから私は全身が鉛になってしまったかのように重苦しい日々を過ごしていた。
『大丈夫、大丈夫だから』
口癖のように大丈夫と言い、自分が辛い目に合って最後まで弱音や泣き言を言うことも無く笑顔で消えて行ってしまったお母様。
強かったお母様、私はお母様のように強くもない、なれなかった。
訓練やお勉強は逃げ出し、リュピィの事も居ないように扱ってしまっていた。
お父様や妹、お友達もわたしの頃を心配する言葉をかけてくれていたけど私には雑音でしかなかった。
2年間最低限の生活だけして夜に悪夢を見ての繰り返し、
悪夢の内容も変化して、私が襲われるだけのものから、親しい人すらもリュピィに襲われる惨たらしい者へと変化した。
変化した日から私はお友達やお父様になるべく関わらないようにした。
悪夢を見るから寝たくなかった、夜更かしをした。お父様に怒られ、お医者様にお薬を処方され無理やり眠らされた。
その日お医者様が悪夢の中で食べられた。
何度も何度もこんな辛い思いをするなら消えてしまいたいと思った、でもいつも直前でお母様が私を抱きしめる───
『大丈夫、大丈夫よ。ルナとリュピィは私達以上に良いパートナーになるわ、だから何も心配しなくて大丈夫だから……ね?』
いつもの声色で、いつもの表情で、いつもの温かさで。
ある日お父様からディスペア訓練場に行く事を進められたの、周りに竜も居ない気分転換で療養になるからって。
この頃から私は悪夢に恐怖を抱かなくなった、必ず誰かが死ぬ、消える、傷つく。
私はリュピィに傷つけられ惨状を見せつけられる。
慣れた悪夢はもう悪夢ではなかった。それに夢の中で私は今より成長してる、もし悪夢が正夢になるんだとしても何年も先、それまでに私が消えればいい、そう思うようになっていたの、そう思えば気が楽になった。
訓練場には私は行きたくなかったのに、どこからか聞きつけたネーニャが私を強引に引っ張ってここに連れてきた。
やっぱり訓練場で寝泊まりしたところで悪夢は終わらなかった。
私は訓練場でも周りを避けて過ごした、訓練に出なくても教官達からの私の印象が悪くなるだけで私は問題なかった、私と関わらなければ悪夢に現れることも無い、正夢になることもない。
私から避ければ……ネーニャ以外強引に関わって来ようとする訓練生はいなかった。
「ハイルくんを除いて……」
何度も避けてもハイルくんは私に構った、私のお気に入りの場所を見つけて、リュピィと仲良くなっちゃって、私が君を認識しちゃって。
何となくそうなるかなって思っていたけど、悪夢でリュピィに襲われるハイルくんを見たの────
「お母様っ!?」
私が部屋に駆けこむ。
「あらあら、ルナ?ドアを開ける時は少しお上品になさいね」
そう言いながらお母様はベットからお身体を起こす。
「お母様、お身体の具合はだいじょ……いかがでしょうか?」
大丈夫?と言おうとして修正する。
「ええ、私は何時でも元気よ、大丈夫心配しないで」
いつものようにお母様は言ったでもお母様の左肩には真新しい包帯が巻かれている。
失った左腕そして魔力の漏出、大丈夫なはずがない。
私を心配させないように無理をして元気を出している事はすぐに理解した。
「ほらそんな所に立っていないでこちらにいらっしゃい」
お母様に促されるままに私はベットの横に置かれていた椅子に腰をかけ、リュピィはベットのうえのスペースへと降り立った。
「あら、リュピィあなたまた食べすぎたんじゃない?」
リュピィの顎下を優しく撫であやすお母様、その姿を見て何故だか心が苦しくなってしまっていた。
「ルナ、最近お勉強の方は順調なの?」
「……大丈夫だよ」
私は嘘を吐いた。
あの事件があってから私の中で竜に対する恐怖を覚えた。リュピィ位の体格の竜なら少し頭にチラつく位で終わる、でも体格が大きい子とすれ違おうとするとそれだけであの光景を思い出し足がすくみ身体が固まってしまう。
追い打ちをかけるように毎晩毎晩光景が悪夢になって私を襲っている。
まるでお母様の身に起こった事を追体験する内容、お母様が私に変わり、クオラがリュピィに変わる、そして私はリュピィ悪夢の中で食べられる、肉を断ち骨が砕ける感触が頭から離れない。
ただの悪夢だと言うのに夢から覚めても私は夢のことばかり考えてしまっていた、いつか正夢となってしまうのではないかと。お母様に顎を撫でられ気持ちよさそうに目を細めるこの子私を大切な人を傷つけてしまうって。
「ルナ」
急にお母様は私を抱きしめた。
「大丈夫、大丈夫よ。ルナとリュピィは私達以上に良いパートナーになるわ、だから何も心配しなくて大丈夫だから……ね?」
私のことはお見通しだった。お母様の匂い、温かさが私の不安を霞ませてくれた。
「もうあんなことは絶対に起きないから……大丈夫よ。私も直ぐに身体を直してクオラを叱らないと、家族としてダメなことはダメって教えてあげないと」
お母様はあんなことがあってもクオラの事を大切に思っている。私は凄いって思った。
でもお母様体調は次第に悪くなっていた。数日後には喋ることが困難なほど体調は悪化して存在は気薄になって行った、どんなにお医者様が頑張っても魔力が漏れ続ける穴は塞がることは無く、お母様は消えてしまった。
私は泣いた、泣き叫んだ。
────それから私は全身が鉛になってしまったかのように重苦しい日々を過ごしていた。
『大丈夫、大丈夫だから』
口癖のように大丈夫と言い、自分が辛い目に合って最後まで弱音や泣き言を言うことも無く笑顔で消えて行ってしまったお母様。
強かったお母様、私はお母様のように強くもない、なれなかった。
訓練やお勉強は逃げ出し、リュピィの事も居ないように扱ってしまっていた。
お父様や妹、お友達もわたしの頃を心配する言葉をかけてくれていたけど私には雑音でしかなかった。
2年間最低限の生活だけして夜に悪夢を見ての繰り返し、
悪夢の内容も変化して、私が襲われるだけのものから、親しい人すらもリュピィに襲われる惨たらしい者へと変化した。
変化した日から私はお友達やお父様になるべく関わらないようにした。
悪夢を見るから寝たくなかった、夜更かしをした。お父様に怒られ、お医者様にお薬を処方され無理やり眠らされた。
その日お医者様が悪夢の中で食べられた。
何度も何度もこんな辛い思いをするなら消えてしまいたいと思った、でもいつも直前でお母様が私を抱きしめる───
『大丈夫、大丈夫よ。ルナとリュピィは私達以上に良いパートナーになるわ、だから何も心配しなくて大丈夫だから……ね?』
いつもの声色で、いつもの表情で、いつもの温かさで。
ある日お父様からディスペア訓練場に行く事を進められたの、周りに竜も居ない気分転換で療養になるからって。
この頃から私は悪夢に恐怖を抱かなくなった、必ず誰かが死ぬ、消える、傷つく。
私はリュピィに傷つけられ惨状を見せつけられる。
慣れた悪夢はもう悪夢ではなかった。それに夢の中で私は今より成長してる、もし悪夢が正夢になるんだとしても何年も先、それまでに私が消えればいい、そう思うようになっていたの、そう思えば気が楽になった。
訓練場には私は行きたくなかったのに、どこからか聞きつけたネーニャが私を強引に引っ張ってここに連れてきた。
やっぱり訓練場で寝泊まりしたところで悪夢は終わらなかった。
私は訓練場でも周りを避けて過ごした、訓練に出なくても教官達からの私の印象が悪くなるだけで私は問題なかった、私と関わらなければ悪夢に現れることも無い、正夢になることもない。
私から避ければ……ネーニャ以外強引に関わって来ようとする訓練生はいなかった。
「ハイルくんを除いて……」
何度も避けてもハイルくんは私に構った、私のお気に入りの場所を見つけて、リュピィと仲良くなっちゃって、私が君を認識しちゃって。
何となくそうなるかなって思っていたけど、悪夢でリュピィに襲われるハイルくんを見たの────
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