瞳が潤うまでに

夏鶴 里愛

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無音

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 酒が命なんじゃなくて酒に命注いでるんだよなー

酔っ払って寝てしまったお父さんとママに呆れながら携帯を取り出し漫画を読む。

4,5時間前までは公園で合流し紅茶なんかを飲んで素敵な時間を過ごしていたというのに…

ベットに座る場所もないので床で寝転んで漫画の続きを見る。

視界が薄れ、眠りに入る頃、

     ドカン!とどでかい爆発。
 
ガバッと起き上がるとお父さんとママとでいびきのコーラスを開いていた。

携帯を見すぎたせいか爆発のせいか頭がくらくらしている私はなぜかコーラスの指揮者になったつもりで必死に手を振る。

何時間振り続けただろう夜が明け始めた。

コーラスはデクレッシェンドせずに幕を閉じた。

ママが起きる。
        私が睨む。
 ママが謝る。
         私が許す。

旅行の支度をし、朝食を食べ、予約していたツアーに向かった。



 
 お父さんとママが再婚したのが2年前。

私がママに会いに行ったときだった。ママの隣にはお父さんがいた。まさかなー。

なんでこの人も来てるんだろう。

車に乗るときにママの腰に手を回して手伝ったり、同じカップでコーヒーを飲んだり。


恐怖で心臓が吐き出そうになった。ザワつく。

恐る恐る聞いて、貰った答えは予想通りで、予想的中!とかガッツで流そうとしたのに無理だった。

流れていたのは涙だった。

願っていたのは家族がまた1つになること。
現実として現れたのは家族が2つになったこと。



 時の流れが変えていく。今は「ママを私から奪った人」ぐらいかな。他人ではなく。

タワーに行ったり、船に乗ったり、天ぷら食べたり、でっかい藁沓の前で写真撮ったり、話して、話して、時間を取り戻すかのように話した。

時間が刻々と過ぎお別れのとき、

東京駅でバスは私達を降ろした。

「お疲れ様でしたー」とガイドさんは声を張る。

ママと目が合う。思いっきり抱きしめたあと、ママが言う。

 「もう心配しないからね。もっと離れることになるけどマリーが決めたことだから。信じてるよ。」

 「うん。わかった。ありがとう。またね。」

お父さんとも挨拶交わして二人の背中を見守った。ママのことを頼んだよ。


 家に帰る道はもの寂しくどこか空いてる気がした。

家につき、荷物と一緒に自分をベットに投げる。

あれ?家ってこんなに空っぽだったっけ。白い天井がやけに広く圧迫してきた。

「んだよ!こんだけかよ。」

誰もいない。

風が通る音も車が過ぎていく音も静かになっていく。

  独り言がくっきり浮かんでくる。

  
    無音に呑まれていく。







     「寂しいよ。」
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