瞳が潤うまでに

夏鶴 里愛

文字の大きさ
6 / 17

新学期

しおりを挟む
 新学期、寄宿校が家から遠い電車と徒歩で2時間とちょっと。

この道は少し楽しい。乗り換えしたり電車が海の下を通るからだ。

しかもまだ慣れきれてない町、不可能なミッションのように乗り換えをスラリとしたり人との接触を避けたり狭い道を素早く通ったりと随分アクションしてる。

 学校に行く道でパパに電話する。いくら遅くても寝ていても反応してくれる。

何気ない会話が元気づけ、一週間を乗り越えられてる。

本当にありがたい存在。ママとは午前に話す。夜には弱いから。また、グチグチと文句を垂れられるから。

 学校につくとベットとロッカーが変えられており、先生が案内してくれる。

先生までも変わっており、緊張が増す中、私は持ってきたかばんの中身を取り出す。

昔組は昔組で集まっていて仲間外れにされたかのように孤独になった。

だ、大丈夫。背筋シャンとしてれば何とか乗り切れーる。

手を拳にしたりパーにしたり絡ませたりと指で組体操していると昔組の最年少のアミが話しかけてきた。

少しわがままな子だが年頃だから仕方ない。

もっとヤバいやつにもあったからこの子は正常だ。

話していると新しい子ら2人が話しかけてきた。

すんごい度胸やなーと感心していると私がアジア顔だから話しかけてきたと。

1人はおっとりしていて名前はケリー、1人はファッションがおしゃれでマースだ。

新しい友達ができるのは心強いが変人が多すぎるこの国では注意したほうがいいかもしれない。

 その日は招集され掃除、食堂のグループ、授業のグループ分けまた担当場所を知らされ終わった。

ケリーとマースとは別々になったが私は3班でマースの友達のイゼと知り合った。

うちのグループは今年1番多いグループで周りが6,7人の中私達は13人だ。

掃除、食堂グループでは3班のセナとシェルと一緒になり昔組も数人いるグループで安心した。

担当場所は庭になり来る食材などの管理をするかかりになった。

担当のパートナーは前の班のメンバーのリスだった。やばい子と親友の…

授業が始まり掃除も始まりパートナーと担当が始まった。

休憩時間などでイゼが追いかけてきたり蹴ったりする。

何してんのコイツと思ったりしたが周りもそうだったのでそういうもんだと流した。

また、授業中や10分休憩で腕を噛んできた。

それまた遠慮なく。「痛い放して」というと放してくれるのであまり害はなかったが、他の子もやってたし…


 午後の休憩時間ようがあって分かれてたイゼと階段で遭遇した。

何もして来ないから安心して階段から降りようとしたら急に背中を押された。

何が起きたかわからず手すりを掴んで転ぶのを防いだ。

勢いよく押されすぎて唖然する。ついに頭イカれたか。もともとイカれてそうだけど。

イゼの顔を見ると笑っていた。

「頭大丈夫?狂っちゃってない?少し冷やしたほうがいいよ。真面目に。」

妄想で吐いてた言葉を現実で言う日が来るとは思わなかった。

生身の人間に。言う方も言ってることが信じられないもん。

イゼはただ笑って消えた。コッヴァ!何考えてんの。

距離を置こうとするが席が隣同士のうえうまく行かない。

夜になり担当場所を掃除する時間になった。リスが来ない。

     絶対サボったな。

いや、いやいやきっと別の用事ができたんだ。すぐに悪く考えるのをよそう。

そう、先生に呼ばれたとかねっ。

荷物を運び整理し、落ち葉などを箒ではらい、生徒が捨てたスナックの袋もゴミに捨て今日は終わった。

 庭の仕事は遅く終わるためみんなが寝静まった頃に寝室に入ることが多々ある。

寝静まったと言っても、小声で話してるけど…

その小声が爆笑に変わり先生がしかりに来ることは日常茶飯事。

眠れない事も日常茶飯事。

話しにのったのにいつの間にか存在感がなくなっていくのも日常茶飯事。

 次の日の朝にリスが

「ごめんね急用ができて来れなかったん。」

と言ってきた。

「別にいいよ。終わらせられたし。」

良かった。疑ったけど考え直して。

その日はまたイゼに噛まれ抵抗しリスは庭に来てくれた。

何週間かするとリスは来なくなった。

やっぱりなとでも言うべきだろうか。

 3班とも親睦を深め1番仲のいい班と噂されるようになった。

日々は濃く過ぎていく。庭を1人で片付けていると倉庫担当のセナが「大丈夫?」と聞いてきた。

「大丈夫だよ!」とマッスルポーズをしてみせる。

腕にズキッと痛みが走った。よく庭でぶつけてるからかな足にもアザできたし…

「どうしたの?」とすぐ聞くセナの温もりを感じながら、

「庭だと障害物多くて大変なんだよ。こないだ背中やられた。」

というと、

「倉庫もそうだよ。お互い大変だね。」

「ねー。」と意気投合した。

 次の日の昼頃招集された生徒たちは列をつくり座る。列と言える代物ではないが。

イゼが隣に座りその隣にはマースが座った。

イゼはまた噛んでくる。軽く噛んでるはずなのにすごく痛い。

押しても、離れないようにもっと強く噛んできた。

ハイエナかよ。さずがにやばい気がして頭を叩いて噛むのをやめさせた。

腕を抑えているとマースが声かける。

「コイツ馬鹿でしょ。私の腕も前の学校で噛んできたんだよね。おかげでアザができたんだけどほんとに馬鹿。」

言いながらイゼをビシバシと叩いてる。

すると急にイゼが聞いてきた。

「マリーはさ私とマースどっちが好き?」

と聞いてきた。

「言いたくない。」

「言えない理由でもあるの?」

「言ったら多分どちらかを傷つけちゃうからじゃない?」横からアミがサポートしてくれる。

「お願い言ってよ!大丈夫だから!怒んないから!でも正直に本当のこと言って!」

何回かこの会話を繰り返したあと面倒くさくなりせめてうまくカバーしながら本当を言おうとした。

「マースは同じ班じゃないしまだあまり知らない。でもイゼは同じ班だしもっと知ってる。イゼは噛んできたりしたし、まだ知らないこともあるだろうけど、今はマースの方が信頼できるかな。」

「え?何それ?意味わかんないんだけど。」

誰が言った?は?イゼ?意味がわからなすぎて笑ってしまった。

「何笑ってんの?こっちはイライラしてるんだけど。」

「イライラさせられてるのは本当はどっちかな?」

苛つきを抑えきれず逆に冷静になる。曲がってた姿勢も戻った。

「嫌と拒んだのにいちいち言わせやがって結局自分が傷ついてるだ?笑わせんな。最初に正直に言えって言ったのはそっちだし怒らないからって言ったのもそっちだよね、言葉守らないでおいてキレる資格はお前にはない。」

今までも何回か思ったけどいいや、こいつからは離れよう。

席とかもなんとかして話さないようにしよう。

マースが視線を送る。

「マリーが今まで1度も怒らなかったからびっくりした。起こると怖いね。」

空気読めよ。クソ野郎。イゼはすねて黙った。納得がいかないように見える。

アミは笑いながら「だから言ったじゃーん。」とかいう。

どいつもこいつも。

マースが少しおどおどしている。気のせいかな。ぁあいらつく。

どんよりした空気は先生の今後の説明を聞いても治らなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

包帯妻の素顔は。

サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...