瞳が潤うまでに

夏鶴 里愛

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乙女の妄想

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年越し前日寄宿校全生徒のテストがあるため徹夜した。

試験官が来てくれる制度だが来る人が少ない分夜までかかった。待ち時間が長くお菓子を持ってきては頬張る人もいた。

イゼは機嫌を損ねてる私に本を見せてくれた。他の子が「見して!」って言っても見せなかった。

「どうして他の子には見せないの?」

「大切な本だから!」

「なんで私には見せるの?」

「特別だから!」

そんなこと言われたのは初めてで、願っていた友達はイゼなのかな?なんて思ったりした。

本を読み、「後でまた見せてね。」と伝え机に顔をおき目を瞑ると肩を掴まれ思いっきり引っ張られる。

「おっと、マリー君が机で寝れる体質でないのを知ってるよ。私の妄想を聞いて!」

とあるアイドルグループにハマっているイゼはグループの売れっ子が好きで、物語に現実味がないからと言う理由で私を加えたらしい。

要するに私は被害者だ。

イゼは話し始める。

「私達はマネージャーでお仕掛けてくるファンを取り押さえてるのね。」

「うぉん。」

「え?」

「ごめん気にしないで。相槌うっただけ。」

「それで私が英語喋って、韓国語できないから、マリーが通訳して2人で訴えるの!」

「いや、イゼ英語もできないじゃん。」

睨んでくるイゼにだってそうでしょとゼスチャーするとため息をつかれる。

「じゃあ私が全部言います。はい。でぇ~話し終わって退場させるじゃん、その時マリーが床につっかかって転びそうになる。その時すっとマリーを支える手。きゃー!」

「騒いでるところ悪いけど普通に考えてみ、落ちそうなら私はスターン!って踏み込んでるって。イゼの知ってるマリーはそうでしょ。」

イゼは悩むと閃いたかのように指をパチンと鳴らす。

「階段から落ちたんだ!」

「なんで私を落としたがるの?!」

「恋に困難は付き物だよ?」

「いや、自分が落ちればいいじゃん。」

「私には別のシナリオが用意されているのだ!」

「一応言っておくけど階段から落ちたら私はハリウッドスターのやってる腕を手前でクロスして背中から落ちるやつやるからね。」

「甘いね!君が落ちる前にもう掴んでいるのさぁ。君の腰を。」

「うおぇえええ!」

と吐く真似をするとイゼは引き笑いをする。

他にも甘々な少女漫画展開を聞かされるが阻止したり突破されたりと心理戦も踏まえていた妄想だった。

先生の合図で食堂に流される。猛獣のようになった生徒らは階段を海にダイブするかのように飛ぶ。

「飛んでも結局ドア塞がってるのにね。」

「飛びたくなるのもわかるけど。」

二人で肩を組んで階段を降りる私より身長の小さいイゼは私の首を締めながら降りているようなものだが。

効果音をだしてるイゼにコショコショするときゅうりを見た猫のように私から剥がれる。

「階段で飛ぶのは危ないよ。腰を支えてくれるアイドルもいないし。」

「大丈夫!マリーは私を助けてくれる。ねっ!」

肩を強く掴んでくるイゼに

「もっとマッサージしてくれてもいいんだよ?」

というとバシッと叩かれた。
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