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しおりを挟むエドガー様が全てを失ってから、数週間が経ったある日。私は、レオナルド様と二人で、お茶を飲んでいた。
「クラリスは、本当に美しくなった。君の笑顔を見るたびに、私は幸せな気持ちになります」
レオナルド様は、そう言って、私の手を優しく握ってくれた。
私は、彼の言葉に、頬を赤らめた。
「レオナルド様のおかげですわ。私に、新しい世界を見せてくれたのは、あなたですもの」
私たちが穏やかな時間を過ごしていると、突然、屋敷の執事が慌てた様子でやってきた。
「クラリス様!エドガー様が、お会いしたいと……」
私は、その言葉に、一瞬、息をのんだ。エドガー様が?今さら、何の用だろうか。
私は、彼に会いたくなかった。でも、レオナルド様は、私の手を握りしめ、優しく言った。
「会ってあげてください。君の気持ちが、はっきりするかもしれません」
私は、彼の言葉に背中を押され、別室でエドガー様と会うことにした。
部屋に入ると、そこにいたのは、以前のきらびやかな侯爵子息ではなかった。みすぼらしい服を身につけ、顔には泥がついていた。まるで、別人のようだった。
「クラリス……」
彼は、私を見ると、地面にひざまずき、私の足にすがりついてきた。
「クラリス、どうか、僕を許してくれ!僕が悪かった!君を捨てた僕が、愚かだったんだ!」
彼の声は、震えていた。その姿は、あまりにも哀れで、惨めだった。
「僕には、もう何も残っていないんだ。爵位も、財産も、家族も……。セシリアも、僕から離れていった。僕には、もう君しかいないんだ!」
彼は、私に必死に復縁を懇願した。
私は、彼の言葉を聞いても、何の感情も湧いてこなかった。かつて、あれほど愛した彼なのに。
「あなたと、復縁する気はありません」
私がそう言うと、彼は顔を上げ、信じられないという表情で私を見つめた。
「どうしてなんだ!?僕たちは、婚約者だったじゃないか!君は、僕のことを愛してくれていたはずだ!」
彼の言葉に、私は静かに言った。
「ええ、愛していました。でも、あなたは、そんな私を捨てた。そして、『影の薄い女』だと、私を嘲笑いました。あの時、私の心は、あなたによって壊されたのです」
彼の顔が、青ざめていくのが分かった。
「僕は、君のことを馬鹿にしたりなんか……」
「いいえ。あなたは、言いました。『君のような影の薄い女では、僕の妻に相応しくない』と」
私は、彼の言葉を、一語一句、鮮明に覚えていた。
「あの時、私には、もう居場所がありませんでした。でも、レオナルド様は、そんな私を救ってくださった。そして、私を、愛してくださった」
私は、部屋の扉を開け、レオナルド様を招き入れた。レオナルド様は、静かに私の隣に立った。
「あなたに否定されたこの私を、この方が愛してくださっていますのよ」
私は、エドガー様に、そう告げた。
エドガー様は、何も言い返すことができず、ただ、その場で泣き崩れた。
私は、彼に背を向け、レオナルド様と一緒に、部屋を出た。
それから、数日後。私は、レオナルド様と、結婚式を挙げた。
結婚式は、とても盛大に行われた。多くの人々が、私たちを祝福してくれた。
私は、純白のウェディングドレスを身につけ、レオナルド様の隣に立っていた。彼の隣にいることが、私にとって、どれほど幸せなことか。
「クラリス、君は、本当に美しい」
彼は、そう言って、私の頭を優しく撫でてくれた。
「レオナルド様……」
私は、彼を見つめ、涙を流した。
誓いの言葉を交わし、私たちは、永遠の愛を誓った。
結婚式が終わった後、私は、レオナルド様と一緒に、新しい生活を始めた。
彼は、私を、心から愛してくれた。
「クラリス、今日は、君の好きなものを食べようか?」
「クラリス、今日は、どこへ行きたい?」
彼は、いつも私のことを一番に考えてくれた。
私は、彼と一緒に過ごす毎日が、とても幸せだった。
ある日の午後。私は、レオナルド様と一緒に、庭園を散歩していた。
「エドガー様は、今、どうしているのでしょうか?」
私がそう尋ねると、レオナルド様は、少し困ったような顔をして、こう言った。
「さあ、どうでしょう。でも、彼には、もう関わらない方がいい。彼は、君を傷つけた。その罪は、一生消えることはない」
彼の言葉に、私は頷いた。
私は、もう、エドガー様を恨んでいなかった。彼が私を捨てたからこそ、私は、レオナルド様と出会うことができたのだから。
私は、彼に感謝こそすれ、恨む気持ちは、もうなかった。
「私は、幸せです。レオナルド様と出会えて、本当に良かった」
私がそう言うと、彼は、私の手を優しく握りしめた。
「私もです。君と出会えて、本当によかった。君は、私の人生を、素晴らしいものにしてくれた」
私は、彼の言葉に、心から幸せを感じた。
私の人生は、もう、影ではない。私は、レオナルド様という光に照らされ、輝くことができるようになった。
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