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キラキラと輝くクリスタルのシャンデリアが、広大な夜会会場を昼間のように照らしています。色とりどりのドレスに身を包んだ貴婦人たちが蝶のように舞い、優雅な音楽が流れるこの場所は、本来なら誰もが憧れる夢の世界のはずでした。
けれど、私、リリア・アシュレイにとっては、ここはこの世で一番息苦しい、針のむしろのような場所でしかありません。
「……ねえ、見て。あの方がアシュレイ子爵家のリリア様よ。今日も相変わらず、地味な格好をなさっているわね」
「まあ、本当。公爵令息であるディーン様の婚約者だというのに、あの煤けたような茶色の髪に、流行遅れの灰色のドレス。まるでお屋敷に迷い込んだネズミのようだわ」
周囲から聞こえてくるのは、隠そうともしない嘲笑のつぶやき。私は、自分の手元をじっと見つめて、ただ嵐が過ぎ去るのを待つことしかできませんでした。 確かに私の外見は、この華やかな王都では「地味」の一言に尽きるでしょう。魔力があるわけでも、誰かを魅了するような美貌があるわけでもありません。
でも、私は私なりに努力をしてきました。ディーン様の公爵家が抱える膨大な事務作業を肩代わりし、彼が「面倒だ」と放り出した領地の予算管理や、複雑な薬草園の維持計画を夜通しで立ててきたのです。彼が社交界で「若き天才」と持て囃されている裏側には、私の献身があったはずでした。
しかし、そんな淡い期待は、一瞬で打ち砕かれることになります。
「——おい、リリア。お前、いつまでそこに突っ立っているんだ。私の横に並ぶことさえ、恥ずかしくなってくるよ」
聞き慣れた、けれど今までで一番冷酷な声。顔を上げると、そこにはプラチナブロンドの髪を美しく整えた、私の婚約者ディーン・グラハムが立っていました。 その隣には、彼がエスコートしている見慣れない女性が寄り添っています。王都一の美貌と名高い、侯爵令嬢のセシリア様でした。
「ディーン様、お呼びでしょうか。その、隣にいらっしゃる方は……」
私が震える声で尋ねると、ディーン様はあざ笑うように口角を上げ、会場中に響き渡る大きな声で宣言したのです。
「いい機会だ、皆の前でハッキリさせておこう! リリア・アシュレイ、私とお前の婚約は今この瞬間を以て破棄させてもらう! これからは、この美しく、才気あふれるセシリア嬢こそが、私の真のパートナーだ!」
会場が一瞬で静まり返り、次の瞬間、波のようなざわめきが広がりました。私は頭を強く殴られたような衝撃に、目まいを覚えました。
「こ、婚約破棄……? そんな、急にどうしてですか? 私は、あなたのために公爵家の仕事だって、ずっと精一杯……」
「黙れ! その薄汚い口で、私の名前を呼ぶな! お前のやっていたことなど、誰にでもできる雑用ではないか。お前のように華がなく、社交一つまともにこなせない女が隣にいるだけで、私の格が下がるんだ。私の隣に相応しいのは、宝石のように輝くセシリアだけだ。お前のような無能な女は、我が公爵家の、いや、王都の社交界の汚点なのだよ!」
ディーン様の言葉は、鋭い刃物のように私の心を切り刻んでいきました。隣に立つセシリア様は、扇で口元を隠しながら、勝ち誇ったような笑みを浮かべています。
「おーほほほ! 可哀想なリリア様。ディーン様を支えるのは、私のような完璧な淑女の役目ですの。地味な貴女は、どこか暗い片隅で、一生誰にも気づかれずに生きていくのがお似合いですわよ?」
周囲からは「当然ね」「分不相応だったのよ」という冷たい視線が突き刺さります。私は耐えきれず、涙をこらえながら夜会会場を飛び出しました。
夜道を走り、逃げるように実家のアシュレイ子爵家へと戻りました。お父様とお母様(血の繋がらない継母ですが)なら、きっと私の話を聞いてくれる。そう信じていたのです。
けれど、屋敷の玄関を入った私を待っていたのは、温かい言葉ではなく、氷のような冷たい一瞥でした。
「……リリア、お前、なんてことをしてくれたんだ」
執務室に座る父は、私が部屋に入るなり、手に持っていた書類を机に叩きつけました。その隣では、継母が忌々しそうに私を睨みつけています。
「ディーン様から連絡があったわ。婚約は白紙だと。ああ、なんてこと! 公爵家との縁を繋ぎ止めておくために、わざわざあんたのような地味な娘をあてがってやったというのに、それさえも満足にできないなんて。本当に、何の役にも立たない無能な子ね!」
「お父様、お母様……聞いてください。私は精一杯尽くしました。ディーン様のために、お屋敷の仕事も……」
「言い訳など聞きたくない! 公爵家に泥を塗られた我々の立場がどうなるか、分かっているのか? もういい。お前のような恥さらし、我が家には置いておけん。今この時を以て、リリア・アシュレイの名前を家系図から抹消する。お前はもう、アシュレイ家の人間ではない!」
父の宣告は、ディーン様の言葉よりも深く私を絶望させました。たった一晩で、私は婚約者も、家族も、名前さえも失ってしまったのです。
「ですが、私はどこへ行けば……」
「安心なさい、ちゃんと行き先は用意してあげたわ。王国の北の果て、魔物が棲むと言われる辺境の地『ノースガルド』よ。あそこの領主が、死にかけの妻の代わりに、家事でも何でもできる女を求めているそうよ。まあ、お前のような不運な女にはお似合いの、地獄のような場所でしょうけどね!」
継母は、まるでゴミを捨てるような口調でそう言い放ちました。
「明日、日の出とともに馬車が出る。荷物はそのボロ鞄一つに入る分だけだ。二度と、王都にその顔を見せるなよ」
翌朝、私はわずかな着替えと、趣味で集めていた植物の種、そして今まで書き溜めていた農作物の改良案を記したノートだけを持って、迎えの馬車に乗り込みました。
馬車といっても、貴族が乗るような立派なものではありません。窓にはガタが来ていて、冷たい風が入り込んでくる、まるで荷車のような代物です。
王都を離れるにつれ、景色はどんどん荒涼としたものになっていきました。緑は消え、痩せた土地と険しい岩山が続くようになります。
(私は、あんなに一生懸命頑張ってきたのに……。どうして、こんなことになっちゃったんだろう)
馬車の揺れに身を任せながら、私は膝の上で拳をぎゅっと握りしめました。 ディーン様は、私が作った「効率的な領地経営計画」がなければ、数ヶ月で家計を破綻させるでしょう。 私が毎日手入れをしていた「希少な薬草の温室」も、適切な温度管理と魔力調整をしなければ、一週間で枯れてしまうはずです。
でも、もう私には関係ありません。
「……いいわ。もう、あんな冷たい場所には戻らない」
涙を拭い、私は窓の外を見つめました。 遠くに見えるのは、万年雪を頂いた巨大な山脈。あそこが、私の「追放先」であり、新しい人生の始まりの場所。
魔物が棲み、吹雪が吹き荒れるという死の土地、ノースガルド。 そこで私を待っているのが、どれほど恐ろしい運命だったとしても。 自分勝手な婚約者や、愛のない家族に囲まれていたあの王都よりは、きっとマシなはずです。
私は目を閉じ、これからの厳しい生活を想像しました。 でも、その時の私はまだ知らなかったのです。 最果ての地に住む「無骨な辺境伯」が、私の冷え切った心をどれほど深く温めてくれることになるのかを。
馬車は、泥を跳ね上げながら、灰色の空の下をひた走っていきました。
けれど、私、リリア・アシュレイにとっては、ここはこの世で一番息苦しい、針のむしろのような場所でしかありません。
「……ねえ、見て。あの方がアシュレイ子爵家のリリア様よ。今日も相変わらず、地味な格好をなさっているわね」
「まあ、本当。公爵令息であるディーン様の婚約者だというのに、あの煤けたような茶色の髪に、流行遅れの灰色のドレス。まるでお屋敷に迷い込んだネズミのようだわ」
周囲から聞こえてくるのは、隠そうともしない嘲笑のつぶやき。私は、自分の手元をじっと見つめて、ただ嵐が過ぎ去るのを待つことしかできませんでした。 確かに私の外見は、この華やかな王都では「地味」の一言に尽きるでしょう。魔力があるわけでも、誰かを魅了するような美貌があるわけでもありません。
でも、私は私なりに努力をしてきました。ディーン様の公爵家が抱える膨大な事務作業を肩代わりし、彼が「面倒だ」と放り出した領地の予算管理や、複雑な薬草園の維持計画を夜通しで立ててきたのです。彼が社交界で「若き天才」と持て囃されている裏側には、私の献身があったはずでした。
しかし、そんな淡い期待は、一瞬で打ち砕かれることになります。
「——おい、リリア。お前、いつまでそこに突っ立っているんだ。私の横に並ぶことさえ、恥ずかしくなってくるよ」
聞き慣れた、けれど今までで一番冷酷な声。顔を上げると、そこにはプラチナブロンドの髪を美しく整えた、私の婚約者ディーン・グラハムが立っていました。 その隣には、彼がエスコートしている見慣れない女性が寄り添っています。王都一の美貌と名高い、侯爵令嬢のセシリア様でした。
「ディーン様、お呼びでしょうか。その、隣にいらっしゃる方は……」
私が震える声で尋ねると、ディーン様はあざ笑うように口角を上げ、会場中に響き渡る大きな声で宣言したのです。
「いい機会だ、皆の前でハッキリさせておこう! リリア・アシュレイ、私とお前の婚約は今この瞬間を以て破棄させてもらう! これからは、この美しく、才気あふれるセシリア嬢こそが、私の真のパートナーだ!」
会場が一瞬で静まり返り、次の瞬間、波のようなざわめきが広がりました。私は頭を強く殴られたような衝撃に、目まいを覚えました。
「こ、婚約破棄……? そんな、急にどうしてですか? 私は、あなたのために公爵家の仕事だって、ずっと精一杯……」
「黙れ! その薄汚い口で、私の名前を呼ぶな! お前のやっていたことなど、誰にでもできる雑用ではないか。お前のように華がなく、社交一つまともにこなせない女が隣にいるだけで、私の格が下がるんだ。私の隣に相応しいのは、宝石のように輝くセシリアだけだ。お前のような無能な女は、我が公爵家の、いや、王都の社交界の汚点なのだよ!」
ディーン様の言葉は、鋭い刃物のように私の心を切り刻んでいきました。隣に立つセシリア様は、扇で口元を隠しながら、勝ち誇ったような笑みを浮かべています。
「おーほほほ! 可哀想なリリア様。ディーン様を支えるのは、私のような完璧な淑女の役目ですの。地味な貴女は、どこか暗い片隅で、一生誰にも気づかれずに生きていくのがお似合いですわよ?」
周囲からは「当然ね」「分不相応だったのよ」という冷たい視線が突き刺さります。私は耐えきれず、涙をこらえながら夜会会場を飛び出しました。
夜道を走り、逃げるように実家のアシュレイ子爵家へと戻りました。お父様とお母様(血の繋がらない継母ですが)なら、きっと私の話を聞いてくれる。そう信じていたのです。
けれど、屋敷の玄関を入った私を待っていたのは、温かい言葉ではなく、氷のような冷たい一瞥でした。
「……リリア、お前、なんてことをしてくれたんだ」
執務室に座る父は、私が部屋に入るなり、手に持っていた書類を机に叩きつけました。その隣では、継母が忌々しそうに私を睨みつけています。
「ディーン様から連絡があったわ。婚約は白紙だと。ああ、なんてこと! 公爵家との縁を繋ぎ止めておくために、わざわざあんたのような地味な娘をあてがってやったというのに、それさえも満足にできないなんて。本当に、何の役にも立たない無能な子ね!」
「お父様、お母様……聞いてください。私は精一杯尽くしました。ディーン様のために、お屋敷の仕事も……」
「言い訳など聞きたくない! 公爵家に泥を塗られた我々の立場がどうなるか、分かっているのか? もういい。お前のような恥さらし、我が家には置いておけん。今この時を以て、リリア・アシュレイの名前を家系図から抹消する。お前はもう、アシュレイ家の人間ではない!」
父の宣告は、ディーン様の言葉よりも深く私を絶望させました。たった一晩で、私は婚約者も、家族も、名前さえも失ってしまったのです。
「ですが、私はどこへ行けば……」
「安心なさい、ちゃんと行き先は用意してあげたわ。王国の北の果て、魔物が棲むと言われる辺境の地『ノースガルド』よ。あそこの領主が、死にかけの妻の代わりに、家事でも何でもできる女を求めているそうよ。まあ、お前のような不運な女にはお似合いの、地獄のような場所でしょうけどね!」
継母は、まるでゴミを捨てるような口調でそう言い放ちました。
「明日、日の出とともに馬車が出る。荷物はそのボロ鞄一つに入る分だけだ。二度と、王都にその顔を見せるなよ」
翌朝、私はわずかな着替えと、趣味で集めていた植物の種、そして今まで書き溜めていた農作物の改良案を記したノートだけを持って、迎えの馬車に乗り込みました。
馬車といっても、貴族が乗るような立派なものではありません。窓にはガタが来ていて、冷たい風が入り込んでくる、まるで荷車のような代物です。
王都を離れるにつれ、景色はどんどん荒涼としたものになっていきました。緑は消え、痩せた土地と険しい岩山が続くようになります。
(私は、あんなに一生懸命頑張ってきたのに……。どうして、こんなことになっちゃったんだろう)
馬車の揺れに身を任せながら、私は膝の上で拳をぎゅっと握りしめました。 ディーン様は、私が作った「効率的な領地経営計画」がなければ、数ヶ月で家計を破綻させるでしょう。 私が毎日手入れをしていた「希少な薬草の温室」も、適切な温度管理と魔力調整をしなければ、一週間で枯れてしまうはずです。
でも、もう私には関係ありません。
「……いいわ。もう、あんな冷たい場所には戻らない」
涙を拭い、私は窓の外を見つめました。 遠くに見えるのは、万年雪を頂いた巨大な山脈。あそこが、私の「追放先」であり、新しい人生の始まりの場所。
魔物が棲み、吹雪が吹き荒れるという死の土地、ノースガルド。 そこで私を待っているのが、どれほど恐ろしい運命だったとしても。 自分勝手な婚約者や、愛のない家族に囲まれていたあの王都よりは、きっとマシなはずです。
私は目を閉じ、これからの厳しい生活を想像しました。 でも、その時の私はまだ知らなかったのです。 最果ての地に住む「無骨な辺境伯」が、私の冷え切った心をどれほど深く温めてくれることになるのかを。
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