7 / 41
第一章:アラミタマはうらーか男子!?
⑤
しおりを挟む
配信終了後、白亜はまだクロアの快感の余韻に浸りながら、ノソノソと後片付けをしていた。着物を汚さぬように脱ぎ、敷いていたバスタオルを丸め、身体に付着した体液を拭う。
「あのなぁ……そろそろ帰っていいか?」
側から見ていた和也は呆れた声色で白亜に尋ねた。合計一時間半、じっくり時間をかけた男の自慰行為を見た後だ。不覚にも勃起してしまった事は、何が何でもバレたくはなかった。
未だ畳の上を這い、片付けの途中にあった白亜が和也を見上げて、ニタリと笑う。和也の隠しておきたかった事は、呆気なくバレた。
「貴様、我の配信を生で見て魔羅を勃起させているな?……責めてはおらん。後でアーカイブを見て、自慰をする事だな」
「クソがっ!男相手に勃起なんざ事故だ、事故!」
「今はそういう事にしておいてやろう」
別室に持って行って片付けるものと、この部屋に置いておくだろう物を分別した白亜は、変わらずニタニタといやらしい笑いを浮かべたままだ。少し前まで、和也の知っている白亜の表情は、ゴミを見るように睨めつけてくる、ムカつく表情だけだった。
クロアという側面を見つけて以来、白亜は意外と表情豊かな人……いや、人では無い存在ではあるが、そういうものだと気付いた。
和也の中でもまた、少しずつ何かが変わろうとしている兆しがあった。
慣れた手つきでスマホを弄りながら、白亜は和也の横にぴとっと身を寄せて張り付いた。スマホの画面の、たった今投稿しただろうSNSの画面を和也に見せてくる。
画面には、先程配信したばかりの動画から切り抜いたような写真と「今日の配信、来てくれてありがとう。次回からはアシスタントも来る。そちらへの質問、リクエストも宜しく頼む」の、文字。
写真は……白亜の場合、ご都合主義的な神通力の無駄遣いでアーカイブのデータからいい感じの部分を、今の投稿のもので言うと絶頂し恍惚の表情を浮かべている部分を文字通りバストアップに切り抜いて、貼り付けたようだった。神通力の無駄遣いや、写真の部分はまだ分かる。が。
和也が考えるよりも先に、ポン、と、白亜が軽く肩を叩いてきた。嫌な予感しかしない。
「次回の配信から、貴様にアシスタントを任せようと思う」
嫌な予感ほど、当たりやすい。和也はダラダラと冷や汗を流す。変態配信のアシスタントなんて、ぶっちゃけやりたくない。
「なぁに、タダでとは言わん。歩合制で工賃ぐらいは出してやる。あと、欲しいものリストの送付先を貴様の部屋にして構わないならば、月に千円を追加でやろう」
悪意が無いって怖えよ。人外だけあって、最低賃金とか白亜は知らねーんだろうな。歩合制で工賃なんつー、明らか小遣い程度の無いよかマシ程度の話じゃねぇか。ツッコミたい事は、山ほどあった。
「とりあえず……白亜さん。貴様って呼ぶのは止めろ。名前で呼んでくれ、和也だ」
「和也、たぶん荘の更新に金が必要なのだろう?小遣い稼ぎ位は出来る仕事を与えると、我は言うておるのだ。続けられるならば、工賃を途中で値上げしてやろう。悪い話ではあるまいに」
無収入か、ショボそうな工賃か。新たに和也に突きつけられた、二択問題。
「欲しいものリストの送付先には使っていいが、動画のアシスタントは次までにどの範囲のものか打ち合わせ出来るようにしてくれ。出来ねーモンの時は出来ねーっつーから」
「ふむ、それで良い。次の配信内容を決めた時に概要を伝えに行く。き……否、和也は暇であろう?なるべく日中、直接部屋に行くとしよう」
内容は裏アカのアダルトな、変態男の変態配信ではあるものの、白亜は真剣に考え、心から楽しんでいる事が伝わってくる。真剣な眼差しの奥に、キラキラした純真が見え隠れしていた。そんな白亜に、和也は眩しさを感じ、断ろうという意思は短時間の会話でいつの間にか、ほぼ消え失せていた。
「因みに、万が一オレが全てを断った場合は、白亜さんはどうするつもりだったんだ?」
工賃とやらが安かろうが、今更断る気は和也には無い。気になったので口に出して聞いてみた。質問の意味はそれだけだ。
白亜は顎に手を当てて天井を見上げた後、視線を和也に向けた。
「断られた場合は、あの玄関での動画に和也の個人情報全部載せテロップを付けて、ネットにバラ撒いただろうな。撒かずに済んで本当に良かった」
白亜はいたずらっ子の笑みを和也に向けた。
悪意無き純真は心底恐ろしいのだ、と、和也の脳裏に焼き付けられた。和也自身気付かない部分は、知らず知らずのうちに成長し始めていた。
「あのなぁ……そろそろ帰っていいか?」
側から見ていた和也は呆れた声色で白亜に尋ねた。合計一時間半、じっくり時間をかけた男の自慰行為を見た後だ。不覚にも勃起してしまった事は、何が何でもバレたくはなかった。
未だ畳の上を這い、片付けの途中にあった白亜が和也を見上げて、ニタリと笑う。和也の隠しておきたかった事は、呆気なくバレた。
「貴様、我の配信を生で見て魔羅を勃起させているな?……責めてはおらん。後でアーカイブを見て、自慰をする事だな」
「クソがっ!男相手に勃起なんざ事故だ、事故!」
「今はそういう事にしておいてやろう」
別室に持って行って片付けるものと、この部屋に置いておくだろう物を分別した白亜は、変わらずニタニタといやらしい笑いを浮かべたままだ。少し前まで、和也の知っている白亜の表情は、ゴミを見るように睨めつけてくる、ムカつく表情だけだった。
クロアという側面を見つけて以来、白亜は意外と表情豊かな人……いや、人では無い存在ではあるが、そういうものだと気付いた。
和也の中でもまた、少しずつ何かが変わろうとしている兆しがあった。
慣れた手つきでスマホを弄りながら、白亜は和也の横にぴとっと身を寄せて張り付いた。スマホの画面の、たった今投稿しただろうSNSの画面を和也に見せてくる。
画面には、先程配信したばかりの動画から切り抜いたような写真と「今日の配信、来てくれてありがとう。次回からはアシスタントも来る。そちらへの質問、リクエストも宜しく頼む」の、文字。
写真は……白亜の場合、ご都合主義的な神通力の無駄遣いでアーカイブのデータからいい感じの部分を、今の投稿のもので言うと絶頂し恍惚の表情を浮かべている部分を文字通りバストアップに切り抜いて、貼り付けたようだった。神通力の無駄遣いや、写真の部分はまだ分かる。が。
和也が考えるよりも先に、ポン、と、白亜が軽く肩を叩いてきた。嫌な予感しかしない。
「次回の配信から、貴様にアシスタントを任せようと思う」
嫌な予感ほど、当たりやすい。和也はダラダラと冷や汗を流す。変態配信のアシスタントなんて、ぶっちゃけやりたくない。
「なぁに、タダでとは言わん。歩合制で工賃ぐらいは出してやる。あと、欲しいものリストの送付先を貴様の部屋にして構わないならば、月に千円を追加でやろう」
悪意が無いって怖えよ。人外だけあって、最低賃金とか白亜は知らねーんだろうな。歩合制で工賃なんつー、明らか小遣い程度の無いよかマシ程度の話じゃねぇか。ツッコミたい事は、山ほどあった。
「とりあえず……白亜さん。貴様って呼ぶのは止めろ。名前で呼んでくれ、和也だ」
「和也、たぶん荘の更新に金が必要なのだろう?小遣い稼ぎ位は出来る仕事を与えると、我は言うておるのだ。続けられるならば、工賃を途中で値上げしてやろう。悪い話ではあるまいに」
無収入か、ショボそうな工賃か。新たに和也に突きつけられた、二択問題。
「欲しいものリストの送付先には使っていいが、動画のアシスタントは次までにどの範囲のものか打ち合わせ出来るようにしてくれ。出来ねーモンの時は出来ねーっつーから」
「ふむ、それで良い。次の配信内容を決めた時に概要を伝えに行く。き……否、和也は暇であろう?なるべく日中、直接部屋に行くとしよう」
内容は裏アカのアダルトな、変態男の変態配信ではあるものの、白亜は真剣に考え、心から楽しんでいる事が伝わってくる。真剣な眼差しの奥に、キラキラした純真が見え隠れしていた。そんな白亜に、和也は眩しさを感じ、断ろうという意思は短時間の会話でいつの間にか、ほぼ消え失せていた。
「因みに、万が一オレが全てを断った場合は、白亜さんはどうするつもりだったんだ?」
工賃とやらが安かろうが、今更断る気は和也には無い。気になったので口に出して聞いてみた。質問の意味はそれだけだ。
白亜は顎に手を当てて天井を見上げた後、視線を和也に向けた。
「断られた場合は、あの玄関での動画に和也の個人情報全部載せテロップを付けて、ネットにバラ撒いただろうな。撒かずに済んで本当に良かった」
白亜はいたずらっ子の笑みを和也に向けた。
悪意無き純真は心底恐ろしいのだ、と、和也の脳裏に焼き付けられた。和也自身気付かない部分は、知らず知らずのうちに成長し始めていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる