学校の脇の図書館

理科準備室

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大きな「し」の字

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ぼくはそのまま思いっきり「うん」といきんだ。
すると、まずぶっとおならが出て、うんこがぼくのおしりの穴付近をゆっくり押し広げながら通り抜けるむずむずした感じがしてきた。同時におしっこもおちんちんから勢いよく出てきた。むずむずした感じでおちんちんが固くなって、すこしおしっこが金隠しの脇に飛んで濡れた。
一昨日の夜からずっと溜まっていただけあって、おなかにいくら力を入れても、まるでおしりの穴に太い棒のようなものが差し込まれて通り過ぎていく感覚がいつまでも続いた。
このままだと、いくら真昼中の誰もいない市立図書館のトイレでも、ドアが半分開いているから、誰かがここに来るとうんこ中のぼくが見られてしまう・・・
かといって、手を伸ばして閉めることできなかった。
ぼくの手のひらは無意識のうちに目の前の金隠しの上にのせて体重をかけた。きそんなおなかの中のうんこを少しでも早く押し出すために手の平と足に目いっぱい力をかけて「うん」「うん」といきんだ。
でも、履いていた便所下駄は足にかけた力を受けるには不安定で、履いていた靴下もすべるのでつま先に力が集中したまま、時々少し姿勢が崩れて足元が動き、便所下駄がカチャッという音を立てた。

出てきたうんこから漂ってくるニオイもおとといからたまっていたものだけあってすごかった。半分ドアが開いていたから、しゃがむ方だけでなく男子トイレ全体ににおいがひろがっていそうだった。水洗トイレはうちの汲み取り便所のようにふだんは臭くないけど、自分でするときはすぐ近くからにおってくるので臭さは汲み取りトイレ以上だということがよくわかった。
それに加えて市立図書館のトイレは冷房も換気扇もなく、すりガラスの窓を通して夏の午後の太陽が差し込んでいたので、ただでさえ暑苦しいのに朝からたまっていたうんこのニオイですごく息苦して呼吸するのも苦痛なくらいだった。
窓の外から直接聞こえてくる蝉の声はそんな息苦しさをさらに暑苦しいものにしていた
 それで、いきむたび口から漏れていたぼくの「うん」「うん」も、だんだん酸素不足の水槽の金魚のように口をのどの奥から開けて、あえぐように呼吸する「ああ」「ああ」に変わった。そういう呼吸の方がいきむ時に手や足に力が入るような気がした。
そのとき本当に気持ち悪かったのは全身から吹き出してくる汗だった。うんこをいきむのと暑さと校庭を走った時の汗でぼくの全身は走ったあとと同じくらい汗が出ていて。上半身の服は汗でびっしょりと濡れていた。汗はいくらぼくが手の甲で拭っても「ああ」「ああ」とあえぐたびにぼくのひたいや頬からしずくになってぼくの胸でゆれる名札や裸になった膝の上に落ちた。下半身のほうも汗でなんかむず痒くて、うんこが出ているおしりをぼりぼりと何度もかいてしまった。
そしてぼくはいつまでもうんこが終わらないので便器のまたの間のおちんちんの下をのぞいてみた。すると、ちょうど茶色い長細い物体が後ろの方からぼくのおちんちんの下まで生き物のようににゅっと伸びてきたのが見えた。
そのとき、ぼくのおちんちんは少しかたくなっていてまっすぐだったので、まるでそれはぼくのおちんちんと仲良しみたいだった。
そしておしりの穴にやっとうんこが切れそうな感じがしたのでぼくはおしりの穴をすぼめた。不意にぼくの口からあっという大きな声が漏れて、うしろにぽちゃんという音が聞こえた。やっとうんこが終わったみたいだった。
ぼくはトイレットペーパーをちぎるため少し立ち上がった。便器の底を見ると、びっくりするほど長くて太いものが一本出ていた。金隠しの下の水がたまるところの直前から一番後ろまで伸びていて、便器のうしろの方で曲がり「し」の字を描いていた。
  よく見ると動物小屋のうさぎのフンのような小さなコロコロしたかたまりが押し固められて「し」の字になっていた。でも、色はうさぎよりは茶色に近かった。その中にトウモロコシの粒がそのまま出ていた。それは昨日ぼくの「山のじいちゃん」が持ってきてくれたトウモロコシだった。
 

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