壊れた世界できみとつくる理想郷

麻路なぎ

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 僕の拒絶の言葉が、ぐちゅぐちゅ、という水音の中で虚しく響く。

「中……だめっ……カナタ、あ……」

「自分でローションしこんで準備、してあるのに?」

 それは自分が傷つかないように、という予防策だが、確かに期待しているようにしかみえないか。
 そして僕は、それを否定できなかった。
 だって僕はカナタに貫かれて嬉しいと感じているんだから。

「カナ……あ、う、あぁ!」 

「自分から腰振って、すっごい気持ちよさそ。嬉しいな、今日、俺に抱かれるの期待してたの?」

「う、あ……奥、あ……だめ……ン、気持ちいい、からぁ……もっと」

 相反する言葉を口にしながら、僕は身体を揺らす。
 少しでも多くの快楽を拾えるように。
 期待、していただろうか。そんなこと考えちゃいけないと思うのに僕はたぶん、カナタとのセックスを望んでいただろう。
 だから今夜も何も言われていないのに自分から準備をした。
 カナタは一度腰をひき、前立腺を攻めたてる。

「ひ、あ……」

「中あっつい……ナマの方が気持ちいいってマジなんだな」

「そ、んなこと……どこで……あぁ!」

「秘密」

 ゴムを嫌がる客は何人かいるし、そんな発言を聞いたことがあるからたぶんゴムをしない方が気持ちいいのは事実だろうけど。
 僕の知らないところで、カナタがそんな知識を得ているのが何だか妙な気持ちだった。
 カナタは前立腺をすりあげ、再び奥へと入ってくる。

「う、あ……イく、イくからぁ!」

 這い上がる快楽の波に抗うことなんてできず、僕はあっという間に達して精液で腹を濡らした。
 なのにそんな事、お構いなしにカナタは腰を振り続ける。
 ひっきりなしに与えられる強い快楽に、思考がどんどん溶けていく。

「あ……はぁ……ハァ……あ、う、動かれたら……だめっ……」

「俺、音耶が気持ちいいの嬉しいから……もっとイく顔みたい」

「う、あ、あ、あ」

「奥、出すから」

 余裕のない吐息混じりの声のあと、カナタは動きを止めた。
 奥で、カナタのペニスが大きく膨らみそこから熱が吐き出されるのがわかる。
 中に出されるのは好きじゃない。処理が面倒だし、そんな行為に意味がなんてないと思うからだ。
 なのに僕は今、カナタに中出しされて幸せを感じてる。
 全てを支配されたような、そんな錯覚に僕は酔いしれていた。
 カナタが、僕の腹を撫で回す。
 愛おしそうにゆっくりと。
 そんなことをしても、そこには何も宿らないのに。

「今ここに、俺の精液入ってるんだよね。すっげー嬉しい」

 言いながらカナタは軽く腰を引いた。

「あン……」

 思わず声が漏れてしまい、羞恥で顔が熱くなってくる。
 カナタはそんな僕を見下ろし、残念そうな顔で言った。
 

「もっとしたいけど……明日学校だし。ねぇ、風呂、いっしょにはいろ?」
 
 その申し出に僕の胸が高鳴った気がした。
 
 結局、シャワーを浴びながらどちらともなく口付けて、僕は後ろからカナタを受け入れていた。

「う、あぁ……カナタ、いいっ……そこっ」

「大好き、音耶……」

 快楽を刻みつけるかのようにカナタは激しく僕を貫き、奥に精液を流し込んだ。


 翌朝、カナタはハンター試験の書類と試験料を払いに行く、というのでお金を持たせて送り出した。
 朝になるとカナタはいたってどこにでもいる高校生になる。
 なのになぜ、夜になると僕への執着や独占欲をむき出しにするんだろうか?
 その落差に、僕は戸惑っている。
 でかける準備をしながら、昨夜のカナタの言葉が耳の奥に響く。

『俺以外にそんな顔みせないで』

 そう言われても、今日も仕事のメールが来ているし、金はいくらあっても足りない。
 カナタが卒業するまでの間は辞めるつもりはないし、カナタに願われてもそれを変えるつもりはなかった。


「なんか、暗い顔してるけど……なにかあったの?」

 娼館のマスター、リイナが、紅い瞳を曇らせてそう僕に声をかけてくる。

「大丈夫だよ」

 淡々と答えて僕は彼女に背を向ける。
 大丈夫、ではないだろう。

「ならいいけど……無理はしないようにね」

 自分を心配する声が、妙に突き刺さった。
 指定のホテルで、今日も知らない誰かに抱かれる。
 今の相手は政府の高官だった。
 手を縛られ、後ろから貫かれている間、耳の奥でずっとカナタの声が響いた。

『俺の音耶』

「ひ、あぁ……」

「ん……そんなに締め付けられたら千切れるだろう」

 愉快そうに男は言い、僕の腰を掴んで最奥をこじ開けた。
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