壊れた世界できみとつくる理想郷

麻路なぎ

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24 風呂を出て★

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 中に出された精液以外に、僕の身体にレイプの痕跡はもう残っていない。
 手首の縛られた痕も、噛まれた首や胸にも。
 傷は時間が経てば消えてしまう。
 それでも僕は匂いを消そうと身体を三度も洗い、風呂を出る。
 リビングのほうから聞こえる物音で、カナタが食事を作っていることがわかった。
 服を着てリビングに入ると、エプロン姿のカナタが料理を作る手を止めて僕の前にやってくる。
 悲しみと戸惑いが混じったような顔をしたカナタは、震える声で言った。

「音耶……その……大丈夫……?」

「大丈夫だよ……慣れてるし」

 実際レイプなどこの百年ほどの間に何回されただろうか。
 最初は確かにショックだったが、今の身体にはその痕跡が残らないし、すっかり慣れてしまった。

「慣れてるって……」

 そこで黙り込んだカナタはきっと、なんて声をかけたらいいのかわからないのだろう。
 カナタは下を俯いたあと、ゆっくりと僕の肩と背中に手を回してくる。
 力を込めて抱きしめられたかと思うと、カナタは泣きそうな声で言った。

「俺……じゃあ頼りない、だろうけど……俺……音耶……支えたい……から……」

「子供はそんなこと考えなくていいんだよ」

 そもそも僕は、カナタに支えられることを望んでもいない。

「子供……確かにそう、だけど……俺……」

「大丈夫だよカナタ……不安にさせてごめんね」

 言いながら僕はカナタの背中に手を回した。

「……なんで謝るの。傷ついてるの、音耶……でしょ……?」

 それは確かにそうだろうけれど。べつに僕は傷ついている感じはしていないし、それよりもカナタのショックのほうが大きいんじゃないだろうか。

「だから僕は大丈夫」

 できる限り優しくそう言うと、カナタが哀しげにまつ毛を震わせて僕の顔を見つめた。
 そんな顔、させたくないのにな。
 どうしたらカナタは安心するんだろうか。
 悩んでいると、カナタは僕の額に口付けて言った。

「音耶……俺……何できるかわかんない、けど……大人に、なるから……頼れるように、なるから……さ」

「あぁ……うん、わかったよ。ありがとう、カナタ」

 カナタを安心させようと、僕はぎこちなく笑ってみせた。


 その夜。
 今夜もカナタは何もしてこない。
 中に精液が残っている気がして、もう一度風呂に入って洗ったからしても大丈夫なのに。
 カナタは僕に触れようともしなかった。

「カナタ」

 振り返って名を呼ぶと、びくっと震えてカナタは僕の顔を見た。

「しないの?」

「え……? あ……だ、だって……音耶……傷、ついてるしそんなのしちゃだめだと思うから……」

 戸惑った声で言い、彼は僕から顔をそらしてしまう。そんな事、気にしなくていいのに。
 むしろ、カナタで上書きされるほうがいい。
 傷は消えても貫かれた感覚はずっと残り続けてる。
 そんなものはさっさと忘れてしまいたいし、カナタが不安な顔をし続けるのをみたくもなかった。

「カナタ」

「何」

 僕は自分からカナタを抱きしめて、できる限り甘える声で言った。

「抱いて? カナタで上書きして」

「音、耶……」

 驚きと戸惑いの顔をしたカナタは、意を決したのか僕の背中に手を回し、唇を重ねた。
 それでも戸惑い気味にカナタは舌を出してくるので、僕は自分から舌を絡めて、それを吸い上げる。
 舌が絡まる音をびちゃびちゃと響かせながら、カナタは僕を仰向けにしてその上に覆いかぶさってきた。
 カナタの瞳が不安げに揺れる。

「大丈夫……なの、本当に」

「大丈夫、欲しいって言ってるのは僕なんだから」

 するとカナタは小さく頷き、僕の服を捲りあげた。
 
 先週とは比べ物にならないほど、カナタの愛撫はゆっくりと丁寧だった。
 乱暴に扱われることに慣れた僕には少々物足りないほどに。

「……全然傷ない……」

 僕の肌を撫でながら、カナタは不思議そうに言った。
 本当なら手首に縛られた痕があったし、あざやキスマークが残されていたけれど、もうその痕跡はどこにもなかった。
 中も洗ったからレイプの痕は僕の記憶にしか残されていない。

「音耶……」

 カナタは愛おしそうに僕の身体を撫で、口付けを落とし少しずつ僕を煽り立てていく。

「ん……」

 カナタは僕の足を抱え上げると、収縮する後孔に触れた。
 今日、何度もペニスを受け入れたはずのそこは、すでに硬く閉じている。
 カナタはゴムを指にはめてローションをそこに絡めると、ゆっくりと中に差し込んだ。

「あ……」

「……かたい」

「う、あぁ……」

 カナタの指はゆっくりと僕のそこをほぐし、前立腺を指先で潰す。

「ん……カナ、タ……」

「音耶、昔からあんな目にあってて、でも俺全然わかんなくって。いつも笑って大丈夫、て言ってたよね」

 言いながら、カナタは指の出し入れを繰り返した。
 そんなの当たり前だ、僕は君の……保護者なんだから。
 レイプされた事実など隠し通すに決まっている。

「ねえ音耶……俺じゃ、頼りないかな」

 ぐちゅ、と指が抜かれカナタは指のゴムを片付けて僕に覆いかぶさる。
 真剣な眼差しが僕の顔をじっと見つめていた。

「カナタ……」
 
「まだ俺十八だけど……音耶、支えたいんだ」

「う、あぁ!」

 言葉とともに、カナタが僕の中に入ってくる。
 ゆっくりと味わうように。
 内壁を抉り前立腺を通り過ぎて奥へと到達すると、期待で僕の胸は高鳴った。

「カナ……タ……」

「音耶……大好き」

「ひ、あ……」

 奥をこじ開けられて全身が総毛立つ。
 あぁ、気持ちいい。
 快楽が波のようにうねり僕の思考をさらおうとする。
 ぼんやりとした視界に、カナタの必死な顔が映る。

「どこにも行かないで音耶……俺、音耶の隣にいられるように頑張るから……」

「あ、あぁ!」

 カナタは一度腰をひき、ぐぽ……と奥を突き上げながら、大好き、と繰り返す。
 そんな彼の首にしがみついて僕は、与えられる快楽の中に沈んでいった。 
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