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5 仕事内容
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面接をした部屋に案内されて、甲斐さんが私に飲み物を用意してくれた。
「紅茶で大丈夫かな」
と言い、目の前にケットシーのイラストが描かれたマグカップが置かれた。
「ありがとうございます」
今気が付いたけど、この部屋、コーヒーマシンや湯沸しポットがあるんだ。
昼間通された時はお茶も出されなかったなそういえば。
甲斐さんは私の向かい側に座り、微笑んで言った。
「仕事内容だけど、レジと商品整理、補充かなあ。透さ……笠置さん、あんまり表に出てこないから僕ひとりじゃ大変なんだ」
「何で表に出てこないんですか? 噂では確かに超レアとは聞きますけど」
それが不思議なんだよね。
このお店、そこそこの広さなのになんで表に出てこないんだろ。だって店長でしょ?
甲斐さんは苦笑いを浮かべて、梟が描かれたマグカップを手にする。
「ちょっとね、笠置さんあてに特殊な来客が多くて、それでなかなかお店の方に顔を出せないんだ。それでバイトを募集することになったんだけど、なかなか笠置さんがオッケー出さなくて決まらなかったんだ」
そんな状況で私がなぜ採用に至ったんですか。
不思議で仕方ないんだけど、このお店に来て不思議だらけだな。
「よく私が採用に……」
「お銀さんも気に入ったみたいだから」
お銀さん? って誰?
きょとん、としていると甲斐さんは慌てて言った。
「猫の……さっきずっと一緒にいたでしょう? あの猫さんがお銀さん、て言うんだ」
確かにあの猫、ずっと一緒にいたな。
でもなんでだろ?
「お銀さんに気に入られるのが条件みたいなところあるから。初めてじゃないかな、お銀さんに気に入られる人」
猫に気に入られるのが条件てどういうことよ。
まあでも、早く仕事決めなくちゃってなっていたから助かったけど。
「そう、なんですか……」
あの猫ちゃんの機嫌、そこねないようにしないとなのかな。そういえばさっきもずっと一緒だったけど、いつの間にかいなくなってたな。
どこに行ったんだろ?
「色んな噂が流れているみたいで、おかげでお客さんは増えていて売り上げも上がってるんだけど、笠置さんはどんどん主に出てこなくなるし。僕は検品もあるから忙しくって」
「マジですか。あの、店長さん、何されてるんですか……?」
遠慮がちに尋ねると、甲斐さんは言った。
「商品の手配は笠置さんがやっているよ。売上データから何を仕入れるかはちゃんと考えているからね」
そうなんだ。
あれかな、店長さんは基本裏方で、接客関連は甲斐さんが一手にやっていたのかな。それってさすがに大変だよね。休むに休めないもんねえ……
「人が増えてよかったですよ。お店の休みの日、増やそうかって言っていたくらいだから」
そんな状況なのになんで今までバイトを採用しなかったんだろ……?
独特の採用基準があるみたいだし、なにかそこに至れなかった事情、あるんだろうなあ……
「とりあえず私、明日から来ればいいんですよね?」
「あ、はい。そうです。レジと商品補充だけだからそんなに難しいことないし。色々と驚くことあるかもしれないけど害はないから、よろしくお願いします」
そう言って、甲斐さんは頭を下げた。
暗い夜道を、甲斐さんに送ってもらって家に着く。
ひとり暮らしのアパートはとても静かだった。
私は荷物を放り投げ、ベッドに横たわり天井を見つめた。
なんだか変な日だったなあ……
いつの間にか落とした履歴書、ひきこもりの店長に、不思議な声。それに変な双子に、猫。
今日は不思議がいっぱいだ。
とりあえず生活費は稼げることになってよかったけど、大丈夫かな、あのお店。
私はスマホを手にして、あそこのバイトを教えてくれた友達、ほのかにメッセージを送った。
『雑貨店にバイト決まったよー』
するとすぐに返信があり、
『嘘? ほんと? やっぱ天然だから?』
という誠に失礼なメッセージが来る。だから私のどこが天然だと問い詰めたいんだけど。
『天然とか関係ないと思うよ? なんか変なことがいろいろあったけど……店長はちょっと変わった人だけど、甲斐さんは普通っぽいし』
『そうなんだ! よかったね、決まって。甲斐さん、かっこいいよねー。でも彼女いないし付き合ったことないって言ってて』
なんていうメッセージが返ってくる。
なんでそんな情報知ってるんだと思いつつ、内容に驚く。
あんなに見た目いいし優しそうでいい人なのに付き合ったことないって意外。何かあるのかな?
まあ、そんなの私が気にすることじゃないか。
大学を卒業するまでの付き合いだもんね。
『別に私、彼氏作りたいわけじゃないからどうでもいいよ、そんな話』
『あはは、そうだよねー。美羽ならそう言うと思ったからすすめたんだ。たぶんあそこの面接受ける人、皆店員さん目当てだからさ』
あーそれは充分ありえそうというか、それしかないだろうな。
私はそんなに興味ないけど、彼らと付き合える可能性があるなら面接受けちゃうかもしれない。
『明日からバイト行くことになったんだー』
『そうなんだ! よかったね、決まって! 明日話聞かせてね!』
と返ってきて、私はスマホを枕元に投げた。
明日からバイトか。
飲食店の目の回る忙しさに比べたら続けられそうな気がする。
私はベッドから起き上がり、お風呂へと向かった。
「紅茶で大丈夫かな」
と言い、目の前にケットシーのイラストが描かれたマグカップが置かれた。
「ありがとうございます」
今気が付いたけど、この部屋、コーヒーマシンや湯沸しポットがあるんだ。
昼間通された時はお茶も出されなかったなそういえば。
甲斐さんは私の向かい側に座り、微笑んで言った。
「仕事内容だけど、レジと商品整理、補充かなあ。透さ……笠置さん、あんまり表に出てこないから僕ひとりじゃ大変なんだ」
「何で表に出てこないんですか? 噂では確かに超レアとは聞きますけど」
それが不思議なんだよね。
このお店、そこそこの広さなのになんで表に出てこないんだろ。だって店長でしょ?
甲斐さんは苦笑いを浮かべて、梟が描かれたマグカップを手にする。
「ちょっとね、笠置さんあてに特殊な来客が多くて、それでなかなかお店の方に顔を出せないんだ。それでバイトを募集することになったんだけど、なかなか笠置さんがオッケー出さなくて決まらなかったんだ」
そんな状況で私がなぜ採用に至ったんですか。
不思議で仕方ないんだけど、このお店に来て不思議だらけだな。
「よく私が採用に……」
「お銀さんも気に入ったみたいだから」
お銀さん? って誰?
きょとん、としていると甲斐さんは慌てて言った。
「猫の……さっきずっと一緒にいたでしょう? あの猫さんがお銀さん、て言うんだ」
確かにあの猫、ずっと一緒にいたな。
でもなんでだろ?
「お銀さんに気に入られるのが条件みたいなところあるから。初めてじゃないかな、お銀さんに気に入られる人」
猫に気に入られるのが条件てどういうことよ。
まあでも、早く仕事決めなくちゃってなっていたから助かったけど。
「そう、なんですか……」
あの猫ちゃんの機嫌、そこねないようにしないとなのかな。そういえばさっきもずっと一緒だったけど、いつの間にかいなくなってたな。
どこに行ったんだろ?
「色んな噂が流れているみたいで、おかげでお客さんは増えていて売り上げも上がってるんだけど、笠置さんはどんどん主に出てこなくなるし。僕は検品もあるから忙しくって」
「マジですか。あの、店長さん、何されてるんですか……?」
遠慮がちに尋ねると、甲斐さんは言った。
「商品の手配は笠置さんがやっているよ。売上データから何を仕入れるかはちゃんと考えているからね」
そうなんだ。
あれかな、店長さんは基本裏方で、接客関連は甲斐さんが一手にやっていたのかな。それってさすがに大変だよね。休むに休めないもんねえ……
「人が増えてよかったですよ。お店の休みの日、増やそうかって言っていたくらいだから」
そんな状況なのになんで今までバイトを採用しなかったんだろ……?
独特の採用基準があるみたいだし、なにかそこに至れなかった事情、あるんだろうなあ……
「とりあえず私、明日から来ればいいんですよね?」
「あ、はい。そうです。レジと商品補充だけだからそんなに難しいことないし。色々と驚くことあるかもしれないけど害はないから、よろしくお願いします」
そう言って、甲斐さんは頭を下げた。
暗い夜道を、甲斐さんに送ってもらって家に着く。
ひとり暮らしのアパートはとても静かだった。
私は荷物を放り投げ、ベッドに横たわり天井を見つめた。
なんだか変な日だったなあ……
いつの間にか落とした履歴書、ひきこもりの店長に、不思議な声。それに変な双子に、猫。
今日は不思議がいっぱいだ。
とりあえず生活費は稼げることになってよかったけど、大丈夫かな、あのお店。
私はスマホを手にして、あそこのバイトを教えてくれた友達、ほのかにメッセージを送った。
『雑貨店にバイト決まったよー』
するとすぐに返信があり、
『嘘? ほんと? やっぱ天然だから?』
という誠に失礼なメッセージが来る。だから私のどこが天然だと問い詰めたいんだけど。
『天然とか関係ないと思うよ? なんか変なことがいろいろあったけど……店長はちょっと変わった人だけど、甲斐さんは普通っぽいし』
『そうなんだ! よかったね、決まって。甲斐さん、かっこいいよねー。でも彼女いないし付き合ったことないって言ってて』
なんていうメッセージが返ってくる。
なんでそんな情報知ってるんだと思いつつ、内容に驚く。
あんなに見た目いいし優しそうでいい人なのに付き合ったことないって意外。何かあるのかな?
まあ、そんなの私が気にすることじゃないか。
大学を卒業するまでの付き合いだもんね。
『別に私、彼氏作りたいわけじゃないからどうでもいいよ、そんな話』
『あはは、そうだよねー。美羽ならそう言うと思ったからすすめたんだ。たぶんあそこの面接受ける人、皆店員さん目当てだからさ』
あーそれは充分ありえそうというか、それしかないだろうな。
私はそんなに興味ないけど、彼らと付き合える可能性があるなら面接受けちゃうかもしれない。
『明日からバイト行くことになったんだー』
『そうなんだ! よかったね、決まって! 明日話聞かせてね!』
と返ってきて、私はスマホを枕元に投げた。
明日からバイトか。
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私はベッドから起き上がり、お風呂へと向かった。
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