89 / 103
★番外編01 運命の番 side 千早
運命の番22
しおりを挟む
七月十六日土曜日。
俺は、久しぶりに外に出た。
日々暑さがまし、半袖が欲しいとやっと思い始めた。
駅近くのデパートに向かい、服を買ったあと俺はジュエリーショップに立ち寄った。
特に目的があって覗いたわけじゃないが、指輪のコーナーで目が留まる。
プラティナや金が多い中、ジルコニウムやチタンと言った、アレルギーフリーの指輪が目に留まる。
内側が発色していて、こんな指輪があるのかと思って見ていると、女性店員に声をかけられる。
「指輪、お探しですか?」
二十代半ばくらいと思われるその女性店員は、笑顔で言い、指輪の説明をしてくれる。
「こちらの指輪、金属自体が発色してるんですよー」
「金属が発色?」
「そうなんですよー」
そして、女性は指輪について説明してくれる。
「長く身に着けていると、人によっては色が変わったりするんですよー。なんだか素敵だじゃないですか?」
説明を受けたジルコニウムやチタンの指輪は、さまざまな色に発色させることができ、身に着けている間に色が変わっていくらしい。
それは興味が惹かれる。
なにげなく覗いただけだったが、琳太郎が言っていた、プレゼントがある、と言う言葉が頭の中に響く。
さすがに指輪は重いだろうか。
指輪そのものよりも、色が変化していく、という話に心が惹かれる。
――琳太郎なら、どんな色に変わっていくのだろうか?
いろいろ説明をされ、名刺まで渡されて俺は、その店を後にした。
十八日まであと二日。あのあとから俺は琳太郎と連絡を取っていない。
さすがにあんな苦しそうな声を聞いたら、電話する気は起きなかった。
いったい何を話すのか。
考えると気分は落ち着かなくなってくる。
だから今日、久しぶりに外に出て買い物に来たのだが。
俺の心模様と同じように、空は荒れ、今は雷が鳴り響いている。
このデパートからマンションまで大した距離ではないが、さすがに土砂降りの中歩く気にはなれず、デパートの中で時間を潰すことにした。
この時間、琳太郎は駅の本屋でバイトをしているだろう。
だから俺は、その本屋には近づかないようにしていた。
会いに行こうと思えば今すぐにでも行ける距離。けれど今は雨のカーテンが俺の行く手を阻んでいる。
こういう雨は、しばらくすればやむことが多い。
空が光り、すぐに地響きのような音が周囲に鳴り響く。
時刻は十三時前。これならここで昼食を食べて行こうか。
そう思い、俺は、デパートの入り口から中に引き返した。
そして、七月十八日の朝。
忌々しいほど空は晴れ、気温が高い。
これは今日、かなり暑くなるだろう。
そう思い、俺はマンションを出た。
大学に着き、講義が行われる教室に行くと、各務が手を振ってくる。
「おっはよー、秋谷」
「あぁ」
とだけ答え、俺は各務の後ろの席の椅子に腰かける。
すると、各務は俺の方を振り返り、顔をまじまじと見てきた。
「なんか、いいことあった?」
と言い、各務は笑う。
いいこと。
あったと言えばそうかもしれないし、違うかもしれない。
俺は、頬杖をつき各務を見て言った。
「べつに、普通だけど何でそう思うんだ?」
「え、なんか表情が明るいから」
表情が明るい。
そんな自覚はないけれど、そうだろうか。
首を傾げると各務はずい、と身を乗り出してきて言った。
「ぜってー顔つき違うって。いいことあったんだろ?」
「べつに、普通だっての」
「えー? だって、いつもならノート出してらくがきし始めてるのに、今日はしてねーからさ」
言われてみればそうかもしれない。
最近、席につけば無心でらくがきすることが多かった。
各務のやつ、そんなところまで見ていたのか。
「そうかもしれないけど、別に、深い意味はねえよ」
「そっかー。でも、この間より顔、明るそうだなと思ったんだけど」
俺はそんな各務の言葉を聞きながら、講義で使うものをトートバッグから取り出す。
「今日、ちょっと約束をしてるから」
とだけ呟き、俺は自由帳を開く。
それを見た各務はノートを覗き込み、
「あれ、人物絵ばっかじゃん。これ、学校? 同じ人……」
と言われてしまい、思わず俺は自由帳を閉じた。
なぜだか気恥ずかしい。
すると、各務は目を輝かせ、
「あ、もしかしてこれ、例のこい……」
「各務、ほら、先生来てるぞ」
言っている間にチャイムが鳴り響き、各務は慌てて前を向く。
慌ただしいやつ。
そう思いつつ俺は、自由帳をバッグに放り込んだ。
今日の夜、琳太郎に会う日。
何を話すのだろうか、何を言えるだろうか。
そう思うと、講義の声は殆ど耳に入ってこなかった。
俺は、久しぶりに外に出た。
日々暑さがまし、半袖が欲しいとやっと思い始めた。
駅近くのデパートに向かい、服を買ったあと俺はジュエリーショップに立ち寄った。
特に目的があって覗いたわけじゃないが、指輪のコーナーで目が留まる。
プラティナや金が多い中、ジルコニウムやチタンと言った、アレルギーフリーの指輪が目に留まる。
内側が発色していて、こんな指輪があるのかと思って見ていると、女性店員に声をかけられる。
「指輪、お探しですか?」
二十代半ばくらいと思われるその女性店員は、笑顔で言い、指輪の説明をしてくれる。
「こちらの指輪、金属自体が発色してるんですよー」
「金属が発色?」
「そうなんですよー」
そして、女性は指輪について説明してくれる。
「長く身に着けていると、人によっては色が変わったりするんですよー。なんだか素敵だじゃないですか?」
説明を受けたジルコニウムやチタンの指輪は、さまざまな色に発色させることができ、身に着けている間に色が変わっていくらしい。
それは興味が惹かれる。
なにげなく覗いただけだったが、琳太郎が言っていた、プレゼントがある、と言う言葉が頭の中に響く。
さすがに指輪は重いだろうか。
指輪そのものよりも、色が変化していく、という話に心が惹かれる。
――琳太郎なら、どんな色に変わっていくのだろうか?
いろいろ説明をされ、名刺まで渡されて俺は、その店を後にした。
十八日まであと二日。あのあとから俺は琳太郎と連絡を取っていない。
さすがにあんな苦しそうな声を聞いたら、電話する気は起きなかった。
いったい何を話すのか。
考えると気分は落ち着かなくなってくる。
だから今日、久しぶりに外に出て買い物に来たのだが。
俺の心模様と同じように、空は荒れ、今は雷が鳴り響いている。
このデパートからマンションまで大した距離ではないが、さすがに土砂降りの中歩く気にはなれず、デパートの中で時間を潰すことにした。
この時間、琳太郎は駅の本屋でバイトをしているだろう。
だから俺は、その本屋には近づかないようにしていた。
会いに行こうと思えば今すぐにでも行ける距離。けれど今は雨のカーテンが俺の行く手を阻んでいる。
こういう雨は、しばらくすればやむことが多い。
空が光り、すぐに地響きのような音が周囲に鳴り響く。
時刻は十三時前。これならここで昼食を食べて行こうか。
そう思い、俺は、デパートの入り口から中に引き返した。
そして、七月十八日の朝。
忌々しいほど空は晴れ、気温が高い。
これは今日、かなり暑くなるだろう。
そう思い、俺はマンションを出た。
大学に着き、講義が行われる教室に行くと、各務が手を振ってくる。
「おっはよー、秋谷」
「あぁ」
とだけ答え、俺は各務の後ろの席の椅子に腰かける。
すると、各務は俺の方を振り返り、顔をまじまじと見てきた。
「なんか、いいことあった?」
と言い、各務は笑う。
いいこと。
あったと言えばそうかもしれないし、違うかもしれない。
俺は、頬杖をつき各務を見て言った。
「べつに、普通だけど何でそう思うんだ?」
「え、なんか表情が明るいから」
表情が明るい。
そんな自覚はないけれど、そうだろうか。
首を傾げると各務はずい、と身を乗り出してきて言った。
「ぜってー顔つき違うって。いいことあったんだろ?」
「べつに、普通だっての」
「えー? だって、いつもならノート出してらくがきし始めてるのに、今日はしてねーからさ」
言われてみればそうかもしれない。
最近、席につけば無心でらくがきすることが多かった。
各務のやつ、そんなところまで見ていたのか。
「そうかもしれないけど、別に、深い意味はねえよ」
「そっかー。でも、この間より顔、明るそうだなと思ったんだけど」
俺はそんな各務の言葉を聞きながら、講義で使うものをトートバッグから取り出す。
「今日、ちょっと約束をしてるから」
とだけ呟き、俺は自由帳を開く。
それを見た各務はノートを覗き込み、
「あれ、人物絵ばっかじゃん。これ、学校? 同じ人……」
と言われてしまい、思わず俺は自由帳を閉じた。
なぜだか気恥ずかしい。
すると、各務は目を輝かせ、
「あ、もしかしてこれ、例のこい……」
「各務、ほら、先生来てるぞ」
言っている間にチャイムが鳴り響き、各務は慌てて前を向く。
慌ただしいやつ。
そう思いつつ俺は、自由帳をバッグに放り込んだ。
今日の夜、琳太郎に会う日。
何を話すのだろうか、何を言えるだろうか。
そう思うと、講義の声は殆ど耳に入ってこなかった。
20
あなたにおすすめの小説
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
どっちも好き♡じゃダメですか?
藤宮りつか
BL
俺のファーストキスを奪った相手は父さんの再婚相手の息子だった――。
中学生活も終わりに近づいたある日。学校帰りにファーストキスを自分と同じ男に奪われてしまった七緒深雪は、その相手が父、七緒稔の再婚相手の息子、夏川雪音だったと知って愕然とする。
更に、二度目の再会で雪音からセカンドキスまで奪われてしまった深雪は深く落ち込んでしまう。
そんな時、小学校からの幼馴染みである戸塚頼斗から「好きだ」と告白までされてしまい、深雪はもうどうしていいのやら……。
父親の再婚が決まり、血の繋がらない弟になった雪音と、信頼できる幼馴染みの頼斗の二人から同時に言い寄られる生活が始まった深雪。二人の男の間で揺れる深雪は、果たしてどちらを選ぶのか――。
血の繋がらない弟と幼馴染みに翻弄される深雪のトライアングルラブストーリー。
【完結】いばらの向こうに君がいる
古井重箱
BL
【あらすじ】ヤリチンかつチャラ男のアルファ、内藤は、上司から見合いを勧められる。お相手の悠理は超美人だけれども毒舌だった。やがて内藤は悠理の心の傷を知り、彼を幸せにしてあげたいと思うようになる──
【注記】ヤリチンのチャラ男アルファ×結婚するまではバージンでいたい毒舌美人オメガ。攻視点と受視点が交互に出てきます。アルファポリス、ムーンライトノベルズ、pixiv、自サイトに掲載中。
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
ノエルの結婚
仁茂田もに
BL
オメガのノエルは顔も知らないアルファと結婚することになった。
お相手のヴィンセントは旦那さまの部下で、階級は中尉。東方司令部に勤めているらしい。
生まれ育った帝都を離れ、ノエルはヴィンセントとふたり東部の街で新婚生活を送ることになる。
無表情だが穏やかで優しい帝国軍人(アルファ)×明るいがトラウマ持ちのオメガ
過去につらい経験をしたオメガのノエルが、ヴィンセントと結婚して幸せになる話です。
J.GARDEN58にて本編+書き下ろしで頒布する予定です。
詳しくは後日、活動報告またはXにてご告知します。
変異型Ωは鉄壁の貞操
田中 乃那加
BL
変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。
男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。
もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。
奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。
だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。
ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。
それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。
当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。
抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる