無自覚SubはDomの手に堕ちていく

麻路なぎ

文字の大きさ
41 / 42
秋星視点の小話

秋星視点小話1〜5

しおりを挟む
1 みつけた

 六月の頭。
 週末ということもあり居酒屋はそこそこ混み合っていた。
 大学の友人と飲みに行こう、という話になり久しぶりに居酒屋に来た。
 最近こういった場所には縁が遠かった。
 僕は大学進学と共にSubと別れ、その後出会いはあったものの相性が良くなく、Domとして満たされない欲求を抱えていた。
 どこかにいないだろうか。
 躾けて支配したくなるようなSubは。
 他愛のない話をしつつ酒を飲んでいると、隣の席にいる青年に目が止まった。
 多分、合コンをしてるらしい大学生と思しき集団。
 その中にひとり、背が高く目つきの悪い青年がいた。
 合コンなのに楽しそうな様子がなく、どちらかというとつまらなそうだ。
 ――あれはSubだ。
 DomとSubは数が少なく、互いに惹かれ合う。
 ――ああ、見つけた。
 あれは僕の獲物だ。

「……でさ秋星は夏休みなんか予定ある?」

 ふいに友人からそう問われ、僕は少し考えるフリをして言った。

「ちょっと今年はしたいことあるから、夏休みどこか行くのは無理かも」

 夏休みに旅行に行かないか、という話をしていたのだが今僕はそれどころじゃない。
 彼を捕まえなければ。

「何だよしたいことって」

「ちょっとね。だから旅行は無理そうかな」

 そう笑って言い、僕は酒を飲み干す。
 見ていると、彼が席を立つ。
 追いかけなければ。

「僕、先に帰るよ」

 友人の不満気な声を無視して、僕は自分の分のお金を預け、彼を追いかける。
 トイレじゃないだろうと思ったけど案の定彼は外に出た。
 そして駅前にある喫煙所に入っていく。
 ――見つけた。
 僕は大きく息を吸い、喫煙所へと向かった。



 
2 自覚のない相手

 神代漣、と名乗った彼はどうやらSubの自覚がないらしい。
 そのことに僕は戸惑った。
 高校から毎年検査が義務付けられているし、大学でも健康診断でチェックされているはずだ。
 僕も高校のときの検査でDomだと判明した。
 彼がSubなのは間違いないだろう。
 Domの僕がそう感じているのだから間違いない。
 けれど、本人の自覚がない状態でパートナーになれるんだろうか?
 そもそも自覚もないのにそんな申し出をして受け入れる?
 そんな訳ないだろう。
 ならどうしたらいい?

「渇いてて……でもどうしたらいいかわかんなくって……」

 そう告げた彼は本当に苦しそうだった。
 たぶん、Subとして目覚めかけてるものの、その欲求が満たされないから辛いのだろう。
 SubもDomもその欲求が満たされないと心を病み、うつ病などを発症する場合があるらしいし、身体に変調をきたす場合もあるという。
 さてどうしよう。
 いきなりSubだと言ったところで混乱するだけだろうし。

「ねえ、僕ならその渇き、満たせると思うけど?」

 明らかに彼は僕の言葉に、声に反応している。
 それならば彼の中にあるSubとしての欲求を満たせるだろう。
 漣君はうっとりとした顔で僕を見つめてくるから、僕は彼を支配したくて仕方なかった。
 でも、急に求めたらきっと傷つけるだろうし、怯えさせてしまうかもしれない。
 だから少しずつ慣らさないと。
 でも……逃がさないように捕まえておかなければ。




3 3話あたりの秋星サイド

「お座り」

 そう告げると、漣君は言われた通り床に座り込んだ。
 あぁ、コマンドが通じる。
 うっとりとした顔で僕の命令を待つ彼に、僕は次のコマンドを告げる。

「次は『服を脱いで』」

 ノーマルであれば、同性とはいえよく知りもしない相手の前で服を脱ぐなんてしないだろう。
 これは賭けだ。
 どこまで彼にコマンドが通じるかと言う。
 漣君は一瞬戸惑いの顔を見せたけれど、すぐに手を動かし服を脱いでいく。
 あぁ、彼は間違いなくSubだ。
 そう思うと僕の心は悦びで満たされる。
 見つけた。僕のSubを。
 僕は息を飲み、漣君が全裸になっていく様子を見つめた。
 彼は服を脱ぐと床に座り込み俯いてしまう。
 恥ずかしさがあるんだろうな。
 当たり前か。

「漣君、『僕を見て』」

 そう声をかけると彼はうっとりとした顔をして僕を見上げてくる。
 もうこんな顔をしてくるのだから、だいぶSubとして目覚めているんだろう。
 だけど本人の自覚はない。
 彼の頭を撫でて、言う通りに出来たことを褒めると、漣君は嬉しそうな顔をして僕を見つめてくる。
 もっとこの顔を見たい。
 もっと支配したい。
 僕の中でDomとしても欲望が膨らんでくる。
 でも少しずつことをすすめなければ。
 壊さないように。
 壊れないように。
 僕の大事な、『半身』なのだから。



 4 どんな調教をしていこうか

 SubとDomはその割合がとても少ない。
 だから出会うにはアプリやサイトを頼るしかない。
 身近でSubと出会えたのは幸運と言えるけれど、まさか自覚のないSubだなんて。
 目の前で僕の言葉通りにオナニーをして見せた漣君の顔が、脳裏から離れない。
 彼は間違いなくSubだ。コマンドが通じたしそう僕が思うのだから間違いないだろう。
 けれど漣君はSubである、と言うのを受け入れきれないらしい。
 それはそうか。
 ノーマルだと思って生きてきただろうし、そもそもSubについても知識がないだろう。
 Subとしても自分と、ノーマルでいたい自分の間に揺れ動いている姿も僕を煽り立てる。
 まだはっきりとした「色」のない彼を、自分の手で染めたい。
 家に泊めて、一日彼を調教したいけれどなかなか時間が合わない。
 まあ僕も彼もバイトがあるから仕方ないけれど。
 六月十八日日曜日。
 漣君と会うのは今日で三回目だ。
 今日は何をしようか。
 もう少し先に進めようか。まだ早い?
 見極めてやらないと。
 漣君のバイト先の量販店の従業員出入り口のそばで、彼が出てくるのを待つ。
 時刻は三時十分。
 出てきた漣君の様子がおかしいとすぐに気が付く。
 彼は僕の顔を見るなり気まずそうな顔になる。
 漣君は嘘をついたりできないだろうな。

「あ……えーとお待たせしました」

 声が少し上ずっている。
 何があったのだろうか。
 僕は彼の腕を掴み、微笑みかける。

「ねえ漣君、うちに帰ったら詳しい話、聞きたいな」

 言いながら僕は、今日彼にどんな調教をしようかと考えた。



5 夏休みの予定について

 夏休みの予定。
 できれば漣君をうちに住まわせてじっくり調教したいと思っているんだけど。
 大学構内にあるチェーンのカフェで向かい合って座り、僕は漣君を見つめる。
 彼が話した夏休みの予定はなかなかいろいろと詰まっていて、一番僕の心を揺り動かしたのは、バイト先の人と出掛ける、と言う話だった。
 バイト先の人の家に泊まった話を聞いて、がらにもなく嫉妬して、まだそんなつもりもなかったのに、思わず最後までしてしまった。
 自分の中に嫉妬心があったのかと正直驚いたけれど、また僕の中にふつふつとした黒い感情が渦巻き始めている。
 なぜだろう。
 彼の友達には何の感情も抱かないのに、バイト先の人の話は僕の心をかき乱す。
 計画はそのまま実行すべきか。
 漣君はSubとしての自覚がまだないから迷っていたけれど、そんな悠長なこと、言っていられないかもしれない。

「夏休みの間、うちにこない?」

 僕が告げると、漣君は戸惑いと喜びの顔をする。
 そう、この顔が僕の本能を刺激するんだ。
 ただ喜び、尻尾を振るわけではなく、必ず彼は戸惑いや恐怖を見せてくる。
 それが悦びの顔だけになった時僕の心は満たされる。
 歪んでいると自分でも思うけれど、自分色に染められる悦びを、僕は知ってしまったらしい。
 彼は少しずつSubとして、僕と言うDomの色に染められている。
 まだ時間はかかるだろうけれど、染まりきったらどんな姿を見せてくれるだろうか?
 それが楽しみで仕方ない。
 夏休みに一気に進めていきたい。
 彼への調教を。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

【本編完結】おもてなしに性接待はアリですか?

チョロケロ
BL
旅人など滅多に来ない超ド田舎な村にモンスターが現れた。慌てふためいた村民たちはギルドに依頼し冒険者を手配した。数日後、村にやって来た冒険者があまりにも男前なので度肝を抜かれる村民たち。 モンスターを討伐するには数日かかるらしい。それまで冒険者はこの村に滞在してくれる。 こんなド田舎な村にわざわざ来てくれた冒険者に感謝し、おもてなしがしたいと思った村民たち。 ワシらに出来ることはなにかないだろうか? と考えた。そこで村民たちは、性接待を思い付いたのだ!性接待を行うのは、村で唯一の若者、ネリル。本当は若いおなごの方がよいのかもしれんが、まあ仕方ないな。などと思いながらすぐに実行に移す。はたして冒険者は村民渾身の性接待を喜んでくれるのだろうか? ※不定期更新です。 ※ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。 ※よろしくお願いします。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

ゲームにはそんな設定無かっただろ!

猫宮乾
BL
 大学生の俺は、【月の旋律 ~ 魔法の言葉 ~】というBLゲームのテストのバイトをしている。異世界の魔法学園が舞台で、女性がいない代わりにDomやSubといった性別がある設定のゲームだった。特にゲームが得意なわけでもなく、何周もしてスチルを回収した俺は、やっとその内容をまとめる事に決めたのだが、飲み物を取りに行こうとして階段から落下した。そして気づくと、転生していた。なんと、テストをしていたBLゲームの世界に……名もなき脇役というか、出てきたのかすら不明なモブとして。 ※という、異世界ファンタジー×BLゲーム転生×Dom/Subユニバースなお話です。D/Sユニバース設定には、独自要素がかなり含まれています、ご容赦願います。また、D/Sユニバースをご存じなくても、恐らく特に問題なくご覧頂けると思います。

不透明な君と。

pAp1Ko
BL
Dom/Subユニバースのお話。 Dom(美人、細い、色素薄め、一人称:僕、168cm) 柚岡璃華(ユズオカ リカ) × Sub(細マッチョ、眼鏡、口悪い、一人称:俺、180cm) 暈來希(ヒカサ ライキ) Subと診断されたがランクが高すぎて誰のcommandも効かず、周りからはNeutralまたは見た目からDomだと思われていた暈來希。 小柄で美人な容姿、色素の薄い外見からSubだと思われやすい高ランクのDom、柚岡璃華。 この二人が出会いパートナーになるまでのお話。 完結済み、5日間に分けて投稿。

大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った

こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

処理中です...