23 / 51
23早く家に帰ったら
しおりを挟む
午前中、私は結婚式の予定がある一つ年上の女性と打ち合わせをしていた。
「……で、当日の流れはこういう感じになります」
「朝早いんですねえ。起きられるかしら?」
不安を口にする女性だけれど、その表情はとても明るく幸せそうだ。
「みなさん同じことをおっしゃいますが、遅刻される方は滅多にいないですよ」
どちらかと言うとあまり眠れなかったと言う人が多い。
「そうなんですか? でも心配だなあ」
これもいつもの流れだった。
それに対しての私の台詞も大体一緒で、
「大丈夫ですって。ちゃんと寝て、当日最高の笑顔を見せてくださいね」
そう声をかけると、女性ははにかんで頷いた。
話をしながら、こんな風に私もなれるのかなあ、と自分に置き換えて考えるようになっていることに気が付き、戸惑いを覚える。
女性が帰り、事務室に戻って私は自分の席に腰かけた。
「このままじゃあ、賭けに負けちゃうじゃないの私……」
呟いて、私は机に突っ伏す。
いっそのこと負けた方がいいのだろうか?
いや、でもまだ何か月もあるじゃない。
まだあきらめるのは早いと思うの。
そんな葛藤を繰り返しているときだった。
明らかに体調がおかしいと気が付く。妙に体温が低い気がする。
こういう時は大体あとから体温がぐっと上がるんだ。
これはまずい。
「……大丈夫?」
神官のアンヌ様にそう声をかけられ、私は顔をあげて首を横に振る。
「大丈夫ではないと思います。これは……たぶん熱が出ます」
「た、たぶん?」
アンヌ様が戸惑った表情をする。
「はい……今、とても体温が低い気がするのですが……そういう時って大抵一気に熱があがって高熱が出るんです」
「そ、そうなの? それなら早く帰った方がいいわ。風邪、流行っているらしいし」
ちなみに、癒しの魔法で自分を癒すことはできない。なぜかはわからないけれど。
「そうですね……すみません、今日は帰ります」
「ええ、暖かくしてゆっくり休んでね。夜更かししてはだめよ」
まるでお母さんのようなことを言うアンヌ様に頭を下げ、私は着替えて教会を出た。
まだ熱は上がっていない。
いつもと同じ感じなら、きっと夕方位に熱があがるだろう。
こういう時はアンヌ様の言うように、暖かくしてさっさと寝るに限る。
ユリアン、家にいるかしら? あと、マティアス様も。
ユリアンが熱が出そうなときは酸っぱいものを食べるといいとか言っていたっけ?
果物の果汁ジュースとかでいいのかなあ。
私は帰る途中、露店で果汁ジュースを買うことにした。
「今日はずいぶんと早いんだねえ」
顔なじみの店主のおじさんにそう言われ、私は苦笑してやり過ごす。
「顔色がよくないけれど、エステルさんも風邪かい?」
「もって……流行っているとは聞きましたけど、そんなに流行っているんですか?」
「流行り始めている、というのが正しいのかなあ。ブノア商会で扱っている薬が効くとかうちのが言っていたよ」
「そうなんですか」
紙のコップに入ったジュースを片手に、私は道を急ぐ。
お昼の時間が近いせいだろうか、料理屋さんに吸いこまれていく人が多かった。
体調がよくないせいかお腹が空いたという感覚はあまりなく、私は料理屋さんにも他の露店にも目をくれず家へと向かった。
見慣れた茶色の壁の自宅に入ると、耳慣れない声が聞こえてきた。
どうやら来客らしい。
誰だろうとかそういうことを考える間もなく、私は食堂へと向かった。
いや、正確には向かおうとした。
不意に居間の扉が開き、私の行く手が阻まれてしまう。
出てきたのは普段着姿のマティアス様だった。
彼は驚いた様子で私を見つめる。
「あれ、どうしたの?」
「熱が出そうなので寝ます」
そう早口で伝え、私は彼の横をすり抜けて食堂へと向かう。ジュース飲んで、あと何か食べないとかなあ。薬を飲むなら何か食べないとまずい気がするけれど、まだ熱も出てないし、喉が痛いわけでもないしな……常備薬はあるんだけれど、何をのめばいいやら。
そんなことを考えながら食堂に入り、立ったまま私はジュースを飲んだ。
酸っぱい。
一気には飲めないので少しずつ飲みながら食堂を見回し何を食べようかと考えた。
けれど結局面倒になり、私は考えるのを放棄する。
「エステルさん?」
私を追いかけてきたマティアス様が食堂に入ってくる。
そして、食堂には入らず廊下にたたずむ黒い上下を着た若い男性の姿が目に入った。
誰だっけ?
どこかで見たような見ないような。
明るい茶色の、ちょっと癖のある髪。深い緑色の鋭い瞳が私を観察するように見つめている。
黒い長袖に黒いズボン。
……て、誰?
記憶をたどるけれどいまいち思い出せない。
私の視線がどこにむいているのか気が付いたらしいマティアス様は、後ろをちらりと振り返る。
「サシャ、なぜついてきた」
「エステル様にご挨拶を、と思いましたがどうやらそれどころでは無さそうですね」
淡々と青年は言い、胸に右手をあてて頭を下げた。
「私はこれで帰ります」
「あぁ、ありがとう、サシャ」
そして、扉が静かにしまった。廊下を歩く音がかすかに聞こえてくる。
「今の方……」
「サシャ=プエシュ。俺の……側近といえばいいのかな。小さい頃からいっしょにいるから、エステルさんも会ったことがあるはずだけれど」
あー、だから見覚えがあるのね。
「珍しいですね、マティアスさんの国の方がくるなんて」
初めてじゃないだろうか。たぶん。
「エステルさんがいらっしゃらない日に来ているよ。
ユリアンのお母さんの書類を持ってきたのも彼だし」
あ、そうだったのね。
来客があっても言わなければわからないし、知らなかった。
別に気にしないからいいけれど。
それより私は早く横になりたい。
私はジュースを飲み干し、ふらふらと歩き出す。
すると、マティアス様が私の額に手を伸ばしてきた。
「熱い」
あ、思ったより熱が上がるの早かった。
言われて始めて、私は熱が出てることを自覚する。
最近色々と考えているせいだ。
たぶんきっと。
「すみません、私寝ますので失礼します」
マティアス様から離れ食堂を出ようとすると、腕を掴まれた。
「部屋まで送らなくて大丈夫? だいぶ熱が高そうだけれど」
振り返ると、マティアス様の心配そうな顔がすぐそこにあった。
あ、そんなに熱が高いんだ。言われてみれば、身体熱いかも。
「自分の部屋にくらい行けますよー」
そう言うと、マティアス様はすっと私から手を離した。
そもそも私の部屋には入らない約束になっているわけだし。
私は食堂を出て部屋へと向かった。
「……で、当日の流れはこういう感じになります」
「朝早いんですねえ。起きられるかしら?」
不安を口にする女性だけれど、その表情はとても明るく幸せそうだ。
「みなさん同じことをおっしゃいますが、遅刻される方は滅多にいないですよ」
どちらかと言うとあまり眠れなかったと言う人が多い。
「そうなんですか? でも心配だなあ」
これもいつもの流れだった。
それに対しての私の台詞も大体一緒で、
「大丈夫ですって。ちゃんと寝て、当日最高の笑顔を見せてくださいね」
そう声をかけると、女性ははにかんで頷いた。
話をしながら、こんな風に私もなれるのかなあ、と自分に置き換えて考えるようになっていることに気が付き、戸惑いを覚える。
女性が帰り、事務室に戻って私は自分の席に腰かけた。
「このままじゃあ、賭けに負けちゃうじゃないの私……」
呟いて、私は机に突っ伏す。
いっそのこと負けた方がいいのだろうか?
いや、でもまだ何か月もあるじゃない。
まだあきらめるのは早いと思うの。
そんな葛藤を繰り返しているときだった。
明らかに体調がおかしいと気が付く。妙に体温が低い気がする。
こういう時は大体あとから体温がぐっと上がるんだ。
これはまずい。
「……大丈夫?」
神官のアンヌ様にそう声をかけられ、私は顔をあげて首を横に振る。
「大丈夫ではないと思います。これは……たぶん熱が出ます」
「た、たぶん?」
アンヌ様が戸惑った表情をする。
「はい……今、とても体温が低い気がするのですが……そういう時って大抵一気に熱があがって高熱が出るんです」
「そ、そうなの? それなら早く帰った方がいいわ。風邪、流行っているらしいし」
ちなみに、癒しの魔法で自分を癒すことはできない。なぜかはわからないけれど。
「そうですね……すみません、今日は帰ります」
「ええ、暖かくしてゆっくり休んでね。夜更かししてはだめよ」
まるでお母さんのようなことを言うアンヌ様に頭を下げ、私は着替えて教会を出た。
まだ熱は上がっていない。
いつもと同じ感じなら、きっと夕方位に熱があがるだろう。
こういう時はアンヌ様の言うように、暖かくしてさっさと寝るに限る。
ユリアン、家にいるかしら? あと、マティアス様も。
ユリアンが熱が出そうなときは酸っぱいものを食べるといいとか言っていたっけ?
果物の果汁ジュースとかでいいのかなあ。
私は帰る途中、露店で果汁ジュースを買うことにした。
「今日はずいぶんと早いんだねえ」
顔なじみの店主のおじさんにそう言われ、私は苦笑してやり過ごす。
「顔色がよくないけれど、エステルさんも風邪かい?」
「もって……流行っているとは聞きましたけど、そんなに流行っているんですか?」
「流行り始めている、というのが正しいのかなあ。ブノア商会で扱っている薬が効くとかうちのが言っていたよ」
「そうなんですか」
紙のコップに入ったジュースを片手に、私は道を急ぐ。
お昼の時間が近いせいだろうか、料理屋さんに吸いこまれていく人が多かった。
体調がよくないせいかお腹が空いたという感覚はあまりなく、私は料理屋さんにも他の露店にも目をくれず家へと向かった。
見慣れた茶色の壁の自宅に入ると、耳慣れない声が聞こえてきた。
どうやら来客らしい。
誰だろうとかそういうことを考える間もなく、私は食堂へと向かった。
いや、正確には向かおうとした。
不意に居間の扉が開き、私の行く手が阻まれてしまう。
出てきたのは普段着姿のマティアス様だった。
彼は驚いた様子で私を見つめる。
「あれ、どうしたの?」
「熱が出そうなので寝ます」
そう早口で伝え、私は彼の横をすり抜けて食堂へと向かう。ジュース飲んで、あと何か食べないとかなあ。薬を飲むなら何か食べないとまずい気がするけれど、まだ熱も出てないし、喉が痛いわけでもないしな……常備薬はあるんだけれど、何をのめばいいやら。
そんなことを考えながら食堂に入り、立ったまま私はジュースを飲んだ。
酸っぱい。
一気には飲めないので少しずつ飲みながら食堂を見回し何を食べようかと考えた。
けれど結局面倒になり、私は考えるのを放棄する。
「エステルさん?」
私を追いかけてきたマティアス様が食堂に入ってくる。
そして、食堂には入らず廊下にたたずむ黒い上下を着た若い男性の姿が目に入った。
誰だっけ?
どこかで見たような見ないような。
明るい茶色の、ちょっと癖のある髪。深い緑色の鋭い瞳が私を観察するように見つめている。
黒い長袖に黒いズボン。
……て、誰?
記憶をたどるけれどいまいち思い出せない。
私の視線がどこにむいているのか気が付いたらしいマティアス様は、後ろをちらりと振り返る。
「サシャ、なぜついてきた」
「エステル様にご挨拶を、と思いましたがどうやらそれどころでは無さそうですね」
淡々と青年は言い、胸に右手をあてて頭を下げた。
「私はこれで帰ります」
「あぁ、ありがとう、サシャ」
そして、扉が静かにしまった。廊下を歩く音がかすかに聞こえてくる。
「今の方……」
「サシャ=プエシュ。俺の……側近といえばいいのかな。小さい頃からいっしょにいるから、エステルさんも会ったことがあるはずだけれど」
あー、だから見覚えがあるのね。
「珍しいですね、マティアスさんの国の方がくるなんて」
初めてじゃないだろうか。たぶん。
「エステルさんがいらっしゃらない日に来ているよ。
ユリアンのお母さんの書類を持ってきたのも彼だし」
あ、そうだったのね。
来客があっても言わなければわからないし、知らなかった。
別に気にしないからいいけれど。
それより私は早く横になりたい。
私はジュースを飲み干し、ふらふらと歩き出す。
すると、マティアス様が私の額に手を伸ばしてきた。
「熱い」
あ、思ったより熱が上がるの早かった。
言われて始めて、私は熱が出てることを自覚する。
最近色々と考えているせいだ。
たぶんきっと。
「すみません、私寝ますので失礼します」
マティアス様から離れ食堂を出ようとすると、腕を掴まれた。
「部屋まで送らなくて大丈夫? だいぶ熱が高そうだけれど」
振り返ると、マティアス様の心配そうな顔がすぐそこにあった。
あ、そんなに熱が高いんだ。言われてみれば、身体熱いかも。
「自分の部屋にくらい行けますよー」
そう言うと、マティアス様はすっと私から手を離した。
そもそも私の部屋には入らない約束になっているわけだし。
私は食堂を出て部屋へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる