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3章
霧の白鷺
しおりを挟む「ヴィーリオ見えない。」
「そうか、
おいそれ以上左に寄るなら手を離せ俺まで堀に落ちる。」
見えていないはずなのにライルに注意を促すがどう聞いても『落ちるなら一人で落ちろ』と言っているようにしか聞こえない。
「それと摺り足で歩くな転けるぞ。」
「だ、だがこうも霧が深いとちゃんと地面を歩いているのかも怪しくて…。」
「そんな状態でよく魔界を歩けたなお前…。」
灼熱・凍土・蔓延する瘴気が当たり前の魔界ではあまり珍しくも無いことらしくヴィーリオは至って普通だ。
「普通に歩いていたら普通に城に着いたぞ?」
「魔王城の周りには結界が張り巡らされていて普通の方法でたどり着けるわけ無いだろう、
貴様の運気(luck skill)はおかしい振り方をされたとしか思えん。」
ためしにウィンドウを開いてライルのパラメーターを確認する。
「力と運気が異様に高いくせにこの頭脳値は何だ貴様…!!」
ヴィーリオが目の前にある小型ウィンドウをミシミシと音がするぐらい力を込めて持つ。
「私には何が何だか…。」
「…十字路に入った、どっちに進む?」
「え…とみ、右に進もう!」
「よし右だな、
間違っていたらただでは済まさんぞ。」
「え!?」
勇者の運にかけて右に進みそれからも分かれ道がある度にライルに選択させ進んでいくと篝火が見えてきた、そこだけは足元がよく見える。
「やっと町を抜けたな、
勇者の強運は飾りではないらしい。」
「そ、そうか?
しかしずいぶんと大きな町だったな…。」
「町全体に協力な術が掛けてあったのに気づかなかったのか?」
ライルが首を傾げた所を見るとどうやら完全に気がついていなかったらしい…、
キリキリと絞まる自分の胃を押さえ勇者の知能の低さは世界共通なのかとヴィーリオは呟く。
「あれは…、
造りは違うが城か?」
「そうだ、
この瘴気さえ無ければ上から町が一望できる。」
胃が鳴りを潜めたので城への階段を上る、
かなり長い階段だが難なく上りきり町にいた時よりもさらに深くなった霧のなか進んでいると突然ライルがヴィーリオを後ろに引っ張った。
「危ない!」
飛んできたものをライルが剣で弾く、ぶつかった音からそれは鉄でできていたようだ。
「誰だ。」
霧の向こうに問いかけると奥からゆらりと人影が近づいてきた…。
「…ライルとヴィーリオか?」
二人にとってかなり聞き覚えのある声が問い返してくる。
「虚…?」
「ああ、
なぜ二人がここに?」
「探し物がこの地方にあるのだが霧が深すぎて何が何だかわからなくて…、
虚はなぜここに?」
「船でこの近くまで来たがこの霧のせいで何度も同じ場所に戻ってきてしまって降りてみると村もここに来るまでの道にも人はおろか動物すら居ない、
そのまま歩いていたらここに着いたが城の扉が閉まっているせいで中にはいれなくてな…。」
城の入り口は他にないらしい。
「ああ、いや
ひとつだけあったな【入り口】ではないが。」
上を見上げながら虚が言う。
「早く行こう、
放っておけば霧はもっとひどくなるかもしれない。」
「ヴィーリオも良いか?」
なぜかヴィーリオにも同意を求める、
少しおかしいと思ったのか顔をしかめたがこいつはよくわからんやつだからと無理矢理自分を納得させ了承の返事をした。
「そうか…。」
二人の脇腹を抱える虚、
その突然の奇行にライルは目を点にしヴィーリオは眉間にシワを寄せる。
「おい何を「よし行くぞ。」
そして二人を抱えて…
その場から城の屋根へと飛び移った。
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