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6章
焦りと苛立ちと…
しおりを挟むライルを【王女】と呼んだその男の背に羽、その男が一歩近付くとライルは逆に一歩下がる。
「私は戻るつもりは無い!」
「ならば無理矢理にでも連れ戻すだけです。」
男が腕をつかもうと手を伸ばすがその直前で間に立った人物がその手を払いのけた。
「何か隠していると思ったがまさかお前が天空族の王女とはな…。」
男が睨んでもヴィーリオはどこ吹く風、
ライルの前から退こうとしない。
「ヴィーリオすまない、
だが騙すつもりは無かったんだ…。」
服を捕まれ視線を後ろに向けると今にも泣き出しそうな顔で謝るライルが居た…。
「戻るつもりは無いんだな?」
真っ直ぐ目を見るのはいつもの黒ではなく魔族の紅い瞳、
その瞳にライルは首を横に振る。
「だそうだ、諦めて洗いざらい吐いてもらうぞ。」
ヴィーリオの言葉に男が剣を構えると応戦すべく本を開き雷を放つが首都の力が戻ってきているせいか威力はいつもより弱く徐々に押されはじめる…、
ここが聖都というせいで魔族の力が低下し逆に天空族の力は強化されるのだ。
「聖王を戻したのは失策だったか。」
忌々し気に吐き捨てると羽めがけて雷を落とすがすぐに避けられ軽く舌打ちをする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
少し離れた場所に立つライルは二人を狙う何者かの気配に気づきそちらに目をやると暗闇のせいで姿は見えないが一瞬紅く光る何かが見えそれは間違いなくヴィーリオを狙っていることも…
そしてそれが当たれば魔王といえども確実に死ぬということもすぐにわかった…。
「 ヴ ィ ー リ オ ! ! 」
ヴィーリオと男を突き飛ばした瞬間に放たれた【紅い矢】が胸に突き刺さりライルはその場に倒れた…。
「ライル!?」「王女!?」
ヴィーリオが駆け寄り抱き起こすと半透明の紅い矢は粒子となって消えた…。
「これが天空族に当たればどうなる!?」
男の胸ぐらをつかんで問いただしても男が何も言わないのはおそらく前例がないからだろう、
苛立ち男を突き飛ばしすとライルを抱き上げる。
「戻って俺を討ち損ねた事と間違えてこいつを射った事を伝えてこい。」
途中腕の中を見るもライルはぐったりしていて目を開ける気配は全く無く口元に手を当てなければ息をしているかもわからない…、
抱き上げた体は恐ろしく軽く徐々に低くなる体温に焦りを感じ走る足を更に早めた。
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