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この場を持って婚約破棄を・・・
夜会で婚約破棄
しおりを挟む私は転生者だ。
この世界はどうやら前世で流行っていた乙女ゲームか、ネット小説の世界みたいだ――みたいだった、というべきかもしれない。いや~実は今の今まで気が付かなかったんだよね。
「オリアナ・ミュラー公爵令嬢! 本日限りで俺様との婚約は破棄だッ! お前はこの可憐なジュリア・アーチボルト男爵令嬢を学園内でいじめ抜き、あろう事か学園の下校時に破落戸達に彼女を襲わせようと画策しただろうッ! 然るべき・・・」
なんか金髪碧眼のキラキラしい男が、ピンク色の髪の毛の小動物系発育不全の美少女を腕にぶら下げて怒鳴っているからだ。
――うざい・・
えーと、この男は確か第三王子とかじゃなかったっけ? 頭のネジが抜けてるんかな? 政略婚だよねぇ。王家と公爵家の間の・・・
うーむ、と腕組みをして考える間、約10秒。
ああ。そうか。
「第三王子殿下、私には全く身に覚えのない事にございます。そもそもあなた様の腕にアクセサリーの様に添えられていらっしゃる男爵令嬢、えーとアーチボルト男爵令嬢様にお会いしたのが正真正銘今日が初めてで御座います」
ツーンと言い返すと、又王子が金切り声を上げて喚き散らしている。
周りの貴族達はどちらかと云うと王子に冷たい視線を浴びせているのに、王子と男爵令嬢は気が付かない――二人揃っておめでたいオツムのようだ・・・
そりゃあそうだ。
どう見たって王子の方が浮気相手をぶら下げているし、エスコートしなければいけない婚約者を一人でパーティー会場に放置しているのだから。
マトモな貴族ならどっちがおかしい事をしているのかは言われなくとも判るだろう。
「嘘を申すな!! 俺がジュリアを寵愛しているのに嫉妬して裏で取り巻きを使い虐めていたのだろうがッ!」
うわぁ、唾が飛んできそうで嫌だなぁ。しかも自分で不貞行為してましたって墓穴掘ってるし。
「え? 私達の婚約は王家と公爵家の契約であって、好きとか嫌いとかいう感情の上に成り立っているものじゃあ御座いません。ただの義務ですよ? 言うならば『ただの決まり事を守る為のお約束』でしか御座いませんが?」
「「え?」」
「まあ、最近の殿下は週イチの顔合わせも、パーティーのエスコートも記念日のプレゼントも全~く私に対して行っておられませんでした。所謂婚約者同士の義務を全て放棄されておられましたが」
「「「「「「「・・・」」」」」」」
――はい、アウト~~~。
「ま。宜しいですわ。婚約破棄は受け入れましょう。今後王子としての執務も、公務もご自分とそのご令嬢とで熟せばよろしいかと思いますので」
王子の執務は王族の執務なので婚約者がやっちゃ駄目なんじゃ・・・。
いや、もう今更ダヨネ。
「それではご機嫌よう。残る手続きは殿下のサインだけという書類をお持ちしてますので。こんな公衆の面前しかも王宮の夜会で私との婚約破棄を皆様に公言なさったのですから今更取り消しなど出来ませんものねぇ」
薄っぺらい3枚重ねの用紙をオフショルダードレスの胸元から引っこ抜いて広げると
「ヘイ、カモン!」
と、指をパチンと鳴らし王城のウェイターを呼び寄せ、磨き抜かれた銀のトレンチの上にボールペンを添えたものを王子に持って行くように指示をした。
「ハイ、殿下サインお願いしますね」
「え。あ。はい」
名前の空欄を指差されてついサインしちゃう王子殿下。それを覗き込んでニヤリと笑う小動物系美少女――表情は悪女。
――おいおい、この王子大丈夫かよ? そのボールペン消えないオイル系の黒インクだぞ? 正式書類になっちゃうぞ?
多分周りの貴族達もそう思ったに違いない・・・顔色悪いもん。
「あ、あとそのナンチャラ男爵令嬢との婚約は御自分で陛下にお願いしてくださいませね? 陛下も平身低頭でお願いすれば許してくださるかもしれません。見込み薄いですけど」
アッサリ記入済みの書類を殿下から取り上げてニッコリ笑うご令嬢。
「さ、私は帰りに神殿の夜間受付窓口にコレを提出しておきますので、お気になさらず皆様夜会をお楽しみ下さいませね♡」
「「「「「「「「・・・」」」」」」」」
これ以上ない位の美しいカーテシーを彼女は披露して、優雅に手を差し出す。
「役所の夜間窓口にも提出しなくちゃね」
可愛く小首を傾げながら小さな声で呟いた。
俺は溜息をつきながら
「分かりました。お嬢様」
お嬢様の言葉に同意を示すお辞儀をし、彼女の差し出した美しい手を取り、エスコートをして会場を後にする。
そして隠しキャラだった俺は小動物系ヒロインに無事攻略されること無くお嬢様といっしょに物語りからフェイドアウトした。
--------------了
お嬢様も多分転生者(・∀・)
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