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87 あなた色に染まる?
しおりを挟むこの世界の婚礼衣装はお互いの瞳や髪色といったモノが一般的だが『隣の箱庭』のTSU◯AYAで見つけた『ゼクシィ』に載っていた白いウェディングドレスに何故かシルファがハマった。
『あなた色に私は染まります』
というキャッチフレーズが、いたくお気に召したようである・・・
「結婚指輪も大騒ぎで作ったでしょ?
もう十分だよ~」
コチラには結婚指輪という習慣はない。
指輪は大抵魔道具か護符で使うと消えてしまう為何の効果もご利益もない指輪というのが周りを困惑させたのだ。
結婚指輪の概念を説明して、脳筋国王陛下を納得させるのに費やした努力を思い出しては唇を尖らせているソフィアの額に軽くキスをして
「新婚旅行に海に行くから、その時に全部やるぞ」
そう言ってソフィアを黙らせる必殺王子様スマイルを披露するシルファ。
この1年毎日朝も昼も一緒に居ることが多くなったせいで、すっかりこの顔に弱い事がバレてしまったのである・・・
ズルい。
「普通、ゼクシィの記事に憧れるのは花嫁側だよ!」
「俺はお前の色んなウェディングドレス姿を何度でも見てみたいだけだ」
真剣な顔で、言い返される・・・
――さっき一生に1度っていうのはどの口が言った?!――
また全部魔法でなんとかするつもりだなと、ジト目でシルファを見上げるソフィアである。
「ほらこのドレスとかいいじゃないか?
絶対に似合う」
青い空と海の見える白い砂浜で、花嫁花婿姿のモデル2人が笑顔で抱き合う見開きページを見せてくるシルファ。
顔つきが真剣なので本気でそう思っているのはよく分かるが・・・
「えーと、そのドレスってこの世界のマナー的にはどうなのかしらね?
私には忌避感は無いけど」
「誰にも見せる気はないからいいんだ。
プライベートビーチで2人っきりなら全く問題ない」
「そう・・・・」
緩く編み込みにしたサイドポニーにシルクリボンと小花のヘッドドレスはとても可愛らしいが、肩出しのビスチェドレスが問題だ。
スカート部分の正面が太腿あたりのミニスカート丈で後ろに向かって長くなっていくフィッシュテイルスタイルのウェディングドレス・・・
足を見せるとはしたないという貴族女性からは非難轟々だろうな、と一瞬遠い目をするソフィア。
――確かにソフィアに似合うとは思うけど、でもなあ・・・
シルファは何を想像しているのかは分からないが、珍しく頬が緩んでいる・・・
そんな2人に声がかかる。
「主。
王城の転移門にでかい魔力を持ったやつが来る」
声の方を振り返ると、部屋の隅に置いてあるモチモチビーズクッション――人をダメにするやつだ――の上で寝っ転がっていたチャッピーが目を開けていた。
しかし2人の近くにやって来るつもりは全くないらしく、クッションの上から微動だにしない。
実はソフィアの膝の占有権を放棄させるためにシルファが買い与えたのだが、ソレがすっかりお気に入りになった伝説の魔物は暇さえあればその上で寝そべっている有様である。
――人をダメにするやつは、魔物も堕落するやつだった――
お腹を見せて寝転がる姿を時折陛下がやって来ては、こっそり観察しているらしい。
「大きい魔力って?」
『知っている魔力だ敵ではない』
一度欠伸をしてから
『あのリナとかいう魔術師だ』
それだけ言ってチャッピーは目を閉じた。
×××
「街並みはあんまり変わってないけど、確かにいつもより人は多いなあ~」
一方リーナは王城の騎士団詰め所にある転移門から出て、城門を潜り王都の中心街を歩いていた。
時折走って来る子供たちがニコニコ笑いながら、お菓子の袋を手に興奮しているようだ。
見慣れない異国の菓子や装飾品を売る露店が立ち並んでいるのでそこで買ったのだろう。
――弟に買い物出来るようにお小遣いあげなくちゃね――
家で待つ両親と弟を思い出してニコリと笑う。
前からやって来た魔術師のローブを着た男が、彼女の目の前で急に立ち止まり驚いた顔をした。
「小娘!?」
「は? あれ? ・・・広田先生? あれ?」
急に声を掛けられた彼女の口から変な響きの名前が漏れた。
「え? スタンさん?」
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