【完結】転生した元社畜男子は聖女になって人生逃げ切る事を諦めません!

hazuki.mikado

文字の大きさ
53 / 189
ニ章.転生聖女と転生聖王

お爺ちゃんだけど老婆心

しおりを挟む

 「でさあ、ミリーは結局どうしたいの? 」


 煙管からぷふぁ~と煙草の煙を吐くお爺ちゃんこと大神官、別名『聖王』様。

 翌日、連続の来訪は控えた方が良いかな~ となんとなく遠慮して東の離宮には足を向けずに、神殿に来ているミリアンヌ。


「うう~ん、実は考えてなかったんです」

「ソコをミゲルにビシっと言い当てられて困ってんだ~~ 」

「うう・・・」


 頭を抱えるミリアをニヤリと笑いながら腕を組むお爺ちゃん。


「どうせ大聖女になって、結婚から逃走する事しか考えてなかったんでしょ?」

「面目ない・・・」

「神殿に住んじゃったら、家族とはオサラバだわよ」

「うっ」

「結婚したら、神殿に住まなくてもいいけどお~ 」

「・・・」

「後は侯爵家でず~っとご厄介になるかあ~ でもさ、生家にアンタがいると小姑付きになってダニエルの結婚に支障が出そうよねえ~ 」

「ああああ~ 」

「この世界って結構そういう所乙女ゲーム的なのよねえ~ 年頃の男女は結婚=幸せ的な? 」

「制作者の手落ちでしょうか」

「ゲームは関係なく、この世界は成り立ってると思うわよ~ もうわかってんじゃないの? 封建的な社会だから単に文明的に遅れてるんでしょーよ。 女性の独身バリキャリとかそうそういないでしょ? 」

「そこまでは分かんないです・・・」

「外、歩いてないもんね」


 呆れた様な目で見られてシューンとなるミリア。


「ソウデスネ」


 ひたすら身体と武力と魔力を鍛えた十五年間・・・後は貴族としての礼儀作法とか・・・外へ行ったのって、メルを見つけた時ぐらいだ! と気がついた。


「ミゲルは一年くらい国中巡って魔獣狩りをやってたのよねー 」

「へー 」

「あの子は王族だけど、ギルドに登録してて、市政にも結構詳しいわよね~ 」

「ギルドって、冒険者ですか? 」

「そう。変わった子だと思ってたけど、転生者だったとはねえー・・・んん? 」


 急にお爺ちゃんの動きがピタッと止まり、驚くミリアンヌ。


「どうしたんですか、急に・・・心臓発作? 」


 そのままの姿勢で、ゆるゆると首だけを振る仕草をするお爺ちゃん。


「ミゲル、あの子。魔力検査やり直ししなくちゃいけないわ・・・多分」

「え? 」

「こうしちゃいられないわ、ちょっと誰か! 」


 お爺ちゃんがテーブルの上にあるベルを力いっぱい振る。


「はいっ。どうされました大神官様」


 白い神官服を着た、女性がドアをノックして応接室に入ってくる。


「直ぐに王家に遣いを。王弟ミゲル殿下の魔力を再検査するよう、申立をして下さい」


 女性はお辞儀をすると足早に廊下に下がっていった。


「一体どうしたんですか? 」

「私が覚えてる限り、以前ミゲルは光属性の魔力だけって判定だったのよね。でも、今は転生者の記憶も持ってるでしょ? 」

「そうですね」

「変わってるかもしれないのよ」

「あ、なるほどね」

「私とパターンが違うから調べてみないとね」


 首を傾げるミリアンヌ。


「どうなるんですか? 」

「聖王と大聖女の条件って知ってる? 」

「えとー、光属性の魔力がすごく強くて、聖魔法を、使える? くらいしか知らないです」

「一般的にはそれで合ってるんだけど。ミリーをイジメてて思い出したのよねー 」

「? 」

「魔力判定の時に光属性とは別に属性を五個以上持ってる事と、魔力の供給量の多さ。コレが最低条件なのよ」

「え、そんなの知らないですよ属性が多いのは転生者の特徴じゃなかったっけ? 」

「だって、神殿の機密事項ですもの~ 」

「ええええ~! 」

「言い換えりゃ、アンタが侯爵領の神殿で検査した時に、部屋をぶっ壊す魔力があった時点で大聖女になる事は決定済みなのよね」

「ええええ! 」

「ミリーはさ、初潮さえくればオールオッケーなのよねえ」

「・・・心配して損した」

「ウフフ~でもさ、アンタ真面目じゃん」

「はあ」

「神殿で結界張ってるだけの人生で終わりそうでさ~ 」


 テーブルに肘をついて顎を載せ三白眼になってミリアを見るお爺ちゃん・・・


「・・・確かに」

「転生前の人生と比べてみて、せっかく生まれ変わったのに、その生き方で良いのかしらね? 」

「・・・」

「だからアンタの事を突っついてみたんだけどさあ。人生ってゴールするだけが全てじゃないわよう。そこん所ちゃ~んと考えてみたら? 」

「はひ・・・」


 連日、ツッコミを入れられ益々しょげるミリアである。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



さあ~ミリアちゃん、次行ってみよ~う!


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...