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ニ章.転生聖女と転生聖王
神殿へGO
しおりを挟む「さてと、どうすっかな」
相変わらず口の悪い王弟殿下である。
「どうするって? 」
「ジジイに、一回会っとくか」
「? 」
「結果は国王陛下と宰相には伝わってる。じゃあ俺は? どうしたらいい」
「え~と」
「ご自分の事ですから最低限把握しておきたいと、私なら思います」
「ダニエル、正解だ」
椅子から立ち上がり、グッと伸びをするミゲルと褒められてニコリと笑うダニエル。
「ひょっとすると、俺の生き方自体がまるっきり違うものになる可能性もあるんだから知りたい。ミリーは? 俺の立場だったら? 」
「私ですか。ん~~ 今すぐお爺ちゃんの所に飛んで行ってるでしょうね。どうなったのあれは? って」
はははっと白い歯を見せる王弟殿下。
「ミリーらしいなあ。じゃあその手で行こうぜ」
指をパチンと鳴らすと足元が金色に光り、メルがミゲルの足元に現れる。
「お呼びでしょうか、御主人様」
恭しく貴族の礼をすると顔を上げた。ついでに髭もクッと上がる。
今まで木の上で寝ていた筈の猫が急に消えたので、双子の王子達が木の下で慌てて騒いでいるのが見える。
「今から大神官の所に行きたい。そうだなあ、この庭にいる全員を連れて行く」
「全員、と言いますと、『影』『蝙蝠』もでしょうか? 」
「あ、それはいらん。このテーブルの三人と侍女殿とセバスチャン、あと双子は連れて行ってくれ」
「畏まりました」
王家の間諜が居たのか・・・白目になるミリア。
全員の足元に金色の魔法陣が展開され、あっという間に庭には誰も居なくなる。
生け垣から黒子が現れて周りをキョロキョロ見回した後、又生け垣に引っ込んでいった・・・
××××××××××
大神官様の部屋は、真っ白で、ソファとテーブルしかない。
ちなみにソファーのサイズは凄くデカくて、六人くらい平気で座れる。
それがガラス製のティーテーブルを挟んでデデンと二脚あるだけ。
その部屋に七人と一匹は一気に雪崩込んだ。
「ありゃ、ミリーにミゲルじゃないかい」
いつもの様に煙管をぷかぁ~と吸って笑っているお爺ちゃん。
「「お爺ちゃんの部屋じゃん」」
「ありゃ、双子もいるのかい。ダニエルは初めてだねえ、後はいつもの侍女殿とセバスかい。こりゃ大勢で来たね、まあ良いか。座んなさい」
お爺ちゃん、やっぱり他の人がいると、自動で口調がオネエじゃ無くなるね・・・
テーブルの上に置いてあるベルを鳴らすとドアから神官服の女性が現れた。
「お茶をお願いしますよ、八人分」
女性はお辞儀をして、下がっていく。
ポカーンとしているマーサとセバスを他所に、さっさとソファーに座るミゲルとミリアンヌ。続いて、ミリアの横にダニエルがおずおずと座る。
双子は・・・お爺ちゃんの両脇に座ってしまった。恐るべしロイヤルズ・・・
マーサとセバスチャンは各々の主人の後ろに立ち、そしてメルは、安定のミリアの膝の上である。
「まあ、そろそろ来るかなとは思ってたんだけど、やっぱりメルを使ったかい」
「まあ、手っ取り早いからな。すぐ来てすぐ帰れるだろ」
ニコニコ笑うお爺ちゃん。
「メルも久しぶりだねえ」
ミリアの膝で恭しくお辞儀をするメル。
「で、ミゲルは魔力検査の結果を聞きたいんだろう?」
「まあ、何となく分かってるんだけどな」
頭を掻きながら天井を見上げるミゲル。
「フィルにも言っといたけど、ミゲルは『聖王』だからね任命式はミゲルの誕生月、ニワトコ月だね。この決定は国王であるフィルでも翻すことは出来ないよ。神殿の正式決定だからね」
大神官様は煙管の煙をふう、と吐いた。
「まさか、ミリーより先にミゲルが聖王になるとは思わなかったけどね。聖王と大聖女が同時期に現れるとは・・・ま、世界は当分安泰ってことでしょう」
「え、二人いてもいいの? 」
「当たり前だよ。何? ミリーは神殿が一人しか認めないとか考えてたの? 」
「いや、そうじゃないけど」
「何人いてもいいんだよ。一人より二人の方が結界張りやすいんだから。百年張ってきた私が保証するよ。あーやっと老後が来るかな」
「「・・・」」
「ミゲルとミリーは何か言いたそうだね」
「「何でもないです」」
セバスチャンが今頃になって実感が湧いてきたようで、ハンカチを出して目を拭っている。
それを横目に身を乗り出し小さな声で
「「娼館通いを、引退って言うの? 」」
と大神官に向かって囁いたミゲルとミリアンヌ。
ホッホッホと笑い、
「老後は『世界一周娼館巡り』よお、当たり前でしょ」
と、小さい声で宣う大神官であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何で大勢で押しかけたかって、そりゃあ色々と説明が面倒くさいから・・・
デスヨネー
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