【完結】転生した元社畜男子は聖女になって人生逃げ切る事を諦めません!

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三章.転生聖女と春の庭

優秀な縫製スタッフ

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「さあ、次はエリーナ、貴女のお着替えの時間よ」


 王妃が微笑みながら王宮の美容スタッフに向かい手を叩き合図をする。


「え? どう言う事ですの伯母様? 」


 侍女たちが王妃様のクローゼットから又もや、ドレスとアクセサリーを運び出してきた。


 焦るエリーナを他所にシンシアが首を傾げながら優雅に微笑む。


「お母様、ワタクシ達は? 」

「そうね~、シンシアは手伝って頂戴な。ミリアちゃんは、クレスとゲイルのエスコートで私の客室で待っててね」


 おほほ、と笑う王妃様。


「「じゃあ、行こうよ」」


 クレスとゲイルがミリアンヌの手を取ってソファーから立ち上がる。


「?」


 話しが見えないミリアンヌが首を傾げながら小さな王子達にエスコートされ、マーサはその後ろに付き従って王妃の私室を後にしたのである。


××××××××××


 客室は王妃の私室の真向かいにあり、そこにも私室同様にお茶の準備がされており、双子の王子達がミリアンヌをソファーにエスコートする。


「ミリーはここでちょっとまってね」

「すぐ終わるっぽいから大丈夫だよ」

「「ちゃんと僕達がいるからね」」


 ニコニコと笑いながらミリアンヌの左右に座るクレスとゲイル。


「はい、あ~ん。このクッキー美味しいよ」

「このクッキーもナッツが入ってて僕のお気に入りなんだ、ほら、あ~んして」


 まるで餌付けなのだが双子の可愛い『あ~ん』のお願いを全力で受け止めるミリアンヌはニコニコと口を開け続けるのであった。


××××××××××


 暫く餌付けの時間が続きお茶をしながら王子たちと、カマキリと猫の生態で盛り上がっているところでノックが聞こえた。

 王宮の侍女が返事をし、ドアが開く。


 ドアから現れたエリーナは、先程までのホワイトシルクのブラウスに品の良いネイビーブルーのティアードスカートといったシンプルな装いから、見事な深いラピスブルーに金色の輝きが星のように輝く布地に金糸の薔薇の刺繍が大胆に入ったドレスへと変っていた。

 襟はホルターネックで背中側は控えめなドロップ型の窓で肌を露出させている。
 袖は透け感のある薄いブルーのオーガンジーで八部丈のパゴダ・スリーブ。これにも金糸で薔薇がボーダーの様に刺繍されている。

 ボディの部分はその不思議な布地とオーガンジーの二枚重ねになっており、ウェストの細さを強調するための中央の切り込みラインがシャープな三角形を作り、二段のフラウンスがスカート部分を柔しく膨らませてある。
 手首までの上品なレースグローブをはめ、同じ意匠のレースのリボンが髪の毛の中に複雑に編み込まれており、亜麻色の髪によく似合うエメラルドグリーンの宝石のピンが編み込み部分を所々を飾り輝いてる。
 首元は上品な白いパールのネックレスで飾られ、耳元にもパールが金色の鎖の先で揺れている


 まるで、海の女神の様に見える美しい仕上りのエリーナにマーサが目を輝かせて何やら創作意欲を掻き立てているようだ。


 ただ、王妃がニコニコと付き添って現れた割にはエリーナは戸惑っているように見える・・・


「ウフフ。素敵でしょう? このドレスはエリーナの為に三日前に作っておいたものなのよね」


 王妃様付の縫製班はホントにホントに優秀である。

 苦労を偲んで、ミリアンヌとマーサが遠い目になったのは言うまでもない。


×××××××××××


 エリーナのドレスを見ていると、何だかミゲルの瞳を思い出してムズムズしてしまう。

 自分の横に座るクレス王子とゲイル王子の顔を覗き込むとやはり同じような満天の星空の様な大きな瞳が輝いている。


「このドレスの布地、まるでハイドランジア王国の王族の皆様の瞳のようですね~・・・ 」


 と呟くミリアンヌ。


「あら、気がついてくれたのね、ミリアちゃん。そうなのよ、このドレスのブルーを再現するのがとっても大変でね」


 王妃が頬に手を添える。


「ワタクシが魔石結晶を研磨したときに出る、砕けたり、使えないと判断された欠片を使って、新しい染料の開発に着手して成功したのですわ」


 と、シンシア王女が続ける。


 ふおぉ、そういえばシンシア様は国一番の才女でした! 


 思い出すミリアンヌ。


「凄いですわ、シンシア様」


 エリーナも目を見開く。


「青い魔石だとこのように煌めく布に仕上がりましたの」


 ちょっとシンシアが照れたように微笑む。


「そういえば」


 ふと、思い出したミリアンヌ。


「この間生まれたダンジョンは、赤い魔石結晶が沢山生えていましたね・・・」

「! なんですって、赤?! 」


 シンシア王女の目がキラリと輝いたのはきっと気の所為ではないだろう。



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お読み頂きありがとうございます!

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