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episode1 出会い。其れは唐突にやって来る♡
4話 17歳差と護衛のお話し
しおりを挟む――話は冒頭に巻き戻る。
「コラ、ボケ親父! 何やってんだよ」
ツカツカと軍靴の音をさせて近寄ると、グエン皇帝陛下の首根っこをガッツリ捕まえるゲオルグ皇子殿下。
「何ってオマエ、ひでえなあ。求婚してるに決まってるだろう、見てわかんねえのかよ! この朴念仁!」
「時と場所と相手を考えろ! そして自分の年齢も考えろ!」
ゲオルグの額にお得意の井桁マークが見える。
「俺? 43歳だが?」
「バカ! シンシア王女殿下との年齢差だよ!」
「え~と?」
シンシアはゆっくりと首を傾げると
「ワタクシの年齢は今現在、26歳で御座いますわ。皇帝陛下」
ニッコリと笑顔で答える。
「まて、まて、待った! 兄貴と1歳しか変わらんてことか?」
「おおう。17歳違いかよ」
「あら、そうで御座いますわね」
薔薇の花のような華やかな笑顔で笑みを深めるシンシア王女。
「陛下、申し訳ございませんがワタクシもまだこの国に着いたばかりで御座いますので、後ほど求婚の件は詳しくお話を伺わせて頂かせて頂けると有り難いのですが」
「「・・・」」
「先ずは1ヶ月こちらに学びに来させて頂く訳ですので、その間に機会もございましょう?」
「あ、そうですね・・・」
「ワタクシという人となりをご覧になってからの方が宜しいのではないでしょうか?」
「「あ、はい」」
「ご理解頂けて幸いでございます」
シンシアは深い最上級のカーテシーを2人に披露した。
××××××××××
「シンシア王女殿下」
3人の足元から声がする。
「あら、メルちゃんどうなさったの? 姿が見えていましてよ?」
白い大きなサイベリアン・フォレストキャットがシンシアの足元にお座りをして人の言葉を喋っている。
「おお、大神殿の聖獣じゃねえか。凄えな本物か?」
「グエン・トリステス皇帝陛下にあらせられましては初めてお目もじ仕ります。大神殿所属の聖獣メル・ルクスで御座います」
スッと後ろ足で立上り、前足を胸の辺りに添えて貴族の礼をする。
その姿は、まるで御伽話の長靴をはいた猫である・・・
「今回の王女殿下のご留学に関しまして、王宮魔導師若しくは神殿から警護が最低1人は派遣されますことをお許しいただきたく、お願い申し上げます」
「へえ、王宮だけじゃなく神殿からもか?」
面白がってしゃがみ込むグエン。
「はい。ハイドランジア王国の護衛騎士が皇城に直接地下から現れるのをもし他国に知られた場合、如何な事と思われますでしょう」
「まあ、そりゃそうだな」
腕組みをして眉根を寄せるグエン皇帝陛下。
「神殿は国の政治には不干渉の立場であります。よって今回この転移門の管理者として王女殿下の護衛として神殿よりどなたかが派遣されます。また王宮魔導師の場合は姿を消せる隠蔽魔法の使い手となります」
「成程、それじゃあ普段彼女は護衛なしに見えるってことか? じゃあ此方で護衛も構えるってのはどうだ? そっちのほうが牽制にもなるだろう」
「はい、勿論それは願ったり叶ったりで御座います」
メルは首を傾げると、
「吾輩は今回のみ此方に派遣されました。転移門の正常動作確認も兼ねておりました故。もし正常に稼働しなかった場合は即座に王女殿下を安全な場所にお連れするのがお役目でしたので。目に見えぬ此方の護衛だけではなく次回からトリステス帝国からの護衛を御願いできるというのは僥倖でございます。もしや、皇帝陛下直々に、というお話になるのでしょうか?」
「・・・オマエ、見た目猫の癖にズバッと切り込んできやがるなぁ~」
頭をボリボリ掻きながら眉尻を下げる皇帝陛下。
「僭越ながら人族の男性は皆独占欲が強く、意中の女性の側に他の者を寄せ付けるのを良しとしません故、陛下も其のようにお考えではないかと吾輩愚考致しましたが・・・」
深く一礼するメル。
「イイネ、それ」
ニヤリと笑うグエン・トリステス皇帝陛下。
「俺が責任持って1ヶ月間シンシア王女をエスコートするわ」
頭を上げて首を傾げる白猫。
「1ヶ月の間ずっとでございますか? 其れはいくらなんでも、後ろのゲオルグ皇子殿下がお許しにならないのでは?」
「んあ?」
振り返ると第2皇子ゲオルグ・トリステスが鬼の形相になり、仁王立ちで腕組みをしているのが目に映る。
「偶に城にいるんなら真面目に政務もこなして下さい・・・ 私が交換留学に行ってしまったら責任者が居なくなるでしょうが!」
「あ、そうだったなぁ。失敗。じゃあ、お前じゃないやつをハイドランジアに派遣すっか?」
アハハハと豪快に笑うグエン陛下。
「父上ー!!」
ゲオルグの怒鳴り声が地下の小部屋に響き渡るのであった。
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