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41 王子様再び
しおりを挟む「やあ諸君、おはよう」
爽やかな挨拶を、顔色の悪い伯爵家一行に向けながら部屋にズカズカと入って来るフィリップ第2王子殿下と、その侍従―― は、困惑顔なので空気は読めているらしい。
――因みにデニスは廊下で待機である・・・
「聞けば、アリア嬢が行方不明だと言うじゃないか」
「「「「はあ」」」」
フィリップ殿下が秀麗な顔の眉を悲しそうに下げる。
「恐らくだが、彼女は何者かに拉致監禁されているだろう。このままでは、貴族女性としては致命的な醜聞が民衆に広がってしまう。これは由々しき問題だ!」
「「「「・・・」」」」
「そこで、だ。私がアリア嬢を愛妾として召し上げれば、名誉も保たれるし、彼女も幸せな生活を送れると思うのだよ!」
伯爵一家どころか、部屋に居たメイドと王子に付いてきた侍従も一緒になってあんぐりと口を開け、思わず王子の顔を2度見する。
「どうだい? 名案じゃないだろうか、考えてみてはどぅ・・・」
フィリップ王子の言葉は、残念ながらそこまでだった。
ドアから勢いよく走り込んできた辺境伯が、彼の頭を
『スッッパーンッ!!』
と。
木製の模擬刀の側面でぶっ叩いたからである・・・
「お、叔父上? ぶふぉっ」
次は鳩尾に右ストレートがクリーンヒット!!
気絶した第2王子を担ぎ上げ、
「済まない。甥が失礼な事をした。しっかり躾け直すので許してほしい」
白目を剥いた彼を担いだまま、丁寧に頭を下げて疾風の如く去っていったのである・・・
そして王子の侍従がササッと土下座をかまして、後を追うように走り去っていった。
更に辺境伯のメイドがサッと頭を下げると、廊下で呆然としている嫡男デニスの耳を引っ張り、痛いと騒ぐ彼を力ずくで連行していった・・・
後に残されたシルフィールド伯爵夫妻と召使いの2人、合計4人はアイ・コミュニケーションをフルに使い『何も無かったことにしよう』と頷きあったのであった・・・
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