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47 kiss
しおりを挟む毛布に包まったままキアンをまっすぐに見つめる蒼翠の瞳。
「もう大丈夫だから」
そう言って、一度抱きしめていた腕を緩め、肩に手を置き直しアリアの顔を見ると、床に転がった時に頬に土が着いたのだろうか涙の跡が黒く煤けている。
金の髪がボサボサになっているのを手で整えてやり、親指で涙の跡を拭う。
「遅くなってごめん」
そのまま頬を包み込むようにゆっくり両手を添えて啄むような軽いキスをした。
「お前を失うかと思ったら怖かった」
ハッとした表情を一瞬した後、蕩けるような瞳でキアンの顔を見上げるアリア。
それを見てキアンの芯がズクンと震撼した。
そっと触れるようにもう一度その柔らかな薄紅に軽くキスをし、下唇を甘噛みしてから優しく唇に触れるようなキスを何度も重ねると、彼女の瞳は閉じられたまま先を求めるようにおずおずとキアンの首にアリアの腕が巻き付いてくる。
啄むような口付けはどんどん深さを増し、キアンは止まらなくなっていく自分に気が付いた。
「鼻で息をするんだ」
コクコクと頷くと、必死で鼻で息をするアリア。
精一杯受け止めようと必死で息を止めていた彼女をいじらしく感じ、思わず後頭部に手を回し腰を抱いてかわいい小さな舌を強引に吸って引っ張り出すと、自分の長い舌を絡めて彼女の舌の裏側を舐め、更に歯茎を舐った。
キスだけで酔っぱらいのようにふにゃふにゃとなり、体重を自分に預けるアリアの柔らかな肢体に夢中になり思わずベッドに押し倒しそうになった時、身体に全く力が入らなくなっている彼女に初めて気が付いたキアンはやりすぎたな、と天を仰いだ。
「何でもっと早く呼ばないんだ?」
己の己に叱咤を繰り返しつつ、眉根を寄せて彼女を見つめる。
「え?」
「言ったろう? 困ったら名を呼べと。いつでも駆けつけると」
「そう言えばそんな事を何回も言って貰ってた気が・・・だって隣国に行ってて呼んでも聞こえないって思ってて・・・」
アリアは未だに強情っぱりなんだなと、この時改めて彼は気が付いて渋顔になった。
「もっと頼れ」
そう言って、もう1度額にキスを落とした。
彼女の顔が真っ赤になり、頷いたのを見て『愛しい』というのはこういうことか、と腹の奥にストンと何かが収まった気がして、キアンは苦く笑った。
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