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35* 夕食2

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 「じゃあ、義姉さん暫くあそこにいるんだ」

 「ああ。居場所はアイツに教えてないが電話は繋がってるから、一度連絡して冷静に話し合えと彼女には伝えてある」


 一部始終を説明しながら鮭のムニエルを切り分け口にした。


 「兄さんには悪いけど、学生時代のあの人、女たらしで有名だったからなぁ」

 「ああ。ヤケになってやってたのかと思ってたがどうやらあれが地だったらしいな」


 ワイングラスを手にとって煽る。

 白より赤がいいな――


 「でも義姉さんと兄さん、お似合いだったから別れるとは思わなかったよ。仲良かったじゃん」

 「彼女は異性だが信頼できる友人だと思ってるよ。でもまあ学生の時のアイツとの約束もあったから、正直惚れないようには気を遣ってたよ」

 「だぁから、兄さんは真面目過ぎるんだよ」

 「でも、あいつのトコに行くって決めたのは結局彼女だ」

 「ふ~ん。で? 今後の予定は?」


 ニヤニヤ笑いながら、テーブルに肘を付き俺の顔を覗き込む弟。子供か?




 「俺か? 明日は・・・」

 「違うって、義姉さんとのことだよ」

 「・・・ 何もないな」

 「え~・・・ ヘタレ・・・」


 なにかを小声で弟が言ったが、気にしない。

 どうせ悪口だ。


 「ああ、そういえば彼女の仕事の連絡先を別邸にしといてあるから」

 「え? 仕事早いね」

 「落ち着かんから昨日早朝出勤して全部やっといた。彼女にマネージャーか秘書がいれば楽なんだが。対外的にもな。一箇所にオファーが纏まるだろ?」


 彼女のモデル業は最近はウチの商会だけでなく他からもオファーが来るようになった。


 「ウ~ン、いっそモデル会社でもウチで立ち上げる? 彼女の才能を被写体だけで終わらすの勿体ないでしょ?」

 「いや、でも侯爵夫人だぞ? 領地は・・・ そういや優秀な家令がいるんだったな・・・」

 「領地の事も家政も侯爵が自分でやりゃあいいよ」


 弟の笑顔が黒かった。


 「正直、俺は義姉さんには兄さんを選んで欲しいって思ってたしね」


 俺は正直、苦い顔しか出来なかった。

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