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81 電話
しおりを挟む「一夫一妻制度が定まった今、特に高位の方々にとって閨の事情はある意味頭を悩ませる問題です。子を成せなければ家が断絶します。昔のように第2夫人を迎えれば良いというものでもないので」
「え? でも親族から養子をとれば・・・」
「それが叶わない立場の方々もいらっしゃいますわ。そういう方々のお相手をするのが私共の本来のお役目ですので、バーンスタイン様は本当に特別ですのよ?」
そう言って彼女はクスリと笑った。
養子では駄目って事はまさか、王族関係か? そういえば離宮住まいって・・・
そこまで考えていると、彼女はパンッと手を打ってその場の空気が変わった気がした。
「それから、今回の新聞に載った記事は殆どが根も葉もないモノですので、心穏やかに過ごされますように」
そう言いながら彼女はゆっくりと首を傾げる。
「男爵家には元々1人娘しか存在しませんし、バーンスタイン氏には浮気相手もましてや子供はいませんので、弁護士や法律家に相談しても存在しない相手には何も出来ませんわ」
突然真っ直ぐ正面を向き、こちらを見つめる彼女のサファイアのように深い色の瞳が弓形に細められ、思わず背筋が伸びた。
「そうそう、それとバーンスタイン様やオルコット様に限らずですけれど、皆様電話という機器を信頼しすぎですわ。交換手という人間が間に入ることを考えていませんもの。あんな物などで大切な話しなどされませんように。これは私からの忠告ですわよ?」
確かに電話が繋がる瞬間は電話をするもの同士だけでなく交換手も会話に混ざるが、その後は・・・
「聞こうと思えば聞けると?」
彼女は微笑み何も言わなかった。
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