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73* ステファン視点①
しおりを挟むアデラインは俺にとっては女神だった。
初めて会ったお茶会で紹介された時に母親のスカートを不安気に握りしめて、宝石みたいな緑の目が揺れていた。
新緑の木々が優しい風を受けて揺れる中で、彼女の赤い髪の毛も一緒に揺れると一層目立って見えて綺麗だと思った。
初めまして、で始まったお茶会が終わる頃は俺は彼女の虜になっていた――
幼い頃は何処へ行くにも彼女が一緒で1番で。
彼女の側に自分以外の子供が近寄るのは嫌だった。だから皆追っ払った。
彼女には俺だけいればいいんだ。
俺だけの大事なお姫様。
俺だけに笑顔をみせてくれる天使。
彼女の母親が急死した後もずっと寄り添っていたのに後妻が来てから様子が変わった。
全然会わせてもらえない。
俺の家の爵位が伯爵位なのが気に入らないと言われて婚約の申込みも拒絶された。
父親が
「アデラインの事は諦めろ。もっと金持ちに嫁がせるそうだ」
言外に金のない奴は来るなと言われたらしく、父親は怒っていて家を通しての正式な打診はできなくなってしまった。
でも諦められなくて学園でもアデラインに声を掛けてた。
見る度にどんどん窶れてく彼女が心配で、相談に乗ると何度も何度も・・・ その内に避けられるようになった。
絶対あの継母が彼女を虐待してる。
そう両親に伝えても他家の事には口出しは出来ない、しかも相手の爵位が上なので下手な事をすれば我が家が困ることになると言われてしまう。
伯爵位とはいえ領地経営だけで精一杯、ギリギリの我が家には余裕がないと諭された。
終いには卒業時に後ろ盾となる令嬢との婚約を仄めかされ、それが一人息子で嫡男である俺の義務だと言われた。
そうやって貴族は義務を熟していくのだと頭ごなしに言われて言い返せない自分が惨めだった――
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