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74 ステファン視点②

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 『早く一人前になって親の言うなりにならない様に俺は努力してる。うちの親父は子供なんざ駒扱いだからな。オマエはどうする? このまま腐って留年して好きな女を助けられないって思いながら俺の嫁になるのを指くわえてボンヤリ見てるのだけなのか?』


 アイツはそう言って仁王立ちで俺を睨みつけた。



×××



 俺が自暴自棄になってた時にアデラインが売られるように婚約した相手が、エイダン・オルコットだ。

 寮で同室、頭が良くてガタイがとんでも無くいい男。

 最初は騎士科の脳筋だと勝手に思ってたら他の連中に学園きっての秀才だと言われて驚いた。

 無口で無愛想、目つきが悪い癖に笑顔になった時にやたらと甘い顔になり、そのギャプにやられた女が何故か俺の周りにも何人かいた。

 何でも声を掛けにくいけど近くで見たいらしい 


 ――俺は当て馬か?


 でも長く一緒にいていい奴だって分かってたし、親友だとも思ってた。

 なのに俺の大事なアデラインがコイツに売られた。

 そう思ったら手が出てた。







 そしてその翌々日には利子付きで鳩尾にボディブローを入れられて俺が床に蹲ってた。


 ――お前の最愛を5年間預かってやる――


 その言葉を信じて死ぬ気で勉強して卒業した後、領地を立て直すのに奔走した。

 資金がないなら銀行から融資を受けろ。
 借りる事ができる実績が無けりゃ作れとエイダンに言われた。


 農地の改革は収穫高を上げることから始め、街道の整備をする。

 領民の識字率を上げて商人達と対等に付き合える人材を育てるように急ピッチで教会を巻き込んで強引に領地改革を進めた。

 国に陳情しても取り合ってすら貰えなかった街道の整備や用水路の補強は伯爵家の予算を切り崩して手掛けた。

 領民と同じような格好で走り回って3年目やっと銀行が首を縦に振ってくれて軌道に乗り始めた。

 途中で彼女とエイダンが結婚したと聞いたけど、希望は捨てなかったし今は寝る間も惜しんで眼の前の事をやり遂げるだけだと、自分自身に発破をかけてやり切ったんだ。

 気がついたらもうすぐ約束の5年が迫ってて、領地を繁栄させた手腕を評価され陞爵されると云われ茫然とした。


 ヤバい、アデラインに何も連絡してない!!


 
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