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108 理由
しおりを挟む俺は必死になって商会を大きくする理由があったんだ。
女性が自分の力で生きていける場所を作リたかった。
だから脇目もふらずにやれたんだ。
だが、あのマリア・ギタレス嬢はそうじゃない。
ただ単に俺に昔『恋をした』と言ったんだ。
過去好きだっただけの男を助けてくれる位『恋』は人に恩恵を与える程の偉大なものなのか?
俺の実の母親は自分の恋のために、俺を捨てて親父の保護下から恋人の元に去って餓死したが、本当に死んでも悔いは残らなかったのか?
「え?!」
彼女の動きが止まって。
夜風が彼女の結い上げた髪の毛の後れ毛や髪飾りを揺らした。
芸術的な外灯にふんわりと照らされた彼女は天使というより妖精みたいに見える――
「俺は『恋愛』がよく分からない。恋人がいた事もない」
「へ?」
「結婚した経験もあるがな。変だろ?」
「変? でしょうか・・・」
彼女はまず最初に腕を組んで、次に首を傾げた。
その次に星の瞬く夜空にグッと顔を向けてから、俺の方を向きなおす。
「私も正直もわかりませんッ! お役に立てないというか会長と同類かもしれません」
えらく男前だな、おい。
「えッ? 君、確か図書館でよく恋愛小説読んでたよな?」
慌てて問うと
「ああ、あれは下の兄が・・・」
事情を聞くと成る程と納得した。
似たもの同士だったのか・・・
「こう、なんていいますか、そうじゃない感満載でモダモダウジウジして、はっきりしなくてイライラするって感想を兄に正直に話して毎日デコピンの刑に処されてましたね。でも結局分かりませんでした恋愛小説の良さが・・・」
延々と語るサーシャ嬢。
なんか遠い目をしてるな・・・
まぁ、デコピンの刑で分かりゃあ世話ないよな。
「そうか」
「尊敬とか、憧れとかなら分かるんです。それが私にとっては会長そのものだから」
「え?」
「以前そう言いましたよね? 尊敬してるって。雇われて嬉しいっていうのも」
「ああ、そんな風に言ってたな」
45度のお辞儀付きで。
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