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120 疲れ?
しおりを挟むマリア嬢の忠告通りその後2人ほどご令嬢と踊った後、サーシャ嬢とチャーリーの所へ戻った。
「会長、珍しいですね。自ら進んでダンスに誘うなんて・・・」
眼鏡のブリッジを人差し指で上げながら、チャーリーが首を傾げた。
「ああ。情報を貰ってたんだ・・・」
そう言いながら目配せをすると、心得たように彼は頷き
「ベイリー嬢、そろそろパーティーを撤退しますから」
後ろで名刺を配っていたサーシャ嬢に声を掛ける。
「は、はい!」
ビシッと敬礼を思わず返してくる彼女に、ちょっとだけ笑いが漏れた。
×××
「鉄道を延ばすための候補地の選定をやり直しをするかどうかをクリスがここに到着次第話し合う」
鉄道は傘下の商社や工場も多くが関わっている事業なので失敗は許されない。
国王側である彼女が態々一旦去っていったはずの会場に戻ってきて迄伝えて来たという事はかなり信憑性が高いのだろう。
下手にその土地の領主の事業と関わってしまうと不味いと恐らくだが王国が判断したという事だ。
国はオルコットの税収をかなり重宝している――爵位の打診の際かなり感じた事だ。現時点で彼女の情報を鵜呑みにせずに独自で調べ直すのは手間だとしても損はない。
「では、資料を集め直しますか?」
「いや、今までのものでいい。隣国との繋がりに対する裏付けの方が欲しい」
チャーリーの婚約者は両親と共に既にヴィラに戻ったらしいので、滞在先のホテルに3人で戻ると先程入手した情報を元に鉄道の計画の見直しを視野に入れるかどうかを話し合うための下準備に取り掛かる。
「ギタレス嬢が以前言っていたように電話は使えんだろう。クリスが着き次第時間を取ろう」
そう言って、ふと珈琲テーブルの上にアルファベット順に名刺を並べ直していたサーシャ嬢に目を向ける。
「サーシャ嬢?」
名前を呼ばれハッとした彼女がこちらを向いた。
「どうした? 疲れたか。何だか元気がないぞ?」
顔色が良くない気がする。
「いえ、少しだけ眠くなってきたようなので・・・」
「ああ、じゃあ部屋に戻って早めに休憩して下さい。明日は社長との話が長引く可能性を考えて朝が早いかもしれませんから」
チャーリーがネクタイを緩めながら掛けた言葉に彼女は素直に頷いた。
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