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140 サーシャ視点⑱
しおりを挟む目の前でイヤラしいとでも言うのだろうか? 会長を見上げては、頬を染める女性を認めた後で首を傾げた。
――え、ご主人に申し訳ないっていう気持ちが無いのかな? 確かにエイダン・オルコットと見比べると貧相な身体と涼しげな頭髪の旦那さんだとは思うけれど・・・
会長は俗に言う美丈夫ってヤツで、そのへんの貴族に比べて体格がいい。多分騎士の自分の兄達と比べても遜色無い筈だ。
ウ~ン・・・ 旦那さんとのお腹周りを見比べても・・・ 止めよう。
何かいけない分析をしてる気分になってきた――
会長の影からご主人の方を伺うと、話の合間に時折自分の妻と会長を見比べて? 何も表情が変わらない。何か変だ・・・
その内に奥さんの方が片手を挙げ、ウェイターを呼んだ、飲み物を注文したらしくて彼はそそくさとドリンクコーナーに歩いていく。
社長やチャーリーさんを目で探すが、あまりにも人が多くて分からない。
ひょっとしたらあの人だかりが社長だろうか? 会長と同じ髪色が人だかりの向こうでひょこひょこ動いている・・・
チャーリーさんも一緒だろうか?
ふと気がつくと、トレイにいくつかの飲み物を載せたウェイターがやってきて、会長と伯爵がカットが美しく施されたウィスキーグラスを持った。
私も慌てて薄紫のカクテルを手に取ったが、奥様は既に薄桃色のカクテルの入ったグラスを手にしていた。
――いつの間に?
昨日のチャーリーさんの言っていた媚薬を盛る気だったら、会長狙いだ。
でも会長に娶らすような娘はいなさそうだし・・・
伯爵は鉄道の利益を狙ってるって言ってた。楽をしてオルコットからお金を巻き上げるにはどうする?
利益を隣国に横流しをするつもりなら名誉毀損とか脅迫とか、色々なパターンを考えてみる。
――夫婦が2人で共謀するなら何が手っ取り早い? 会長を嵌めるならどうするよ? 私ならどうする?
知らない振りで乾杯をする会長の喉仏は動かない。
飲んでないよね。
領主は飲んだ―― 後妻の方だッ!
ええい! ままよ。
死ぬようなもんじゃないッ! 可愛子ぶるんだ私ッ!
「綺麗な色ですねそのカクテル?」
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